陶芸Q&A(全覧)
Q1.轆轤(おおっ!これでろくろって読むのか!さすがATOK)って難しいんでしょうか?よく、ドラマのワンシーンでいいところまで行くんだけど壊れちゃったりするでしょ?やっぱり素人がやるとああなるんですか?
A1.昨今、よくやっているドラマは、とにかく信用しないのが一番ですね。だって、良いところまで行かないもの。初心者のロクロって。あれは、一応、形になったのが壊れるの方がドラマチックだから、そうしているんですよ。本当は、ああいう風になったら儲け物で、あそこまで行かないうちにノックアウトしちゃう人が多いんです。
でも、あくまでもロクロは単なる技術ですから、地道に練習すれば、形は作れるようになりますよ。(でも、一説には菊練り3年、ロクロ8年って言うんだけどね。)そこから先、ロクロを如何に自分の道具として使用できるかって事になると、話は別ですけどもね。
Q2.本当に綺麗な油滴はそれこそ本当に美しく、見ていて飽きないのですが。油滴は還元焼成なのでしょうか?だとしたら電気窯では無理でしょうか・・。 油滴とは関係ないのですが、落ち葉は事業系ゴミとしては出さずに、ため込んで灰にして釉薬をつくっては?
A2. うううううぅぅぅぅっぅ。辛いっす。何が辛いって、この手の結晶系釉薬の話を分かり易くするのは、1才の子供に相対性理論を理解させるくらいの難しさがあるっすよ。それから、根本的に、間違っている所があるっすーーー。で、頭を抱えていても仕方がないので、まず、訂正から先にしましょう。
油滴天目には、酸化と還元の両方があります。有名なのは酸化(OF)の方で、昨今のラスター天目というやつが還元(RF)であることが多いですね(こっちの方が綺麗に見えるからだと思うけども)。それから、電気窯は還元ができないと思っていらっしゃる方が非常に多くて困るんですが(この前も、その手の質問をうちの陶芸教室に電話してきた人がいる。会員でもないのに、何故?)、電気窯でも還元はできます。要は窯内の雰囲気を酸欠にすれば良いのですから、方法はいろいろありますが、一番簡単なのは、炭をいれて一酸化炭素を発生させることですね。
それから、電気窯は熱源として使用しているカンタル線が、昇温の際に熱分解してガスを発生させるので、完全な酸化焼成はできないそうです。いわば、中性炎といったところでしょうかね。ただ、限りなく酸化に近いので、結果、釉薬の色が酸化になります。
で、質問の回答なんですけども、油滴の話は、申し訳ないのですが別な発言とさせて頂きます。(かなり長い話になりそうなので)
尚、電気窯で酸化と還元のどちらが窯を損傷するか?ですが、これは、非常に難しく、極論で言いますと、酸化の方が電熱線の消耗が激しく、炉壁の消耗は少ないです。逆に、還元は炉壁の消耗が激しく、電熱線の消耗が少なくなります。従って、どちらで焚いても、1000回くらいが窯の限界のようですね。(もちろん、焚くことに関してはそれ以上できますが、昇温しずらくなったりという弊害が出てきます。)あと、電気とガスとでは、釉薬の上がりは全く違います。ガス窯専門に作っていらっしゃる会社の方とお話をしますと、「電気窯みたいな、でかいトースターとは違いますから」と言いますから、やはり、電気窯はでかいトースター式の焼方になるんでしょう。この言葉から、何となく違いは分かりますね。
まぁ、つけ加えると、電気はおっしゃるとおり輻射熱(対物放射)ですから、外側の陶器が発した熱が伝わって、中の陶器に熱を伝えるという形になります。(これで、焼むらがなくなるわけですが。)つまり、ガスのように陶器の隙間を縫って炎が中の陶器に当たるのではないですから、焼具合は当然、変わってくるでしょう。
「落ち葉の釉薬利用について」
落ち葉を、釉薬として使用できるだけの量を確保するには、一般事業ゴミとして出る落ち葉の量では、話にならないと思いますよ。私も、そう思って大学時代に、学校中の落ち葉を用務員さんからもらって作ったことがありますが、バケツ1杯分くらいしかできませんでした。しかも、ああいった木灰は、非結晶体にするための特殊な焼成法で作りますから、かなりの技術がいるんです。
それと、葉っぱは大抵、高熱灼減成分や珪酸分が多く、釉薬のカルシウム分として使用することは出来ないことが多いようです。(実際、釉薬用の灰は、木の幹を焼成した物です。)また、木はその生息地や木そのものの部分(木の下の方の葉と上の方の葉でも違います)、時期によっても非常に成分比率が異なるので、常に一定のクオリティーを確保することができません。その為、釉薬に使用するには、それだけのクオリティーを確保するために多量の灰を精製し、また、蓄積・混成させなければなりません。たびたび、テストピースを作って釉調をテストする必要もあるでしょう。従って、事実上、事業ゴミの落ち葉を釉薬の灰として使用するのは、無理と考えた方がいいと思います。
もちろん、趣味として、同じクオリティーを確保する必要がない場合には、それほどの心配は必要ないでしょうけども。
ここまで読んで、もし頭が痛くなるようでしたら、油滴の話はかなり頭が痛くなりますから、覚悟が必要でしょう。もう少し考えて、なるべく頭が痛くならないような説明を次回、いたしますので、少々、お待ち下さい。
Q3.ところでラスター天目って?非結晶体(←これって世に言うアモルファスですか)でないとダメなんでしょうか?高温灼減成分って何ですか? 珪酸分では焼成でガラス化しないんでしょうか?
A3.ラスター天目は、その名の通り、ラスターがかっている状態ですから、一目で分かると思いますよ。虹色の加減が、大きいですよね。もし、小さいようでしたら、それは還元落としの時間が短いものと考えられます。
え〜と、それから、釉の成分の質問ですね。
非結晶はアモルファスが大切なのではなく、高温でイオン化するかどうか(つまり、分解しやすか)が問題になります。釉薬に使用する原料でも、青磁で発色する鉄の青はイオン化が必須の条件ですから、酸化第二鉄(結晶)よりも第一鉄(非結晶)を使用します。辰砂を作る場合も(これは本来、イオン化した後のコロイドという再結晶がポイントですけども)、酸化銅よりも炭酸銅などを使用して反応を促進させます。通常の基礎釉の場合も、石灰分に白石石灰よりも、ネズミ石灰を使用するのはその為です。従って、灰を使う際にも、通常、焚き火などで出来た白い灰は反応性が良くありません。(とくに藁灰。)くすぶらせて長時間低温で焼成した黒い灰が使われます。ただし、ここで出来る黒は当然、炭素ですから、焼成中には揮発して(揮発じゃないですけども、なくなってしまいます。これが、高熱灼減成分です。高熱灼減は、大体が炭素と水(物理的結晶水)ですけども、木灰は、この成分が多く(有機物ですから当たり前ですけども)、葉になると、殆どがその成分です。つまり、なくなってしまう成分が多いってことですね。
珪酸分は、おっしゃるとおりガラスの成分ですが、葉っぱの釉薬はガラスの成分が多すぎて、木灰のような扱いは難しいという事です。カルシウム分を別に入れれば問題はないでしょうが、入れないと、釉薬にはなりません。珪酸分は単体では釉化する温度が極めて高温ですから、フラックスとなる物を入れないと熔けませんからね。
Q4.電気窯の横からガスの炎を入れたりして還元焼成したり出来るという話は聞いたことがありますが、窯の損傷を気にしてしまいます。電気窯は熱源として使用しているカンタル線が、昇温の際に熱分解してガスを発生させるので、云々…
ふぅん、そうすると、この線は窯を焚くたびに熱分解を繰り返し、熱効率も悪くなり、ついには切れちゃうってことなんですか?
又、電熱線の熱は輻射熱が主で、登り等の窯は直接炎が発生している・・・。この違いが焼成に於ける反応に何か差を与えているように思えてならないんですが。
A4.線がすぐに切れるっていうことはないと思いますけども、線が細くなるということはあるでしょうねぇ。一応、うちの陶芸教室では1カ月に4〜6回のペースで窯を焚いて、5年を目途に線の張り替えをしていますが、それでも、「かなりきてますねぇ。」と窯屋さんには言われます。
確かに熱効率は、1年目と2年目ではかなり差が出ると思いますし。季節による温度、湿気等の差を考慮しても、やはり、線の劣化によって1250度あたりの温度域までいく時間は徐々に長くなるようです。
あ、そういえば、私がいた大学の窯は、20年という、妖怪化してもおかしくない年期の入った窯でしたが、切れてました。窯を焚くごとにブチブチ切れるので、ガスバーナーで線を焼いて修理していたのを思い出しましたから、やっぱり、切れますね。線。それ以前に、線が前に飛び出してくるようになりますけどね。
それから、電気窯で酸化と還元のどちらが窯を損傷するか?ですが、これは、非常に難しく、極論で言いますと、酸化の方が電熱線の消耗が激しく、炉壁の消耗は少ないです。逆に、還元は炉壁の消耗が激しく、電熱線の消耗が少なくなります。従って、どちらで焚いても、1000回くらいが窯の限界のようですね。(もちろん、焚くことに関してはそれ以上できますが、昇温しずらくなったりという弊害が出てきます。)あと、電気とガスとでは、釉薬の上がりは全く違います。ガス窯専門に作っていらっしゃる会社の方とお話をしますと、「電気窯みたいな、でかいトースターとは違いますから」と言いますから、やはり、電気窯はでかいトースター式の焼方になるんでしょう。この言葉から、何となく違いは分かりますね。
まぁ、つけ加えると、電気はおっしゃるとおり輻射熱(対物放射)ですから、外側の陶器が発した熱が伝わって、中の陶器に熱を伝えるという形になります。(これで、焼むらがなくなるわけですが。)つまり、ガスのように陶器の隙間を縫って炎が中の陶器に当たるのではないですから、焼具合は当然、変わってくるでしょう。
Q5.昔そごうで、「陶磁器人形と仲間たち」という瀬戸輸出陶磁器工業組合青年部の創立20周年記念事業を見てきたのですが実演コーナーや、ビデオで、制作過程を説明していました。釉薬を使った絵付けの薬は、シンナーのように、きついにおいでした。「これを塗って、もう一度焼くと、この部分が、金色になるのだよ」と瀬戸のおじさまが、おしえてくれました。これはどういうものですか?
又、この中で、「松ぼっくりを釉薬に混入すると、おりべの緑が鮮やかになる」という説明があったのですが、??どうして?
A5.え?そう?なんで?何の臭いがするんでしょ?
あ、もしかして、それ、上絵具でしょうかねぇ。だとしたら、膠かテレピン油が入っているからじゃないでしょうか。布海苔(ふのり)ならば、それほど臭いしないと思うし。(腐っていれば別だけども)まつぼっくりについてはわかりませんので調べてみます。
Q6.貴族の日常の器は、木の盃や、お椀ですよね? 昔の絵巻を見て、そんな印象を持っていました。そもそも、御飯茶碗が、焼物になったのは、いつの時代からでしょう?
A6.その昔、私が学生だった頃(10年以上前)古典の時間に読んだ文に 「酒の肴に何か無いかと、紙燭をともして探し回ったら、素焼きのかけらに味噌が付いて残っていたのを見つけたので、これを肴にして二人で飲もう」 としている内容の物があったように思います。(出展は忘れました)
この原文で覚えているのは「紙燭」「かわらけ」「『たうべん』と」だけです。
何時の時代の出来事を書いた物か忘れましたので何とも言えませんが、紙燭を使う、酒を飲む、肴として味噌があったのでこれで「我慢」する、などから庶民生活の話ではないと記憶しています。ですから貴族?は日常の中で「かわらけ」も使用していたと思います。(飛躍したかな?)
Q7.同僚にも、焼締めをする人がいますけども、その人は作品を画廊に出す前に、サラダオイルを何度か塗っていました。
「なんで、そんなことするの?」と聞いたら、「こうすると、器がしっとりするし、水漏れ防止にもなるんだよ。」って事でした。
A7.釉の掛からない器で、お膳が傷付くのが嫌で、底に、透明のマニュキュア塗ったりはしますが。においの比較的少ないのは椿油ですが、それでも嫌う人は嫌います。でも、焼き締めの場合、これを塗るのと塗らないのとでは、ずいぶん色艶に差が出ます。焼締めにサラダ油は、そんなにしてなかったような気がしますけどねぇ。そういえば学生の頃アルバイトで焼締め作品の展示をしたことがありますがその時、ぬるぬるしていて落としたらえらいこっちゃと思ったことがありましたがあれがそうだったのかしら?。
Q8.備前焼って、肌が、茶色いのと、赤いのとありますけど、どう違うのですか?
A8.「色が違います」としか言いようがない....
ふざけてるんじゃなくて、僕にも説明できない。土と温度と...そんなこと言ってたらやきものはすべてそうですから。....説明にならない。
基本的には酸化・還元の雰囲気に寄るところが大きいと思います。備前の土の中には多量の鉄が入っていますが、その鉄が還元雰囲気になると土の表面に析出しやすくなります。(逆に、酸化は析出しにくい。)また、鉄は還元だと「酸化第一鉄」という鉄になり、これは黒い色をしています。酸化の場合は「酸化第二鉄」という錆色をした赤い鉄色になります。炎は、場所にって、この雰囲気の変化がでますし、窯も場所によって酸化と還元の差が出来る部分があったりします。それで、その雰囲気に応じて鉄の析出や性質が変化しているのではないか。と言われています。
また、ついでですけども、備前では藁を器に撒いて「火襷(ひだすき)」という赤い線をだしたりしますが、これも土の中の鉄を、藁が持つアルカリ分によって表面に析出させるという効果によるものです。
Q9.上絵具は、釉薬じゃないの?
A9.簡単に言うと、上絵具は釉薬です。
ただ、普通、器に掛ける釉薬が1250度内外なのに対して、上絵具は650〜800度でガラス化するようになっている「低温釉」という分類に入っています。(ちなみに、1250度あたりで熔ける釉薬を「高温釉」というわけですね。)
では、なぜ、「上絵具」などと言うかと申しますと、本来は、高温釉のように全面を着彩するためのものではなく、線や、ある程度の面をぬるための、いわゆる「絵を描くため」の釉薬だからです。つまり、「釉薬(高温釉)の上に絵を描く釉薬」ということで、正式には「釉上絵付けの絵具」と言うべきなのでしょう。(ちなみに、高温釉の下に絵を描くための着色用酸化金属を下絵具と、いいます。古伊万里焼などにある青い線描画が代表的なものですね。)
それで、Sさんが見た物は、上絵具の中でも特殊な「金彩」というものですね。これは近年になって開発された「水金」というやつで、730度で金を上絵として焼き付けるための特殊な釉薬です。一応、説明しますと、金彩は、硝酸ビスマスという金属を繋ぎにして金の膜を器の表面に付けるもので、二つの金属を溶かすために「テレピン(ターペンタイン)」という松油を精製した物を使用します。これが、Sさんが嗅いだツ〜ンとした臭いの原因ですね。(実は私、油絵科出身なので、この辺の油に関しては結構、詳しい。) で、金彩や銀彩(他にもあるけど)などのビスマス金属を利用した特殊な上絵付け以外の場合には、テレピンではなく、水に釉薬を溶かしますが、下に高温釉がすでに焼き付けてあるので、水に溶かした釉薬では流れて、絵を描く事ができません。それで、釉薬の粘性を高めるために「膠(にかわ)」という動物(主に鹿や兎)の油脂を入れてエマルジョンという状態(化粧品でもありますよね)にして、絵付けをするわけです。
あ、そうそう。ちなみに、瀬戸の磁器人形は世界最高水準のしかもシェアー世界一だそうですよ。ヨーロッパの人形でも、実はmade
in Japanというのは、知られざる事実だそうです。(Japanって表記しないらしい。)
Q10.緋(火)襷で使用する藁は一度、塩水に浸してから巻く方がきれいに襷が出るといってました。
A10.藁を塩水に浸けるかどうかは、土の性質に因るのだと思います。
藁にも粳米と、もち米の藁がありますから、そのどちらを使用するかによっても、藁の使用方法は違うそうです。大抵は、粳米の方を使用した方が襷が綺麗にでると言われているそうですが、どうなんでしょう?
