炎の魔女・深緑のレンジャー

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登場人物

FATE:
扇動の曲を得意とする剣士。 ヒーラーとしての実力も高く魔術もある程度ならこなせる。 その反面、魔法の抵抗力が極端に低いという弱点も・・

Alice:
FATEとは昔からの仲間でドラゴンテイマー。 自身の戦闘能力は高くはないがそれを補って余りある力を支配下に置く。

Alucard:
魔道士。 デーモンテンプル内でFATE・Aliceを助け、ブリテンの街で再会した後パーティに加わる。 過去のゴルモアとの戦いを経験し生き残った人物である。

Golmor:
魔界の皇帝。 かつてブリタニアを支配しようとしたが勇者達によって魂は魔界に、身体は地の底に封印される。 しかし、魔界の門が開いたのをきっかけに復活する・・


第6章-炎の魔女・深緑のレンジャー-

-1-

 Vesperの街は騒然としていた。

 きっかけは海賊の会話だった。 補給のためにVesperの街に訪れた数人の海賊が酒場で飲んでいる。 海賊達は自分達が海賊であるということを極力、表に出さないようにしていたが酒が入ってからは徐々にボロが出ていた。 ほとんどの客はこの海賊達が入ってきた時から雰囲気で察していたが、あえて触れることはなかった。

「んでよう、ひっく・・ありゃいったい何だったんだ?」

「あれって・・なんだよ?」

「あれって言ったら・・あれだろうが!」

 海賊達の声が酒場に響き渡る。

「あん? ヒック・・あ〜あれか?」

「そうだよ・・あんな砦なんて何時できてたんだ?」

「知らねぇよっ。そんなもん、俺に聞くんじゃねぇよ・・ヒック」

「しかもよぉ・・あの砦から薄気味悪ぃ声が聞こえたって言うじゃねぇか」

「あん?そんなの聞いたことねぇぞ・・ヒック」
「あれじゃねぇか?今噂のGolmor様でも住んでるんじゃねぇか?」

 海賊は大きな笑い声を上げながら再び酒瓶を手にして飲み始める。

 それを聞いたカウンターで酒を飲んでいた冒険者が海賊達の前に歩み寄る。

「なんだぁ?おめぇは・・ヒック」

「あんたらの言っている砦について教えてくれないか?」

「・・・やなこった。へへっ」

「Golmorの居場所の手掛かりかもしれないんだ!頼む!」

「おいおい・・人に物を頼む時には必要な物があるんじゃねぇか?」

 海賊はそういうと嫌な笑みを浮かべて手を差し出す。

「金・・か。よかろう情報料だ」

「へっ、わかってるじゃねぇか」

「・・だがな、これじゃまだ足りてねぇな」

「これが今私が出せる限界だ。頼む!」

「・・・駄目だな。悪いが他をあたりな」
「この金は手間賃ってことで貰っておくぜぇ」

 海賊は笑いながら酒をあおる。

「貴様・・!」

 冒険者は腰の剣に手を掛ける。

「へへっ。やろうってのか・・?」

 海賊はダガーを取り出す。 海賊の仲間はそれを楽しそうに眺めていた。

「・・・くくくっ」
「これだけの人数に囲まれて・・1人で戦おうってか?」
「良い度胸じゃねぇか・・お前気にいったぞ・・ヒック」

 海賊はそう言うとダガーを腰のストックに収める。

 冒険者もそれを見て剣から手を離す。

 気分を良くした海賊は冒険者に話し始めていた。 自分達の本拠地であるBaccania's Denに何時の間にかできていた砦の話を。 そこに調査にいった海賊が聞いた気味の悪い声のことを。

 その砦はある日忽然と現れたらしい。 海賊の話の時期とGolmorが復活した時の時期は一致している。 冒険者はギルドに調査の依頼を出すべきだと考えた。

 翌日、Vesperの街ではGolmorの居所が発覚したという噂が流れ始める。 実際にはこれから調査だったのだが・・。

 後日、砦はGolmorの物であることをブリタニア王宮の調査団が断定する。 しかし、強力な結界によって内部には入ることができないという報告もある。 そしてその結界は全く未知の力を使った結界である為に結界を破る術はまだ見つかっていない。

