邪悪な魂・・予兆(後編)

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登場人物

FATE:
扇動の曲を得意とする剣士。 ヒーラーとしての実力も高く魔術もある程度ならこなせる。 その反面、魔法の抵抗力が極端に低いという弱点も・・

Alice:
FATEとは昔からの仲間でドラゴンテイマー。 自身の戦闘能力は高くはないがそれを補って余りある力を支配下に置く。

Alucard:
魔道士。 デーモンテンプル内でFATE・Aliceを助け、ブリテンの街で再会した後パーティに加わる。 過去のゴルモアとの戦いを経験し生き残った人物である。


第2章-邪悪な魂・・予兆(後編)-

-1-

 ダンジョンHythloth。 それは火の島に存在する。 ブリタニアで最も魔界に近い場所にあるダンジョン。 そのためダンジョン内は魔界の影響を大きく受け、デーモンなど魔界の生物が多く生まれてくる。

 FATE達の一行はMoongateでHythlothの地下2階へとたどり着いていた。 すぐ下の階では上位デーモンである通称黒デーモン多数が暴れていて非常に危険な場所になっている。 ちょうどその階のすぐ上にあるこの場所は冒険者達の多くが退避していた。

「さて・・どうしたものかな」

 どうにも上位デーモン相手では手に余る。 ブリタニア最強の生物に考えなしで突っ込めば結果は目に見えて明らかであろう。

「ねぇねぇ・・ドラゴン連れてこようか?」

「それは待ったほうがいい」
「いくらドラゴンといえど上位デーモン相手では」
「荷が重いんじゃないか?」

「そうだね・・」

「退避してきた冒険者に聞いたんだがね」
「2匹の上位デーモンが同じ場所で暴れているそうだ」
「FATE。わしの言いたいことがわかるね?」

 Alucardは意味深な笑顔をFATEに送る。 Aliceも意図に気がついたらしくFATEに笑顔を送る。

「だな・・バードの宿命というやつか」
「後ろの援護は頼んだぞ?」
「一瞬のミスで終わりだからな・・」

「その時は俺の骨を拾ってくれ・・」

 FATEは引きつった笑顔を二人に返す。 上位デーモンのそばまで行き扇動の詩を聞かさなければいけない。 一歩間違えば待ちうけるのは死である。 三人は覚悟を決める。 先ほどの冗談を言っていた顔はすでになくなっている。

 階段を駆け下りながらFATEは二人に話す

「目標は2匹の黒デーモンだ」
「一気に駆けぬけるぞ!」

「うん!」

「了解だ!」

 Hythlothの地下3階に降り立つ。 すぐ目の前には地獄の番犬といわれるヘルハウンドが待ち構えていた。 全身を炎で包むその身体、そして吐き出される炎の息に冒険者は犠牲となる。

 FATEは目もくれずヘルハウンドを避けようとする。 しかし、近づいてくる敵にヘルハウンドは気がつき襲いかかろうとする。 次の瞬間、FATEの手に持つハルバートの一閃がヘルハウンドを壁に叩きつけていた。 武器とは切りつけるだけではなく叩きつけることも有効な手段となることがある。 三人はその隙を突き一気に駆けぬけた。

 扉を抜けて駆けて行く一行は気がついていた。 そこに存在する冒険者の死体の数が増えていっていることにである。 三人は上位デーモンの存在を近くに感じ神経を集中する。

 奥から戦いの音が響く。 剣で切りつける音、大きな爆発音。 そして地獄から響いてくるような上位デーモン達の叫びである。

 戦況は明らかに勇者達が押されていた。 しかし、意外と人の数は多く上位デーモン達はそちらに気を取られている。

「このチャンスを逃す手はないな」
「背中をまかせたぞ!」

 FATEは扇動を試みようとする。 上位デーモンの片方がFATEの存在に気がつき迫ってくる! しかし、寸でのところで扇動はうまく効果を発揮し目の前まで迫っていた上位デーモンは向きを変えもう片方のデーモンに襲いかかった。 周りの戦士たちは一瞬なにが起こったのかわからず唖然としていたが、すぐに状況を把握し攻撃に転じる。 体勢を立て直した勇者達は一気に勝負を決めにいく。 すでにこの戦いは勝者は決まっていた。

-2-

(こ・・古代竜が!!)
(Destard の地下3階で古代竜多数!!)

