2003年6月15日(日) 小雨

コグルミ谷駐車場〜小竜の穴 (往復)

 「どんぴしゃやんか!」ハリマオ氏が叫ぶ。
 小尾根で合わせたシルバーコンパスの赤く細い矢印の先には苔むした石灰岩の林立するカレンフェルトの中央に「小竜の穴」は直径1.5mほどの口をぽっかりあけていた。

 今月上旬にインターネット仲間のハリマオ氏より「お誘い」というサブジェクトのメールが届いた。御池岳にある「小竜の穴」へ潜ってみないかとお誘いである。その時点で嬉々としていたわけだが氏のメールの中から自分の役割分担がふわっと浮かんできた。 「ビレイヤー」。 脇役ながら重要な役目を氏に選んでいただいたような気がして、また別の意味で光栄に感じている。
 沢登りの武器しか持っていないけどなんとかなるだろう。9mm×40mザイル、ハーネス、カラビナ、エイト環、ATC、ペツルのシャント、シュリンゲ等々バンバン車の後部に投げ込む。久々のマイカー山行の気楽さから現地で携行品を決めればよいのだ。調子に乗って長靴まで放り込んだ。
 
 早朝6時、鈴鹿のバリ屋が穴屋へと変身する様を見届けるべく、さらにたま氏との再会を期待しつつ車を湾岸高速へと走らせた。
 コグルミ谷8時集合。たま氏が笑顔で迎えてくれた。駐車地にはすぐその後到着したハリマオ氏との合計3台のみである。こんな梅雨の真っ只中に御池岳とは考えもしないだろうが、だだっ子のようなおじさんたちには今回の穴もぐりが多くの人に知り尽くされた御池岳のドリーネとは異質の、今ひとつ残された未知の分野であることは明白で、人跡未踏の場所に立ちたいというのはある意味山登りをしている者にとって共通の部分なのかもしれず、そんな特別な計画に「OK!参加させてもらいます。」と言った時点でメンバー同士の「達成したい」という思いが共有できてしまい、もうこの程度の雨やヒルの心配など消え去ってしまうのである。
 
 穴に近寄ってみる。「これは・・・・・・」その異様さに言葉を失い、想像以上の鉛直に続く暗い穴に思わず息を飲んだ。それは眼前に迫り来る滝の飛沫を浴びながらハーネスにザイルをセットする時の感じとよく似ていた。はっと我にかえりザックから9mm×40mザイルを取り出し、わずかに上部に生えている樹木にマストノットを施し、ダブルロープにして穴に投げる。チョックストーンがそれを拒むようにザイルの降下を妨げた。
 すぐ脇の別の木からたま氏の8mm×30mザイルを使いATCで確保用とした。ギアの準備は完璧に整った。つまりハード面は完璧に整ったのである。あとはソフト次第である。
 
 3人が顔を見合わせる。当然ハリマオ氏からの下降となる。苦笑いとも、ひきつった笑いともとれる顔をして記念撮影である。「はいパチリ」。その後は意を決したように下降して暗闇の中に消えていった。確保用のザイルがどんどん穴に吸い込まれていく。
 8mほどでザイルの動きが止まる。
 「おーい!だいじょうぶかー?」声をかけるが返事が無い。
 わずかに時間を置いて「もう一段下がる」と反応。思わず確保の手に力が入る。
 さらに8mほどザイルを送る。
 たま氏と二人で声をかけるが返答はなかなか即答では返ってこない。
 「壁画はあるかー?」たま氏の呼びかけに緊張がほぐれた。
 「井戸があるぞ!!」・・・・・・

 ハリマオ氏の感激した顔での生還に気を良くしたたま氏と私は順番に下降することにした。

 たま氏も緊張しながら穴に吸い込まれていく。
 「おーい!だいじょうぶかー?」声をかけるがまたもや返事が無い。わずかな間を置いて、
 「もうあがります〜〜〜!」
 「あかん井戸見て来いよ〜〜!」ハリマオ氏とのやりとりに思わず笑ってしまった。
 たま氏も無事生還。

