ガーゴイル族の危機

"主"の暗い居室は、部屋の反対側に現れたムーンゲートの
鈍く青い光にゆらゆらと照らし出されていた。ムーンゲートから
は漆黒の外套に包まれた人影が次第に輪郭となって現れ、
一人のコントローラーがよろめきながら出てくると、前かがみ
となり、ずたずたになった神秘のローブに隠された膝に手を
当てて立っていた。

第3章-薄れゆく光-

調査報告:FATE - Guild TKR

 ブリタニアの首都ブリテン。 その広さのために初めて訪れた人間が迷うことは容易だった。 そして人通りの多い町の通りではいつも以上に騒がしくなっていた。 ゴーレムとコントローラーの出現。 そして、ガーゴイルの助けを求める声。 ガーゴイルの話が噂としてブリテンの街に広まった時、ある人は「あんなモンスターなど助ける必要はない! 滅べば好都合だ!」と話していた。 またある人は「意思が通じるのならば助けるべきだ」という。 だが、ガーゴイルの地が発見されたことにより状況は変わる。 コントローラーの手記が発見されたことで、ガーゴイルを救うべきだという意見が多くなってきていた。 相手が、今ブリタニアの民を悩ませるコントローラーとゴーレムであるから。

 俺は王宮の調査団にイルシェナーでの報告をするためにブリテンに訪れていた。 王宮はすでに新たな調査団を送ったばかりだという。 新たな調査団には魔法使いを多く配備し向かったらしい。 それはゴーレムがブレードスピリットに弱いという情報からであるらしい。

 俺は前の調査団が全滅していたこと、そして謎の巨大な建造物があったことを伝えた後、調査団の薦めで巨大建造物の調査と破壊のために組織された傭兵隊に一時的に加わることになった。 この隊には多くの冒険者達が集められ中でも魔法使いを多くしているのがわかる。 ゴーレムの弱点を突き攻め入るのだろう。 最大の敵であったゴーレムの攻略法がわかったことで、この事件もまもなく解決されるだろうと誰もが思っていた。

「・・・以上が今回の作戦だ」
「質問は?」

 傭兵隊の指揮官となる王宮から派遣された騎士による作戦の説明が終わる。 傭兵は冒険者や名を上げるために参加したならず者など多種多様な職種を持った者達で構成されている。 その傭兵に対して指揮官がいたところでまとめきれるとは思えないが・・。

 作戦の内容は単純な物だった。 ゴーレムはブレードスピリットに弱い。 傭兵隊は名誉の神殿側から進入し、戦士がメイジを守りながらガーゴイルの街を目指す。 ガーゴイルの街の入り口付近で先行している調査隊と合流するように伝令が行っているらしい。 合流後は巨大建造物へ向かい、調査および可能であれば破壊となる。 無論ゴーレムだけでなくコントローラー・洗脳されたガーゴイル達が襲ってくるだろうが、コントローラーは魔法にさえ注意すれば問題なく、ガーゴイルは鎖で繋がれ魔法すら使うことができない。 俺達はゴーレムにだけ注意すればいいわけだ。 そのゴーレムも弱点があるならば・・誰の目にも勝利は見えるだろう。

