オークの変貌/進化の謎

 Coveの街から山を挟んだ場所にオーク達の砦が存在する。 お互いの微妙な均衡によって長い間大きな争いが起こることはなかった。 雑食であるオークは人間を食料だとみなしている。 人間はそんなオークを当然のように邪悪な生き物であると考えていた。 幾度かオークを討伐することが論議されたり、実際にオーク砦に攻め込んだがその数の脅威によってオーク達が滅ぶことはなかった。 そんなオーク達の生活に異変が訪れたのはいつからだったのだろう・・・

第7章-異形の者-

調査報告:FATE - Guild TKR

 Coveの街を出て、キャラバン隊が襲われその調査がされているはずである現場に馬を走らせている。

 Coveの街は未だにオークの攻撃は終わってはいないが幸いCoveで戦いに加勢する冒険者が増えたことである程度の余裕ができていた。 

 俺はひとつ気になることがあった。 ボーラを持った化け物の噂だ。 それと共に調査に向かった一行もいまだに戻っては来ないことも気がかりであった。 Coveにいた騎士の一人は調査団に友人がいたことから、調査団の一行の安否をいつも気にしていた。 しかしCoveを守るという立場上、街を出るわけにはいかなかった。 ちょうど俺が例の化け物について調査に出たいということを知ると騎士は調査団の一行がどうしているのかも見てきてくれと依頼している。 キャラバン隊全滅の現場は、そんなに遠くではないはずなのに戻ってこない調査団が果たして無事なのか・・ 言葉には出さなかったが大きな不安があった。

 現場近くの街道沿いをゆっくりと進んでいく。 程無くして戦いの後・・ 無残な死体が目に入ってくる。

(これは・・Coveの調査隊の死体?)

 身体中に槍で刺されたような傷跡が残っている。 辺りの気配に注意しながら生きている人間がいないか調べて行く。 時間が経ち過ぎている・・。 恐らく絶望的な状況だということはわかっていた。 ふと、一人の死体に絡み付いている物を発見する。

「ボーラ・・」

 Coveの街で作成したボーラとほぼ変わらない物だった。

「やはりあのオークが持っていた物は・・これか」

「しかし・・この傷跡は・・オークではない」

 オークではないとするといったい何者が? オークがボーラの部品を持っていたことである仮説が頭に浮かぶ。

「オークに力を貸している何者かがいる?」

「いや・・オークを操ってなにかをしようとしているのか・・?」

 どれも確証は持てなかった。 だが裏に何者かがいるとなれば、ここ最近のオークの文化レベルが上昇したことや戦略を得た原因の説明にはなりうる。

 ふと地面に青い果実が落ちているのを見つけた。 見たことがない果実だった。 さすがに地面に落ちてどれだけたったかわからない物の味見をする気にはならなかったが・・何らかの手掛かりになるかもしれない。 そう思い鞄に放り込む。

 全滅。 結局、誰も生きてはいなかった。 不思議なのは戦ったであろう相手の死体は見当たらない。 原因はなんとなくだが予想できる。 馬とボーラ。 ボーラによって突然馬から引きずり落とされた騎士達は動揺し、そこに槍による攻撃を受けているのだろう。 相手の数は明らかに調査団より多かったはずだ。 戦いの後を見ると戦いはほんの一時で終わったように思える。

「化け物・・」

 いったい調査団はどのような化け物に襲われたというのだろうか・・・ 俺はあまりにも凄惨な現場を離れCoveの街へと戻って行った。

 Coveの街が見えてくる。 戦いの音はまだ遠いこの場所までも聞こえていた。 なにか様子がおかしい。 Coveの街の防御壁に群がるオークの集団の向こう側。 オークの砦への道筋に大人数の集団が見える。 その集団の一部はCoveの町のほうにいるオークも攻撃しているようだ。

「増援?」

 Coveの街に近づくにつれてその考えが違うように思えてくる。 その集団には大きな違和感があったからだ。

「あの姿・・いったいなんだ・・?」

 遠くから見えるその集団は身体に異様な模様を施していた。 そして、槍でオーク達と争っている。

「嫌な姿だ・・まるで・・」

 まるで? 化け物? ・・・槍。 まさか・・。 頭の中で考えを巡らせる。

「そうか・・やつらがそうか?」

 キャラバン隊と調査団を襲った集団。 それがやつらだという確信する。 あとはやつらがボーラでも使えば確実だ。 俺はオークと謎の集団の戦いに巻き込まれないようにCoveの街へ駆け込んだ。

 騎士が俺を見つけ近づいてくる。 あまり話したい結果ではないが話さないわけにはいかない。

「そうか・・全滅していたか・・」

 騎士は俺に一言報告の礼を言って、空を見上げる。

「我々騎士はいつも死を覚悟している」
「戦いで死ねたのなら騎士として本望であろう」

 まるで自分に言い聞かせるように話す。 言い終えた騎士は視線を空から戻し街の現状説明を始めた。

「あの変な集団はいったい?」

「私にもわからない」
「だが、オークの敵であることは確かなようだ」
「我々の味方になってくれるのかもしれん」

「しかし・・もしかすると・・」
「やつらがキャラバン隊と調査団を・・」

「なに・・?」

 騎士は沸き立つ怒りを抑えながら集団がオークと戦っているいるだろうと思われる方角を凝視する。

「だとすれば・・やつらが味方である可能性はないかもしれんな」

 そう、それはブリタニアの住人にとって新たな争いの出現であることを意味していた。

(なぜだ・・オークに技術を与えたのがやつらなら・・)
(なぜそのオークを攻撃する?)
(そもそもやつらは何者だ・・?)
(そしてその目的は・・?)

 その後、各地のオーク砦が謎の集団によって占拠されているのを調査に向かった冒険者達から報告されることになる。 棲家を失ったオークは、いまだに人間達の町を襲っている。 そう新しい棲家を探すかのように・・。 人々はこの集団のことをサベージ族・・蛮族と呼ぶようになっていた。


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