ガーゴイル族の危機

パワークリスタルの鈍い輝きが、ニスタル(Nystul)の薄暗い研究
室中に光を散りばめ、様々なガラスの実験器具がその光を映し
出している。研究室の窓から入る月の明かりが彼を優しく包みこ
んでいるかのようであった。その年老いたメイジが気だるそうに腰
掛けると、パワークリスタルの微かな紫の明かりは、彼の顔の心
労から来るしわを、より深くしていくようにも見えた。かなりの時が
経過したようだった。彼の助手をある会議を召集するために遣わ
したのだが…。太陽がとっくに暮れてもその姿を見せることなく、
蝋燭はすでに捏ねた蝋の塊と化していた。その間ずっと、彼はク
リスタルを眺めながら、研究室のテーブルを殆ど離れてはいなか
った。

第5章-エクソダスからの解放-

調査報告:FATE - Guild TKR

 ブリテンの街を歩く。 ガーゴイルの地の調査から帰ってきたばかりの俺は情報収集の為にブリテンに立ち寄っていた。

 ガーゴイルの地での戦いにどれほどの時間を費やしただろうか。 多くの冒険者達の情報も大きな成果はなく、未だにガーゴイルを洗脳から解放する手段は見えていない。

「おらおら!どいたどいたー!」

 職人風の屈強な男達がその肩に鉄の入った袋を担ぎ駆けて行く。 よくよく周りを見渡せば、その鞄にインゴットを詰めた商人や、ゴーレムの部品を持った冒険者が皆、ひとつの場所に向かって歩いていることに気がついた。 その方向をゆっくりと見上げる。 そこに秩序の象徴であるブリテン城はあった。

「何かあったのか・・?」

 疑問に思いながら近くを通りかかった商人に訊ねてみることにする。

「ああ、ニスタル様が資材を集めてるんだがな」
「なんでも、ガーゴイルをエクソなんたらから救う方法を見つけたんだそうだ」

「なんだって!?」

 ニスタル。 ロード・ブリティッシュに仕える宮廷魔術師の長。 その知識を使い、ロード・ブリティッシュに変わり様々な難題を解決してきた人物である。

 俺は、ブリテン城に向かって駆けて行く。 城門は人と資材の山になっていた。 遠くからその中庭の様子を伺う。 そこには職人によって徐々に出来上がっていく塔の姿があった。

 ニスタルはその近くにいるらしいのだが近づくには人が多すぎた。 まだまだ資材は足りないらしい。 戦士である俺は、ゴーレムの部品やパワークリスタルを手に入れる為に戦いに赴くことになる。

そして・・・数日の後に塔は完成したのだった。


 塔が完成したのを俺は何度目かのパワークリスタルを運んでる時に耳にした。

 ニスタルは語った。 この塔の力によってエクソダスがブリタニアの地に埋められたタワーが現れるはずらしい。 力が効力を発揮するまで数日を必要とするため、冒険者達は一時の休息を得る事ができた。

 ガーゴイルを救う手段。

それはニスタルが助けを求めたガーゴイルからの情報と冒険者達からの情報、そしてパワークリスタルの研究結果から導き出されたものらしい。

 ガーゴイル達を洗脳した力はイルシェナーのガーゴイルの地に作られたエクソダスダンジョン内の装置が動力となっているらしい。 それを破壊すれば良いわけだが・・事は簡単ではない。 それを守る為のバリアが張られているのだ。 内部に通じる通路に張られたバリアは非常に強力なエネルギーの供給を受けているらしく幾度かの調査の時にも解除できず内部に入ることはできずにいた。

 しかし、ニスタルのパワークリスタルの研究でその力の源が発見された。

 それはパワージェネレーター。 この装置はゴーレムのパワークリスタルに力を与えるだけではなく、ブリタニアから力をエネルギータワーを通じてイルシェナーに運び、バリアのエネルギーとして使われていたのだった。 もしかすると、ゴーレムのパワークリスタルからも冒険者の魔法や攻撃の力も送られていたのかもしれない・・。

 そして、ニスタルが作り出した塔はこのエネルギータワーへの供給を遮断する。 そうすれば直接エネルギーを得るため、エネルギータワーが浮上するということらしい。

 そして、この塔を破壊することでバリアに力は供給されなくなりエクソダスダンジョンへと進入することが可能となり、洗脳の為の装置を破壊することができるというわけだ。

 数日後・・

ズズズズ・・・

 ニスタルの考え通り、エネルギーの供給が止まったことで、エネルギータワーは直接エネルギーを得るためにその姿をブリタニアの各地に表していた。 そして冒険者達は各タワーを破壊する為にブリタニアを駆けまわる。