 ただひとつ気掛かりだとすればという存在だ。 今現在は、主という者の情報はまったくない。 今回の作戦でその情報が得られればという期待もあるのだが・・

 翌日、慈愛の神殿に向けて王宮調査隊とその護衛が、名誉の神殿に向けて傭兵隊が出発しそれぞれの入り口からガーゴイルの地へと向かっていった。

「なぁなぁ、俺さここ初めて来るんだが・・やばいとこか?」

 横を歩く戦士が聞いてくる。

「そうだな・・ゴーレム達の数が尋常じゃない」
「俺達戦士にとっては地獄かもな」

 あの鉱山に訪れた時のゴーレムの群れを思い出して苦笑しながら話す。

「ぬぬ・・だが、今回はメイジ達がいるんだ!・・楽勝だよな?」

「あ?ああ・・そうだな」

 そうだといいなと、素直に思う。 できればゴーレムは相手にしたくない。 だが、そんなに簡単にいくのだろうかと一抹の不安はどこかにあった。

 名誉の神殿から、少し歩いた場所にそこはあった。

「これより、いよいよガーゴイルの地へ赴く!」
「戦士とメイジの連携を怠るな!」
「では・・ゆくぞ!」
 傭兵隊隊長の号令のもと、せまい洞窟へと進んでいく部隊。 暗闇に灯されたトーチの明かりが洞窟を照らす。

 難なく洞窟を抜けることができた傭兵隊はガーゴイルの街に向かうため鉱山を後にしようとする。

「前方にゴーレム数体だ!」

 先頭付近を歩いていた戦士が叫ぶ。

「戦士は前衛へ!」
「メイジ達はブレードスピリットの詠唱を開始しろ!」

 続いて隊長の声が響く。

 俺を含めた戦士達は一斉にゴーレムの前に立ちふさがる。 ブレードスピリットを呼び出せるまで時間を稼ぐために。

ガインッ!

 ハルバードの刃から火花が散る。

「くぅ、相も変わらず・・硬いやつだな!」

 俺は若干痺れる手に力を込めハルバードを再び振るう。

「戦士、後退だ!」

 隊長からの号令が聞こえる。 ブレードスピリットの準備ができたのだろう。 戦士達も口々に後退を告げながら下がっていく。 そして、ゴーレムとの間に距離ができた時・・いくつもの剣の精がゴーレムのそばに現れる。

キンッ

 金属同士のぶつかり合う音が響く。 ゴーレムはゆっくりとブレードスピリットに向き直る。 生物ではないやつらに人間とブレードスピリットの区別はできない。 これで倒せる。 誰もがそう思っていた。

 ゴーレムは目の前のブレードスピリットにゆっくりと手を近づける。 そしてその手から光が放たれたかと思うと次の瞬間にはブレードスピリットの姿は消え去っていた。

「なっ!? 馬鹿な!」

 隊長は驚きの声を上げる。 部隊全体に動揺が走っている。 ブレードスピリットが消された。 ゴーレムにとって大きな弱点であったはず。 ゴーレムは新たに作り変えられ弱点を克服していたのだ。 信じられないといった表情のメイジ達は新たなブレードスピリットを唱える。 だが、それら全てをゴーレムは消していった。

「一筋縄では・・いかないってことか」

 そう呟くとゴーレムに向かって駆けすれ違いざまにハルバードを叩きつける。 それが合図であったかのように戦士達がゴーレムに向かっていく。

「くぅ・・仕方ない・・」
「メイジ達は戦士の支援にまわれ!」
「・・なんてことだ・・」

 この様子では、先行しているはずのメイジで組織された調査団は無事では済んではいまい。 急がなければ手遅れになる。 隊長もそれを案じていたのだろう。

「ゴーレムは弱らせるだけでもいい」
「できるだけ早く・・ガーゴイルの街に向かわなくてはならん!」

 そう言うと、部隊全体に強行突破を試みるため各自鉱山を突破せよと命令を下す。 もともと冒険者や一人で旅をしていた者が多くいる傭兵隊である。 多少の被害が出るかもしれないが当初の作戦に意味がなくなり、調査団の元に急がなくてはならない今はそれが出来ることの最善だった。

「鉱山を出た所の砂漠の入り口へ!」
「もしもの場合は、各自の判断で逃げろ!」
「無事を祈る!」

 ゴーレム達の動きが鈍くなったところで、そう告げられると部隊はそれぞれ散っていった。 個人行動に移った俺達の動きに、鈍くなっていたゴーレムは全く追いついてはいなかった。 途中、新たなゴーレムに遭遇するが認識される前にその横を一気にすり抜ける。

