魔界の門

1  2  3  4 

登場人物

FATE:
扇動の曲を得意とする剣士。 ヒーラーとしての実力も高く魔術もある程度ならこなせる。 その反面、魔法の抵抗力が極端に低いという弱点も・・

Alice:
FATEとは昔からの仲間でドラゴンテイマー。 自身の戦闘能力は高くはないがそれを補って余りある力を支配下に置く。


第1章-魔界の門-

-1-

 背の高い、熱帯の木々が生い茂る密林を駆けぬける。 目指すは火の島にある邪悪な神殿、デーモン神殿。

 何かが起こっている。その何かを確かめるために。

 Aliceの出したMoongateを抜けたFATEはデーモン神殿へと駆けていた。 いつものモンスター討伐とは違った緊張感、そして高揚感がある。 冷静にならなければ戦場では生きていけない。 そう分かっていながらも押さえきれずにいる。

 先を走るAliceがふと立ち止まる。

「見えた! ほら神殿が見えるよ」

 木々の間から確かに巨大な石造りの建築物が見える。 そこから見る神殿は不思議な雰囲気を持っていた・・ 目的地が見えたことで緊張感がより増していく気がする。

 そして神殿を目指して再び駆け出す二人。

 熱帯の植物に囲まれて周りの様子はわかりずらい。 だからこそ、近くに何かがいてもわかりづらかったのだろう。 突然その目の前に巨大な生物が姿を現す!

「デ、デーモン!」

 一瞬、あまりの唐突さに呆然としてしまう。 デーモンは唸り声を出しながらゆっくりと近づいてくる。

ぶんっ!

 デーモンは巨大な腕を振り上げFATEに殴りかかる!

「FATE!!」

 Aliceの声で我に返り、辛うじて攻撃をよけるがバランスを崩し倒れてしまった。

 そして、そこにデーモンの足が襲いかかってくる。

「An Ex Por!」

 目の前でデーモンの動きが止まる。 あと一瞬遅ければデーモンの蹴りをまともに受けていたところでAliceのパラライズの魔法がデーモンの身体の自由を奪う!

「すまん!」

「大丈夫? 先が思いやられるなぁ」

「む・・油断しただけだ」

「ほんと?クスクス」

「下位デーモン1匹なら遅れはとらないって・・
それよりパラライズの効果が切れそうだ・・いくぞ!」

 Aliceの援護で体勢を直し愛用のハルバートを構える。

「っりゃぁ!」

「Corp Por!」

 FATEのハルバートの一撃と、Aliceのエナジーボルトの魔法がほぼ同時にデーモンを襲う。 傷ついた際にパラライズの解けたデーモンは怒り狂いFATEに向かってフレイムストライクの魔法を投げかける。

「ぐっ!」

 魔法に対して抵抗力の弱いFATEはまともにその炎を浴びてしまった。 致命傷にはならなかったがそれでも大きなダメージになる。 一歩引くべきか?

「In Vas Mani!」

 Aliceがグレーターヒールを唱えるのも聞き、そのままFATEはデーモンに斬りかかる!

ざくっ!

 ハルバートの鋭い一撃がデーモンの身体に切り刻まれる。 同時にデーモンが追い撃ちをかけようとするが、その直前FATEの身体の傷は癒されていた。

どがっ!

 デーモンの攻撃を受けながらの一撃! そして確かな手応え!

グオォォ・・

 唸り声を上げながら倒れていく巨体。 倒れたデーモンに最後の止めをさす。 相手はデーモン・・ 念には念を入れておかなければならない。

▲Top

-2-

 デーモンの死体を確認した後、再びデーモン神殿へと駆けて行く。

 運良くその後はモンスターと遭遇することなく神殿の入り口へとたどり着いた。 奥から響いてくる音を聞く。すでに中では戦闘が始まっているようだった。 先発隊の勇者達とデーモンの戦闘である。

 中に入り奥へと進んで行き祭壇を目指す。 ムッとする熱気に一瞬のどが詰まってしまう。 火の島は名前のとおり溶岩の溜まった場所があるのだが、デーモン神殿内にも同様に溶岩を間近に見ることが出きる。 その光景は訪れる者の目に禍禍しい赤い輝きを焼き付けていく。

