闇の姿

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登場人物

FATE:
扇動の曲を得意とする剣士。 ヒーラーとしての実力も高く魔術もある程度ならこなせる。 その反面、魔法の抵抗力が極端に低いという弱点も・・

Alice:
FATEとは昔からの仲間でドラゴンテイマー。 自身の戦闘能力は高くはないがそれを補って余りある力を支配下に置く。

Alucard:
魔道士。 デーモンテンプル内でFATE・Aliceを助け、ブリテンの街で再会した後パーティに加わる。 過去のゴルモアとの戦いを経験し生き残った人物である。

Golmor:
魔界の皇帝。 かつてブリタニアを支配しようとしたが勇者達によって魂は魔界に、身体は地の底に封印される。 しかし、魔界の門が開いたのをきっかけに復活する・・

Eliezer:
Golmorの部下。 オーク・エティンなどの亜人種を配下に置く魔界の騎士。 騎士道精神を持ちGolmorにその命を捧げている。


第5章-魔界の者達-

-1-

「もう油断はしない・・」

 陣内のEliezerは呟く。

「閣下の為・・この命を賭けて使命をまっとうしよう」

 Eliezerは目を閉じ精神を集中する。 次の戦いに余すことなく力を出すために。

「Eliezer様。用意がまもなく整います」
「進撃の準備を・・」

「うむ」

「お前達は待機していろ」

「はっ・・」

 数刻が経ち、Eliezerはゆっくりと目を開ける。 集中することによって身体に溢れる邪悪なエーテル物質が力を与える。 時は来た。

「行くぞ・・閣下の命により・・その街、貰いうける!」

 Eliezerは立ち上がり周りに控える配下の魔物に号令を発する。

「進撃開始!」

 陣の内外から血に飢えた魔物の喜びの声が響いてきた。

-2-

 Eliezerの進撃の前日・・・。

 FATE・Alice・AlucardのパーティはNujel'mの酒場にいた。 酒場はEliezerとの戦いに勝利した事を祝う声が飛び交い賑わっている。 AliceがNujel'mの街に到着し、FATE達はEliezerとの戦いの話をしていた。

「へぇ、そんなことがあったんだ」

「ああ、Eliezerってやつがこう・・剣を振り下ろして来たのを」
「素早く身をかわしてハルバードでガツン!ってな」

「ええ? びびって逃げたとこに誰かが助けてくれたんじゃないの?」

「ばっ、なっなに言ってんだよ」

「あはは。焦ってる焦ってる。図星?図星?」

「違うって・・」

「・・・」

「ん?Alucardどうした? まさか、お前まで疑うか・・?」

「いや、なんだか解せなくてな」

「がーん・・目の前で見てたじゃないか・・」

「ん?あ、いやそうじゃない。Golmor軍のことだ」

「うん?」
「Eliezerってやつも倒したし、Golmorはやばいと思ったが」
「Golmor軍ってのは大したことはないんじゃないか?」

「そのEliezerのことなんだが・・」
「やつが倒れる前にやつの体内のマナが一瞬大きくなった気がしたんだ」
「だが、次の瞬間にはやつの身体からはマナが消失していた」

「最後のあがきってやつじゃないか?」

「ん・・そうか、そうだな」

 あちこちで乾杯の声が響きながら夜はふけて行く。 Eliezerを倒してから数日、Nujel'mの街中は喜びの宴があちらこちらで開かれている。 Golmorはまだいる。 だが一時でも勝利を祝い恐怖を忘れたかったから。 FATE達は宿に戻り、明日にはNujel'mを発とうと話す。 Aliceが着いたばかりなのにと文句を言っていたが勝利にいつまでも酔いしれているわけにはいかない。 いつ・・Golmorが現れるのか。 いまのブリタニアは脅威に晒されているのだから。

 夜が明ける。 早朝、荷物をまとめた一行は町の中心部へと足を運ぶ。 まだひとけの少ない道には連日の宴で飲み明かした冒険者が寝そべっていた。 タウンクライアーが横を通りすぎて行く。 街の情報屋に軽く挨拶をかわし銀行へと向かって行く。