それはさておき、藁にもナトリウムなどのアルカリ分の多いものと少ないものとがあります。少ない場合には当然、塩水に漬けなければなりませんが、私が東急ハンズで買った藁で実験したところ(信楽水簸土(やや赤土)、および合成備前土使用)、塩水に浸けると、逆にアルカリ分が多すぎて藁の襷がぼやけてしまった事があります。(緋色が強く出すぎたって事ですね。)また、合成備前土だと、鉄との反応が強すぎて、少量の火膨れが見られました。素地が浸食されすぎたようです。しかし、ただ藁を撒いただけだと、何故か弱く、冷水に浸けてから撒いたものが、一番、襷という感じで出ていました。(理由は定かではありません。)ちなみに、緋色そのものは、どちらの土も似たような赤色でしたから、蛙目系の粘土に適量の鉄が混入されていると、それなりの襷はでるようです。
Q11.還元落とし、とは・・・
A11.通常の還元の窯焚きは、昇温期に還元をかけ、目的の温度(物質温度)近辺になったら、還元を止め、その後、ねらしなどの操作をした後、火を止めて、冷却期に入ります。しかし、還元落としは、この冷却期まで窯の中を還元状態にするように、操作をする焚き方です。目的は様々ありますが、主に、この還元落としをすると、金属のラスター作用が助長されるという特徴を狙ったものが多いようです。(つまり、結晶釉系の釉薬などでは釉表面に金属分子が析出・結晶化しやすくなるわけですね。)鉄やマンガン、銅などの調合を上手く行い、この還元落としをかけてやると、まるで金を塗ったような黄銅鉱(たぶん)が出るときがあります。私は、一応、それを「ブロンズ釉」と呼んで使っています。
Q12.釉薬と金属イオンとの関係
A12.「釉薬に使用する時、その物質がどれだけ釉ガラスと反応しやすいか、あるいは、釉薬に溶け込むかが問題になります。」つまり、安定な分子結合の結晶質よりも、不安定な分子結合の非結晶質の方が、イオン化して釉薬に溶け込んだり、釉ガラスと反応する可能性が高くなる。という事です。で、反応性が高くなると、釉薬が良く熔けたり、金属の発色が良くなったりするわけですね。高温状態では、分子の運動が活発になりやがて結合が外れてきますが、非結晶質の場合、その結合が外れる率が高くなると言い換えても良いかもしれません。
ですから石灰は非結晶質のものを使用する方が、珪酸との反応性が良くなり、鉄などの金属は釉ガラスに溶け込んで発色が冴えるという訳です。
Q13.イオンと鉄の発色について
A13.釉薬に使用する原料は、大前提として水に溶けないもの。つまり、食塩のように、水に入れただけでイオン化してしまわないこと。というのがありますね。理由は簡単で、水に溶けてイオン化してしまうと、釉掛けの際に素地にまで浸透して素地そのものを破壊してしまう可能性が高いからです。だから、水溶性のものは、使用できません。そうすると、鉄を釉薬原料として使用する為には、酸化第二鉄または酸化第一鉄、あるいは珪酸鉄ということになりますが、ご存知のように鉄の酸化物は安定性が高いですから、高温で釉中に溶け込ませる為には、かなり高温で焼き抜く必要があります。特に、青磁はイオン発色の典型ですし、釉中の鉄が完全に釉ガラスに溶け込まなければ、あの深い青色(または青緑色)は発色しません。そこで、安定性の弱い珪酸鉄を使用し、釉中でイオン化して釉ガラスに溶け込みやすくするわけです。
ちなみに、酸化第二鉄というのは赤色(漆の赤に使用しますから、ご存知ですね)をしており、釉として使用すると黄色や黒を簡単に出すことができますが、青磁の澄んだ青色を出すのは大変です。第一鉄は黒色ですから、天目などの黒い釉に使用しますが、青磁の青色に使用すると少々、くすみが強くなることがあります。珪酸鉄も黒色をしていますが、酸化第一鉄よりは、先の説明の通り、発色条件が有利なのです。
Q14.カルシウム入りゴミ袋について
A14.東京都の炭酸カルシウム入りゴミ袋は、炎の勢いを無くすために使用しています。だから、共通性というよりも、釉薬とは全く逆の使用の仕方ですね。東京都はゴミ焼却炉に耐火性の低い煉瓦を使用しているので、可燃ゴミ中にプラスチックなどの石油類が入っていると、温度上昇が起こって炉の臨界点に達してしまうそうです。これは、塩化ビニル矢ポリエチレンのゴミ袋にも言えることなので、東京都ではそれに炭酸カルシウムを入れて温度の上昇を抑えているそうです。で、カルシウムというのはフラックスと言って、そのもの自体の液化温度は高温だけれども、他のものと反応して、その液化温度を下げる働きをする物質です。ちなみに、カルシウムの反応温度は1100度以上ですから、1250度まで出す陶芸の窯ならばいざ知らず、700度程度が限界と言われるゴミ焼却炉では、焼成の反応とは関係ないでしょうねぇ。
Q15.金彩と金継ぎは違うの?
A15.最終的に金色になるって事では同じですね。でも、全然、違います。残念ですけども。
金彩というのは、あくまでも700度以上の温度で焼いて、釉表面に「焼き付け」て、釉薬と一体化させるという事が目的です。金継ぎの場合は、破損個所を漆(最近は合成樹脂のパテを使ったりしますけども。)で埋めて、それに金のコーティングをしておくというのが目的ですね。たまに、漆を硬化させるために150度位で焼くときもあるようですが、これは金彩の焼き付けるとは、意味あいが全然違います。
Q16.古い時代の色を使わないのはどうして?
A16.これは、至って単純な理由で、古陶磁の再現は、現代の科学をもってしても不可能に近いからです。では、どうして不可能か?というと、特に釉薬は、発色条件となる要素が非常に多様、かつ、複雑に関係しています。「材料の種類」「調合方法」「窯の焚き方」「焼く温度」その他諸々。とにかくそれらの条件を全て一致させないと同様の発色にはならないのです。(しかも、窯なんて本当に焼成が安定しないし。)
また、これらの事は「一子相伝」が昔から基本だったので、技術が他に流れず、相伝が途絶えたら、もう再現は不可能になってしまうわけです。一応、そうした古陶磁の再現に一生をかけている人が沢山いらっしゃるんですが、それでも、難しいんですよね。裏を返すと、それだけ陶芸というのは、複雑な物だってことでしょうか。大体、私だって、一度作ったオブジェの色を同様に再現するのが出来なくて困ることがあるくらいですから。
Q17.備前のごまって何?
A17.ごまは、燃料の松の灰が器に飛着して溶着したもので、ごまを降りかけたような模様からこういわれますが、その溶け具合によって少しずつ表情が異なります。溶ける寸前のがさがさした肌のものを「かせごま」と言い、壷などにはよく似合いますが、茶碗など茶道具にはとろりと溶けたごまが好まれるようです。しかし、温度が上がりすぎて必要以上の光沢が出るのも味消しです。適度に抑制の効いたごまが良しとされます。光沢度と同時に色相も重要です。黒すぎてもだめ、白すぎてもだめです。(これは、きまりじゃなくて、そういう美意識が存在するわけですね。溶け具合に関しても同様です。)このような色の出来不出来は、燃料の松や窯の湿気の多少によるところが大きいようです。多少湿気がある方が深みのある色が出ます。しかし湿気が多すぎると緑がかったごまになります。
Q18.窯も場所によって酸化と還元の差が出来る部分があると言うことですが、では、一度、登り窯を焚くと、窯出しの時に、茶色い備前も、赤い備前も、同じ窯から出てくるのですか?
A18.出てくるのです。ついでに灰色(サンギリ)の備前も同じ窯から出てくるのですよ。穴窯だと、こういうことは良くありますよね。登り窯は穴窯よりも安定性が高いですが、部屋によって調節かけると、出来るでしょうねぇ。
Q19.セトモノって日常使うお茶碗とかの代名詞になってますよね?これっていつ頃から、どーしてこう呼ぶようになったんでしょー?
A19.セトモノはもともと、愛知県の瀬戸市辺りで作られた良質の染め付け磁器を主に指します。これからも分かるとおり、「瀬戸地方の磁器もの」で、「セトモノ」になります。と、これだと余りにも短絡的だから、もう少し詳しく言うと・・・
瀬戸地方は昔からの巨大な窯業地で、古くは古代じ器窯(「じ」は次の下に瓦と書く字。「じ器」で陶器の事。うちのIMには無かったっす。)から始まり、中世施釉陶器窯、近代16世紀辺りの大窯、17世紀以降の連房式登りがままで、とにかく窯のオンパレードという土地柄ですね。つまり、それだけ様々な物も焼かれているという事ですね。
で、この窯の産地が江戸時代になって尾張藩の産業主要地として保護を受けるんですが、1800年頃、九州から高度な磁器の製法を修得して持ち帰って来た「加藤民吉」というおっさんが良質染め付け磁器を大量に生産することに成功して、「国産良質白磁」という新分野で国内に市場を広げることになったわけ
です。で、それ以来、瀬戸港は磁器を主に東日本(瀬戸地方近辺まで含む)に輸出する巨大マーケティングの本拠地として君臨するようになり、後に陶磁器全般の輸出で日本一の市場になることで、一般的に、陶磁器を「セトモノ(瀬戸産、あるいは瀬戸から輸出された陶磁器もの)」と呼ぶようになったわけですね。
以前に、ちょっとだけ触れたことがありますけども、西日本(中部地方以西)では、この瀬戸とは別に「佐賀県の唐津」が陶磁器の主要輸出港としてマーケティングを持っていましたので、西日本では今でも陶磁器を「カラツモノ」と呼ぶ事が多いそうです。つまり、そういった、輸出港が呼び方の発端になっているわけですね。
Q20.よく「備前風」なんてのをみます。なんじゃい、「風」って。 この「ナントカ風」っていうのは一体何なのでしょうか?
A20.ところで「風」ね。私も分かんないっす。あんまり焼き物の事を知らない人のためのステレオタイプな説明として適切な表現を選んだら、そうなったって感じでしょうねぇ。
私はこの表現、嫌いでね。「作者のオリジナルを、そういう「風」で括るんじゃない。」と思ったりする。でも、作家の中には「○○風で作った。」などという恥ずかしいコメントを自ら発している方もいますから、この「風」という括り方は、やっぱり無くならないんだろうなぁ。
陶芸では「技法」の表現として「手」という言葉を使用します。「三島手」とか「金襴手」とか。何故、そう言うのかは、まだ調べたことがないので知らないんですけども、それも面白いですよねぇ。
備前風も、どっちかというと「備前手」かもしれませんね。(そんな手法は無いと思うけども。)拓器質の無釉の器を「備前」と表現しているんでしょうけども、最近ではとにかく焼締めてあれば「備前」って言ってますから、いい加減なもんです。東京では、この言葉が付くと、値段が上がるそうです。アホらしい話ですけどもね。
Q21.口当たりの悪さ、といえば、備前焼き。茶碗、ぐい呑み、ビアマグ、ありますよね。ちょっと苦手なのです。ビアマグは、好きな方は、ビールの泡がきめ細やかで、なかなか泡が消えない、とか仰るのですが、口をつける器としての備前焼って、ちょっと…?!
A21.作りってのは、器を作る際に最も大切なところですよね。きっと。私は、どうしても使う人の事よりも造形的な見方から入っちゃうんですけども、やっぱり口は大切ですよねぇ。無釉だとどうしても、視覚的にザラっとしたものを感じ取ってしまうので、かなり嫌悪感を抱く方は多いようですけども、作るときに処理をしっかりしてやれば、それほどザラっとすることはないんですよねぇ。本当は。まして、備前はきめの細かい土だから、見た目ほど口当たりは悪くないはずですし、焼結という現象でほぼガラス化していますから、そんなにザラっとはしないんですけどもねぇ。
私も自分で使う分くらいは器を作りますけども、結構、長時間、液体を入れておくもの以外は、わりとポイントになる部分だけ釉薬をかけて、あとは焼締める事って多いような気がします。特に湯飲みは、釉薬をかけると、口元の温度が「温かい」よりも「熱い」って感じるようになってしまうので、焼締めること多いかもしれません。
ところでいまだに日本人の多くは、陶器に出来る炎の跡というのが好きですよね。大抵、高島屋などのデパートの一角でやっている器展では、そういうものに高値が付いて、やりとりされていますから、マニアは多いんでしょう。
まぁ、自然に生まれる形態や文様ってのは、人力ではどうしようもない自然との格差ってのを感じちゃいますからね。それを如実に写し取った火跡は、やっぱり、そこに何かを感じちゃうんでしょう。
ただ、海外の陶器(中国やヨーロッパなど)は、あくまでも自然を人間が征服するという感じの形態作りの思想が強いようで、自然の介入というものを遮断、または、極力排除する方向性になっていますね。力技と言ってもいいかもしれません。彫刻などは、特に作者の思想というものが100パーセント要求されるものですから、自然の介入は許されません。あくまでも作り手の要求が通っていないと、失敗作です。これは、工芸にも言えることで、自然を写したティーカップはあっても、自然を取り込んだティーカップが無いという事からも、分かると思いますけど。
まあ、当地でもね、うつわは「カラツ」を使うことが多かったんですよ。(昔の人はセトモノとは言わなんだ、こちらでは)ごはんを備前焼で食べるのは最初抵抗があるでしょうね。ぼくなんかでもそうですから。でも、慣れればまたいいもんですけど。...いやあ、慣れですよ、どんどん使いなはれ! きっとよくなるから。酒やビールもいいよ、絶対。「泡が云々…」はね、まあそうなんでしょうけど、僕は敢えて言わないことにしている。喜んでいる人に「ああ、そうかいな」という気はないが、ことさら宣伝するほどのことでないでしょう。
Q22.最近色付き備前というのを時々見かけるのですが
A22.俗に色絵備前とも言われるものがあります。これは江戸時代に主に池田藩の御用窯で焼かれていたものです。素焼きの上へ絵の具で絵付けします。たしか、それ以上には焼かなかったのだと思います。明治になっても作っていた人がいたはずです。人形など置物がほとんどですね。
現在では彩色した備前が存在します。、「色彩備前」といって山本陶秀さんの三男坊 山本 出さんという方が独自路線を歩みつつやっておられるものの様です。これは器としての備前の本質から言うと異端であり論議をかもしていると思いました。もしかしたらその手の備前のことかも知れませんね。
Q23. おおっ、陶芸の歴史。第一、第二、第三期ってどんなのですか?