 祭壇への道は、すでに勇者達によって確保されていて難なく祭壇の前に着く。

「たしかここに生贄のアンクが・・」

「聞いたとおり壊れて無くなってるね・・」

 あたりを見まわすが、このあたりはすでに勇者達によって静けさを取り戻していた。

・・

「ん?」

 わずかな地響き。 どこかで大きな物が倒れたような音がする。

「今のは・・この下でか?」

「そうみたいね」

 音のした場所を目指して階段を駆け下りる。 ここに集まってきていた勇者達もその音をさすがに聞きつけたらしく同じく駆けて行く。

 階下にある扉を開き中に飛び込む。 そこに広がっていたのはかつて経験をしたことのない戦場だった。

 そこには多くの勇者達。 噂で聞いたことのある勇者の姿もあった。 そして、多数のデーモン達。 その奥から現れたもの・・黒い巨体を持つ上位デーモン。 ブリタニアでこの生物に出会ったならば残るものは死という恐怖の象徴として語られる最強の怪物である。

「すごい・・ドラゴンを連れてたほうがよかったかしら・・」

「だな・・だが今は持てる力で戦うしかない」

 FATEとAliceはあまりの戦いの壮絶さに戸惑いを隠せずにいた。 目の前に広がるのは名だたる勇者達の戦いと、戦いに敗れた者達の亡骸・・ 一瞬判断を誤れば新たな亡骸に加わるのは自分達かもしれないというリアルな感覚。

 自分達の状況をよく把握できていなかった。 ふと背後に気配を感じた次の瞬間デーモンの腕がAliceに迫っていた。

「Alice!!後ろだっ!!」

「え? あぐっ!」

 まともに不意打ちを受けたAliceが倒れ込む!

「くっ!こっちだデーモン!!」

 Aliceからデーモンを引き離すために扇動の曲を響かせる。 相手は・・FATE自身。

グルル・・

 失敗して相手を怒らせてもよかったが見事に効果を発揮したらしい。 デーモンはこちらに向き直り間合いを詰めてくる。

 しかし、この場の戦いにおいて相手は1匹ではなかったのだ・・

 背中に突然痛みを感じる。

「ぐぅ・・エナジーボルトだと・・?」

 振り返った後ろにはデーモンが迫っていた。

 扇動の曲を奏でる余裕はない。

「くっ、もう駄目なのか・・?」

 そう思った直後・・

「Kal Vas Flam!!」

 目の前のデーモンの身体に炎が立ち昇る。 続けざまに剣士が切りつける。

 1匹がこの攻撃で地面に倒れる。 それを見た残りのデーモンが剣士に向かって歩き出す。 だが、剣士は盾を駆使しながらその攻撃をかわしては剣の一撃を見舞う!

「In Vas Mani」

 フレームストライクを放った魔道士らしい男が回復をしてくれる。

「大丈夫かい?」

「あ、ああ。・・Alice!」

 痛みがひいたことで、今の状況を思い出す。 倒れているAliceのそばにかけより状態を確認する。 どうやら強力な一撃で気を失っただけのようだ。

「・・・お連れのほうも大丈夫そうだね」

「ああ。助かった。すまない」

「気にするな。それより今はあの黒いのを倒さなければな」

「では、気をつけてな」

「ああ、そっちもな!」

 Aliceをヒーリングの能力で治療し、目を覚まさせこれまでの状況を話とさすがに青ざめた表情で間近に迫っていた死を感じずにはいられなかったようだ。

 その後、慎重に行動しながらデーモンを倒していくと残ったのは中央部分にいる黒いデーモンだけになったようだった。

 自分達の力量からその場所へは近寄りがたいものを感じていたが、残されたのがそこだけとなれば戦っている勇者達の援護をしなくてはと駆けていく。

 ブリタニア最強の生物。 その名に恥じない力で暴れつづけている。 こいつ1匹でさっきまでのデーモンの数以上の力があるのだろう・・ 恐怖を感じながら戦っているとすぐ近くになにかが見えた。