 タウンクライアーの元に一人の男が駆けつける。 男はOclloの街からの使い。 タウンクライアーは男の言葉に驚愕する。 男はその場を去った時、タウンクライアーは自分がするべきことを忘れていた。 それほどタウンクライアーとして、いやNujel'mに住む人間としてショックな言葉だったからだ。 頭にさっきすれ違った冒険者の一行が思い浮かぶ。 タウンクライアーは自分の仕事を思い出した。

「さて、一度Britainに戻るか?」

「そうだな」

「Britainの酒場で情報収集だな」

 そんな話をしていた時、後ろからFATE達を呼びとめる声が聞こえてくる。 さっきすれ違ったタウンクライアーのようだった。

「はぁ・・はぁ・・」
「んくっ・・た・・大変だ・・」

「Oclloからの伝達だ・・」

「Ocllo郊外の西にGolmor軍と思われる魔物が多数集結中だ」
「そして・・その指揮を取るのはEliezer・・らしい」

「ば・・馬鹿な!」
「奴は確かに俺の目の前で倒れていった・・」

「・・・・」

「どういうことだ!?」

「わかりません・・私も聞き返したのですが・・」
「調査に行った者は一度Eliezerをこの街で見た事があり」
「たしかにOcllo西でEliezerを見たらしいのです」

「そんな・・」

「FATE、Oclloに向かうぞ」
「例えそれがEliezerであろうがなかろうが行かねばなるまい」

「どっちにしたところでもう一度倒してしまえばいいさ」

「あ・・ああ、そうだな」

「みんなOclloに向かうぞ!」

「うむ」

「はーい」

「というわけで、私達はOclloに向かいます」
「Nujel'mにいるほかの冒険者達への伝達お願いしますね」

「まかせてください」
「それが、私達の仕事ですからね!」

 タウンクライアーは自分の仕事を一つ終えることができた事で完全に自分を取り戻していた。 これからNujel'mにいる住民達、冒険者にとってショックを受けるであろう情報を伝えなくてはいけない。 しかし、それがタウンクライアーである自分にとって大切な使命なのだと心に刻み込み広場の中心へと駆けて行った。

-3-

 Oclloの街をガード達が走りまわっている。 西側に集結するEliezerの軍勢に対して防衛の為に街の西側を警護する為に。 しかし、多くのガードは住民の安全を守る為に各集会所・ガードポストで警護に当たっている。 その為、西側の防衛の多くは冒険者に任せなければならなかった。

「どうする?」
「西側の防衛線を守るか?」

「いや、街を出てEliezerを討とう」

「西側といってもその範囲は広い」
「防御網の薄いところが破られればあとは崩壊するだけだ」

「相手があのEliezerならば、なお更薄い防御壁は役にはたたんだろう」

「てことは、Eliezerの陣に向けて進むわけか・・」
「危険だな・・」

「うむ。だがやらねばならんだろ」

 敵の陣に向けて進む。 それはつまり敵の部隊に対し突っ込むことになる。 しかし相手がモンスターであれば扇動の曲の影響を与えることはできる。 雑魚と戦う必要はない。 目標はEliezerただ一人。 奴を今度こそ・・いや何度でも倒してやる。 FATEは心に決める。

「迷っている場合でもないな」
「敵陣へ向けて出発しよう」

「目標は・・Eliezerだ!」

 Eliezerの陣へ向けてFATE達は駆け出した。


「進撃開始!」

 その声に魔物達は反応し一斉にOclloの街に向けて駆け出す。 Eliezerはゆっくりと立ち上がると鞘から剣を抜き放つ。 剣を地面に突き刺し魔物の行軍を眺めている。

「この剣に我が全てを賭けよう」

「我が魂が砕けようとも構わぬ!」

「いざ!」

 地面に突き刺した剣を引き抜きゆっくりと歩みを進める。 目はOclloの街がある方角を見つめ続けていた。


 街を出てしばらく進むとFATE達と同じ考えを持った冒険者達が敵陣に向けて駆けて行くのがわかった。 その数は少なくはない。 どうやら、数人で立ち向かう無謀な行軍になることはなさそうだと安心する。

