オークの変貌/進化の謎

 Coveの街から山を挟んだ場所にオーク達の砦が存在する。 お互いの微妙な均衡によって長い間大きな争いが起こることはなかった。 雑食であるオークは人間を食料だとみなしている。 人間はそんなオークを当然のように邪悪な生き物であると考えていた。 幾度かオークを討伐することが論議されたり、実際にオーク砦に攻め込んだがその数の脅威によってオーク達が滅ぶことはなかった。 そんなオーク達の生活に異変が訪れたのはいつからだったのだろう・・・

第4章-破壊の序章-

調査報告:FATE - Guild TKR

 オークのキャンプが発見されてからすでに一週間が経とうとしていた。 冒険者によって交代で監視が続けられていたオークキャンプだが動きは全くない。 時折、目の前にオークと遭遇することがあってもオークは逃げるか仲間を呼ぶことなく戦うだけ。 街の人々もオークのキャンプへ近づかなければいいと徐々にオークに対する恐怖感を失わせていった。

「それではCoveに向かいます」

 俺は、戦士ギルド長に元々の調査の継続とVesperのオークキャンプ、もしくは他の街のそばのオークキャンプとの関連性を調べる為に一度Coveへ出向くことを告げていた。

 オーク達の様子が何かおかしいことはオーク達と戦ってきた冒険者達は気がついていた。 オーク達の狙いが分からないために迂闊に手を出すこともできず、身動きが取れない状況でイライラが募りやや神経質になっている冒険者もいる。 もしものことがあった時、冷静に判断できるのだろうか。 これがオークの狙いだとしたらその目論みは成功しているのかもしれない。

 俺は戦士ギルドにお礼の言葉を伝え部屋を出ようとしていた。

バンッ!!

 戦士ギルドの一室に扉を開く音が大きく響く。 一人の男が息を切らしながら駆け込んでいた。

「Co・・Coveの街・・が・・ハァハァ」

「どうした?落ちつけ」

 男は机に置いてあった水を飲み乾すと息を整える。

「Coveがオークの大軍に襲われています!」

「なに!?」

「!!」

「やつらはCoveの防御壁を破壊して街に侵入しようとしてます」
「救援をお願いします!」

「まさか、あのCoveの厚い壁をオークが破壊したというのか!?」

「わかった、冒険者を募ってすぐにCoveへ向かわせ」
「近郊のオークキャンプはタウンガードに監視をまかせよう」

「やはり侵攻のために集まっていたのか・・」

 急遽、戦士ギルド長を加えた冒険者数人でCoveに向かうことが決まる。 だがことはそれだけでは済むことはなかった。

「ギルド長!大変だ!!」

「わかってる!今すぐCoveへ赴く!」

「ちっ・・違う」
「Vesper北の橋にオークの大軍が!」

「なに!?馬鹿な!!」

「同時に・・・?」
「偶然か?」

 偶然にしてもタイミングが悪すぎる。 嫌な予感がする。 そしてその嫌な予感は次の報告で確信となる。

「他のオークキャンプが出来ていた町をオークが襲っている模様です!」

「同時侵攻・・」
「連中、戦力が分散するように・・?」

「戦力を分散させるために」
「今までタイミングを計っていたというのか!?」
「オークが? 信じられん・・」

 ギルド長の言うことはもっともでこんな知的な戦略をオークが行うなど信じられることではない。

「ともかく侵攻してくるオークを迎え撃ちましょう!」

 周りの冒険者達は頷き一斉に走り出す。 ギルド長はこの場に残って状況の把握、指揮を行うことになった。

 俺は戦士ギルドの建物から北の銀行を目指して駆けて行く。 人々がオークの侵攻を避けて街の南側へと避難していくのを避けながらになり、たどり着くのに苦労したがやがて人影は薄れ戦いの音だけが響いてくる。

 侵攻しているオークにはあの弓使いのオークも混じっている。 初めて戦う冒険者達は戸惑いながらの戦いになっている。 すでにオークの一部は橋を渡り終え街中での戦闘に発展していた。 オーク達の数が多い・・あのキャンプにこれほどいただろうか・・ もしや・・キャンプにいたのは一部で他のオーク達は隠れていたのか? 俺達を油断させる為に・・ 普段ならばそんなわけはないで笑い飛ばせる考えだが、これまでのオークの動向を見ているとそれもありうるように感じる。

 戦いの中、ある奇妙な違和感を感じた。 オーク達の狙いである。 オーク達が街を占領しようとするならどうするだろう・・ 人間を殺し、もしくは捕らえるだろうか・・。 出来る限り街を破壊することはないと思う。 だが今おかしさに気がついた。 奴らの目は破壊にしか向いていない。 目の前の人間を殺すこと。 建物だろうが自分の邪魔になるものを破壊することにしか興味がないように見える。

 遠くから建物の崩れる音を聞く。 オークの群れか? 駆けていくとそこには一匹のオークが・・

 オークは巨大な斧を振り上げて建物めがけて振り下ろす。 そのモーションはまるで木を切るように・・。 斧は大きな音を立てて建物の壁を破壊する。 破壊であればメイスのほうが効果的だと思うがそれを斧で壊すなんて・・恐ろしい破壊力である。 斧を持つオークは満足するとこちらに気がついた。 ゆっくり斧を振り上げて近づいてくる!

 あの斧をまともに受ければ危険だ。 ハルバードを構えて相手の動きに注意する。 オークは斧を振り下ろす。 俺はハルバードをその斧に向かって振り上げる。

ガンッ!

「ぐあっ・・・」

 手に響いてきた衝撃に顔をしかめる。 ハルバードによって斧の軌道は外れ地面に突き刺さる。 しかし、壁を斧で破壊するオークに対して力で対抗することは失敗だったかもしれない。 利き手は衝撃でしびれてしばらく使いものになりそうにない。

 ハルバードを逆の手で掴みなおし逃げようとする。 その瞬間、オークから強烈なガスが放たれる。

「うぐ・・」

 息苦しい・・ 急いでここを離れなくては・・ 不恰好に転がりながらガスから逃れる。 オークは斧を地面から引き抜き再び襲いかかろうとする。 力勝負では勝てない・・

「ならば!」

 まだ、痺れは取れていないがハルバードを握り締めオークの横を駆け抜けすれ違いざまにハルバードを振るう。 ハルバードの一撃はオークを傷つけるのに成功するがオークの斧もまた俺を傷つけていた。 大きなダメージにはならなかったがその衝撃はやはり大きい。 油断するとあの斧で両断されてしまいそうだ・・。 恐怖がよぎる。 傷ついた斧を持つオークは怒りの表情を向けて斧を振り回し襲いかかってくる。

「くっ・・」

 振り下ろされる斧を寸ででかわして逆にハルバードを構え一気に斬りつける。 大きな手応えがあった。 しかし、オークは斧を振り上げる!

「やばいっ!」

 そう思った直後、オークは痛みからか体勢を崩し斧は再び地面に突き刺さる。 その瞬間を見逃さずハルバードを振りかざす!

 驚異的な力をもったオークの死体を横に考えを巡らせる。 こいつらの本当の目的はなんだ? 侵略?略奪?それとも本当にただ破壊の為に? 他にまだ理由があるのだろうか・・ 俺が考えもつかないような理由が・・。 この戦い長引きそうだ・・ 遠くに見える橋を見つめる。 オークの大軍は数が減らずにどんどん街中へと侵入していく。 他の町は無事だろうか。 Coveはどうなったのだろう・・ 戦いが始まった。


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