「Alice!あの黒い物・・なんだと思う?」

「黒い物? なんだか真の闇って感じで気味が悪いね・・」

「あの空間からこいつらが現れたらしいぞ」

 すぐ横で魔法を放った魔道士が答えてくれる。

「あの空間から・・?」

 あの空間はいったい・・そう考えていると、傷ついた黒デーモンは最後の力でその場から逃げようとしているところだった。

 いく人かの勇者達が「逃がすかっ!!」 「止めだ!」 と黒デーモンに挑みかかる。 しかし、それでも力は強大で勇者達も今だ苦戦を強いられている。

 黒デーモンに向かって飛び交う魔道士達の放つ魔法。 戦士達の一撃。 黒デーモンは大きな地響きをたてながら倒れていく。

 戦いが終わり、問題の黒い空間を調査することになる。 どうやら、王宮の調査団の1人Nadyaという女性の報告ではこの黒い空間は魔界と繋がる門であるということ、そして開かれた門からデーモン達が現れたということらしい。

 まだ、FATEはカヤの外にいるような気分だった。 俺はまだ傍観者なのか? 暗い気持ちがあふれてくる。 それでも事の真相を知りたくて耳を傾ける。

 魔界の門が開かれた原因は雷で壊されたアンクが影響しているらしい。 生贄のアンクは本来、魔界とつながるこの門を封印する力を持っており、それが破壊されたために魔界の門が開きデーモンが出てきたということだ。 さらに・・このまま放っておけばこの地が魔界に飲み込まれてしまうという事を!

 そして最後にNadyaは、この門を閉じるためにはアンクを修理する必要があり、ブリテンの町にいる細工士のVladならそのアンクを修復できるということを話し、探してほしいと依頼してきた。

▲Top

-3-

 ブリテンにいる細工士のVlad。 彼を探すため調査団と数人の勇者達を残してそれぞれブリテンの町に向かう勇者達。

 それに遅れまいと、Aliceにブリテンの町に行こうと話しかける。

「ブリテンの町は広いからな。手分けして捜そう」

「わかった。見つけたらコミュニケーション・クリスタルで連絡ね?」

「ああ。じゃあ先にいくぞ。 Kal Ort Por!」

 ふと、意識が遠くなる。 ブリタニアに存在する・・いや全ての世界にあるのかもしれないエセリアル虚空間を利用した移動の魔法。 ブリタニアではエセリアル虚空間に存在する第5の元素であるエセリアルという存在を体内に取り込みマナに変えることで魔法を使うことができる。 そのエセリアル虚空間は距離・時間さらには次元という概念でさえも越えることができるという。 当然大きな力が必要となるのだが。 いまだに謎の多い異次元空間である。

 次に眼を開いた時にはもう眼下にブリテンの町が広がっていた。 ブリタニア最大の都市。 ロード・ブリティッシュの城都だ。 初めてここに訪れた時はあまりの広さに驚き、自分のいる場所がよくわからなくなったものだった。

