以下は、立命館大学の和田先生が、実際に現地を取材されて書かれたものです。ご本人から了解を頂きましたので、ウエッブ上で公開させて頂くことにしました。(う〜〜〜んやっぱり、進んでる。成熟した脱工業化社会ってこういうものかな?)
1996/12/20 ng-nd
「地球温暖化を防止するエネルギー戦略」共著(林、矢野、青山、和田 武)(実教出版)が数日前に刊行されました。その第4章に和田先生が執筆した「温暖化防止をめざすデンマークとドイツのエネルギー対策」があります。ご参照下さい。1997/06/10
1996.12.18.
立命館大学 和田 武
デンマークのエネルギー政策
デンマークは、これまでのエネルギー計画"ENERGY 2000", "ENERGY
2000 Follow Up"に加えて、2030年までを展望した画期的な新エネルギー計画"Energy21"を1996年6月に発表した。
- "ENERGY 2000"(1990), "ENERGY 2000 FollowUp"(1993)の主目標
CO2;2005年までに1988年レベルの少なくとも20%削減
一次エネルギー消費;2005年までに1988年レベルの15%削減
- "Energy21"(1996)の主目標
CO2;2030年までに1990年レベルより半分以下に削減
省エネとエネルギー効率向上などによって一次エネルギー消費を削減しつつ、再生可能エネルギー比率を35%にアップ
再生可能エネルギーには、風力、麦わら、木屑、エネルギー作物、廃棄物、バイオガス(発酵メタンガス)、太陽熱、地熱などを利用
- 政策の理念
1.国際的意義(環境保全のための国際貢献
2.決断すべき課題(可能かどうかの問題でない。科学的判断に基づく)
3.長期的施策(21世紀を見通した判断に基づく政策)
4.国民の支持(住民参加、情報公開、環境教育を重視)
- 政策の実現方法
熱電併給(CHP=コジェネレーション)以外の火力発電所の建設は禁止
高エネルギー効率(約90%)の熱電併給(CHP)比率(現在60%)の高い
地域暖房(DH)の普及(現在;50%、大都市域65-70%を占める)
石油、石炭の削減、天然ガスと再生可能エネルギー(風力、太陽エネルギー、バイオマスなど)の利用推進
民間と産業界の省エネ
デンマークのDHシステム
特徴:
- 高エネルギー効率と多様な燃料が利用できる柔軟性のある燃料利用技術によるDHシステム(化石燃料、廃棄物、バイオマス)
CHPプラントをバイオマス併用方式へ転換(1998年までに)
優れた断熱技術と低温運転による熱損失の削減
各燃料の環境負荷に見合った課税を組み込んだ消費者価格
住民参加:約330社のほとんどが消費者所有企業、残りが地方公益事業体
デンマークの風力発電の推進政策
「風力発電100MW建設計画(1985)」、「同(1990)」
発電容量600MW(1995.国内電力の3.5%)を2005年までに1500MW(10%)へ
原子力をやめ、再生可能エネルギー開発研究に転換、風力は世界一の技術水準を獲得
風力発電所建設に1979年より助成金30%、現在は発電コストが火力発電並になり廃 止されているが、7ー8年運転すれば設置費は回収できる
住民参加:風力発電機の75%は個人または共同組合所有
投資資格を設置市町村またはその隣接市町村に居住する者に限定
ドイツのエネルギー政策
- CO2排出量:1987年を基準に2005年までに25%削減(1990.6決定) 統合後、1990年を基準に2005年までに25%削減(1994.10決定)
- 政府決定に沿った作業部会がつくられ、エネルギー供給、交通運輸、建築・構造物、新技術、農林業の分科会を設置して、計画づくりと実行を図る。
- エネルギー分野では、再生可能エネルギーの拡大と省エネ・エネルギー効率向上を柱。
- 国に電力買い取り義務「連邦電力買い取り法」(1991.1.実施)
- 風力発電推進計画「100MWウインド」(1989)、「250MWウインド」(1987.開始)
系統連係を条件に、風力発電電力を22.61Pf;約18円/KWHで10年間売電可。
自家消費の場合は、10年間、政府から8Pf/KWHの奨励金
- 太陽電池推進計画「1000ルーフトッププラン」(90.9.)
設置費の70%助成(政府50、州20)による住宅2,250戸への太陽光発電システム設置計画。
- 自治体独自のエネルギー政策
「アーヘンモデル」(95.1.実施)
太陽電池、風力による電力を長期間、高価買い取り制
初年度の導入者は、太陽電池;2DM/KWH(電力料金の10倍),20年、
風力;0.25DM/KWH(電力料 金の3割増), 15年。早期導入者ほど高価で有利
水力とバイオマス;0.17DM。市エネルギー上下水道公社が買上げ。
財源;社会コストで負担(電気料金を毎年1%ずつ上げて賄う)。
「フライブルグ市PV助成計画」(94.1.実施)
太陽光発電に対する助成。
電力のピーク負荷時、中間負荷時、低負荷時により買い上げ価格に差をつけ、それぞれ電力料金の245%(2年間は1,298%),
140%, 63%で市エネルギー水供給公社が買い上げ
連係の配線費用やメーターは無償提供。 3万DMを上限に低利融資制度など。
- 市民、民間団体の取り組み
太陽光共同発電所設置運動(フライブルグ市でサッカー場の屋根や銀行のビルなどに設置)
日本のエネルギー政策への提言
「国際的責務を果たし得る科学的・長期的視点に立つ政策への転換」
(内容)
原子力重視のエネルギー政策を再生可能エネルギー重視へ転換
新規原子力発電建設の停止と原子力開発費の大幅削減または廃止
- 熱電併給以外の化石燃料利用の火力発電所の建設禁止
- 太陽光発電の住宅設置への補助金制度の飛躍的拡大(補助率、対象とも)と市民による共同設置に対しても補助金を適用、設置に対する優遇措置
発電容量;総電力生産の20%程度は十分に可能
風力発電導入の積極的推進、現状は不十分
導入促進のための法整備、市民・共同所有方式の推進・助成制度
バイオマス(農林漁業廃棄物など)の利用促進と減反政策の廃止(農地の有効利用)
未利用エネルギーやコージェネによる熱供給事業の拡大
日本熱供給事業協会の大企業中心・集中方式でなく、市民参加・全面方式への転換
エネルギー的にみた社会的無駄の点検(輸送システムの鉄道重視、自動販売機の制限、自衛隊関係の縮小など)
アーヘン・モデルやフライブルグ方式のような方式のような設置者が不利益を被らない制度や炭素税など環境税の導入の検討、
廃棄物関連法、オゾン層保護法の抜本的改正
- 環境教育・啓蒙の充実と普及による市民の環境意識向上
アジア途上国への火力発電や原子力発電のプラント輸出の禁止、再生可能エネルギー利用発電普及のための積極的援助
以上。