A23.現代陶芸は言ってみれば「伝統的価値観」との闘いみたいな所があって、その対立を前提にして、次の世代が生まれるという構図があります。で、「第一世代」は伝統的価値観を残しながらも、それを活かして新たな土の造形を行っていこうという製作方針を持っていた世代ですね。八木一夫なんていう人が、その代表です。「第二世代」は、この伝統的価値観というものに反抗的姿勢をとりながら製作を行っていく世代です。たとえば、「炎」というものにどうしても固執してしまう伝統感に対して「電気窯」という炎を使わない焼方をすることで、新たな陶芸における火というものの位置づけや、焼くということの意味を考える、といった製作を行います。「第三世代」は、土を自らの表現媒体として考慮するだけで、あまり、そういった伝統などは考えないというスタンスを持った製作を行います。つまり、極端に言うと、「土は使いやすいから使う」とか「自分の思った形を表現するのに一番適していたから使った」程度で、「陶芸の自立性」とか「土の自立性」を考える、みたいなものとは無縁な製作活動をします。
そうして、では「第四世代」なんですけども、これが未だ未開な世代なのです。まぁ、前三世代を比較していけば、ある程度、その方向性は見えますけども、それを造形的表現として行っていくという事を考えたときに、その難しさが非常にあるわけです。
勿論、今でも第一〜第三までそれぞれに活動をしていらっしゃる方は沢山いらっしゃいますし、第一以前の製作をしている方も沢山いらっしゃいますから、第四を見つける必要が無いといえば無いのかもしれませんが、私は、どうしても、その第四的製作をしたいと思ってしまうへそ曲がりなんですねぇ。このへそ曲がりは、天性に近いですから。
例えば、< まあ、初心者には初心者の良さがありますが、 安定はしていません。>というコメントでも、「あれ?安定してなきゃいけないの?安定の無いところに、面白さや緊張感もあるような気もするけどなぁ。」ってな突っ込みを入れたくなってしまうわけですよ。
現に、先に話の出た魯山人は、この「不器用さ」や「安定のなさ」を売り物にした陶芸製作をしています。その突き詰めた安定の無さが、緊張感にもなっているわけですよね。(魯山人ほど突き詰められるのは、そのへんの凡人には、無論、できない事ですけども。)
何を前にして、何を後ろにまわして、自己の表現とするか?この駆け引きの度合いが、センスってものなんでしょうねぇ。
Q24.釉薬をあまりかけたくない所にはあらかじめ水を塗ればいいの?。
A24.これは、主に急須を作るときの常道って手です。急須の茶濾しの部分は、穴も小さく沢山あるので、何もせずに釉薬を掛けると穴が釉でふさがってしまいます。まぁ、正直言って、茶濾しには釉が掛かっていても、いなくてもどちらでも良いわけですから、水を打って素地の吸水力を弱めて釉掛けをします。
逆に、少量の水を使う(筆などで水を差すと言いますが)と、釉の付き方が良くなるので、細かい細工をしたときには、細部に必ず水を差して、釉薬が細部にまで掛かるようにします。
同じ水でも、使用する量によって、いろいろな技法が出来ますね。そういえば、先の藁灰を使用した釉薬も、緋色にしたい部分に水を打って釉薬の乗りを悪くし、薄く釉が掛かるようにすると、緋色が出ます。もし、やったことがなければ、一度おためしを。それから、火襷を出す方法で、もっとも簡単なのは、丸二陶料株式会社から出ている「火襷釉」っていうのを買う。たぶん、これって藁灰を水簸したときの上澄み液だと思うんですけども(舐めるとかなりしょっぱいし)、非常によくでます。これを吹き付けてから釉薬を適当に塗り残して掛けると、塗り残しに緋色がでますよ。
釉薬の代わりに、ふのりに松灰を混ぜて塗ったり、歯ブラシで飛ばして焼くと、お手軽備前焼のできあがり。(こんなの、備前じゃないですけども。す、すみません。使い勝手は良いと思います。電気窯でもそれなりに出来上がるし、自分の思ったように緋色が付きますしね。ただ、見る人が見ると分かるので、それが難点ですけども。
Q25.修行に出た大工の棟梁の息子は、親に手紙ではなく自分の削った鉋屑(かんなくず)を封筒に入れて送るんだそうです。棟梁はそれを見てあいつもまだまだだとか、ようやく一人前になったとか判断するんだそうですが、陶芸ではどうでしょうか?
A25.削り方一つで、大工さんの技量や一生懸命さって分かるんでしょうねぇ。陶芸では、さすがに鉋屑は送りませんが、やはり、鉋で削った屑を見ると、ある程度、経験者か、そうでないかの判断は容易につきます。
「陶芸、やったこと無いもので。」とか言って、謙遜なさって入会される方が少なくないのですが、作りは(どうも、わざと)モタモタと作っていても、鉋で高台を削り出すときの、刃のあて方や屑の形をみると、一目瞭然ですからね。まぁ、そこまで気が回らないってのは、やっぱり素人ってことですか。あっはっは。(何を下らないことで、えらそ〜に)
Q26.電気窯で焼いたのですが,不思議なことに白萩釉だと結果的に釉薬が付いていない所は火があたったような色で焼けます。
A26.これは、備前の火襷と同じ理屈に因るものですね。白萩釉は、藁灰を使用した珪酸質の分層釉ですから、釉が付いていないところが緋色になったというよりは、土見の部分が藁灰のナトリウムによって浸食されたからというのが正解だと思います。塩水を掛けても、同様の効果が出ると思いますよ。
あ、それから、珪酸質の釉薬は、長石系(長石多め)の釉薬に比べて凝集性が高いですから、下の土の収縮率が弱く、表面の仕上げを平滑にすると、釉切れが起こりますね。私は、意図的に釉切れや釉縮れを起こしたい時には、スプーンの裏などで表面を磨いてから素焼きし、さらにサンドペーパーを掛けてから釉掛けしたりします。これは、確実。ただ、釉薬の調合を間違うと、全部剥がれてしまって、窯の棚板を全滅される両刃の剣なんですけども。
Q27.二度焼きで色ムラが直るのは「焼もどし」
A27.色ムラが直るのは「焼もどし」って言って、コロイド結晶というものが低温で焼くことに因って再結晶が起こるためだと思います。辰砂釉に代表される銅赤釉は、このようにして焼き戻すことがあります。
Q28.柿衛門に代表される白と、白薩摩に代表される白とは
A28.柿衛門に代表される白と、白薩摩に代表される白とは、素地の性質が180度くらい違うので、あのような瀬戸のサラッとした白と、薩摩のぬっぺりとした白との差がでます。瀬戸の磁器土は、その主な主成分が珪酸という「ガラス質」の物質で、この物質が多くなると「透過性」という光を通す性質が強くなり、その上に赤をのせると、幾分、発色が強調されます。
一方、薩摩白は、カオリン(カオリナイト)という土が主成分なので、ガラスの白い発色とは違い、透過性はありません。また、カオリンは良質の物であっても鉄やチタンがガラス質のものよりも多いので、白の発色に、それらの物が関連して、純白の白さを出しにくいようです。そうした、カオリン質の白に、あの柿衛門の赤をのせると、少々、赤が濁って(くすんで)見えることが多いため、どちらかというと、柿衛門赤よりも透明度のある赤を使用することが多いようです。 ちなみにカオリンとは一次粘土という、熱水作用を受けて鉱物が変化した粘土の名称ですが、その語源は高嶺山(たぶん、本当は「カオリンさん」と読むんだと思う)という中国の山に堆積する白色の粘土にあります。
で、そのカオリンの構成鉱物(粘土)の大多数を占めるのが「カオリナイト」という結晶形態を持つ粘土です。
Q29.貫入について(この他の詳細は電脳陶芸・第二回「貫入の話」を参照してください)
A29.貫入の入り方が変わる最も大きな原因は、土そのものの変化と言うよりも、土と釉薬との膨張収縮率の差にあります。だから、釉薬が全く質的に変化せず、土だけが変わったとすれば、貫入の入り方が変わるのも分かりますが、果たして、釉薬の性状変化がどうなったのかを調べなければ、ハッキリとした事は言えないように思います。
基本的に、貫入の大きさは、表面積変動の大小によるんでしょうが、それに加えて、シリカ四面体の成形によるネットワーク連携の大きさっていうのも重要なんだそうな。(でも、あんまり意味が良く分からないんだけどもね。)私が分かる範囲でお話しすると、早い話が、釉や素地が、どれだけガラス化しているか、ということなんだと思います。つまり、磁器素地に磁器釉をかけると、貫入の発生は極めて起こりにくくなるのに対して、アルカリ成分が増して、素地が土質になると、貫入の発生は大きくなります。この事からも分かるように、原料がガラス(石英)に近づくことで、分子ネットワークが強固になって、貫入の発生も少なくなるんじゃないでしょうか。
ところで、シバリングが発生しているか、していないかを見極める、最も簡単な方法は、「なんでも鑑定団(テレビ東京)」の中島鑑定士さんがやっているように、指で軽く器を弾いて、音で確かめてやるものでしょう。(たぶん、中島さんも、シバリングの有無や、焼き締まりの良し悪しを、あれで調べているんだと思います。)この時、キーンやカーンといった澄んだ音がしていれば、器にシバリングは起こっていません。シバリングがあるときは、コッコッっといった、伸びの悪いくすんだ音がします。(これがまた、妙に悲しい響き。)
ちなみに、貫入は、最初から細かい物が入ることはありません。まず、ながーいものが一本、また一本と入り、やがて、それらの線の間を等分割するように、徐々に貫入が入って、お馴染みの貫入模様になっていきます。私の経験では、長いものだと、半年ぐらいかかって、やっと貫入の模様になったものもありましたから、それほど気にすることもないのではないでしょうか。(ちなみに、早い物だと、半日くらいでそれらしくなりますが。もっとも、その後も徐々に貫入が増えます。)
Q30.お茶碗の蓋が真っ二つに割れちゃったんです。何でひっつければいいですか?
A30.まず、材質が何かに拠るんですけども。
磁器の場合。
これは基本的にアロンαが良いと言われています。但し、ただ接着するのではなく、まず接着面にアロンαを付けて圧着(力いっぱい押しつけること)したあとで、さらに隙間にアロンαを入れるというダブル接着をします。押しつけているんだから、そんなことをしても無駄だろうと思われるかもしれませんが、液体は毛細管現象で隙間の細かいところまで入っていきますので、押しつけて入らない部分は、外から入れてやった方が良いそうです。
アロンαは、もともと手術用に開発された接着剤を応用したものなので、無害だそうですから、本体の接着にも使用できるそうですが、私の経験からすると、アロンαはどうも熱に弱く、かつ、1年以内に大抵、取れてしまうことが多いようですので、私はエポキシ系樹脂を使用しています。
これはA、Bの二つの接着剤を混合させる「2液混合タイプ」と呼ばれる接着剤で、5分硬化とか15分硬化といったように、用途によって硬化する時間が違います。でも、普通、器の修正は5分で良いと思います。エポキシ樹脂は磁器の他、陶器にも使用できる応用範囲の広い接着剤です。これを使用する場合は2液をよく混ぜ合わせ、接着面に塗って圧着し、そのままにします。やがて、硬化したらば、はみ出た部分をカッターで削り落として出来上がりです。透明タイプのものを選べば目立たないでしょう。また、硬化中にある程度余分な接着剤を落とし、金箔を充てると「金継ぎ(共継ぎ)」ができます。
更に、それでも取れる場合は、酢酸ビニル系接着剤を使用します。有名な物に木工用ボンドがありますが、陶器に使用するのは「コンクリメント」という接
着剤です。ただし、酢酸ビニル系は、完全硬化をしませんので(つまり、接着後もプヨプヨしている)、接着後、表面をアロンαやエポキシ樹脂系パテでとめて硬化度を高め、耐水性を強化されなければいけません。接着自体は、接着面に塗って圧着させるだけなので、簡単ですが、その後の強化作業がちょっと技術がいりますので、アロンαかエポキシ系樹脂接着剤でなんとかした方がいいと思います。ってところでしょうか。
Q31.唐津で買った湯呑みが、白い湯呑みで、お湯を入れると、しばらくたつと、水玉の様な、まだら模様が浮き上がってきます(貫入ではないのですけど)お湯を捨てても、しばらくは、ホルスタイン状態で、完全に乾くと(気付くといつの間にか)もとの真っ白に戻っています。
A31.その湯飲みって、粉引きみたいに化粧土がのってたりしませんか?。だとしたら雨漏り手といっていいと思います。雨漏り手は、本来、「雨漏りをしたような模様のあるもの」の総称を「雨漏り手」と言います。
で、雨漏り手が何故出来るかですが、私も詳しいことは分かりません。実を言うと。ただし、素焼きをした素地に、生の土系の白化粧(白い土を泥状に溶いて、それを器に塗ること)をし、さらに、天然藁灰を使用したやや分相系の釉薬を掛けると、かなりの確立で雨漏り手が生じますから、そこから考えると、どうも、この雨漏り手には、釉薬中に出来る空気の泡と、素地と釉薬との密着度が関係しているような感じがします。
天然の木灰を使用した釉薬は、鉱物を原料とした釉薬に比べ、大抵、釉薬中に生じる泡が多くなります。これは、素地から出る水蒸気や釉薬原料の反応による分解作用で生じる物ですが、天然の木灰は、特にこの泡が多く発生し、また残留します。(それで、釉薬に微妙な色の差を作ります。)
で、その泡は、釉薬の熟成中に表面まで上がり、やがて、破裂して釉薬の中から出ていきますが、その際に、釉薬表面に「ピンホール」と呼ばれる小さな孔を作ります。このピンホールは、肉眼で確認できるものから、ちょっと肉眼では確認しづらいものまで大小さまざまですが、雨漏り手は、このピンホールから毛細管現象によって入り込んだ液体(主に水)が、素地と釉薬が密着していない隙間に入って出来る模様です。
前記した、素焼き後に白化粧をした方が雨漏り手が出やすいというのは、素焼き後の素地に、生土の白化粧を塗ると、亀裂や剥離が起こりやすく、よって、素地と釉薬の隙間が出来やすいからでしょう。
「水玉のようなまだら模様」は、まさに、この現象です。通常の雨漏り手は、この隙間に入る液体に色素などがあり(茶などですね)、それが徐々に残留して、渋い色の雨漏りを作ります。
しかし、中には窯から出した時点で雨漏りがすでに生じているものもあるそうで、これは、私も調べましたが、なぜそうなるのかは分かりませんでした。(ただ、想像するに、素地の鉄などが釉薬中のピンホールに集中して表れる御本手のちょっと違うバージョンのような気もします。あくまでも、想像ですが。)
ってことで、お分かり頂けたでしょうか?雨漏り手。
Q32.釉薬の色の話をちょっとだけ
A32.皆さんご存知の通り、陶器には様々な色が使用されています。これらの色の殆どは、着色用酸化金属という高温で焼いても色を失わない(あるいは化学変化を起こして発色する)金属によって付けられているもので、最近では、いくつかの金属をあらかじめ反応させて、高温でも色が安定するように科学的調合を施した「顔料」というものも作られ、陶器で使用できる色は日進月歩で増えています。
ただし、そうした顔料が増えたために、自分が欲しい色を出すためには、それらの顔料を複数混合すれば、複雑な色が作れると思っている方が多いようですが、実は、陶器の色は、そうした単純な混色作用ではありません。