「なっ!?」
「まさか・・」

 驚愕の報告を聞く一行。 どういうことか全くわからない・・

(Wrongではオーガ ロードの群れがいます!)

(Deceitも危険だ気をつけろ!)

 流れてくる情報。 その全てが驚きだった。 このブリタニアでいったいなにが起こっている・・いや起ころうとしているのだろう・・。

 混乱の中で、時間だけがただ過ぎて行った。 その間にも新たな上位デーモンが現れる。 FATE達は激しい戦いに疲れきっていた。 しかし、モンスター達は突如その場所からいなくなっていた。 何かから逃げるように。 終わった? 違う・・。 なんとも言えない嫌な空気が辺りを漂う。

 Alucardはこの空気の感覚に覚えがあった。 だがはっきりと思い出せない。 身体全体が思い出すのを拒否しているかのように・・。

 寒気を感じる。 邪悪な気配。 それはこの場所にいる全ての勇者達が感じ取ったようだ。

 奥にある魔方陣を中心にして流れ出してくる気配。 徐々に周りの空気が重くなる。 邪悪な気配が膨れ上がる。 そして・・・

 目の前に半透明な身体を持った何かがいた。 恐らくは幽体だろう。 しかし霊能力の全くないFATEたちにもはっきりと感じられる。 強大な気配。

「ば・・・ばかな・・」

 それを見てAlucardは身体を震わせていた。

「Alucard?」

 その様子に気がついたFATEはAlucardの名を呼ぶがAlucardはただ呆然としていた。

「そんなはずはない!」

「きさまは・・きさまは封印されたはずだ!」

 その様子に気がついた周りの勇者の数人が幽体を見て身体を震わせる。

「なぜっ! きさまがここにいる!」
「ゴルモア!!」

 周りが凍りつくのを感じる。 ブリタニアを闇に陥れようとした皇帝ゴルモア。 その名前を知らないものはない。 その幽体から感じられる邪悪な力にのどが焼けつくような感覚を覚える。

 ふと、幽体は姿を消す。 その瞬間周りの空気は一変し邪悪な気配は薄れていった。

「Alucard・・大丈夫か?」

「Alucard・・」

「・・・すまない」
「取り乱してしまったな」

「あの姿は間違いなくゴルモアだ・・」
「過去の戦いで見た姿となんら変わりのない・・」

「なぜ・・」
「やつはデーモンテンプルで魔界に封印したはず・・」

「あっ・・」

 三人はお互いの顔を見合わせる。

「魔界の・・門?」

「そうか・・あの時・・」

「そうだな・・」
「あの時だろう」

「魔界の門が開いたその隙をついて・・」

「ちょっと・・いいかな?」

 一人の魔道士らしき男が声をかけてくる。

「あ、ああ」

「私は・・霊能力を身につけているのだが・・」
「あの幽体・・ゴルモアの言葉を聞いた・・」

「!」
「やつは何を!?」

「ゴルモアは・・」

『余の身体はどこだ・・』
『どこにあるのだ!!』

「そう言っていた・・」

「か・・身体・・」
「復活しようとしているのか・・?」

「でっ・・でも、身体は封印した時に無くなったんじゃないの?」

「・・あいつがほんとうにゴルモアなのなら・・」
「油断はできん」

 Alucardは先ほどまでゴルモアの幽体が存在していた場所を見つめていた。 FATEはとにかくこのことを他の勇者達に知らせなくてはと意識をエセリアル虚空間に向ける。

(Hythlothの地下3階・・魔方陣にてゴルモアの幽体が出現した)
(もういなくなってしまったのだが・・)

(De・・Destardだ・・こちらでも今・・ゴルモアを確認したぞ!)
(ああっ!・・姿を消してしまった・・)

 返ってきた言葉にFATEは驚愕する。 Alucardは静かにその言葉を聞き入れている。

(Deceitだ! ゴルモアが現れた!)
(・・なっ?身体?身体を求めているのか?)

(Wrong・・こちらでも確認!)
(やつは身体を求めてブリタニアをさまよっている!)