 数刻後、砂漠入り口。

「・・約半数か・・」

 砂漠の入り口までたどり着いたのは最初の人数の半分だった。 数人がゴーレムの手によって無残に潰されていたのが目撃されている。 そして、さらに数人はゴーレムの群れから逃れるため出口へと逃げていったらしい。

「・・時間だ」
「これ以上待っても仕方あるまい」
「調査団が心配だ・・行くぞ」

 隊長はそう言うと砂が多くなっている地面から立ち上がり進軍を促す。

 言葉が少なくなった部隊はガーゴイルの街へと向かう。 途中、この地に入り込んだ山賊に出会ったが多勢に無勢、難なく退ける。 ガーゴイルの街は目の前に見えていた。

 街の入り口に立ち、先行してたはずの調査隊を探す。 だが、その姿はどこにも見当たらない。

「おい・・これは戦いの後か?」

 一人の戦士が少し離れた場所で地面を指差す。 そこには多量の血が流れた後があった。 恐らくこの血を流した者は無事ではないだろう。 そして、その血は街の中へと続いていた。

「街のほうに逃げたのか・・?」
「街にはやつらが・・」

 そう、街には洗脳されたガーゴイル、コントローラーとそれに率いられたゴーレムがいる。 とてもではないが逃げれる場所などはない。

「街中を調査する!」
「少数の方が動きやすいだろう」
「誰か名乗りをあげてくれ!」

 数人から手が挙がる。 そして俺も手を挙げている。

「この街には一度入っている」
「少しなら内部はわかる」

 そう隊長に告げる。 そして、俺を含めた数人が選ばれる。

「いいか、調査隊さえ見つければいい。戦おうと思うな」
「そして、危なくなったら即撤退する」
「行くぞ・・無理はするなよ」

 そういうと調査隊を見つけるために部隊を残し、街への階段を慎重に昇っていく。

「あの血の乾き具合からすれば、1時間前後だろう」
「無事な者がいればいいが・・」

 隊長はそう言いながら剣を鞘から引き抜く。 俺もいつでも対応できるように体勢を整える。

「血はあの建物の中に続いているな・・」
「罠かもしれん・・注意しろ」

 建物の中にゆっくりと足を踏み入れていく。

 中は薄暗く窓から差し込む光でなんとか見通せる程度だった。 血の後は転々と建物の奥に続いている。

「!」

 人が壁に背を預けた形で座っているように見える。 隊長が駆け寄るが首を振る。 死体は調査隊の一人だった。 鋭利な刃物で肩から切り裂かれている。

 鋭利な刃物・・? 俺の頭に違和感が浮かぶ。 しかし、それははっきりと形にならない。

ガタッ

 背後で突然の物音。 全員が武器を構え振り向く。 そこには一人の男が立っていた。

「は・・・はやく・・」

 その男は何かを話そうとしている。

「よかった無事だったか! 他の調査隊のメンバーは・・」

 同時に隊長もその男に向かって話し掛けていた。 そして、男が次に発した言葉にその場は凍りついた。

「はやく・・逃げろ・・」
「調査隊は・・私を除いて全滅・・」
「やつら・・は・・」
「あのガー・・ゴイルは」
「破壊を・・・・」

 そう言うと男は膝から地面に倒れた。 背中に大きな傷痕があった。 これもまた刃物で切られたような痕だった。

 刃物・・・そうだ・・、俺はここで刃物を持ったやつらを見てはいない。 ゴーレムにしてもコントローラーにしても刃物を持っているのを見たことはない。 それが違和感だった。 そして最後のガーゴイルという言葉が気にかかる。

「全滅・・か・・」
「我々も撤退せねばならんな」
「もはや、作戦を実行できる状況ではなくなった」

 隊長がうつむいたまま言う。 慈愛の神殿側から来る部隊には撤退後すぐに使いを出すということを決めこの街から去ることになった。

 街から出るために階段を降り始めた時、前方で戦いの音が響いているのに気がついた。 俺達は顔を見合わせ一気に階段を降りようとする。 だが、その目の前に奴らは降り立った。