油絵を描く方は、ご存知だと思いますが、色を作る技法には、パレット上で絵の具を混合する「混色」と、画面に油で薄く溶いた絵の具を何層も重ねて色を作る「重色」という二つの技法があります。先の、釉薬に顔料を複数入れるのは、「混色」にあたります。一方、下の土に、何らかの色を付け、更にその上に透明度の高い色付きの釉薬を掛けて複雑な色をだすのが、陶芸における「重色」です。
特に、釉薬は、その成分がほぼガラスですから、素地の色を透過して釉薬の色と純度が高いままの発色で重色されるのです。そして、実は、陶芸の色の深みは、この重色に因って得られる事が多いのです。
一方に「土味(つちあじ)」という言葉があります。これは土を食べたときの味を表現した言葉ではなく(当たり前だって)、土の質感を表現する際に用いる言葉です。この土味は、土の粒子の大きさや、土に含まれる不純物の違いによって語られ、粒子が荒く「石はぜ」と呼ばれる不熔な石が入っている土は「厳しい」とか「男性的」といった土味の表現がされますし、粒子のきめが細かく、不純物も極めて少ない白い土は「柔和」とか「女性的」といった表現がされます。勿論、それら土味の異なる物に同じ釉薬を掛けると、おのずとその感じは変わってきます。
また、土は、単純な視覚的効果の違いと同時に、高温焼成で表面の釉薬が溶けた際に、その釉薬と反応する時の成分の違いも大きな要素となります。科学的な詳細は(頭が痛くなりますので)省略しますが、土には「陶器質、磁器質、せっ器質」という、3つのタイプがあり(本来は、焼成後の吸水率を基準にした区分ですが、普通は質の違いと解釈されます)、同じ白い土であっても、タイプが異なると釉薬の色は非常に変化します。
この辺は、実際に色々な土を焼いてみて、視覚的に理解しないと難しいのですが、とにかく、釉薬の色の差は、釉薬本来が持つ性格によるだけでなく、素地の質感や成分の差も非常に大きく関わるということは、覚えていて損はないと思います。
Q33.「道具」と「作品」の線引き
A33.この線引きは、同時に「実用」と「芸術性」という言葉に置き換えることも出来ると思いますが、美術や芸術の歴史を見てくると、実は、この二つは線引きよりも、融合を目指していたという歴史の方が、近代においては重要な位置を占めています。その最も顕著な例が、「アートアンドクラフツ運動」や、「バウハウス」。また、日本では、少々違う角度から「民芸運動」という動きになっていたんだと思います。つまり、生活という空間にアートを導入するという試みであり、生活の空間にアートを見いだしていくという試みでもありました。
日本に於いてのこれらの試みは、結局、一部のマニアや、茶室から器を出さなかった人々によって、失速し衰退しているような感じ、というのが、私の正直な感想ですが、今尚、これらの融合を求めて作品を作り続けていらっしゃる方も、勿論、沢山いるのは事実です。ただし、それらの人々の多くは、自らの作品を他者の生活空間に配置することに重点を置いており、陶芸そのものと生活空間との融合が本筋になっていることは少ないようです。
従って、難しい薬品使用や、独特な焼成方法という、日常とは切り離された空間を作品の内に持ってしまい、結局、陶芸は「陶芸」でななく「道具」という枠組みを使用者に与えてしまっていることも事実です。
「陶芸」は、本来、食べるモノを自分で採取し、煮炊きし、食事として日々の食卓に出すのと同じように、身近な土を材料に、形を作り、火にくぐらせ、食卓にだすものとされてきました。事実、土器・石器時代の人々は、それぞれの家庭で、食事を作るのと同様に、器を作って食卓に出していました。高額な金を積んで買うことも、金を払って展示してあるモノを見るという事も無かったでしょう。(当たり前ですけども)
それが、どうして、食事と分離してしまったのか。
私は、その鍵が、「壊れにくい高温焼成」と「器を主要産業にした」という社会背景にあるような気がします。まぁ、その変の話は、後々、話していくとして、とにかく、そうした社会背景から、人々は自ら何かを作るという行為を切り離し、そして忘却し、さらに、自らの生活から追いやった。そして、現代(近代)に入って、再び、それらが融合し始める流れが、本当に一部ではありますが出来つつあると、思ったりしています。
Q34.修復の(簡易)金継ぎの方法
A34.補修したパテの部分に、今度は2液混合タイプのエポキシ接着剤(私が使っているのは「エポキシ5分硬化剤」)を塗って、ちょっと置きます。表面を軽く触ってみて、ペトッとするけども、指にくっ付いて来ない程度に硬化したらば、接着剤部分に金箔(安いので良いと思うけども(^_^;))を乗せ、指で擦ってまんべんなく接着させたら、更に接着剤が少し硬化するのを待ってから、瑪瑙の棒(こんなもの家庭には無いから、通常は、ガラス棒とか、ステンレススプーン)で金箔を擦って出来上がり。
エポキシ樹脂での接着なので、漆よりも接着力は強いです。但し、エポキシは臭いが強いですから、臭いが飛ぶまで時間がかかります。お茶に臭いが付くということは無いと思いますが、湯飲みなどは口を近づけると臭うかもしれませんから、気になるようならば、しばらく放置して下さい。
それから私が漆で金継ぎをする場合は、螺鈿(螺鈿って、貼ってから研ぎ出しみたいにして磨くやつですよね)よりも、箔貼りの技法に近いと思います。
東急ハンズで買ってきた漆で欠けた部分を補修し、ムロに入れて十分に乾燥させてから、磨いて形を整えます。(この辺は、簡易金継ぎのパテと似たような感じですね。)その後、補修した部分の周りに、陶画糊(アラビアゴムの液体。)でマスキングをし、金箔を張り付けるための漆が、余計な部分までかからないようにします。エッジが直線の場合や、平らな面に行う時には、エアブラシで使用するマスキングフィルムやマスキングテープなどを使用する場合もあります。マスキング終了後、再び、補修部分に、極少量の膠で溶いた漆を、拭き漆(と言うんだと思う)し、その上に金箔を乗せて、タンポで押さえます。そして、再び、ムロで1週間(以上)置いて漆を固めます。
で、これは完全に聞きかじりなので、正式な方法かどうかは分からないのですが、私は、漆が固まったらば、金箔を酸化チタニウムの粉で磨いています。こうすると、金の光沢がでますね。
ちなみに、金の光沢をもっと落としてくれ、と言われたときには、ストッキングで磨いています。(ストッキング買うの、ちょっと恥ずかしいんだけどもね。)
Q35.瑠璃釉について
A35.陶器に限りませんが、たぶん、青や水色といった瑠璃色は、昔の人にとっては理想の色だったでしょう。瑠璃色は、空の色であり海の色ですが、その実、手に取って近くで見ることは出来ません。青は、近くでみると単なる透明色になってしまいます。その青を、何とか陶磁器に映したい。その結果、生まれた色が砧青磁であったり瑠璃であったりするような気が、私はします。
ま、これはあくまでも憶測なので、信憑性は0ですが、そう考えて瑠璃色を器に使用すると、また違った面持ちもあるのではないでしょうか。
ところで、瑠璃色を発色させるために使用する酸化金属をコバルトと言います。コバルトは1720年頃にドイツのマイセンで使用され始めた金属で、その歴史は比較的新しいものです。
この金属は、非常に着色力が強いのが特徴で、極少量(1〜3%)を釉薬に混入させるだけで、きれいな青〜紺色の発色をします。ただし、産出量が極めて少ないために、非常に高価です。油絵を描く人はご存知だと思いますが、チントではない本物のコバルトブルーは、泣きたくなるほど値段が高いですよね。しかも、値段が「時価」という、非常に不安定な値段なので、大量に買い込むときには、かなり買い時を慎重に厳選しなければなりません。
ま、とにかく着色力が強いのですが、その着色力は、実は釉薬と反応をしないと(もう少し分かり易く言うと、ガラス成分と反応しないと)期待できません。依然、陶土と磁土にコバルトを混ぜて焼いたことがありますが、どちらも5%以下では、瑠璃の特徴的な青色にはなりませんでした。(磁土の方は、それでもパステル調のきれいな青にはなりますが。)但し、コバルトを混ぜた土に透明釉を施釉して焼くと、瑠璃ほど強くはありませんが、少々濁った、やや薄い瑠璃色に発色します。これは、素地表面にあったコバルトが、釉中に熔けたり、釉薬と反応して発色した色でしょう。
このように、コバルトは釉薬に熔けて、青や紺色を出しますが、その被服力は以外に強くはなく、素地の色の影響を受けます。つまり、素地の色が変わると、瑠璃の色の感じも変わるのです。
前々回、重色の話をしましたが、クロムなどの金属に比べ、発色は強くても、被服力が弱いという特殊な効果を利用して、瑠璃釉の色の深みは調節することが出来ます。
Q36.白刷毛に挑戦していますがいつも結果は芳しくありません。問題は地のねずみ色なのですが、これは何の(?)色なのでしょう。鉄分の強い土に、土灰釉で還元で焼くらしい事は分かっているのですが、何時も、真っ茶っ茶になってしまいます。他の作品も同じようにガラス質が出ずに茶色になってしまうところを見ると焼き方が悪いのでしょうか?特に鉄分の多い個所に出るようです。先生は釉薬のかけ方が足りないと言いますが(確かに厚くかけた方がガラス質が残っていい様ですが)どうも納得が行きません。
A36.御質問の件ですが、極端な話、陶芸の結果は複数の要因が微妙に関わって生じることが多いので、原因は多数考えられます。ただ、“
ガラス質が出ずに茶色になってしまう”という事ですから、おそらく、釉薬が薄い(または釉薬の撹拌が悪い)のが原因でしょう。
それに絡んだ事として、以下に、その原因を書いてみました。
まず最初は、土の選別によるものです。
「鉄分の強い土」という事ですので、おそらく陶芸教室で使用しているものは、「信楽水簸土(赤)」または、「特赤」と呼ばれるものでしょう。前者は、ややきめが細かく、焼き締まりの強い土。後者は粒が荒く、焼き締まりが「水簸土」よりも弱い土です。前者を使用の場合は、相当釉薬が薄くない限り、まず地が茶色になることは無いと思いますが、後者の場合ですと、焼成中、素地が釉薬を吸収しますので、特に厚く釉掛けをするようにしないと、結果的に釉薬が薄くなって地が茶色くなることがあります。
次が、素地の厚みです。
これは施釉との関係もあるのですが、施釉時の釉薬の付きは、素地がどれだけの吸水力を有しているかによって変化しますから、磁器のような薄い素地の茶碗を作っていらっしゃるようならば、吸水力が落ちるので、施釉時に2度掛けや3度掛けという特殊な施釉をしなければなりません。本文の“
土灰釉で還元で焼くらしい(以下略)”という文面から察するに、生土段階の処理だけで、乾燥後の後処理については、ノータッチのようね。
施釉は個々の陶芸教室によって解釈が様々ですから、何とも言えませんが、確実に釉を厚く付くようにしたいとお思いならば、器をある程度厚く作っておくのがベストでしょう。
最後が、施釉時の事と、釉薬の調合による問題です。
釉薬の調合上の問題として考えられるのが、「土灰釉」の調合です。「土灰釉」と一口に言っても、その調合は千差万別で、天然灰を使用したものから、合成土灰と称する複数の化学薬品を使用したものまでいろいろありますから、それによって、施釉時の釉薬濃度を微妙に変えないといけません。ちなみに、天然灰使用の場合は、灰の殆どが焼成時に消失してしまうものですから、釉濃度を高くして(水を少なめにする)、厚めに施釉できるようにしますし、合成土灰使用の場合は、焼成消失物質(これを熱量杓減と言います)は少ないですから、天然灰使用よりも濃度をずっと低くして(水を多めにする)おかないと、白く濁った釉になってしまいます。
又、何かの原因で釉薬が薄くなってしまっていることも考えられます。たとえば長い間容器に入れて使っていると、自然蒸発で濃度が変わりますので時々水を加えて攪拌する事があります。この時、水を入れすぎたりすると薄くなるわけです。
一方、施釉に関しても(これは、先の素地の厚みでも少し話していますが)、ずぶ掛け、杓子掛け、浸し掛けなど、施釉の方法を変えると、釉薬の付きも変わります。どの方法で施釉しているかによって、釉薬の付く量も変わりますし、釉掛けする人の癖もありますから、この辺は、釉掛けする本人の杓子によるものが大きいので、よく注意した方が良いでしょう。
で、後は、ちょっと申し上げにくい事なんですが、陶芸教室でバイトを雇って経営をしている場合で、特に、施釉を職員側で行っている場合は、窯入れ前に、沢山の作品に一度に施釉をしなければならないため、途中、かなり撹拌状態や釉薬濃度に気を使ってやらないと、施釉の最初と最後で、かなりの濃度差が生じてしまう事があります。バイトさんの場合(特に学生)、この濃度差を気にせず、ただ機械的に施釉をする方が多いので、監視がしっかりしていないとまずいって話もあります。無論、通っていらっしゃる所がそうだとは申しませんが、この辺は、陶芸教室をやっている人間としては、非常に頭の痛いところであったりします。
いずれにしろ、「釉薬が薄い」という事には、様々な原因がありますから、この辺は、通っていらっしゃる陶芸教室の職員の方と、よくお話されたら良いのではないでしょうか。
Q37.ロクロをしていてへたる理由
A37.ロクロをしていてへたるのは、ひきが薄いからではありません。
私もロクロで薄いものをつくりますが(厚み1ミリ程度)、一度もへたったことはないです。器がへたるのは、挽きに時間をかけすぎて水まわりが起こっている。土の張力を無視した力をかけて、土を痛めている。回転速度が速すぎて遠心力で土が外方向に流れてしまっている。と言ったことが主な原因です。
ちなみに水まわりが起きるっていうのは「土に水気を与えすぎて、土の張り(張力)が無くなってしまった状態」を言います。
で、土には、それぞれ成分によって固有の吸水率、吸水速度と、それに伴う張力があります。これは、土がガラス板を重ね合わせたような構造をしているからで、ガラス板の間に水を入れて重ね合わせると、左右に移動はしても、上下に取れることがないですよね。しかし、ガラス板の間の水が増えれば、ガラス板は離れてしまいます。これが、水まわりという現象で、ロクロの様に、潤滑剤として水を多量に使用している場合に、起こってしまう失敗です。
こうなった状態で、無理に口辺を広げたり、逆につぼめたりすれば、当然、土の張力状態が崩れて、へたりが起こってしまいます。器の腰元にそれが起こる場合は、これに、自重による重力がかかるからですね。
では、どの土が、どれだけの張力を持っているかですが、これは、その時の土の寝かせ状態や練り加減なので大きく変わりますらか、一概に言えません。しかし、水まわりの早い土(磁器、半磁器土などは特に)は、「ヌタ挽き」と言って、ロクロを回している際にできるドベ(ヌタ)を、水の代わりに潤滑剤として使用する事があります。(私が、1ミリを挽く場合には、最初にヌタ挽きで極力水を使用せずに挽いて、最後にちょっと水を付けて薄くするっていう方法を取るときが多いですね。さすがに最初から最後までヌタ挽きをするのは、難しいです。)
ただ、必要な水気を適度な時間だけ与えている分には、そうそうへたるものではないですから、かまわないと思うのですが、一つの器にかける時間が長くなってしまうと、水まわり、遠心力による土流れが起こりますし、そもそも、土が死んで、土の強さが作品に残りませんから(形が出来ているだけっていう状態)、良いことではないと、私は思います。
「土は、採取した時が一番元気。いじればいじるほど、死んでしまう。」っていうのは、良く言われることですよね。
Q38.施釉時の注意事項?
