こみっくパーティー

機種ジャンルメーカー発売日価格備考
Windows95/98ADV+SLGLeaf99/5/288,800円18禁・CD2枚組
DATA
 新設されたリーフ東京開発室の第一回作品はなんと異色の同人誌即売会を舞台にしたラブコメADV。原画に「Pia☆キャロットへようこそ!!2」(カクテルソフト)等で有名なみつみ美里・甘露樹をはじめ、これまで他社で作品を手がけていたスタッフが数多いのが特徴。実在の有名同人作家もゲストとして多数参加している。

STORY
 第一志望だった美大に落ち、失意の中で平凡な大学生活を送るはずだった主人公は、悪友・九品仏大志(くほんぶつ たいし)にそそのかされて同人誌即売会の世界に身を投じることになった。自分の可能性を試すべく原稿用紙に向かう主人公はそこで同じ志の少女たちと出会い、切磋琢磨しながら同人界のトップへと突き進んでいく。

IMPRESSION
 現代日本文学に特有の一ジャンルとして『私小説』というものがある。作者が自らの体験をありのままに描きながら心境を述べていくという様式だ。この『こみっくパ〜ティ〜』の開発陣には自ら同人活動している人間も多く、言うならばこの作品は“私小説”ならぬ“私ゲーム”とでも呼ぶべきかもしれない。
 もちろんこの物語(やゲーム)はあくまでフィクションであり、カリカチュアライズされている(本作で言うところのコミック感覚である)。よってリアリティに欠けるなどと指摘するつもりは毛頭ないということだ。たしかに“男性向け創作(=エロ同人誌)”や“やおい”といった現実には主流であるジャンルがない、サークル申し込みは絶対に落選しない、オタク臭がまるでしない(笑)など、あげつらえばキリがない。だがそれは本質的な点から見ればたいした問題ではないだろう。これはあくまで“現実にはありえないが、あったらいいな”という世界なのだから。

 話が脱線するようで恐縮だが、リーフの前作『WHITE ALBUM』の人気が思ったほど延びなかった。たしかにゲームデザインやテンポ、描写不足など問題点も多かったが、現状ほど見向きもされない作品ではなかったはずだ。では、なぜか? その答えの一つが同人誌と密接に関係している。『WHITE ALBUM』は同人誌にしにくい作品だった。シリアス一辺倒のストーリー展開。主人公とヒロイン、この相思相愛のカップルと数人の周囲の人間という狭い世界で完結する人間関係。そのどれもがファンの創造を膨らませるに足る素材とはなりえなかったのだ。
 そもそもリーフという会社が現在の地位にまで登り詰めた背景には、言うまでもないが同人誌や口コミといったファン活動の存在が大きい。リーフがこれまで二次創作活動に比較的寛容だった姿勢もそれを自覚してのものだろう。
 かつての『ときメモ』、そして現在の『ONE』『Kanon』に同様の傾向が見られるが、『To Heart』も含めてこれらの作品は“ストーリーよりキャラクター描写に重点が置かれた作りになっている”という共通項で括ることができる。今回の『こみっくパ〜ティ〜』はその路線を踏襲し、いかようにもアレンジができ且つサイドストーリーが作りやすい展開にすることで、ファン活動による盛り上がりを制作側が意図的に織り込んだえげつない企画であると言えよう。

 さて、ゲーム自体の出来だが、これはなかなか良い。平日は自己育成&原稿ノルマ消化、休日は自由行動というオーソドックスな恋愛SLGシステムなのだが、一回でも本を落とす(ノルマをクリアできない)と即座にゲームオーバーになるため適度な緊張が維持されている。中盤以降は能力値の上昇に伴って難易度も下がり、ややもすると展開が単調になりかねないが、それでも1000部や2000部と言った(現実に到底なし得ない)大量部数を景気良く捌いていく様は、他では味わえない快感である。登場するキャラクターもみな親しみやすく、原画・CG共に極めて高い質で揃えられている。キャラ数、枚数を考えたら、これ以上の数的増加は困難だろう。BGMは今回も悪くない出来で、キャラごとのシナリオもそれぞれのキャラクター性を活かせている。キャラによってクオリティにややバラツキがあった(瑞希や由宇に比べて南、詠美、玲子は通常時にあまり干渉してこないため展開が間延び気味)り、Hシーンが取って付けたようなものだったりするが、総体的に見れば悪くない出来だろう。同人活動に僅かでも感心のある人ならゲームとして楽しめること請け合いだ。(だが、あまりにディープな人は逆に反感を持つかも……)

 長所もあれば短所もあるものだが、このゲームはことプログラム面、操作性において欠点が多すぎる。バグに関してはまとめて後述するとして、まずメッセージの巻き戻し機能が不十分なため、場面が切り替わると直前のメッセージすら巻き戻しができなくなる。巻き戻し中は任意の巻き戻し位置から即座に復帰できない、つまり最後のメッセージまで再び表示を戻さないと次のメッセージに進めない。その割にキー一発で戻れるわけでもなく、キーボードのみでは選択肢すら選べない。繰り返しのプレイを要するにも関わらず、2周目以降でも名前はいちいち入力し直さないといけない。BGMはCD-DAで再生されるのだが、曲間に無音領域(プリギャップ)が無いためか、CDをリピートする際に次の曲の出だしが一瞬かかってしまう(これはかなり興ざめだ)などなど。また、デフォルトで設定されている「一度見た文章はスキップする」モードではBGMがかからない仕様になっているが、本作は場面やメッセージの使い回しを多用しているためにプレイ中に無声無音の時間が頻繁に発生する。結果として、これまでリーフ作品の長所の一つだったBGMは本作において著しく印象が薄くなってしまった。なまじ音楽の出来が悪くないだけに残念だ。

 毎回多彩な不具合で僕らを楽しませてくれるリーフだが、本作も『WHITE ALBUM』『PS版To Heart』に負けず劣らずのバグがいろいろと仕込まれている。アルバムモードで異なるCGが表示されて止まる、音が鳴らなくなるといった初歩的なものから、詠美ルートの最終月に駅前に出ると文章が無限ループ、果てはインストールできない(!)といった症状まで。商品管理の甘さに関してまったく反省がないようだ。現在は差分も出てだいぶ不具合も収まったが、メーカーにはそれで良しとしてもらいたくない。もしアメリカのような返品制度が日本にも導入されたとしたらリーフやシーズはパソゲーメーカーの中でも真っ先に倒産するだろう。『WHITE ALBUM』でも指摘したので繰り返しになるが、リーフに限らずソフトメーカーはパグが残っているという事は欠陥商品であるということを再認識し、出荷前の製品チェックをより一層厳密に行なってほしい。不具合解消のための発売日延期や、デバッグ会社に外注する勇気も時には必要ではないだろうか。

 「このゲームの最大のバグは、起動するとなぜかリーフのロゴが出ることだ」などという揶揄が用いられるほどこれまでのリーフとはかけ離れた、言ってしまえばF&Cライクな作品。他方ではKEYのような“泣かせるシナリオを得意とする”新興勢力の台頭も著しい。『雫』や『痕』以来のリーフファンはどこへ行くのか。また東京開発室は本作の流れで次回作以降を続けていくのか。動向に予断を許さない。

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