「Golmor軍を街には近づけさせんぞ!」

 一人の戦士が掛け声を上げると回りの冒険者から「おう!」という声が返ってきていた。 Golmor軍を・・、Eliezerを決して街に近づけてなるものか! FATEは口には出さず誓う。

「Golmor軍だ!やつらが見えてきたぞ!」

 FATEの目にもそれはわかっていた。 土煙を上げながらオークやエティン、亜人種の大軍がこちらに向かってくる。

 戦いは始まった。 辺りを魔法による爆発音、鉄同士のぶつかり合う音が響き渡る。 そんな中、優しい音が聞こえてくる。 バードの奏でるハープの音色。 そして歌声。 魅了された亜人種達は自らの敵が誰であったのかを思いだそうとする。 あの音楽を奏でる人間? 違った・・隣の醜悪なやつらが敵だ。 扇動の音色はGolmor軍勢に響き渡る。

「雑魚に構うな! 突き進むぞ!」

 同士討ちをするモンスターの間を縫うように進んでいく。 途中、正気のオークと対面するがAlucardのパラライズの魔法によって動けなくなったところを一気に駆け抜ける。

「Alice! 一人で先に行きすぎるなよ!」

 TamerであるAliceは騎乗する馬を巧みに操ることで二人よりもうまくモンスターの軍勢を交わしながら突き進んで行く。

「大丈夫、大丈・・わきゃっ」

「Alice!」

 Aliceの目の前にオーガが立ちふさがっていた。 しかしただのオーガとは雰囲気が違う。 オーガは右手を頭上に振り上げる。 広げた手にマナが集中する。 鈍く輝きを放つ光をAliceに向けて放つ!

「あうっ!」

「エナジーボルト!?」

「オーガがか!?」
「Alucard! Aliceの治療を!」

「俺はオーガを・・」
「急いでくれよ!」

 FATEはオーガに向かってハルバートを構えて一気に駆け出す。 相手は魔法を使う。 魔法に耐性の弱いFATEにとって非常に強敵となる相手だった。 魔法を浴びながらハルバートの一閃をオーガにぶつける。 しかし、オーガは動きが遅いかわりに体力が高く感覚も鈍い為、痛みを余り感じない。 オーガは切りつけた相手を一瞥しマナをためる。 空から一筋の光。 ライトニングの魔法をFATEは受ける。

「ぐぅ・・」

 電撃による痛みに唇を噛み締めながら再びハルバートを振るう。 ズンと手に感触が伝わってくる。 ハルバートはオーガの身体に突き刺さったまま抜けない。

「し、しま・・ぐふっ」

 言葉を最後まで吐き出す前にオーガの腕の一撃によって吹き飛ばされる。 ハルバートはオーガの腹に突き刺さったまま。 オーガは再びマナを集中しはじめる。

「Kal Vas Flam!」

 オーガの身体を炎が包む。 オーガはゆっくりとAlucardのほうを向き、手をかざす。 マナは炎の形となってAlucardに向かって放たれる。 Alucardは体内のマナを活性化させてその衝撃に備える。 オーガのマナとAlucardのマナはともに相殺された。

「Por Ort Grav!」

 Alucardはライトニングを唱えるとその目標を突き刺さったままのハルバートの刃へと向ける。

「いくら頑強と言えど・・体内はそうではあるまい!」

 空から降り注ぐ雷撃はハルバートの刃を目掛けて降り注ぐ。 その衝撃は刃を伝ってオーガの体内へと流れ込む。

ガアァァア!