A38.釉薬で最下層に沈殿している物質(長石)が、釉薬の根本原料です。これをしっかりと撹拌しないと、釉薬本来の効果は出ません。従って、当然、底の塊はしっかりと溶いて下さい。また、文中で何も触れていませんが、施釉は撹拌直後に行わなければ意味がありません。また、施釉直前には、釉に指などを入れて釉が付くかどうかをしっかりと確認して下さい。「撹拌した」と「撹拌出来ている」は全く違います。
又むやみな,1度掛け、2度掛け、3度掛けはあまり意味がありません。
先にも言いましたが、施釉の厚さは、素地の厚さ、焼きの温度、施釉の時間、濃度など、これらの複合要因が全て一致していなければ、数掛けは意味をなしません。陶芸をあまりにも数値的に考えると、こうした勘違いをしがちですが、陶芸で大切なのは「数」ではなく、経験による「勘」です。
器は作る度に厚みも違えば、素焼きの温度も微妙に違い、2度掛けしたから、かならずこれだけの厚みが確保できるというものではありません。「この土の、この素地の厚さで、この程度の釉薬濃度ならば、このぐらいの時間で、このぐらいの施釉の厚みがとれる」といった複合要因から得られる経験が大切なのであって、何度掛けという一つのファクターをピックアップして試験をしても、失敗を回避できるものではないと思います。
Q39.焼き締めは花持ちが良いのは?
A39.たぶん、これは釉薬をかけていないという事がポイントになっているように思います。陶器は、幾ら焼き締めていても、吸水率を0にすることはできません。つまり、ある程度は水分が素地を通過して表面に達し、蒸発します。
この時、気化熱の影響で、陶器や中の水は、多少、温度が低くなります。それが、花に良い影響を与えているのではないでしょうか。この気化熱現象を利用して、植木鉢は素焼き程度の温度で焼かれることが多いですし、ワインクーラーも焼きが甘いものを使用します。
また、他でも話しましたが、陶器は表面の微細な孔によって、茶の渋や灰汁をとる効果があるそうです。ということは、花器にしても、多少は水の浄化の影響があるのかもしれません。
Q40.なぜ土ものの器は磁器よりも暖かみがあるか?
A40.これは、感覚的な問題でしょう。磁器は、その性質や歴史上、幾何学形態のシルエットで施釉して還元焼成をし、少々青みのある白や青磁のような青で仕上げ、緊張感強調するのが得意という事になっています。勿論、白は磁器の最大の特徴ですし、キメが細かく可塑性が少ないという素材の性質は、幾何学形態を作るためにあるような側面は大きいです。
逆に、陶器は元々、施釉を自然の降灰現象に依存したという事もあり、またキメも荒くネトネトした土の持つ特徴を生かして、形態は磁器の幾何学に迫るような緊張感を頂点としていません。そんな、ある種、ファジーな所が陶器の良さとして認識され、我々の倫理観に埋め込まれてきた側面があります。
しかし、磁器も酸化焼成でアイボリー調に仕上げたり、わざとロクロ目を残せば、非常に暖かみのある物にはなりますし、陶器もサンドペーパーをかけたり瑪瑙で磨いたりして形を整形し、昨今開発が進むジルコン系の釉薬をかけると、かなり冷たい感じの物もできます。
ただ、そういう仕事をする人が少ないですし、多くの陶芸家は伝統的価値観から脱せずに仕事をしている方が多いですから(それを容認する社会もありますし)、なかなか、そういう磁器・陶器には出会えないですよね。
Q41.作家物に磁器の窯は入らないの?
A41.もともと、「作家もの」という表現自体が、良く分からない表現なんですが(笑)、おそらく「作家もの」が表すものは、最初から最後まで自分でやりました、っていうブランドでしょう。伝統的な磁器の世界は、それから言うと、完全に逆走している完全分業体制です。ロクロ師(挽き師)がいて、絵付け師がいて、窯師(窯を焚くだけ)っていう人もいるそうです。
これは産業として最初から磁器生産をした瀬戸に依存するところも大きいのでしょうが、従って、伝統的な磁器の窯は「作家もの」に入ることが殆ど無いんだと思います。しかし、これも例外は多数あって、当然、最初から最後まで自分でやっている磁器のかたも沢山、いらっしゃいますね。
まぁ、そもそも、作家とか芸術という観念そのものが、西洋からの輸入品ですし、こと伝統陶芸に関しては、まだそういう観念が浸透していないとも解釈できるのかもしれませんね。
Q42.井戸茶碗などのみどころともなっているカイラギなんですが、これを出やすくするのにはどのようにしたらいいのでしょうか?
A42.知らない方のために、チョットだけカイラギの説明します。
井戸茶碗や萩の茶碗などによく見られる釉薬の縮れ現象で、高台(器の足の事)のちょっと上の部分に出るものです。一般に、これらカイラギのような現象は、クラックという釉縮れと呼ばれる失敗に相当するものです。ただ、茶人はこういった自然の現象(しかも、結構かっこよかったりする)を尊ぶ傾向があるので、「カイラギ」という格好良い名前が付いていますね。
ところで、本来は、鮫の肌のようだという事から、「鰄(かいらぎ)」と書きますが、後に、ちょっと洒落て「梅花皮」と書くようになりました。(ってことで、ここから先は、梅花皮と書くことにします。
で、この梅花皮は、粒の粗い土(普通は、砂気が多いと表現します)を使用し、これをカンナで削った際に出来る表面の荒れが原因で起こります。焼成途中で、釉薬が荒れた素地に食い付かず、剥がれた後、縮れてしまい、ああいったテクスチャーになります。
従って、正攻法でいけば、シャモット(焼粉)を多く入れた土を使用したり、大道土といわれる、かなり砂気の多い土を使用して、梅花皮を出したい部分をガリガリと削ってやれば、大方は、釉縮れが起こって、出てきます。ちなみに梅花皮が出やすい釉についてですが、昇温中に釉薬の粘土が強く、かつ溶けて梅花皮を作るためには、ある程度、釉薬に流動性がなければいけません。また、粘土を高くするためには、成分中のアルミが増えたほうが良いですから、結論は、アルミニウム含有量を増やして釉薬を溶かす。つまり、カオリンなどを少量入れて、灰を使用すれば良いって事になります。ちなみに、ベントナイトは、膨潤土って言いますが、水を含むと爆発的に体積が増え、乾燥すると非常に収縮しますから、多量に入れると施釉直後に梅花皮状態になります。(笑)通常は、珪酸質の接着の悪い釉薬の付きを良くするために、少量、使用しますけどもね。
これらはあくまでも正攻法で、先に、お話しした梅花皮の原理を応用すれば、キメの細かい土でも確実に出すことができます。つまり、焼成中(昇温中)に釉薬が剥がれたり縮れたりする状況を意図的に作ってやればいいわけですよね。
で、私の場合は、器の腰元あたりに、CMC(カルボキシルメチルセルロース)や布海苔を薄く塗り、まだべた付いているうちに釉薬を掛けています。布海苔はご存知ですよね。CMCはそれに似たもので、スーパーの洗剤コーナーに行くと「洗濯糊」という名称で売っていることがあります。ただ、たまに「○○メチル〜〜」という名前のものもあり、これは全くの別物ですが、一応、CMCと同様の効果はあるようです。
CMCや布海苔は、乾燥の際に、多少収縮し、さらに熱を加えることで剥離しますから、結構、本物らしい梅花皮を作ることが出来ます。しかし、濃度や塗る厚み等で、焼き上がりの効果も変わりますから、いろいろなパターンを試してみてはいかがでしょうか?
Q43.西洋の器に染め付けっていう話
A43.絶対にそうだとは言えませんが、大抵、西洋磁器の染め付けは非常にオリエンタルでオリジナル性がありません。(模様等は、西洋的解釈があったり、人物が西洋風であったりはしますけども、西洋上絵のようなゴージャスさが無いですよね。)
これは、元々、西洋で磁器が作られたのは中国からの染め付けの器を模写する目的が非常に大きかったという歴史的背景が強いわけです。
つまり、中国の染め付け磁器を作りたいが為に、その研究が行われた。これは、言うまでもなく中国の白磁が非常に高価なものとして各地に流れた結果で、アウグスト帝は東洋磁器120点を入手するために、600名の兵と交換したという話もあるそうです。いうなれば、1つの白磁は約6人の人間の命に等しいという事にもなるわけですよね。そうした透けるような白い器(実際に透けるんですけども)は、西洋人の夢であり、同時に産業として一獲千金を売る事のできる夢ともなっていたわけです。
しかし、ヨーロッパと中国は、戦争の影響で白磁の輸入が困難になり、その代りに、日本の伊万里が目をつけられ、日本の磁器はヨーロッパの需要に答えて、その多くを輸出することとなります。ところが、御存知の通り、伊万里は輸出用にもっぱら柿右衛門様式のような金襴赤絵を売り出し、国内需要に染め付けの伊万里となりました。ヨーロッパの人々にとっては、単色で渋い色合いの染め付けよりも、その豪華絢爛(いわゆるゴージャス)な上絵の色彩の方が、注目に値するものだった事もありますし、呉須の青が、西洋人の求めるブルーでなかったという事もあるでしょう。(もっとも、日本人が手間のかかる金襴上絵を外国市場に向け、地味で上絵ほど手間のかからない染め付けを日本の市場に流そうとした産業構造もあるにはあるでしょうが。)
その結果、西洋の染め付け。いわゆる呉須絵付けは、その柄の発展が進まず、のちに、上絵が西洋独自の技法や表現を求めるのに対して、あくまでもオリエンタルの象徴として、いわば、取り残されたような形で淡々と中国白磁の写しを作り続ける事となるわけです。
では、染め付けが西洋のゴージャスと圧倒的に違ったのは何故なのか。あるいは、染め付けでは作ることの出来ない西洋人が求めたゴージャスとは何だったのか?。これは別に,学説であるとか,公然の定義ではないんですけれども,私は「輝いていること」と「技術が手中にあること」ではないかと思っています。「輝いていること」は,「光沢があること」や「金・銀を使っていること」という意味合いですね。当然といえば当然ですが,特に,この思想は顕著です。
近年ではマットな釉薬も使用されますが,高価なものは,大抵,傷や一片の曇りも無いという事が最重要項目ですし,机を傷めないという目的もありますが,高台までしっかりと釉薬が掛かった器は,ティーカップやソーサーの頂点となっています。日本では「土見」といって,高台近辺には釉薬をかけない事で見せ場とするという方法がありますが,それとは非常に対照的ですね。
また,特に,金・銀の使用は器のランクの上でも重要なポイントです。西洋磁器は,その性質上,どうしても鋳込みによる形作りがメインとなりますので,ランクの低いものも高いものも,同じ鋳込みの型を使用する事になります。そうした時に,その差別化をはかるための方法が,金や銀をどれだけ使用しているか。あるいはジュール(ジュエル)という釉薬を盛り上げて宝石を埋め込んだように仕上げる技法によって,輝度を上げられるかという事になるようです。
「技術が手中にあること」は,ちょっと表現がしにくいんですが,製作する側の意図が,完璧に表現されているという事になるでしょうか?
よく言われる事なんですけども,中国や西洋における形成の頂点は「土をどれだけ制服できたか」あるいは「力技で形を作り上げたか」っていう事だと言われます。これは,日本においても,須恵器の時代から,高度な技術によって土を我が物にするという思想があったことは間違いないでしょうが,後に織部を始めとする優れた茶人の登場などで「土を征服せず,共存する」という方向に流れが変わり,未完成の力強さとか,左右非対称を味として尊重するようになります。
話がそれましたが,とにかく,「形を作るために,どれだけ土をねじ伏せる事ができるか。」「材料がどれだけ自分の言うことを聞くか」という事は,西洋の形づくりの根源になっています。そして,製作者の思い通りの形が出来たとき,それが最高の品物となるわけです。
私は,微妙な呉須の濃度によって色合いが変わったり,面を均一に染めることが非常に難しい染め付けは,こうした意図にそわなかったのではないかという気がしています。
マイセンの器には,染め付けの作品も数多くありますが,どういうわけか,後にわざわざ,赤や金の上絵で,模様を描き込んだり,白い空間を表す部分に,上絵の濃淡をつけたものが少なくありません。それは,何か染め付けに物足りなさを感じたヨーロッパの方の心があるような気がします。
Q44.しんしゃ釉?
A44.これは、「辰砂」と書きます。本来は、硫化鉱物の水銀鉱石の名前なんです。つまり、硫化水銀ですね。で、こいつが、きっつい赤(というかピンク)色をしているので、それに似た色の釉薬を「辰砂釉」というようになりました。水銀鉱石の辰砂は、その色から赤色の顔料に用いられたり、昔は漢方薬にもなったそうです(勿論、硫化水銀ですから猛毒ですけどもね)。
一方、釉薬の辰砂は、硫化水銀は一切使用しておらず、「銅」のコロイドという現象を利用して発色させています。ちなみに、辰砂釉は、大抵、酸化で焼くとトルコ青に近い青い色になり、還元で焼くと赤い色になりますね。基礎釉の性質をアルカリ質に返ると、織部釉になります。
Q45.マット釉を酸化で焼く?理由
A45.マット釉というのは、分類上は「結晶釉」に属するものです。つまり、釉薬の表面に微細な結晶が析出して、それが結果的に凹凸を作り、釉薬をマットに見せるわけですね。
で、通常、こうした結晶は、酸化の場合に非常に良く出るわけなんです。結晶が出るためには、ある程度、釉薬中に「核」となる微細な鉱石が残っていなければいけないんですけども、還元だと溶けちゃったりすることが多いわけですね。だから、普通は酸化で焼いたりするって事になっているんです。
ただ、何冊か本を読むと分かると思いますが、1150度〜1200度まで還元をいれると析出が良くなるとか、冷却時に還元を入れると良いとか、作家によってこだわりや癖がありますから、必ずしもオール酸化で焚き上げる事が良いことだとは限らないんですね。そこが、釉薬の難しいところなわけです。
Q46.危険な薬品?