-2-

「ちっ、外がうるさくなってきたな」

 窓から外を眺める男は苛ついた口調で言い放つ。

「どうせ、いずれ知られることよ」

 窓からは少し離れた場所にある机に腰をかけていた女は静かに返答した。

「まっ、やつらにあの結界は破れねぇだろうけどな」
「あのじじいは、どうもいけ好かねぇが・・さすがと言ったとこだ」

「ふふっ。 それより準備はもういいの?」

 女は立ちあがり男の返答を待っている。

「あん?俺はいつでもいけるぜ」

「そう。 だったら行きましょう?」
「人間達に熱い抱擁を・・うふふ」

「・・へっ、人間達がかわいそうだぜ」

「あらっ?なにか言ったかしら?」

「なんでもねぇよ、いってくるぜ!」

 二人は部屋を出る。 そして砦の中に静寂が訪れる。

「Alice、見つかったか?」

 Moonglowの街にほど近い場所にあるブリタニアの知識の宝庫Lycum。 FATE達はEliezerとの戦いの後、Britainの街に帰還した。 しかし、その直後に入ってきたGolmorの砦を発見という報にすぐさまBaccania's Denに向かった。 だが、Golmor砦の結界によって近づくことはできずに終わっている。

「う〜ん・・こっちにはないよ?」

 Aliceが答える。 書庫にある本の名前を一冊ずつ確認しながらの辛い作業だった。

「もう飽きたぁ・・」

 大量の本を眺めながら座り込む。

「ここならば結界についての書物があると思ったが・・」

「量が多すぎる。 効率的・・とは言えないな」

「見つかった書物も良く知られた結界の解除法ぐらいしか載ってないしな」

「王宮の人にまかせたら・・?」

 Britainの王宮の調査団も当然Golmor砦の結界について調査を進めている。 しかし、結界は全く未知の力によるもので調査は進んではいない。

「こっちから手出しできないなら、出来る事をするしかなかろう」

 3人は黙々と書物の題名をチェックしていく。 Aliceは書庫の端から端を眺めて気が遠くなりそうな感覚に襲われながら目の前の書物を確認する。

「FATE、Alice。Moonglowの市長に書物について話を聞いてくる」
「書物の確認を頼むな」

「ああ〜!! 逃げる気だぁ!」

「違う違う。 じゃ、頼むぞ」

「わかった。 いい情報を持って帰ってきてくれよ」

 静かになった書庫でFATE達は再び書物の確認を開始し始める。 はやくここから解放されたいと願いながら・・

ザワザワ

「ん・・?外がヤケに騒がしくないか?」

「そうだね」

「少し様子を見に行くか」

「あっ、見に行く! 私が見に行くよ」

 AliceはFATEの返答を聞かずに、書庫の出口に駆け出していた。 それを見たFATEは苦笑する。 Aliceはすぐに戻ってきた。 新たな戦いの始まりであることを伝える為に。

-3-

 FATEとAliceはSarpent's Holdの街に来ていた。 街の様子と市長の所在を探すために馬を走らせる。

 MooglowのLycyumeはMoonglowの街から避難してきた住民達で騒がしくなっていた。 Golmor軍のMoonglow侵攻が確認されたからである。 二人はすぐにMoonglowの街に向かいAlucardを見つける。 AlucardはMoonglowからLycumeに戻ろうとしているところだった。 もちろんGolmor軍の侵攻には気がついており、そのことを二人に告げる為にだ。

 Moongolowの街で戦いの準備を始めようとしたところで新たな情報が舞い込む。 Golmor軍のSarpent's Holdへの侵攻も確認されたのだ。 同時侵攻。 戦力を分散させなくてはいけない。 幸いMoonglowは魔法使い達の街で多くの冒険者達で賑わっている。 十分戦えそうだった。

「FATE! Sarpent's Holdの様子を見て来てくれ!」
「Moonglowは戦力的にどうにかなりそうだ」

「そうだな・・わかった、こっちは頼む!」

「AliceもSarpent's Holdへ。なにがあるかわからんからな」

「うん、わかった!」

「Vas Rel Por!」

 二人は開かれたGATEに飛び込んでいく。

 市長はSarpent's Holdの銀行そばで見つかった。 数人の冒険者がすでに護衛に当たっているのを見たFATEとAliceは、橋を渡り町の中心部へと進んでいく。