 確保を交替してもらっていよいよ私の順番だ。
 ザイルも湿って制動が良く効いている。
 「では行って参る!」

提供 たま氏
 懸垂下降で下りるが湿った石灰岩でスタンスが滑る。足の装備を沢仕様にしとけば良かったと思うがもうこの時点ではあとのまつり。
 入り口を過ぎると中は結構身動きがしやすく広くなっている。一段目から上を見上げると大きなチョックストーンが覆い被さってくるようだ。水の流れによって浸食された壁がノコギリの歯のように肩口を襲う。大きな懐中電灯で回りを照らす。なんと言う情景か・・・・・。
 上から声がかかる。
 「おーい!だいじょうぶかー?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」なんとも言えない情景に言葉が出ない。実になんとも言えない異様さと美しさと、不思議な気分が混在してしまっている。前に下りた二人の気持ちがわかる。
 二段目に下りると少し落ち着いてあたりをよく見回してみた。足元から下にはまだ穴が続き井戸状になり水面が見える。円筒形の穴の一方向がえぐれるように奥へ延びていそうで、体を移動させてみたが魚の背骨のようなとがった1mほどの岩にさえぎられてよく見えない。先がありそうにも思える。またその壁はいくつもの棚があり、まるで神棚のようになっている。仏像が置かれていても何ら不思議ではないような気さえしてくる。
 よし!上がろう!
 上の二人に「上がりま〜〜す!」と叫ぶ。確保されているのでいろいろチャレンジしてみた。ダブルのザイルにシュリンゲをプルージックでセットしてハーネスのカラビナにかけていざ!と思ったらぶら下がったと同時にザイルに振られて壁にぶつかって意気消沈。今度はアッセンダーをセットしてザイルを下に送りながら上昇。ホールドやスタンスは結構あるが鋭利で手が切れてしまうかと思うくらいの岩肌の壁。登山靴はフリクションが悪いのでやはり沢装備での入穴が良いと思った。オーバーハングあたりからダブルロープたよりに綱登りしていたつもりが上から「重いなあ!!」の声。どおりで楽に登れたわい。
 ザイルの回収。
土や水分を含んで重い。 
 目的達成の後の満足感はなんとも言えない。昼食後は緊張感から来ていた疲れも吹っ飛んでしまい、さらなる向上心が宿り小雨にも負けず練習にと励むのであった。(この3人はアホや〜〜〜!)
 以下なぜかハリマオ氏が写してくれたシュリンゲを2本使って「穴からの脱出だ〜〜!」とかいって木登りをしてみんなで遊んでいるところ。
 9mmダブルに6mm×120cmのロープをダブルフィッシャーマンノットで輪にしたシュリンゲを頭上にプルージック結びでセットしてハーネスのカラビナにセットする
 とりあえずぶら下がってみる。メインロープに結構振られる。
 次にもう一本同じサイズのシュリンゲを膝がこのくらい曲がってかかるぐらいの位置のメインロープに同じくプルージック結びで取り付ける。

以上6枚
提供 ハリマオ氏
 膝を伸ばすようにして上昇する。
 たるんだ上のシュリンゲを上方に送る。
 ぶら下がる
 下のシュリンゲを膝が曲がるぐらいの位置に上げる。
 以下ヤマビルのように繰り返し。
 下降もやってみた。
 なんとも感慨深い山行というか冒険になった。おそらく一生の思い出になるような気がしてならない。
 ハリマオ氏とたま氏に深く感謝申し上げます。
 またご一緒させてくださいね。
 
 洞窟内部の画像はお二人のサイトからどうぞ!

 ハリマオ氏 「鈴鹿樹林の回廊」
 たま氏    「猫の山歩き」

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