A46.安全性を最重要とするならば、「長石」「石灰」「カオリン」「珪石」意外は使用しないことです。石灰は校庭の白線を引いたりするときに使用しますね。「カオリン」は化粧品や豆腐の白さを強調するときに使用しますし、「珪石」はいわゆる水晶ですから、装飾品に使われていますよね。着色剤として弁柄(鉄)でしょう。
ただ、これだけでも十分に実験はできますが、何しろバリエーションが少ないので、いろいろと加えていくわけですが、ハッキリ言うと、上記のもの以外は、安全なものはありません。
釉薬は「フッ酸」以外の酸に犯されないと言われていますが、長期的に見れば、酢の物のような酸でも、十分に解け出すことがあるからです。しかし、その量が微量なので、一応、致死にはいたらないという事になるわけですね。
ただし、取り扱い上、炭酸銅(ロクショウ)やバリウム、重クロムは「医薬用外劇物」として指定されているものですから、吸い込んだら大変なので、マスクをしておくほうが良いでしょうね。
Q47.薪窯で出た灰は釉薬になる?
A47.登り窯等で出た松灰。これ、使えます。かなり良いです。無害です。ただし、灰汁が強いので、何度か水簸して灰汁を抜いておかないと、釉薬として使用するのは難しいですけどもね。灰汁は、水溶性のカリウムやナトリウムなので、釉掛けで生地の中まで浸透して、焼成中に生地を破損させてしまいます。これを防ぐ為に、先に、灰を水に漬けて水溶性の物質を溶かし出しておいて、不溶性のものだけを釉薬として使用する目的で、水簸をするわけですね。
で,続いて松灰の話。
業者から買ったものでも,おそらく,かなりの期間,水簸をされているんでしょうが,そのまま使用すると灰汁が浮きますね。もちろん,買ってすぐに使用しても,問題はないんですけども気分的に。ってことで,松灰の灰汁を完全に取るのは,かなり根気がいります。でも,ちゃんとやらないと,泣いちゃうのは自分の作品ですから,やっぱりやらないとダメですよね。ガンバッテ下さいまし。
Q48.芸家の弟子になろうというわけではないのですが、陶芸をちゃんと勉強したいな、と思っています。例えば益子へ修行のため、単身赴任というわけにもいかない。やはりそうなると、美大などでも、社会人入学があるから、入って、勉強とか基礎からしたほうがいいのですか?陶芸教室で働いている先生方は、やはりちゃんと美大を出てるんですか。資格とかいるんですか?
A48.アメリカ陶芸っていうのご存知ですか?いわゆる陶芸第二世代っていう方が、日本に出没して、現代陶芸を始めるんですけども、その時の現代陶芸の思考の根底をなしているのがアメリカ陶芸だったりします。
内容は、いたって単純で、「アメリカには陶芸の伝統も、陶芸に秀でた人間もいなかった。勿論、窯元制度なんていうものもない。しかし、だからこそ、アメリカ陶芸は土と真摯に向き合い、土を理解する方法を知っている」っていうものですね。
要するに、「伝統とか享受っていうものに捕らわれず、自ら土を扱う事で、土の新しい可能性を引き出している」っていう事なんです。この思想は、現代陶芸をやる人間の基本みたいなところがあって、なまじ、習い事で決まった方法を学ぶことで、作品の自由が利かなくなる。模索し、作品を壊しながら、陶芸は新しい方向を見つけていこう。っていう事になるわけです。
私は、一応、大学で陶芸を専攻しましたが、だからどうっていう事はないと思っています。多少、菊練りが早めに出来るようになったとか、窯を焚くチャンスが多かったという事はありますが、あくまでも技術的な問題だけで、形を作ることは、専攻で習う事とは、全く別の問題のように思っています。
この辺は、ちょっと難しい話かな。ま、とにかく、専門の勉強と言っても、何一つ教えてもらえません。正直言って。場所を提供されるだけで、あとは本人まかせです。むしろ、陶芸教室などの方が、よっぽど親切に教えてもらえますよ。専攻の勉強をしていらっしゃらない方は、専門の勉強をすると、すごく陶芸が上手くなるような錯覚をお持ちですが、けっしてそんな事はありませんねぇ。しいていてば、英文科を卒業したからって、全員が英語の達人になったり、外国で爆発的に売れるような小説をかけないのと一緒です。
それから、陶芸には、一切、資格というものはありません。最近は、「陶芸学校」と称して、独自に資格を与えるという妙な学校もありますが、だからどうってこと無いですね。正直言うと、そういうところで資格をもらった人と話をすると、「陶芸はこうあるべきだ」とか「こういう方法で作らなくちゃいけない」とかて、すっごく頭が固い。これは、本当に困ったものです。
我々は、土の新しい可能性を求めているのに、習ったことに固執して、それ以上に何もできない。陶芸は、資格がないからこそ、アートとして成立するんだと思います。絵を描くのに、資格がいらないのと同じですね。ピカソも岡本太郎さんも、資格をもらって絵を描いたり、陶芸をやっていたわけではありませんよね。
たまに、職場で「ロクロ師一級」とかあったら、大笑いだねぇ。ってな冗談を言ってますが、実際に陶芸をやるとなると、そんな感じです。陶芸は習う事って、ないですね。自分がやるかどうか。これにつきるでしょう。
Q49.オブジェの定義?
A49.私のとらえ方は,陶芸と陶アートという対立構図ではなくて,ヤキモノという見地から,それぞれを何となく分類するっていう感じなんでしょうかね。
つまり・・・広く「モノを焼く」という行為があって,それが「ヤキモノ」。その中で「土」を焼くための素材として起用したのが「陶」。そして,製作のための手数の量が圧倒的に多いものが「陶芸」(この辺りは,自分でも考慮の余地があると思うんですが)。さらに,作ったものに機能的側面が大きいのが「器」。機能的側面を排除し,視覚や触覚など,極めて部分的な効果のみを狙って製作されたものが「オブジェ」。っていう事になるでしょうか。
もう少し説明すると,以下のように表現できるかもしれません。
土を焼成する事は,その性質上,絶対に密閉した空間を作ることができません。作れば,乾燥中に亀裂を生じるか,焼成中に爆発しますからね。だから,形態からいけば,土で作ったものは絶対に外界と遮断されることがない器の形になるわけです。これは宿命ですから,仕方がありません。
しかし,これまでの「陶芸」と呼ばれるものは,その形態の多くが上端に空間を作ることで成立してきたという側面がありませす。それが器です。では,器を返して床に置いたとき,つまり,上端に空間を作らないとき,それは果たして陶芸ではないのか。ツボを床の間に逆さに置いて何かを表そうとしたとき,それは陶芸ではないと拒絶しなければならないのか?というのが,オブジェ思考の発想の根源であり,器を逆さに置く事で生まれる土に対する自由な発想が,現代陶芸なのではないかという感じでしょうか。
長くなりましたが,私の現在の発想としては,そういう感じですね。ご理解いただけるかどうか,かなり不安なんですが。
それから,>>アーチストは茶碗など作ってはいけませんウソウソというのは,私も常々考えている事ではあります。
ただ,鯉江良二氏,清水六兵衛氏の名を出すまでもなく,器とアートとの境界を越えて,活動をされていらっしゃる方は,たくさんいらっしゃいます。無論,言うまでもなく,私は,そうした方々の足下にも及ばない物を作っているわけですけども(笑),器もオブジェも等価という発想自体は,同じではないかと思っています。
ただ,やはり器の世界は強固で,オブジェを「ゴミ作りおって」という表現で解釈される方は多いですね。しかし,それはもしかしたら,オブジェを作る人間の見解が妙なのかもしれませんから,一概に批判すべきものではないと思います。けれど,作ってみて,作り続ける人間がいて,後の世に,その事に何の意味があったのか,分かれば,それで良いと,今の私は思っています。
Q50.ジュール(ジュエル)という釉薬を盛り上げて宝石を埋め込んだように仕上げる技法って?
A50.名前の通り,「ジュール(宝石)」を模して作られる上絵の装飾技法で,簡単に言ってしまえば,エナメルに仕上がる上絵具を,宝石に似せて絵付けをするというものです。エナメル上絵そのものを盛り上げる場合と,素地に宝石状の起伏を作り,それに上絵を施すものがあるようですが,凝った造りになると,実際の宝石に見られる線条痕や結晶柄を描き込んだり,宝石特有の光と影を書き入れて立体感を強調するものなど,まさに宝石そのものがはめ込んであるようなジュールもあるそうです。
アンティークなどでは,エナメル釉薬の形状が崩れたり流れたりしないように,周りを金彩で止めているようですが,近年では金を打っていないものもありますね。
ジュールは元々,石や骨あるいは金属などで作られた杯に,沢山の宝石を配して飾り付けるという装飾の名残で,権力者の憧れを代弁したものだそうです。
Q51.西洋人はゴージャスが好きなのか?
A51.このジュールからも分かる通り,日本に限らず,西洋の器もまた,権力者の趣味というものが色濃く出ているわけです。特に,西洋では階級というものが強く(現在でも,ビートルズの誰だかが,サーの称号を得たとかいうニュースがありますよね),庶民はヒエラルキーの頂点にある種の憧れを持っているという事があります。無論,そうした貴族思考が全てではありません。反旗を翻すという意味で,今年の流行柄はバラなんだそうですが(^_^;),しかし,生活の一部に,そうした貴族あこがれ思考が残っている事は確かなわけです。
高価なカップを何代にも渡って買い足し,食卓にある種の統一感を持たせていくという意識も,先に話した「人間の征服(前に制服って書いちゃいました。すみません)を表現できるか」という事につながっていくような気がします。
Q52.「朝鮮カオリン」と「朝鮮カオリン(風化)」の二種類あったんです。風化という言葉になぜか惹かれてそっちを買ってしまったんですが、どう違うのでしょうか。
A52.私が今までに「ミルカオリン」「スタンパーカオリン」「風化カオリン」の3種類を見たことがありますが,原料を調合する上で多少,粉砕状態が違うという以外,色見に大きな差はないようです。(あくまでも私見ですが。)業者の方の話では,「ミルカオリン」は,トロンミルとかポットミルっていう水を使った擦機でカオリンを粉砕し,水簸したもの。「スタンパーカオリン」は,餅つきみたいにカオリンをでっかいハンマーで粉砕し,かなり粒子を細かくしてから,水簸したもの。
「風化カオリン」は,たぶん,粉砕工程はスタンパーと同種のものだと思いま
すけども,先のカオリンが大抵,ブレンドものであるのに対し,ノンブレンドに近いそうです。
ちなみに,長石などは,志野釉を作るなら風化長石って言われるくらい,釉薬の原料としては風化ものが好まれるようです。
Q53.古伊万里の技法で「墨弾き」というのがあるらしいんですが、ご存じでしょうか。
A53. 私も別冊太陽って,結構好きで,特に陶芸関係だと写真が多いので,たまに買っています。「古伊万里」もあったと思いますが,どこかに埋もれちゃった。で,墨弾きなんですけども,雑誌の説明だと,ちょっと不足していますね。実際にやっていみると分かると思いますが,墨だけだと,あまり抜けが良くないし(その抜けの悪さが好きな方もいらっしゃいますけど),空焼後に扱いづらいんです。で,正確には,墨に珪石を入れて擦ったものを使用します。珪石は高温でも単味ならば溶けませんから,空焼後に,払うときれいに取れます。
本来は,乾燥すると油膜を作るエマルジョン効果を持った膠と,珪石とをを混ぜで使用すれば良いのでしょうが,これだと白地に白色で何を描いたか分からなくなってうので,色の付いた墨を使用するわけです。それで,墨弾きとなるわけですね。
で,要は,塗った時に油膜が出来て,空焼して油を飛ばした後に,取れやすい物質が合体していれば良いって事になるわけですから,墨の他にも,クレヨンとか,溶き油なんかと珪石(またはアルミナ)を混ぜて使うっていう手もあるわけです。これはこれで,墨とは,また違った効果がでて面白いですよ。
空焼は,墨に含まれる油や糊(膠)を焼いて揮発させるための処置ですから,400度以上にすれば,間違いなく飛ぶでしょう。塗り面が小さい時には,ハンディーガスバーナーでちょっと焼いてOKにしちゃう時もあります。(笑)
ただし,表面がガスの墨で黒くなりますから,ちょっと勇気がいるかもしれませんけどもね。という事で,素焼きに入れても構わないと思います。
が,私は,まだ空焼を素焼きと一緒にやったことが無いので,確信は無いのですけれども,素焼きの時には当然ながら,大量の水蒸気が発生し,本焼きに関係するものは,何らかの影響を受けます。
以前,辰砂釉の色戻しをしようとして(辰砂釉は,銅赤色がでる釉薬ですが,失敗して赤が消失した時に,800度程度で焼き直すと,コロイド結晶が出来て赤い色になることがあります。これを色が戻るといいます),素焼きの窯に入れたらば,表面に水蒸気の影響による膜が出来て,全滅した事があります。一応,本焼きまで済んでいたので,クレンザーと金属タワシで擦ったらば,何となく膜は飛びましたけども,あまり良いものではありませんよねぇ。
同様に,上絵を素焼きの窯で焼くと,見るも無残に白濁(というか,ぬる〜〜い色に濁った)した色になります。ですから,呉須にも何らかの影響がでなるとも限りません。もしかしたら,墨に入れた珪石と,水蒸気で出た水とが,結晶水になって再結合するという事も考えられますから,あまりお薦めは出来ません。
素焼きしたものを,400度程度の温度にあげるくらいならば,どんなに大きな窯でも3〜4時間あれば十分でしょうから,もし,空焼が出来る状況が整っていれば,無理して素焼きには入れないほうが懸命だと思いますけどもね。
Q54.釉薬で,特に松灰を使用したものは,場合によって弁柄や呉須絵が流れるときがある?
A54.今,使用している松灰(光沢)と,松灰半マット(先の松灰カオリンマットの,ちょっとマットが弱いやつ)は,間違いなく弁柄が流れます。松灰(光沢)の場合は,呉須も流れます。ま,どちらも松灰を40%近く入れているので,そうなるんだと思いますが,もし,流れるのが困る場合は,松灰の半分以上を石灰に置き換えることをお薦めします。
Q55.松灰釉の調合で長石は何を使用すれば良かったのか?