グルルル・・・

 目の前に数匹のDire Wolfが飛び出したかと思うと二人を睨みながら今にも飛びつこうと近づいて来る。

「うう・・・なにか睨まれてるよ・・」

「Alice・・調教は無理か・・?」

「できなくないけど・・他の子に噛まれるよぉ・・」

 どうやら、倒さざるを得ない。 馬から降りたFATEは集中しDire Wolfの呼吸に合わせる。

スゥ・・ハァ・・スゥ・・・・フッ!

 息を止め一気にDire Wolfとの間合いを詰めると同時に近くにいる数匹のDire Wolfが一斉にFATEに飛び掛ってきた。

「ハァッ!」

 掛声を上げながら目の前の1匹をハルバードで真横に切り裂く。 その勢いのままハルバードを飛び掛ってくるDire Wolfに叩きつけた。 そしてさらに飛び掛かってきた2匹のDire Wolfを寸で交わそうとするがそのうちの1匹が足に噛み付く。 FATEは苦痛に耐えながら拳を握り締め足に噛み付いたDire Wolfを殴りつけ、振りほどいた。 傷は大したことはなく、ハルバードを再び構えDire Wolfに対峙する。

 1匹は死に、ハルバードで叩きつけたDire Wolfも意識を失っている。 Dire Wolfは野生の勘から勝てないことを意識し逃げ出した。

「ふぅ・・野生のDire Wolfが街中にいるとはな・・」

 そう呟きながらも、恐らくGolmor軍によるものなのだろうと感じる。

「でも、あれくらいの野生の動物ならなんてことはないな」

「うん、そうだね」
「なんだったらペットにしちゃおう」

 そんなことを言いながら再び進もうとした時、耳に嫌な音が入ってくる。

ズルッ・・ズルッ・・シャーー

「今の音は・・そこの角からか?」

 ちょうど進行方向にある建物の死角になっている場所から聞こえたようだ。

「今のは・・蛇・・かな」

 Aliceは少し青い顔をしながら後ずさる。

「おいおい、ペットにするんじゃないのか?」
「それとも蛇は苦手か?」

 後ろを振り返り、たかが蛇でなにを・・そう冗談を言おうと思った。

「あ・あ・・あ・・」

 Aliceは後ろを向いたFATEの先を指差して固まっていた。

「・・・?」

 振り返った先にいたのは銀の鱗に覆われた巨大な蛇の姿だった。

「Silver Sarpent・・・」

 正直、戦いたくない。 こいつの持つ毒は致死性であり、そして力もスピードも人間を殺すことが容易であるくらい強い。

「Alice・・ほら動物だ・・調教しないのか?」

「で・・で・・出来るわけないでしょぉぉ!」

 そう叫ぶとすでにFATEから遠くにいたAliceは走り出した。 FATEも後を追うように逃げ出していた・・

 街の北側、そこに奴はいた。

「おら、行け行け!」
「人間どもを食っちまいな!」

 そう言い放ちながら、自らの配下を召喚する。 Golmor軍の一人、Eligor。 Eligorは魔界のSilver Sarpentを配下に置いている。

「ん〜、こんなもんかな」

 Eligorはそう言うとクリスを手にし馬を進めようとする。

「ちょっと待て!」

「あん?なんだお前?」

「貴様・・Golmor軍の兵だな?」

 FATEはEligorから感じる邪悪な力を感じ取っていた。 それは強大な力でEliezerから感じ取れたそれとよく似ていた。

「はっ! 兵だと?」
「俺は閣下直属の部下であるEligor様だ。そこらの雑魚と一緒にするなよ?」
「それでよ、この街を貰いに来てやったんだ」
「さ、とっとと市長を渡しな」