 エネルギータワーの破壊には物理攻撃や魔法では不可能なようだった。 それは結果としてそれらの力をバリアへエネルギーを供給することにもなる。 破壊の為にはパワージェネレーターと同様に装置を操作しなければならなかった。 それは難解なパズルのように入り組まれた装置で冒険者は頭を悩ませる。 街から学者を呼び寄せたりしながら各所で解除が行われていた。

 全てのタワーは破壊され、これでエクソダスダンジョンに進入できるはず。 そう思ったがすでに送られたエネルギーを消費しなければバリアは消えないらしい。

 再び休息の時は訪れた。 しかし、解放の為にイルシェナーの地では戦いになるだろうと誰もが思う。 今はその時の為に休息を・・・


 数日後の早朝、準備を済ませた俺はブリテン城に向けて馬を走らせる。

 ガーゴイルを解放する為、エクソダスダンジョンに突入する傭兵部隊に参加することに決まっていた。 エクソダスダンジョンには何が待ちうけているのか・・。 そして・・エクソダスという存在との戦いになるのだろうか・・。

 静かに呼吸を整える。

 イルシェナーのガーゴイルの地。 エクソダスダンジョンに突入する部隊がその時を待っていた。 俺のいる傭兵部隊に任された任務は装置破壊部隊の援護と敵の排除である。 エクソダス・オーバーシーアとの戦いでは戦士・魔法使いが混在する傭兵が適任だという判断らしい。

「激しい戦いとなろう・・」
「だが、エクソダスは追い詰められている」
「勝利は目前にある!」

「いざ出陣! 徳の加護を!」

 傭兵部隊の隊長の号令に傭兵達は沸き上がり、戦いの場へ馬は駆け出していく。

 まずは、装置破壊部隊の進入経路の確保が必要だった。

 エクソダスダンジョンのあるタワーにはこの戦いに備える。 コントローラー達がゴーレムの配置を終え待ち構えていた。

 部隊はタワーの見渡せる場所でその歩みを止める。

 コントローラーの軍と傭兵隊が互いに向かい合う。

「いざ!!」

 隊長の号令と共に、大きく息を吸い込み、吐き出すように気合の声を上げ両軍はぶつかり合う。 

 相手を殲滅させる必要はない。 ダンジョンへの入り口に向けて大地に釘を穿つように面に対して点を突く。 コントローラー達の軍勢は迎え撃つようにゴーレムをけしかける。

 傭兵部隊の突撃によってコントローラー達の軍勢は二分されていた。 そして面にできた穴はその傷跡を広げるように傭兵部隊が雪崩れ込んでくる。 その間を縫って内部へ突撃する傭兵部隊と装置破壊部隊が敵の増援・内部への侵入を阻止する部隊を残し駆け抜けて行く。

 タワー内部に侵入しコントローラーが防御を固める場所に向けて突撃する。 俺はゴーレムの拳を交わし、エクソダスダンジョンへの入り口を探していた。

「あれは・・?」

 コントローラー達が守っていた場所から僅かだが力の流れを感じた。

「テレポーター?」

 傭兵部隊の手によってタワー内部のコントローラー達は壊滅状態になっていた。 散開していた傭兵達はテレポーターの近くに集まる。

「この先に何があるかわからん」
「さあ、覚悟を決めよ!」

 テレポーターへと雪崩れ込む傭兵達。 ガーゴイルを解放するための最後の戦いが始まる。

 突入した先で俺の真横を巨大な腕が通過する。

「なにっ!?」

 その腕の主を見上げる。 その姿は初めて見る物だった。 鎌のようなその腕と槍のような腕。 俺はハルバードを振り上げる。

ギィン! パリパリ・・

 ハルバードの刃はその身体には届かない。

「こいつ・・エクソダス・オーバーシーアと同じ!?」

 戦士の攻撃は全て無効化される。 傭兵達は一時的に混乱に陥っていた。 しかし冒険者としての経験で冷静さを取り戻して行く。 戦士達が壁になり魔法使いを守る。 そして魔法使い達は魔法による攻撃を繰返す。