「しかし、どこにいるのだろう?」

 あても無くさ迷っていたのではキリがない。 Vladは細工士なのだろうから細工士ギルドに行けばいるかもしれないと駆けていく。

 細工士ギルドに着いたものの中には店員が1人いるだけだった。 店員も、Vladは大きな仕事が終わったので今日は休日にしたらしくどこにいるのかはわからない、という。

 仕事を終えた後の休日の人間が行きそうな場所・・

「酒が飲みたくなる・・か?」

 そう思ったFATEは酒場を目指していた。 仮にいなくても酒場なら何らかの情報を得られるかもしれない。 それは冒険者の基本である。

 1軒目にはそれらしい人物は見当たらない。 2軒目・・3軒目・・

「すまないが店長。Vladという細工士を知らないか?」

「ん〜? Vladさんならほれっ、そこで寝てるわい」

 店長の話の通り、細工士Vladは飲んだくれて熟睡していた。

 すでに数人の冒険者らしい人達がVladを起こそうとしていたがVladは聞こうともしない。

「Vladさん!起きてくれ!アンクを修理してほしいんだ!」

「ああ?うるせぇ! だぁってろ・・ZZZzzz・・」

 すっかり泥酔しているVlad。 とにかく見つけたことをAliceに伝える。

「彼がVladさんね?」

「ああ、そう・・なんだがな。見たとおりだ」

「・・・。Vladさ〜ん? 起きて♪」

 Aliceが甘えるような声で起こそうとする。

「ああ?誰だ?・・・」
「酒場にお嬢ちゃんみたいな子供はきちゃぁ・・いかんぞ?・・ヒック」

ピクッ「だ、誰が子供だぁぁ!!?」

「だぁ!Alice抑えろ。酔っ払いのたわ言だ」

「・・ZZZzzz・・」

「しかし、まいったな・・」

 あまり時間があるとは言えないこの状況。 泥酔したVladを連れていってもアンクを修理することなどできそうにもない。

「なぁなぁ、酔い止めを飲ませてみるかぃ?」

 同じようにVladを捜していたらしい勇者と言うよりどちらかと言えば山賊のような風貌の男が声をかけてくる。

「ああ、できればお願いしたいが・・」

「よし。じゃあ、ちょっとどきな」

「酔い止めを持ってるなんて用意がいいな」

「くくっ。なーに酒呑みの常備薬だよ」

 酔い止めを飲まされたVladはしばらくは、ぼーっとしていたが、

「むぅぅ・・ふぅ、すまねぇな」
「ちょっと悪酔いしたようだ」

 酔いの覚めたValdに今回のいきさつを話す。

「なるほど・・壊れたアンクを修理すればいいんだな?」
「よし、まかせろ。さくっと直してやるぜ」
「じゃあ、さっそく連れていってくれ」

 そして、再びデーモン神殿へとムーンゲートを開きVladを案内する。

▲Top

-4-

 デーモン神殿に着き、Vladを祭壇のアンクの場所に案内する。

「これだな?すぐ直してやろう」

 Vladが修理にとりかかる。 それを見守っていると階下でまた戦いの音が響いていた。 開いた魔界の扉から再びデーモンが現れているのだ。

 Vladを放っておくことはできないので数人の勇者達が階下に向かった後もVladの護衛をすることにするFATEとAlice達。

「よし、直ったぜ」
「これで魔界の門とやらも閉じられるだろう」

「おつかれさま。 さぁ我々も下に向かいましょう」

 階下ではすでに現れたデーモン達を倒し終わったところで、静けさを取り戻していた。

 しかし、魔界の門は開いたままだった。

「何故だ、アンクは元に戻ったというのに・・」

 Vladは信じられないというように絶句する。 そう、アンクを修復したことにより魔界の門は閉じられるはずだった。 しかし門は開かれたままだったのだ。

「ここは生贄のアンク・・生贄が必要だということでしょう」

 Nadyaはそう言うと魔界の門の目の前に歩いていく。

「皆さん、下がってください」

 まわりの勇者から動揺のざわめきが起こる。

「ねぇFATE・・Nadyaさん・・まさか・・」

「・・・その、まさか・・みたいだな」

 門の前に立ったNadyaはじっと魔界の門を見つめ、ふっと勇者達に向き直る。

「短い間でしたが、貴方達と共に戦えた事を誇りに思います」
「お別れです、さようなら...Corp Por」

ごうっ

 Nadyaの身体に強力な力が襲いかかる。 その瞬間Nadyaを中心に眩い光があふれる! そして光が徐々に薄れて慣れてきた目に移ったものはNadyaの亡骸だけだった。

 目の前に開かれていた暗黒の魔界の門は閉じられた。

「俺の仕事は終わったな」
「ブリテンに連れていってくれ」

 魔道士のムーンゲートを通って細工士のVladは帰路に着く。 そして、勇者達も1人また1人・・

 静かになっていくデーモン神殿でFATEとAliceはNadyaの亡骸を見つめていた。

 ただ、魔物を討伐するというだけではない戦い。 その凄まじさ。 そして悲しさ。 自分達は果たして生きていくことはできるのだろうか。

「Alice・・帰ろう」

「うん・・」

 やがてデーモン神殿に木々のざわめきが聞こえてくる静寂が訪れた。

 魔界の門はNadyaの生贄という犠牲を伴なって閉じられた。

 しかしこれが始まりでしかなかったことをブリタニアの民は後に知ることとなる・・

Next Story..

index -Story of...-