 Eligorは笑いながら言い放つ。

「何を言う!むざむざ貴様らの要求に答える我らではない!」

 一人の勇者が叫ぶ。 FATEと同じようにEligorの元に勇者達が集っている。

「けっ、話になんね〜な」
「ま、いいや。自分で会いに行ってやりゃいいんだからよ」
「んで、市長さんどこよ?」
「案内してくれね〜か?」

「残念だがそれはできない相談だな」

「ふん、どうせお前らがゾロゾロと沸いてきた方角に」
「いるんだろうが」

「行かせん!!」

「ちっ、うぜぇんだよ! こいつらの相手でもしてな!」

 Eligorは地面を指差す。 緑色の輝きが地面に生まれ、そこから現れたのは多数のSilver Sarpentだった。

「くぅ!?」

 襲い掛かる毒蛇の群れ。 勇者は一瞬にしてその蛇に囲まれ姿が見えなくなった。 そして、ほんの数秒の間に勇者は物言わぬ躯と化していた。 Eligorは楽しそうに笑いながらそれを見ている。 Silver Sarpent達は周りの勇者達に襲い掛かっていく・・・。

「ふふ。それで私をどうしたいのかしら?」

 女性は妖艶な笑みを浮かべながら勇者達を見つめている。

 Moonglowの街はガーゴイルやゲイザーに襲われ、街のMage達との激しい魔法による戦いが繰り広げられていた。 そしてそれを引きつれて来たのは女性・・Golmor直属の部下、Adramelech。 今、その目前に勇者達が並んでいる。

「Golmor軍の者ならば倒さねばならんな」

「怖い顔してるわね?」
「くすっ。女性をいじめるのがお好きなのかしら?」

「姿にはだまされんぞ・・」
「貴様が女性の姿でも邪悪な魔物であることは知れている!」

「あらあら・・仕方のない坊や達ね」

「いいわ・・貴方達に堪えがたい痛みと快楽を与えましょう」
「さぁ、私を楽しませなさい」

 Adramelechは両腕を広げ、勇者達に微笑みかける。

「うおぉ!」

 一人の戦士が飛び出し、剣を振り下ろす。 いや振り下ろそうとした。

「あなたには灼熱の抱擁を・・」

 Adramelechの目前で戦士の体は炎に包まれる。

「うふふ。お気に召してもらえるかしら?」

 戦士はAdramelechに炎に包まれたまま剣を再び振り上げる。 だが振り下ろすにはいたらず、力尽きてしまった。

「なっ!? き・・貴様!」
「Corp Por!」

 呆気ないほど簡単に戦士を葬ったAdramelechは微笑む。 その表情にAlucardは怒りを覚えその感情を隠す事なく魔法を詠唱する。

ドンッ!

 エネルギーの塊がAdramelechに放たれた。 それが合図であったように勇者達、魔法使いの攻撃が一斉に始まった。

「ふふ、まだまだね」

 魔法を浴びるAdramelechは平然な顔をしたまま、そう言うと両の手を空に向かって突き出す。

「雷の子らよ・・・降り注ぎなさい」

 刹那、空に雷鳴が走る。 当たり一面が雷(イカズチ)の閃光に溢れる。 そしてその衝撃はAdramelechの周囲の勇者全てに伝わった。

「ぐぅ!」

 雷を受けたAlucardは痛みを堪える。 雷と言ってもこれは魔法を具現化したもの、魔法は抵抗すればその威力を相殺することができる。 だが、Adramelechの魔法の威力は易々と抵抗できるものではなかった。

「なんという魔力・・」

「うふふ」
「魔法で私と張り合おうと言うのかしら?」
「炎の魔女Adramelechと恐れられているこの私に?」

「・・いいわ、あなた達の力をもっと私に見せなさい」
「そして楽しませて頂戴ね」

 Adramelechは妖しく微笑み。 その手に炎を宿した。 その炎は力強く赤い輝きを放つ。 この魔女が内側に秘めた力の輝きであるかのように。

「お前らさ、いいかげん素直に市長の所に案内しね〜か?」

「断る・・と何度も言ってるだろう?」

 Silver Sarpentの群れを戦い抜いた勇者達は再びEligorの前に立つ。

「貴様の放ったやつらはあらかた倒させて貰った」
「さぁ・・覚悟してもらおう」

 一人の勇者が言い放つ。 Eligorは追い詰められていた。 Silver SarpentがいるうちはEligorに向かってくる勇者の一人や二人など簡単に切り伏せることができた。 だが、今目の前にいる勇者達はEliezerをも倒した者達だ。 Eligorの操る生物達も無限ではない。 人間だと侮っていたなら二の舞を踏むかもしれないというEligorにとって屈辱的な認識をせざるを得なかった。