 やがて、物理的な攻撃を弾く壁は魔法を弾く壁に変わり、その時を待っていた戦士達は一斉に攻撃していた。

 体勢を整えた傭兵隊は装置破壊部隊を守りながら奥へと進む。

「これは・・」

 奥に通じる通路にエネルギーの壁が張られていた。 装置破壊部隊はこのバリアの解除を試みるがエネルギーの供給源を絶たねば解除できないという結論に達する。

「供給源はどこなのだ・・」

 そう誰かが呟いた次の瞬間。

ズンッ、ズンッ・・

 その巨大な何かが姿を現したのだった。

「嘘だろ・・」

 先ほど倒した物とは一回りどころではない巨大さ。 その見た目に気負わされる。

「いくら巨体だろうがさっきのやつと同じだ!!」

 誰かがそう言ったのを合図に魔法使い達の魔法が放たれる。 だが、その巨大な物はさっきの物とは比べ物にならない強さを発揮する。

「攻撃が激しすぎる・・これでは戦士達が持たないぞ・・」

 戦士の壁に苦しさが現れたころ、ようやく魔力無効の壁に切り替わる。 魔法使い達は戦士達を癒したりサポートに徹する。 そして巨大な物は完全に停止した。

「まさか、こいつがエクソダスとか言うんじゃないだろうな・・」

 そんなことを呟いていると・・。

「バリアが一つ解除されたぞ!!」

 奥からそんな声が届いてきた。 一つ? この巨大なやつを倒したからか・・? だとすると・・あと何体存在するんだ・・ 嫌な予感は現実であることを背後から聞こえる足音で感じた。

 激しい戦いを数度繰返す。 その途中、コントローラーの手記を発見する。 そして、あの巨大な物達がミニオンと呼ばれるていることを知った。

 俺達は、ミニオンと巨大なミニオンロードとの苦しい戦いを終え、奥の部屋にたどり着いていた。 装置破壊部隊にいる学者達がその装置を丹念に調べて行く。 装置を操作する音が幾度か聞こえた後に、装置はゆっくりとその動作を止めていった。

 完全に装置は沈黙する。 終わったのか?

「我らの勝利だ!」
「これでガーゴイル達は救われた!」
「帰還するぞ!!」

 エクソダス・ダンジョンを脱出した傭兵部隊は、タワー出口を守っていた部隊と合流する。 コントローラー達の戦力は明らかに弱体化していて、退避は容易だった。 全部隊はブリテンに集結していた。

「ニスタル様から報告があった!」
「ガーゴイルシティがエクソダスより解放されたのだ!」

 その声に沸立つ傭兵達。 街の住人もまたそのその報告を素直に喜んでいた。

「だが、ひとつ残念な話もある」

「すでに改造され洗脳が終わってしまったガーゴイル達は」
「洗脳が解けることはない・・」

「次に解放されたガーゴイル達からの報だ」

『我ら一族の危機、救ってくれた事に感謝する』
『我らの都市を人間達に開放する故、いつでも立ち寄ること、我等歓迎する』
『我等の技術、汝らに提供すること約束する』



 俺は、傭兵部隊の解散後、酒場にやってきていた。

「たしかに・・ガーゴイルは救えたぞ・・」
「だが、エクソダスってのは一体何者なんだ?」

 隣に座る同じ傭兵部隊にいた戦士に話かける。

「さあな・・。 よほど臆病なのか、用心深いのか」
「その姿を見た者がいないというのが気に食わんよ」

 戦士は忌々しそうに言葉を吐き出し、天井を仰ぎ見る。

「そう・・エクソダスが本当に存在するのかでさえ俺達は知らない・・」

 そう言って俺はグラスに僅かに残る酒を飲み乾し、ため息をついた。

「いつかその姿を現すかもしれない・・その時を待つしかあるまい」

 天井を見上げていた戦士は、その視線をゆっくりとカウンターに戻し、エール酒のボトルを手に取り二人分のグラスに注ぐ。

「・・そうだな」
「ともかく・・だ」
「勝利とガーゴイルの解放に乾杯といこうか」

チィン

酒場に祝福の音は鳴り響く。

エクソダスとは一体なんなのだろうか・・。 まだ見ぬその姿に不吉な予感を感じた・・


関連情報&Item


ブリテン王宮、宮廷魔術師のNystul。
数々の危機をその知恵で救ってきた人物である。


ブリテン城に設定された装置。
これを作成するためには多くの資材が必要となった。
Iron Ingot x 100,000
Shadow Ingot x 50,000
clockwork assembly x 250
power crystal x 100
ギア x 5000
宝石 x 5000


 設置された装置によって地上に姿を現したエネルギータワー


 装置を破壊する為にはこのようなパズルを解く必要があった。


エクソダス・ダンジョンの最奥の部屋にある装置。
これを解除することでガーゴイル達は解放された。
だが、改造されたガーゴイル達はもう戻ることはない・・


解放後のガーゴイル・シティはガードである
ガーゴイル・デストロイヤーにより守られ
イルシェナーにおいて唯一の安全な場所となっている。
街は完全に機能し、ガーゴイルの技術の教えを請う事もできる。
ガラス細工・石材加工技術を習得する為には
素材確保・加工ともに高度な技術力が必要である。


エクソダス・ミニオン。
エクソダス・オーバーシーアと同様に物理攻撃無効の力を持っている。
魔法による一定ダメージで魔法攻撃無効になり、物理攻撃が有効となる。