 オーガの叫びが辺りに響く。 よろめくオーガはAlucardを睨みつける。

「ぬぅ!?」

 オーガはAlucardを睨んだまま前のめりに倒れて行った。

「倒せたようだな・・」

 FATEはAliceから治療を受けてオーガの死体に寄っていく。

「無茶をする・・大切なハルバートなんだぞ?」

 力を入れてオーガの身体からハルバートを引きぬく。

「そう言うな。 無茶をしなければこっちが危ない相手だからな」

 幸い、衝撃のほぼ全てがオーガに流れ込んだらしくハルバート自体にダメージはないようだった。

「このオーガはEliezerの直属の部下だろうか?」

「恐らくな。 とすればEliezerは近い。 油断するなよ!」

 再び進み始める一行。 近くにEliezer・・そう思うとこれまで以上の緊張感が漂い始める。 Eliezerを知るFATE、Alucardはより慎重に周囲を警戒する。 その為、Aliceが一行から若干離れてしまっていることに気がつくのが遅れてしまう。

「Alice! 離れすぎだ!」

「え? あら? 早くきなよぅ」

「全く・・Eliezerが近いって言っただ・・ろ・・!」

「Alice!! 後ろだ!!」

「なに? うそっ!? またぁ!?」

ザッザッザッ・・

 Aliceのすぐ手前に駆けてくる人物・・Eliezer。 剣を振り上げる。 FATEとAlucardは駆け出す。 最悪の予感が走る。

「うっ!」

 Eliezerの剣はAliceの鎧を叩きつけるようにしてAliceを弾き飛ばす。 どうやら斬りつけられた様子はない。

「邪魔だ! 貴様らには用はない!」

「そうはいかない! Oclloの街には近づかせない!」

「ふん・・」

 FATEの言葉を無視してそのまま突き進むEliezer。 FATEはハルバートを構えて一気に駆け出す。

「邪魔だと言っている!」

 EliezerはFATEのハルバートを手に持つ剣で受け止め信じられない力でそのまま押し返す。 その凄まじい力にFATEは飛ばされ地面に打ち付けられる。

「FATE! 大丈夫か!!」

「ああ・・げほっ・・大丈夫」
「やつを止めなければ!」

「・・・貴様らの相手はこれで十分だ!」

 Eliezerは両手を地面に付ける。 地面に闇が生まれる。 そしてその闇からは数体のオーガロードが現れていた。

「遊んでいろ・・」

 オーガロードはEliezerとFATE達の間に立ちゆっくりとFATE達に近づいていく。

「ま・・待て!」

 Eliezerは街に向かって駆けて行く・・・。

-4-

「Eliezerが来たぞ!!」

 Oclloの街に緊張が走る。 亜人種達の軍勢は街の外に出た勇者達によってほとんどが食い止められていた。 街の防衛線はそれを突破してきた僅かな亜人種達を倒すだけで済んでいる。 しかし、Eliezerの出現によって状況は一変する。 Eliezerを迎え撃つ為にEliezerに向かって行く勇者達。 これによって亜人種達を討っていた勇者は少なくなり亜人種達は、ここぞと一斉にOclloの街に向けて侵攻を開始する。 亜人種の軍勢と防衛線の衛兵達との激突によって徐々に防衛線は薄くなっていった。 そして勇者達を退けながらEliezerはOclloの街へと足を進めて行くのだった。

「Oclloの住人どもよ!この町を空け渡すがいい!」

 Eliezerの声はOclloの街中に響き渡る。

「死が望みなら、それでも構わんがな」

 切りかかる衛兵を一撃の元に葬りながら微笑を浮かべ、そう言葉を吐き出す。

「そんなことはさせんぞ!」

 街を出てEliezerの陣に向かっていた勇者達が亜人種達を退けOclloの街まで戻ってくる。 勇者達はEliezerを囲むようにして動向を伺う。

「貴様ら、そんなに死にたいか?」

「ふっ、よかろう」
「貴様ら全ての命、奪ってやろうではないか!」

 剣を正面に構えたEliezerはひとりの勇者に向かって一気に距離を詰める。 その素早さにタイミングを逸した勇者達はEliezerの動きに付いて行けない。 一人の勇者が切りつけられ、Eliezerはその切りつけた勢いのまま隣にいる勇者をも両断する。 一瞬の出来事に勇者達は恐怖を感じ、冷静に反撃の判断をすることができなかった。

 オーガロードに道を阻まれていたFATE達がようやく街まで戻れたのは勇者二人が倒された瞬間だった。 他の勇者達の顔に驚愕と焦りが見える。 冷静に判断できておらず、Eliezerの動きに翻弄されているのは一目瞭然だった。