「ちっ!めんどくせーな・・」
「うぜぇ・・貴様らうぜぇよ!」
「貴様ら全員死刑だ!」

 Eligorは声を張り上げた。 次の瞬間、Eligorは緑色の光に包まれる。

「これは・・!」

 FATEはその光を見て危険を覚える。 そうEliezerとの戦いで見た光。 その輝きの色は違っても流れ出すEligorのエーテルから感じる、邪悪で強い力はEliezerのものと変わらない。

「気をつけろ! 奴が正体を現すぞ!!」

 そう叫んだ瞬間、Eligorは跳躍する。 勇者達の囲みを飛び越えたEligorは囲みの外側にいた人間数人を手に持つ槍で串刺しにしていた。

『テメーラコソ、覚悟シロヨ』

 その姿はガーゴイルのようだった。 死体から槍を引き抜くとすっと目前から姿が消える。

「なっ!?」

 Eligorを見失い近くにいた戦士に焦りが生じる。 どこだ! それが言葉になることはない。 Eligorはその戦士の真横に一瞬にして移動し、槍を突き立てていた。

「テ・・テレポート・・?」
「いや・・目視できないほどのスピードで動いたのか?」

『ヘッ、貴様ラニ俺ノ動キガミエルカ?』

 Eligorは迫り来る勇者達の攻撃を簡単にかわして行く。

「An Ex Po・・ゴフッ・・!」

 一人の魔法使いがパラライズの魔法を唱えようとしていた。 だがその詠唱は最後まで続かない。 最後に口から出たものは赤い血だった。

『オット、ソウハイカネーゼ?』

 魔法使いの多くはMoonglowの街でGolmor軍と戦っている。 そこは魔法使い達にとって故郷のようなものである為に。 その為このSarpent's Holdでは戦士達が主力であり、魔法使いは小数であった。 そして、そのほとんどはEligorによって葬られている。

「貴様・・Moonglowの街と同時に攻めたのは・・」

『アン? ケッ、俺ハコンナ小細工ハ好キジャナインダガナ』
『魔法ガナケリャ、俺ヲ捕マエルコトハデキネーダロ?』

『マッ、アノジジイノ策ニシチャ上出来ダゼ』

 最後の言葉は誰に聞かせるでもなく、自分に対する呟きだった。

『サァ、種明カシハココマデダ』
『貴様ラヲサッサト殺シテ、市長ノ首ヲモラウゼ!』

 Eligorはそう言って槍を一気に突き出す。

「くっ!!」

 FATEは槍を寸でかわす。 背後にいた数人が槍の餌食になる。

「固まってはいけない! 直線に並ばないようにしろ!」

 Eligorの槍は直線的に数人を一気に突き刺す。 Eligorのスピードで繰り出される槍の一撃をかわすには相当な俊敏さが必要だろう。 例え俊敏さを持っていようとも、誰かの後ろにいてその槍の軌道が見えなければ避けようがなかった。

「まずい・・!」

 戦士ではこのスピードに太刀打ちできない。 このままではEligorにいいように翻弄され全滅してしまうだろう。 誰もが絶望を感じ始めていた。

グルルル・・・

 いつの間にいたのだろう、Eligorの背後から数匹のDire Wolfが歩いてくる。

「この状態でさらにDire Wolfが相手だって?」

 EligorはDire Wolfの出現をさして気にした様子はなかった。 飛びかかる戦士の剣撃を交わすと槍で突く。 そして、また戦士が同じように死へと向かう。 ただ、違ったのは剣撃を交わそうとするEligorの足にDire Wolfが噛みついていたことだろう。

ズンッ

『ナ・・ニィ?』

 足を噛まれたEligorは交わすタイミングを逸した。 戦士の剣撃はEligorを打ちつける。

「Dire Wolfがなぜ?」

 Eligorを含め、その場の勇者達は軽く戸惑う。

「エッヘヘ」
「この子達はね、私達人間よりも俊敏なんだよ」

 Dire Wolfの背後、建物の影から現れたのはAliceだった。

 炎の魔女Adramelechは油断していた。 人間の持てる魔力には限界がありAdramelechの放つ魔法のような破壊力を持つことはできなかった。 だからこそ、Adramelechは人間の放つ魔法などたかが知れていると考えていた。 人間達の魔法の使い方などには全く興味はなかったのだ。