A55.現在,陶芸で使用されている長石は,,福島長石,釜土長石,南郷長石,三雲長石,平津長石などが代表的なものです。では,これらの長石の何が違うのか。というと,1つは長石の組成。もう1つが鉱物形状の違いです。
組成に関しては,おそらく,耳にしたことがあると思いますが,カリ長石,ソーダ長石(ナトリウム長石),リチウム長石,灰長石(カルシウム長石)などに分類されます。これらは,アルカリ成分(釉薬を溶かす成分)として何が多く混入している長石か,ということで分類されています。アルカリは,主に,カリウム,ナトリウム,リチウムなどで,通常,これらが多かれ少なかれ数種混入していますが,その中でも相対的に多いものを長石の名前の最初に付ける事になっています。
で,上記の長石を分類すると,カリ長石は福島,南郷,三雲長石。ソーダ長石は釜土,平津長石となります。ちなみにリチウム,灰長石は,日本では殆ど産出しないので扱うことは無いと思います。最近ではペタライトという名称でリチウム長石を見る事もありますが,非常に溶けやすく(単味でブクを吹く)扱いづらいので,あまり使いません。
次に鉱物形状に関してです。
これは,簡単に言うと,マグマが冷えて長石になる時の速度によって変わるもので,早く冷えると珪石を混入したアプライト,ゆっくりと冷えると長石の純度が高くなりペグマタイトになります。一般的に,単味で使用するならペグマタイト,材料を混ぜるならアプライトが良いと言われますが,私的な意見を言わせていただくと,ペグマタイトは溶けが良く,癖も少ないし釉薬の透過性も良いので,私はペグマタイトを好んで使っています。
で,分類ですが,手元の資料では,ペグマタイトが福島,南郷。アプライトが釜土,三雲,平津となっています。
ということで,たぶん,南郷長石指定は,カリ長石ペグマタイトを使用してください。という意味でしょうから,福島を使っても,全く問題ありません。ただし,南郷は福島に比べアルミナ分が多いので,気持ち,カオリン等を多めに入れる方が良いとも考えられます。
Q56.松灰釉の調合でカオリンはメッシュを通せば良かったか?
A56.,メッシュは必ず通したほうが良いと思います。本来は,すり鉢で良く擦るか,ポットミルで水擦したほうが,原料同士の反応も良くなりますし,沈殿防止にも役立ちます。特に,カオリンは,焼成後に焼け残る事がありますから,最低,メッシュは通した方が良いでしょう。
Q57.楽焼きに挑戦!土は信楽の耐急熱急使用?
A57.問題ないでしょう。もし,不安でしたら,シャモットを10%内外,混ぜてみては如何でしょうか。土の混合は,熱に対するものというより,焼成時の釉の吸い込み具合やテクスチャーの効果などを考える場合ですから,あまり,神経質になることはないとおもいます。
Q58.楽焼きに挑戦!手捻りで土の厚さは7mm?
A58.土の厚みは,別に何ミリでも構わないと思うんですけども,ポイントは焼成前に,施釉後,十分に乾燥させておく事ですね。特に,低温釉は水蒸気の影響をモロに受け,自然冷却だと,白い膜を作ることもありますから,昇温期に水分蒸発が起きないよう,乾燥には気を使わなければなりません。
Q59.楽焼きに挑戦!素焼きは800度(電気窯)?
A59.もうすこし低い温度を推奨します。まぁ,1000度くらいまでは,土は素焼き状態ですから,何度でも良いといえば良いのですが,800度ですと,幾分,締まりが強いのではないでしょうか。楽用釉は水っぽいという事もありますし,釉の食い付きを考えると,私は650度程度で良いと思います。
Q60.楽焼きに挑戦!市販の複色釉?
A60.一般に,市販釉は,100度/1時間の割合で昇温した場合に熔ける事が前提になってます。ただし,フリットになっていると話は別で,この場合,もっと早いペースで昇温しても釉になります。
また,使用する釉に生の鉛(鉛白,唐の土)が使用されているか,ほう酸が使用されているかでもペースは若干変わります。御使用になる釉が,どのようなタイプの基本釉を使用しているかで,この辺は微妙ですから,メーカーに問いあわせるか,あるいは自分で実験してみるかで考えたほうが良いでしょう。(実験してみるのが一番ですけどもね。)
Q61.楽焼きに挑戦!本焼の方法は?
A)窯を予め800度位にまで上げておき→施釉作品を長火箸で挟み窯に入れ(火箸で何処を挟むのか、火箸の使い方が悪いと釉剥がれが起るので簡単に”挟む”と言っても具体的に良く理解出来ないのです)→再び800度まで昇温→窯を開蓋長火箸で作品を取り出し(水冷の度胸はないので空気中で冷ます)このような手順。
B)予め作品を窯詰め→常温から150度/1時間で昇温→800度で電源断窯を開扉放置冷めるのを待つ。(A、B共私の独断と偏見の計画です。念のため)
A61.方法は,AでもBでも構わないと思いますが,むしろ,窯の状態との相談になりますね。
つまり,御使用の電気窯の耐火レンガが,どれだけ急冷に耐えるかという問題です。本焼き用の電気窯は,一般的にSK32という耐火レンガを使用しますが,これは,先の100度/1時間で昇温し,自然冷却することを前提に使用するものです。
楽用窯は,これよりも番数の小さいレンガを使用し,強制冷却でもレンガが割れたり,窯内に亀裂が入らないようになっています。
ただし,作品をサッと取り出して,フタをパッと閉め,窯の中が序冷になるようにすれば,差ほど問題はありませんから,御使用の窯が高温用のものであれば,とにかく序冷するか,速攻で作品を取りだす段取りをかなりしっかりとやっておく必要があるでしょう。
それから,800度まで温度を上げた窯に作品を入れるのは,非常に危険です。水蒸気爆破で作品が破損する危険も高いですし,800度という温度は,本当に熱いです。私は,顔が焼けるし,鉛の気化した空気を吸い込むのも嫌なので,溶接用の面を被ったりします。(小心者>自分)
それに,楽の釉は,パイロメーターでの対空気温度で測定できるものではなく,あくまでも,肉眼で熔けたかどうかの状態を確認していかなけえばなりませんので,何度も,のぞき込む必要もあります。
以上の事から考えると・・・
まず,作品を窯に入れ(常温),昇温し,約800度になったら,何度か窯の中の釉の熔け具合を確認する。熔けを確認したら,序冷するっていのが,一番簡単。しかし,それでは,単なる上絵と変わりませんから(笑),火箸で取り出す方が,ダイナミックですね。
また,作品は,空冷よりも,むしろ,水冷の方が安全ですし発色も良好ですから,水冷をお薦めします。いきなり冷やすと,作品が割れるような気がしますが,そもそも,素地が焼締まっていないので壊れることがないし,水に入れると,作品の熱で自然と水がお湯になり,適当に序冷状態になるんです。だから,大丈夫。他に,ホースで部分水冷するとか,おが屑に入れて強制還元をかけるとか,いろいろ方法があるんですけどあらためて。
Q62.木灰釉って?
A62.松灰に限らず,木灰というのは,植えてある場所の土壌によって,あるいは,灰にしたものが木のどの部分か(樹皮とか幹とか,枝とか葉っぱとか)によって,成分に差がでることが多いのです。
また,灰の作り方(焼いた温度)によっても,リン酸の量が変化したりしますから,非常に微妙なものです。(それゆえ,安定性に欠けると言われるわけですね)
この辺の灰に対するこだわりは,茶の湯で使用する灰の扱いにも似た,微妙さがあり,御使用の灰が,どのような成分を持っているかは,(ノムル計算とか成分分析機を使うとか,そういう特殊な方法を使用しない限り)何度もテストして調べていかなければなりません。
Q63松灰陶石マットの配合?
A63.今回の実験「松灰陶石マット」から,御使用の灰は,かなりカルシウムやリンが多いらしいということが分かりましたので,対策は,その辺を考慮して行います。
1,カオリンマットは,単純にカオリンを減らすという方法もありますが,それだとあまり変化が大きくならないのと,色味が変化するので(それはそれで面白いんですけども),同時に長石の量も変化させます。カオリンを減らした分,長石を増やすという方法です。たぶん,調合からすると,長石を40〜50,カオリンを30〜20で調整すると,変化すると思います。
2,陶石は,分類上,珪石よりも長石に分けられる事が多い原料です。というのも,中国では,木灰と陶石を混合して磁器釉としている所が多いからですが,成分的には,明らかに珪石寄りです。ここからも分かるように,陶石は珪石に比べると,若干,熔けが良くなりますので,本来,珪石を陶石で置き換える場合は,量を増やして調合しなければいけません。
逆に,珪石(珪酸)系マットを微妙に弱める為に,珪石の何割かを陶石に置き換えるという方法もあるわけです。(私がよく使用する手なんですが)
それから,マグネサイトを使用しない珪酸系マットは,かなり厚掛けしてやらないと,マットの真価を発揮しません。もし,釉が薄いようでしたら,透明釉になるでしょうから,もう一度,釉を2度,3度掛けして,厚くしてみるというのも手ですね。
3,マグネサイトは医薬用外劇物指定はありませんから,(多量に吸い込むのはまずいですけども(笑))扱いは簡単で,単に何%か混合すればOKです。ただし,乳濁効果が大きいですから,3〜4%刻みで増やしていきます。(長石などは10%ですけども)
4,杉の灰ですが,成分を調べたらば,かなり幹と葉で成分が異なるようです。釉原料としては幹を使用するのが良いらしいですけども,ここは実験で,やってみるのが一番ですね。ただし,松灰よりはカルシウムが少ないので,混合する場合は,やや増やした方が良いでしょう。
Q64.土灰って何?
A64.色々な灰を混合したものを「土灰」と言います。今回の,Hさんの「杉、モミジ、サクラ、クヌギなどが混ざった灰」というのが,それですね。ちなみに,この「土灰」は,「竃(釜土)灰」の略語で,つまり,煮炊きをする際に使用した,竃に残っている色々な木の混合灰。雑木灰という事ですね。
焼くまでどうなるか分からないけども,それだけに,焼く楽しさというものもあります。
Q65.外割りってどういう意味?
A65.外割りというのは,基本釉(この場合,長石・松灰・陶石)を100とし,それに10,20,30(マグネサイトならば3.6.10)と加えていくという事です。外割りは,100%計算からすると,かなり粗雑な方法なんですけども,実際的には非常に有効な手段なので,陶芸では多用されます。
Q66.ミル摺り2時間は短いでしょうか?(私は弁柄の粒子を細かくすればする程良いのではないかと思ってますが、摺り過ぎも又具合がわるいし・・・・・
A66.私の場合,時間ではなくて音で判断しています。まぁ,大抵の場合,湿度による原料の吸水具合とか,送られてくる原料の質などによって,擦りの程度が変わりますから,時間はあまり当てになりません。乳鉢ならば,クリィミー状になる程度が基本。ミルの場合は,擦る音がカラコロからキリキリに変わって30分程度したら,私は止めることにしています。(たぶん,この音で分かっていただけると思いますけど)
Q67.釉薬原料ごとの粒子の大きさって?
A67.釉の擦りが難しいのは,基礎釉の原料と,着色酸化物(弁柄などの金属ですね)とでは,逆の発想を持っていることです。
基礎釉原料は,原料そのものの良さを引きだそうとしたら,粒子の大きさを原料ごとに変えなければいけません。一般的に,土類はやや粗めにして素地との密着性を高め,長石は原料の持ち味を出すためにスタンパー等で衝くのが良いと言われています。珪石は粒子の大きさで反応が変わると言われていますし,石灰も同様です。
ただ,そこまで厳密に考えるのは,桃山陶の再現をやっているような,陶芸家よりも研究者に近い方ですから,あまり頭痛くなる事はないでしょう。
ただ,金属に関しては,釉薬が液化した際に,イオンとして分解するかどうかが発色に大きく関わってきますから,粒子は細かいに越したことはないと考えるのが普通です。
弁柄などは,1000日擦りなどと言われ,毎日毎日,老婆が日なたぼっこをしながら,1000日かけて擦った弁柄でないと,柿右衛門のような美しい赤の発色はしないと言われています。
メーカーから買い付ける場合も,弁柄は粒子の大きさによってランクがあり,擦りの甘いものと,かなりキメの細かいものとでは,値段が倍くらい違います。私が知っているのは「錦龍」という最高級弁柄は,粉の状態で,すでに,非常に美しい紅色をしています。上絵や,砧青磁を作る際に使用するものですけども,青磁は,最近では弁柄ではなく,珪酸鉄を使用することが多いですね。(この方が,イオン化しやすいからですけどもね。)
ということで,出来れば,基礎釉と着色用の金属とは,別に擦り,さらに攪拌程度に混ぜてすってやるのが一番ですね。
Q68.”金属の粒子は細かいに越した事はない”との話ですが、イオン発色が好ましい釉、又はコロイド発色を要求する釉等も粒子を細かくすれば良いと言うことですか?。
A68.コロイドによる発色は,御存知だと思いますが,一度釉薬に完全に溶かし込み,更に冷却期において発生させる,いわば,再結晶とも言うべきものですから,やはり,細かい方が良かったりするんです。
代表的な辰砂釉は,銅を利用して赤い銅コロイドを発生させますけども,これも,高温期において釉によく溶け込むよう,酸化銅よりは炭酸銅を使用したりしますよね。
むしろ,擦る,擦らないを問題にするのは,油滴天目やソバのような,核を中心に結晶を発達させ,それを金属で着色するような釉薬でしょう。ソバなどは,意図的に砂鉄を混ぜて,核を作りやすくしたりしますからね。
Q69.コロイドについて?
A69.コロイドですが,2種類あります。一つは金属が細かく砕かれて,ミクロ単位になったもの。もう一つが,成長して出てくるものです。
陶芸では,この2つが微妙にかかわって(かな?)いるので,「陶芸はこうじゃ〜〜」と断言はできません。
通常,鈞窯のようなものは,砕かれたものが多く,なます事によって銅赤を呼び戻すような場合は,再結晶の要素が高くなります。
Q70.白萩の斑紋と蕎麦の結晶の析出について
A70.透明釉(下)蕎麦釉(上)で実験した二重掛けに於ては,かなり良好な蕎麦が検出しました。単釉でも,小さなものは出ますね。ただし,焼き方にポイントがあって,1230度あたりでの温度キープと,かなり徐冷を必要とします。つまり,結晶を発達させるために,目標温度でゼーゲルが倒れた後も,徐々に温度が下がるよう,調節を掛けなければならないわけです。
白萩の斑紋も同様で,特に,斑紋は高温域の何度あたりで温度を引っ張るか,酸化とは言え,低温度域において還元を掛けたほうが良いのか,高温域で温度キープをしたほうが良いのか,それとも,焼ききる形が良いのか。徐冷はすべきか,何度で徐冷を開始するのが良いのか。など,要因は極めて多岐にわたり,非常に複雑です。
しかも,毎回,毎回,同じ状態で作品が詰められている窯ならば,問題はないのですが,焚くたびに,中の物と空間の比率が変化するような場合(これ,個人の窯にはよくある事ですよね)には,本当に,焚く事は胃が痛くなるほど気を使わなければいけません。
陶芸は,未だ,科学的に分析できない複数の要因を駆使して,美しい形態を作る造形表現ですから,それだけに,人間の感性と緻密な観察力を必要とします。
Q71.よくSK8(1250c)焼成釉を、窯の関係でSK7(1230c)に落としたい場合にSK8釉にフリットを混ぜますね。この場合市販のフリットでどれ位の割で混ぜるものでしょうか?