「まずい! 完全にEliezerのペースになっている!」

「あのままでは全滅だな・・」

「でも、どうするの?」

「どうもこうも、突っ込むしか・・ないだろ!」

「はぁ・・、いつか死ぬよ?」

 Aliceのため息を合図に3人はEliezerに向かって駆け出す。 この場においてEliezerの動きを冷静に見る事ができたのはFATE達だけだった。 この時、すでに三人目の勇者がEliezerによって倒されていた。

「はあぁぁぁ!」

 FATEはハルバードを構えた姿勢のままでEliezerに向かって体当たりを試みる。

「ぬう!?」

 Eliezerは体当たりしてくる人間に気がつき身をかわそうとするが、思いのほか勢いのついているFATEの体当たりを完全に避ける事ができず体勢を崩す。 そこにAlucardのパラライズの魔法が撃ち込まれる。

「くぅ!? また・・貴様等か!」

 Eliezerは瞬時にしてパラライズの効果を打ち破る。 一気にFATEはハルバードを振るうが寸でかわされていた。 だが、この連携を見た勇者達は動きの止まったEliezerを見て徐々に冷静になっていく。 彼らも歴戦の勇者であるからこそだ。

 形勢は一気に逆転していた。 冷静さを取り戻した勇者達はEliezerの動きに惑わされることなく徐々にEliezerを追い詰めていく。

「人間風情が・・」

 Eliezerは、自分の部下である亜人種達の戦場となっているOclloの街の西を見る。 戦いはすでに沈静化に向かっていた。 亜人種達のほとんどは人間達によって討たれている。

「どこにこれほどの力があるのだ?」

 自分を追い詰めていく人間を見ながら呟く。

「よかろう・・我が全力をもって・・」

「我が真の力をもって貴様等を倒そう」

「閣下に捧げたこの魂の力・・死をもって知るがいい!」

 Eliezerは叫ぶ。 その気迫に勇者達は警戒する。 Eliezerの身体からマナが溢れ出す。 それは漆黒の闇。 邪悪な影響を受けたマナ。 Eliezerの身体を中心に闇が広がる!

 勇者達は悪寒を感じる。 それはGolmorと対峙した時にも感じるような悪寒。 邪悪な魂からあふれ出る闇に侵されたエーテルが周囲を覆う。

「な・・んだ?」

「FATE気をつけろ・・奴の本当の姿が現れるぞ・・」

 Eliezerを囲む闇に対して身を投げ出す勇者は誰もいなかった。 その先がどこに通じているのかもわからないような闇に誰もが躊躇う。

『フッ・・行クゾ!』

 闇の中から声がする。 闇を破るようにEliezerは飛び出してくる。

「オーク・・?」

 その姿はオーク。 だが、その身体を包む闇のエーテルがただのオークではないことを物語っている。

『グオォォォ!』

 Eliezerの凄まじい力で横に振られた剣は勇者3人を一瞬にして物言わぬ躯へと変えていった。

「な!? なんだあの力は・・?」

「あれがやつの本当の力だ」

「やつら魔界の中でも力の強い魔物は」
「この世界では魂を安定させることができんらしい」
「だから、やつらはこの世界では仮の姿を取る」

「あのGolmorのようにな!」

「Corp Por!」

 AlucardはEliezerにエナジーボルトを叩き込む。 しかし、Eliezerはその衝撃を物ともせず勇者達を葬っていく。

「はぁっ!」

 FATEは背を向けるEliezerに向けてハルバードを振るう。 手応えはあった。 だが、Eliezerはゆっくりと背後を振り返るとハルバードを掴みFATEごと投げ放つ。

「うあぁっ」

 FATEは地面に打ちつけられ、痛みが襲う。

「・・・くぅ・・」

「これで何回目だ・・?・・げほっ・・ついてない・・」

 Eliezerとの戦いの場から少し離れた場所に投げ出されたFATEはEliezerの身体、胸のあたりにより深い闇に覆われているのに気がつく。 正確にはそこから闇が生まれているように見えた。

「もしかして・・?」

 FATEは立ちあがると手に小剣を持つ。 ピンポイントに狙うならばハルバードよりも小剣のほうが使い勝手がいい。 Eliezerの正面に向けて徐々に近づいていく。

「・・・」
「今だ!」

 タイミングを計り、Eliezerの注意が正面から離れた瞬間に一気にEliezerの胸に向けて剣を構え駆ける!