「効かないと言ってるでしょ?」

 人間達の行動に意味がわからなかった。 効かないとわかっているのに愚かにも同じ事を繰返す。 Adramelechはいらついていた。

「そう・・あなた達では私を楽しませることはできないのね?」

 Adramelechの口調が冷たいものになっていた。 Adramelechは両手を天に突き上げる。

「そうね。もう終わりにしましょう」
「天を駆ける流星達よ、人間達に降り注ぎなさい」

 Adramelechが最後に魔力を込めようとしたその時、Adramelechの目の前にガーゴイルが立ちふさがる。

「そこをどきなさ・・」

 言葉は続かない。 ガーゴイルの姿は一瞬に立ち消えていた。 その場所にいたのは戦士。 戦士の剣は油断していたAdramelechの身体を確実に捕らえていた。

「え?どういうこと・・かしら?」

 Polymorphの魔法。 自らの姿を変えてしまう魔法。 この魔法は高度な魔法である。 この戦士は魔法に詳しいいわゆる魔法戦士の類だった。

「意味もなく効かない魔法を放っていたわけではない」
「この戦士がガーゴイルに姿を変えたことに気がつかなかったろう?」

 この策を成功させる為に様々な魔法を利用した。 時には石の壁で視界を塞いだこともある。 戦士がAdramelechに近づけば焼き尽くされてしまう。 焼き尽くされないように戦士が近づく為に魔法で連携をとったのだ。

「ふふ。そう・・」

 魔法戦士が与えた傷は決して浅くはない。 それでもAdramelechは勇者達に微笑を浮かべながら話す。

「力で勝てないなら技で・・と言ったところかしら?」
「人間は魔法をそんな風に使うのね・・」
「まだ楽しませてくれそうね?」

ズキッ・・

「・・この身体では、魔法に集中できそうになさそうね」
「あなた達にご褒美よ」
「私の本当の姿を見せてあげましょう」

 Adramelechは微笑みながら目を閉じて行く。

「させるかぁ!」

 無防備に見えるAdramelechに戦士が切りかかろうとする。

「待て!」

 Alucardは寸でその戦士を引きとめる。

「Adramelechの周りをよく見るんだ!」

 Adramelechの周囲にはMoonglowの森から風に乗せて飛んでくる落ち葉。 その落ち葉がチリチリと音を立てながら火を発する。 次の瞬間、Adramelechの身体は炎に包まれる。

「下がれ! 熱気に焼かれてしまう!」

 赤く輝く炎の色はより色濃くなっていく。 そして、その輝きにAdramelechは包まれ姿を見る事ができない。

『サァ、愉シミマショウ』

 Adramelechを中心に炎が放射状に放たれる。 その炎に抵抗できなかった勇者が倒れて行く。 そして炎の衣を脱いだAdramelechが姿を現した。 その姿はハーピーに似ているが違う。 背中から突き出た羽は炎を帯びている。 なにも知らぬ者が見たのならば、天からの使いだと思い込むだろうか。 この姿を美しいと感じる者は少なくはなかった。

『ホラ、死ニナサイッ!』
『フフフ・・アハハハハ!』

 Adramelechの容赦ない魔法が勇者達の身体に降り注ぐ。 魔法に抵抗力のない勇者から次々と倒れていく。

「まずい! このままでは・・!」

 Alucardは途中まで出た言葉を飲み込む。 このままなにもできなければ全滅するのは目に見えているだろう。 それを言葉にしてしまえば、現実になってしまうと感じた。

 数人の魔法戦士が、Adramelechに近づいていく。 魔法を学んだ戦士は魔法に対抗する術もまた学んでいることが多い。 Alucardは彼らの姿に気がつくと一つの考えが浮かんでくる

「魔術師達よ!! 彼ら魔法戦士達の援護を!」
「魔法が効かないならば彼らの剣に全てを託すのだ!!」

 その叫びはその場の全員に届き、魔法戦士達の援護、回復にその魔力を注いでいく。

『甘イワネ。焼キ尽クシテアゲルワ!』

 Adramelechは近づいて来る魔法戦士の身体を覆うように羽で包み込もうとする。

「甘いのはどちらかな?」

 包み込んだはずの魔法戦士はAdramelechの真後ろにいた。 そして剣を振り下ろす。

ザンッ!