 ガーゴイルが二人・・俺達の目の前にいる。 手足には鎖がない。 そして手に斧を持っている。

「・・・こいつらは」

 武器を構えながら間合いを計る。 鎖がないのを見て俺は話掛ける。

「お前たちは・・奴らに操られていないのか?」

 ガーゴイルの表情は以前のガーゴイルと変わることがなかった。 自分の意思が感じられない・・ やはり操られているか。

「調査隊を襲ったのは・・こいつらか!」

 隊長は剣をガーゴイルに向けて間合いを詰めていく。 階段の上でバランスが取りにくい。 最悪の事態に備え、俺達もガーゴイルに近づいていった。

「はぁ!」

 隊長が気合の声を上げ一人のガーゴイルに切りかかる。 ガーゴイルもまた斧を振りかざし切りかかった。 お互いに負った傷は軽いものだった。 ガーゴイルは魔法を唱え始める。 鎖から放たれたガーゴイルは押さえ込まれていた魔力を解き放つ。

「隊長、こいつらを相手にする暇はない」
「急いで下の部隊と合流して脱出しないと!」

 隊長は、一瞬考えたあと「そうしよう」と答える。 俺はその言葉を聞き、扇動の曲を奏ではじめた。 効いてくれよ・・ 心でそう願う。 その心配をよそにガーゴイルは扇動の影響下に落ちる。 意思がないから・・付け入る隙があったということか。 そう思いながら階段を降り始めた。

 階段を降り切って部隊の待つ場所にたどり着いた時、信じがたい光景を目の前にする。 人の2倍はあろうかという巨大な体を持つガーゴイルが巨大な斧で人間を切りつけている。

「なんだ・・あいつは・・」

 巨大なガーゴイルによって部隊はほぼ全滅状態だった。

「なんということだ・・・!」
「敵は・・ガーゴイルをも強化していたとは・・」

 なにもかもが計算違いだった。 ブレードスピリットの効かないゴーレム。 凶悪なガーゴイル。

「メイジはパラライズフィールドを!」
「その巨大な奴が動けなくなったら一気に脱出する!」
「比較的安全な慈悲の神殿方面に向かう為、南に走れ!!」

 その言葉と同時にメイジがパラライズフィールドを唱える。 ガーゴイルを牽制する戦士はタイミングを計りながら間合いに注意している。 二つ、三つとガーゴイルを囲むようにパラライズフィールドが展開される。 それに触れたガーゴイルは身体の自由を奪われ何かを口走っている。 意味はわからなかったが・・恐らくガーゴイル語なのだろうか。

 一斉に南に向けて駆け出した生き残った傭兵達が走り出した。 俺は巨大なガーゴイルの戦った跡を見て思う。 その力、魔法・・その斧で切りつけられて傭兵は身体を吹き飛ばされ、まさに破壊されたと形容されるだろう・・。

戦いは終わらない。見え始めた勝利への道は再び闇の中へ・・


関連情報&Item


新たにBS・EVをディスペルするようになったゴーレムより獲得できる。
細工スキルで反応があるが・・今はまだどうにもできない。いずれ・・


「デーモンのように戦う鎧を身に纏った巨大なガーゴイルが生まれたという話を聞いた!」
そう、そのガーゴイルの強さはまさに悪魔のようだ・・


斧を構えた使役ガーゴイル。
鎖から解き放たれ魔法を駆使する。
魔法で攻撃すると手にもつ斧を投げつける。


悪魔のような強さを持つガーゴイル。
破壊者という名前に恥じぬ強さを持つ。


今回の話にはでなかったが、巨大建造物の回りに
4つのジェネレーターが存在するようになった。 これの意味はいったい?