 次々と聞こえてくる言葉。 まわりは混乱していた。

「・・とにかくだ・・」
「やつは身体を求めている・・」

「やつに身体を渡すわけにはいかない・・」
「やつより先に身体を見つけ出し復活を阻止しなくては!」

 いつしかダンジョンは静けさを取り戻していた。 あれほどいたモンスターの群れも見当たらない。 ゴルモアの・・魔界の力に影響されてモンスター達が暴れていたのだろうか・・。

-3-

 一行はブリテンの街へ帰還していた。 タウンクライヤーはすでにダンジョンが落ちついたことを街の人々に知らせている。 ゴルモアのことについては知らされていないのだろうか、それについては触れられてはいなかった。 少なくとも・・今知らせることは混乱を招くだけだから、それが正しいのかもしれない。

「ゴルモア・・か・・」

 FATEにとって勇者への夢のきっかけとなった事件・・・そのゴルモアが復活しようとしている。 そのことに恐怖を覚えると共にどこか期待しているような気もする。 FATEは頭を振ってそれを否定する。 だが沸きあがる興奮を押さえきれずにいた。

「FATE。わしは少し調査に出ようと思う」
「だから今回はここで解散ということにしよう」

「やつの・・身体か?」

「うむ」

「そうか・・だが気をつけろよ」
「なにかあればすぐに連絡してくれ」

「そうだな」

「では、またな」

「気をつけてね」

 Alucardと別れた二人は沈黙のまま帰路へとついた。 これから起ころうとしていることに不安を抱きながら・・・。



 真夜中・・FATEは眠気に襲われベッドへと足を運ぼうとしていた。 ふと、エセリアル虚空間へ意識を飛ばしたままだったことを思い出す。 解除の言葉はなんだったか・・と頭をめぐらせ思い出す。

「An Wis ・・」

 途中まで詠唱したところでその声は響いてきた。

(誰か、まだこの声を聞けるものはいないか!?)

(どうしました・・?)

(この声は・・Alucardか? どうした?)

(やつだ・・やつの身体を発見したぞ!)

(なっ!!)

(ほんとうですか!? いっいったいどこに!)

(ゴルモアの身体が見つかっただと!?)

(Hythlothの地下3階にある小部屋を知っているか?)

(縦穴の部屋だ)
(ちょうど地下4階への入り口の近くの場所から入れる)

 Alucardからの言葉を聞きすぐにAliceを起こしてその場所へと向かう。

 Hythlothの地下3階にあるテレポーターを使い縦穴の部屋へと入るとすでに何人かがその場に到着していた。

「Alucard!」

「FATE、上だ!上を見てみろ」

 言葉通り頭上の縦穴を見つめる。 なにかぼんやりと輝いている物がある。 目を凝らしてじっと見つめる。 その姿は・・あの幽体と同じものだった。

「なぜ・・こんな場所に・・」

「わからん。だがなこの場所がどういう場所かを考えれば想像はつくぞ」
「この縦穴の先・・どこに行きつくと思う?」

「ここはデーモン神殿のアンクの真下に位置するそうだ」

「前の戦いでやつの魂は魔界へと落ちたようだが」
「その身体はこの世界に残ってしまったのかもしれない」

「そうだったのか・・」
「しかしあの身体はなぜ今まで誰にも気がつかれなかったんだ?」

「ついこの間までは輝いてなどいなかったはずだ」
「恐らくゴルモアの魂の出現と同調して輝き出したのだろう・・」

「これを・・これを奴に渡すわけにはいけない」

「あの身体を今のうちにどうにかすることはできないのか?」

「すでに試してみたんだがな」
「不可思議な結界のようなものが魔法を跳ね返してくる・・」
「恐らくは物理的な攻撃も効果がないだろう」

「ゴルモアにこの身体を見つけられる前に・・奴の魂を再び封じなければ・・」

 しかし、誰にもその方法はわからない。 ただ沈黙だけが辺りを覆う。 不気味に輝くゴルモアの身体。 魂と身体がそろってしまった。 ゴルモアの復活を阻止できるのだろうか・・。

ブリタニアを再び闇が覆いはじめようとている・・

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