『グゥ! アァ・ァ・・』

『ドウイウ事!』

 Adramelechは混乱していた。 たしかに魔法戦士を炎の羽で包み焼き尽くそうとしたはずだ。 逃げ道はなかったはずだ。

「お前がまだ人間を見くびっていたってことだよ」

 魔法戦士はそういうと、掴みかかろうとするAdramelechの腕を避けるためにテレポートの魔法を詠唱して離れた。

『テレ・・ポート』
『ソウイコト・・』

 分かってみれば単純な答えだった。 そして、魔法と剣を同時に使いこなす人間がいたことを苦々しく思っていた。

「Alice!これは一体・・」

「Silver Sarpentに襲われてたでしょ?」
「で、逃げ隠れた先で傷ついたこの子達がいたんだけどね」
「可愛そうだから治療してあげたら友達になってくれたんだよ」

 可愛そうだからという理由で自分が襲われる可能性も考えないで治療してあげたAliceにFATEはため息を吐いていた。 しかし、動物に対してのこの愛情はAliceらしい。

「全く・・良い方向に進んだからいいが・・」

 FATEは苦笑する。

『チッ・・クショウ!』

 戦士の剣撃によって傷ついたEligorは噛みつくDire Wolfを引き剥がし距離を取る為に離れようとする。

ズキッ・・

『グゥ・・』

 Eligorの傷ついた体は自分の移動速度に耐えることはできなかった。

「!!」
「今だ!」

 FATEは手に持つハルバードを一気に振り下ろす。

ズンッ!

『ガアァァァ!』

 Eligorの絶叫が響き渡る。

『私ハ炎ノ魔女Adramelechヨ・・』
『屈シハシナイワ』

 魔法戦士達の巧みな攻撃とそれを支援する魔法使い達によってAdramelechは致命傷を負っていた。 Adramelechはすでに敗北を悟っていた。 しかし、魔界で恐れられた魔女としてそれを認める訳にはいかない。 例え、止めを刺す為に近づいて来る魔法戦士を苦しげな表情で睨みつけることしかできない身体であっても・・・。

『ナンデダヨ・・』
『貴様ラニ、俺ハ負ケルノカヨ! 』

 冗談じゃない。 Eligorは心の中で言葉を吐き出す。 あのDire Wolfどもめ・・俺を裏切りやがって・・。 下僕の分際で主人に手を出すかよ・・。 心の中で憤る。 下僕の分際で・・あの女・・やつらのことを友達と呼んでいた・・か。 ちっ・・。 むかつくやつらだぜ・・・。 Eligorは初めての感情に戸惑う。

「止めだ!!」

 それが人間の言う嫉妬に近い感情であることを知ることはなかった。

-4-

「ふむ、Eligor達はやられたようだの」

 砦から水晶を覗きこんでいた老人は顔を上げる。

「・・うまくいかぬものよの・・」

 玉座に座る男は静かに言い放つ。

「じゃぁね次、あたしだね!!」

 砦に響く声。 この場所に似つかぬ風貌をした少女が満面の笑みを浮かべながら見つめている。

「しゃしゃっ、嬢ちゃんでは荷が重くはないかの?」

「ひっど〜い!」

「よかろう。次はお前がいくがよい」

 男は立ちあがり少女を見下ろしている。 真紅の甲冑に身を包んだその男はGolmorと呼ばれている。

「えっ?!やったやった!!」

 砦に少女の笑い声が木霊する。 Golmorはゆっくりと地図を指差す。

「次はこの街だ」

「は〜い!」

 少女が部屋を出ていき静かになる砦に残る二人。

「計画は進んでおるのか?」

「もちろんじゃとも」

「そうか、このBritaniaを余の手に・・クックック!」

「うしゃしゃ、その日も近いわい」

闇は今だ色濃くBritaniaを包んでいた

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