「はあぁぁぁ!」

ズンッ

 多くの勇者を相手するEliezerはFATEに気がつくのに一瞬遅れる。

『キ・・キサマ・・!』

 Eliezerはよろめきながら後ずさりする。 FATEの剣はEliezerの胸を確実に貫いていた。 だが剣先はEliezerを突き抜けることなく、まるで闇に飲まれたようにその姿を消している。

「やった・・か!?」

 FATEの小剣はEliezerの胸に突き刺さったままだった。 Eliezerは立ち止まると胸の小剣に手を掛ける。

『グオォォ!』

 Eliezerは胸の闇に刺さった小剣を引き抜く。

『キサマ・・ユルサンゾ!』

 ゆっくりとFATEのほうへ歩きだす。 だがその歩みはこれまでとは違い鈍い。

「奴の闇の力が弱まっている・・!?」

「今ならば!」

「An Ex Por!」

 Alucardはパラライズを唱える。 勇者達もその詠唱と共にEliezerに向かって駆けていく。

『グウゥゥ!』

 パラライズが効果を発揮する。 これまでパラライズの効果を打ち破っていたEliezerだが、今は身動きが取れない。

「Eliezer! 覚悟!!」

 勇者達が一斉にEliezerを斬りつける。 魔道士達が一斉に魔法を浴びせる。

『ガアァァァ!』

 Eliezerはもはや戦えるだけの力を失っていた。 それでも目の前の敵。 FATEに向かって足を進める。

 

「FATE!」

 慌ててAliceが駆け寄ろうとするが、Alucardに止められる。 誰の目から見てもEliezerに剣を振り上げるだけの力は残っていない。

『・・・・』
『口惜シイガ・・貴様ラノ・・勝チダ』

『閣下・・申シ訳ゴザイマセン・・・』

 Eliezerは手に持つ剣を逆手に持ち変える。

『・・我ガ魂ニ・・自ラ幕ヲ・・』

 ゆっくりと剣がEliezerの胸の闇に沈んでいく。 剣の全てがEliezerの胸に消えた時、Eliezerの姿は闇と共に霧散していった。

「FATE、よくEliezerの弱点がわかったな」

「いや・・偶然だ」
「たまたま、離れた場所から戦いを見る事ができたから・・気がついたんだ」

「一歩引いたからこそわかる事がある・・」
「今日の戦いで思い知ったよ」

「そうか、得るモノがあったのは幸いだな」

「さて、これでEliezerはもう現れんだろう」

「あの姿がやつの魂そのものだ」
「それが滅びたのだからな」

「もっとも・・不滅の魂を持つGolmorは別だがな・・」

 亜人種達は衛兵達、冒険者によって鎮圧されていた。 Eliezerもいなくなった今、Oclloの街が歓喜に包まれる。 暗雲立ち込めるブリタニアにほんの一時の喜びの時を・・・。

-5-

「よぉ。閣下はどうした?」

「Golmor様なら奥の部屋よ」

「どうかして?」

「あ〜、Eliezerの野郎が殺られちまったんだと」
「あいつ馬鹿正直っつうか、堅物すぎんだよ」

「あなたが軽すぎるのよ」

「それでGolmor様に報告を?」

「そのつもりだけどよ」
「じじいと一緒なんだろ?」

「ええ、そうみたいね」

「ちっ、面倒だが待つしかねえか」

ガチャリ

「入ってまいれ」

部屋の奥から力を帯びた声が響く。

二人はゆっくりと歩き始める。

部屋の中にその姿が消え

扉はゆっくりと閉じていく

バタン

一つの闇が晴れる。
それは新たな闇に包まれるまでの一瞬の晴れ間でしかない。

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