A71.1250度を1230度の釉薬にするなら,私は迷わず,1230度で1時間(以上)温度キープし,釉薬を溶かします。釉薬は,何かを加えればたちどころに性格が変化するデリケートな面を持っています。フリットや亜鉛,ストロンチウムなどを使用すれば,簡単に温度を下げる事はできますが,それによるデメリットは非常に大きいのではないでしょうか?
ただ,どうしてもフリットを混ぜたいという事であれば,10%(外割り)になるんじゃないでしょうかね。無論,フリットの種類は多いですから,どんなフリットを混ぜるかによって,パーセンテージは大きく変わりますけども。
ちなみに,この文章で使用しているフリットは,溶融点700度程度のものを指します。
Q72.松灰陶石マットで,グリーンが薄かったのは何故?
A72.最初に結論を申しますと,グリーンが薄かったんじゃなくて,青色が強かったんですね。青磁でいうところの,天龍寺→砧への変化っていう感じでしょうか。
ちょっと難しい話になりますが,釉薬は主成分となる長石と灰に加え,カオリンなどの土質の原料が多いか,それとも,珪石などの石質の原料が多いかで,着色用の金属の色が変化します。
で,今回の緑は,松灰の中に含まれる鉄による発色なんですけども,この鉄は,釉薬に土質の原料が多いと緑色(OFの場合は黄色)になり,石質の原料が多いと青みを帯びます。
で,調合を見ると,長石と灰の成分以外には,石質の陶石しか含まれていませんので,当然,釉薬は石質になり,鉄が青みを帯びたので,緑色が薄くなったように感じたわけですね。従って,この場合,鉄を緑に発色させようと思ったら,カオリンを加えるか,陶石を減らすという操作を行わなければなりません。 しかし,操作すると,当然,釉薬の性質が変わりますから,マットにならない事もありますし,そこが難しい所です。
Q73.松灰陶石マットのマグネサイトの混入
A73.陶石は,Hさんの調合の場合,珪石に属する原料になりますから,珪石を陶石に変えても,マットの調子は変わらない(むしろ熔けが良くなるかも)と思うんですけども,ま,一応,珪石を陶石に置き換えるというのは,そういう事になりますね。
で,問題の松灰陶石マットに入れるマグネサイトなんですけども,ミルキーにしたいということであれば,もう少し,松灰の量を減らした方が,ミルキー効果は高いと思います。
ただ,もう,調合しちゃっているでしょうから,この場合は,長石と陶石を更に10づつ増やしてから,マグネサイトを5%くらい混ぜると良いのではないかと思います。
いわゆる,珪酸マットと呼ばれる調合に近くなりますが,これは磁器釉の一種で,1250度程度でミルキーな表面になる釉薬です。
松灰の鉄で,やや黄色く着色されるでしょうから,OFならばミルキーになるのではないかと思いますが。(さて,どうでしょう?・・・無責任ですみません)
色の調整は,鬼板土や,弁柄。あるいは,珪酸鉄などを使用して行います。どれでも構わないと思いますけども,着色力では,弁柄はハード。珪酸鉄がミドル。鬼板土がソフトっていう感じでしょうかね。
あ,それから,余談になりますけども,調合は必ず100にしなければいけないというものじゃないですからね。で,いわゆる百分率調合表になっていない場合は,「部率調合」といって,
灰弱マット釉 福島長石 50部
土灰 40部
カオリン 20部
蛙目 10部
っていう感じに表したりします。
Q74.スプレーガン(ピースコン)と施釉について
A74.0.8mmのピースコンが施釉に使用できるかどうかは,釉薬の粘性や粒子の大きさに依存します。私の場合は,長石・石灰系の,いわゆる鉱物釉はピースコンを使用する事が多いです。ただし,ボーメで1.6(だったかな?)よりも比重を軽くしておかないと(簡単に言うと,水で薄めれば良いんですけども),均等にはかかりません。
また,天然木灰を使用した植物釉は,粘性が高く粒子も粗いですから(私の場合,特に木灰の色を出すために擦りを甘くしているので),水で薄めても目詰まりを起こしてしまって,使えません。
ただ,無理すればスプレーガン(塗料用の口径の大きいエアブラシ)を使って施釉出来ますが,木灰系の釉薬は,大抵,マット調になりますし,表面の凹凸が強く出る事が多いので,私は使用しません。あとエアブラシなんですけども,長石石灰系の釉薬は,非常に綺麗にのりますね。
それと,0.3mmは,間違いなく詰まります。0.3は,デザイナーが染料入りの絵具で絵を描く時に使用するもので,陶芸の特に顔料は使用できないと思いますよ。それに,もし,線を書こうと思うのならば,私は口径の小さいピースコンを使うよりも,マスキングフィルムをつかった方が,綺麗だし,失敗もないと思うんですが。マスキングフィルムは高いから,代換え措置として新聞紙でも何でも良いんですけどもね。
Q75.せっ器について
A75.せっ器というのは,もともと,日本には無かった陶磁器の観念(?)ですから,分かりにくいのも致し方ありませんよ。
英語のストーンウェア(stone ware)というのを,無理して日本語訳した言葉ですからね。(それで,「石」ではなく,造語を使用するわけです。)
御存知のように,器は,粘土質の陶器と石質の磁器に分けられますが,この分類をする上でポイントになるのが「透光性」と「吸水率」です。
焼成後の状態で,透光性が無く,吸水率が0でないものを一般的に陶器。透光性があり,吸水率が0(か,限りなく0に近いもの)を一般的に磁器と分類しています。日本では瀬戸が土を混ぜて磁器土を作り出すまで,異なる土を混ぜるという事が産業的に行われていなかったので,分類はこれで十分でした。
しかし,ヨーロッパなどでは,白磁への憧れや,より強度の高い陶磁器を求め,様々な土をブレンドするという,実に科学的な陶芸が当たり前に行われており,そこで生まれたのが,陶土に溶融しやすい石を加えてるという,半磁土=ストーンウェアだったわけです。
これは,陶器の透光性が無いという特徴と,磁土の吸水率0という,二つの性質を合せ持つもので,加工がしやすいわりには,磁土のように白く,堅固な素地になるものだったのです。
で,後に,「透光性無しで吸水率0」という分類が生まれ,備前や古信楽は,その性質にあてはまるので,せっ器という分類に加える事になったわけですね。
Q76.石灰と骨灰のカルシウムの違いって?
A76.確かに,石灰も骨灰も,共にカルシウムの固まりなんですけども,カルシム自体の成分(性質って言う方が,陶芸らしいかな?)が違うんですね。石灰は,成分の約80%が「炭酸カルシウム」であるのに対し,骨灰の約80%は「リン酸カルシウム」なんです。
では,何が違うかというと,どちらも珪石と反応して,αをβに変える主成分になる事はなるんですが,ポイントになるのは,リン酸カルシウムのリン酸が,乳濁剤として機能するという事なんです。
つまり,リン酸〜の方は,釉中に多量の泡を作る(というか,泡を残す)という性格があるんです。それで,乳濁効果が高まるわけですね。
この性格を利用している代表的な釉薬が砧青磁で,あの水色は,鉄(一説にカルシウムの色だという話もありますが)の発色だけではなく,釉中のリン酸によって出来た無数の泡による乳濁効果と鉄の連携プレーで,発色しているわけなんですね。
で,結局,釉薬が単なるガラスではなく,味のある複雑な色味を持っているのは,この泡の存在が大きいわけで,釉薬を別名「泡ガラス」とも言ったりするのも,この為です。
で,リン酸は,1〜2%(ピロリン酸カルシウムの形で混入の場合)で,かなりの乳濁効果を示しますから,リン酸カルシウムとして骨灰を使用する場合は,3〜5%くらいを入れるということになります。
ちょっと難しい話になってしまって恐縮なんですけども,まとめると,石灰は単純に,釉薬の溶融点を下げるための効果として。骨灰は釉に泡を作る効果として使用するので,同じカルシウムでも,使用方法は全く違うという事になります。
「陶芸−やきもの作りの実際−」は,確かに,調合の多くに骨灰が使われていますけども,まぁ,これは個人のこだわりによるものなので,骨灰が無ければ,石灰で置き換えても,問題はないわけです。ちょっと色味が鋭くなるという感じはあると思いますが。
Q77.磁器の抹茶碗に金箔を貼り、金の消し粉を少し振りかける事にしましたが、接着する適当な方法はなにが一番効果的?
A77.結論から言うと,とりあえず箔の下に繋ぎになるものが塗ってあれば,なんでも大丈夫。という事になりました。(笑)当たり前ですけどもね。
問題は,繋ぎに何を使うかですが,焼くのか焼かないのかという事ですね。焼かないという事であれば,一番簡単なのは瞬間接着剤(アロンアルファなど)を使用する事です。かなりしっかりと付きますし,瞬間接着剤は元々,手術用の接着剤ですから,ほぼ無害ということです。
次が漆ですけども,これも画材店で購入されたものならば,かなり無難に使用できるでしょう。ただし,瞬間接着剤よりも時間がかかりますし,使用時の温度や湿度など,ちょっと注意がいりますね。
焼く場合にも漆は使用できますけども,おそらく400度は高すぎますね。(焼けちゃうんじゃないでしょうか。)私が漆を焼き付ける場合は,せいぜい170度くらいが限界で,しかもかなり短時間(2時間くらい)で焼き付けます。
その他,簡単なのは,日本金液から出ている「金液(水金)」を使うのは間違いないですね。もともと,金色ですから,焼成中や焼成後に剥がれても,やっぱり金という事で,失敗が分かりません。(笑)ただし,どのくらい乾いたら貼るかというタイミングがちょっと難しいですけども。
ところで,この金液は,金粉が硝酸ビスマスという金属を繋ぎとしているらしいので,硝酸ビスマスだけを塗っても,箔を付けるだけならば問題ないという事になります。というわけで,硝酸ビスマスはどうしたら入手できるかと調べたらば,パールラスターという上絵具があり,それの成分の殆どが硝酸ビスマスらしいのです。ですから,金箔で下地の金を隠すという訳の分からない事が腑に落ちなければ,パールラスターを使うというのが,まっとうという事になります。
邪道な線では,アクリル絵具のシエナ色を使うとか,油絵で使用するペインティングオイルを繋ぎに使用するというものもあります。アクリル絵具などは,何が入っているのか知りませんが,色によって,黒釉になったり,透明釉になったりしますから,釉薬と似たような原料が使用されているのでしょう。
また,リキテックス社から,グロッシーズという絵具が出ており,これは200度程度で焼き付ける絵具で,通常,オーブンなどで手軽にできる絵付として売られていますから,それを繋ぎに使ってしまうという手もあります。
もちろん,伊勢久の「金箔接着剤」もしっかり付きますし(ただし,私は上絵の溶媒じゃなくて,リンシードを使ったりしましたけども),上絵の洋絵具を繋ぎに使ってもきちんと付いていました。
他にもいろいろあるんですけども,上記の中から,好きなものを選べば良いよのではないでしょうか。
Q78.焼き上がりに原因不明の黒いほくろが点々と…!?
A78.黒いほくろには2種類あって,一つは道具(主にカンナ)からでる鉄粉。もう一つがカビです。
カビがどうして鉄分を持っているのかは分かりませんけども(あるいは鉄分に似た物質なのかな?),磁器に付く黒カビは,焼くと黒いポチポチになることが,たまにあります。青カビは,そうでもないんですけどもね。
有機物だから,分解して無くなっちゃうかと思い,焼いてみたら,泣き状態になってしまったので,良く覚えています。
それから,私はカッターオタクなところがあって,かなりの種類のカッターを持っているんですよ。文房具屋さんで,新しいのを見つけると,必ず買っちゃうのよね。今,気に入っているのは,六連装式カッターと,ステンレス刃の中型タイプ。それと,修復でよく使うのは,ペン型の刃先の鋭いカッターですね。
でも,ほとんどのカッターは,ナマ土を切ると,刃先が粘土とくっついちゃうので,使えません。使う時には,グラインダーで刃の無い方を削って,先を尖らせないとだめなんです。
Q79.古代中国の青磁器のかけらを見ると素地が馬鹿に薄いのに対して上薬がひどく厚く掛かっていました。(素地の2倍や3倍ではありませんでした)あれって、釉を掛けては焼き、掛けては焼きを繰り返したのか、糊薬でも付けてめちゃめちゃ厚掛けを繰り返して、超超ゆっくり(10日も15日もかけて)焼成したものなんでしょうかねぇ?
A79.青磁の釉薬なんですけども,あれは,二度掛け,三度掛け,四度掛けという感じで,何度も掛けてから,焼くんです。
もっとも,釉薬そのものの濃度も高いんでしょうけども,あれだけ素地が薄くなると,濃度を濃くしたり,長い時間,釉中に入れても,素地が水を吸いませんから,それほど厚くはつきません。
更に,一度焼いてから,あれだけの厚みを乗せるのは,おそらく至難の技だと思いますから,たぶん,やっていないでしょう。
青磁は,たぶん,テレビでも言っていたと思いますが,その本質は釉中にできる泡が光を微妙に乱反射し,鉄の碧い色を,より深いものにします。さらに,素地を薄くすることで,透光性を高め,より,釉薬の珪酸ガラスとしての美しさを強調するわけですね。もっとも,青磁は,あのくらい厚く掛けないと,美しい碧さが出ないから,仕方ないわけですけどもね。
ところで,西洋の鉄の武器は,冷ます段階で奴隷を刺し,その体の中で徐々に熱を下げる事で,恐ろしいまでの強度を作れたといいます。陶芸も,青磁の貫入の模様を染めるのに,じつは,人間の多量の血の中に陶器を入れて貫入を染めたのではないかとも言われていますね。大陸的思考も,ここまでいくと,脱帽した帽子を投げつけたくなるような気もします。
Q80.塩分と赤色の関係
A80.食塩水吹きかけの事なんですが,あれは基本的に土の中にある少量の鉄が,食塩の塩素と結びついて塩化鉄(赤い鉄ですね)になるという効果を利用したものですので,鬼板のように,鉄の含有量が50%以上の着色の強いものを塗ると,ほとんど差がでません。
通常は,含有鉄が酸化されても赤くならない程度の含鉄土を使う事によって効果を発揮するものですので,鬼板塗るのは無理ですね。
ただ,半磁器土や磁器土は,食塩水を吹きかけても赤くなりませんが,粒子の細かい弁柄を,塗ったかどうか分からない程度に希釈して吹きかけた(塗ると濃すぎます)後に,食塩水を吹きかけると,赤くなります。しかし,磁器土を赤くしても,あまり面白くないですけどもね。確かに,オレンジ色は綺麗ですけども。
本来は,藁灰を水簸した時にでる灰汁を煮詰めて,塩素の濃度が高くなったものを利用しますが,食塩水の方が楽なので,飽和するまで撹拌しながら入れて,これを使います。
Q81.志野の緋色について&志野長石って何?
A81.これは風化長石という種類のもので,原料そのものは,アプライト質のソーダ長石ですから,釜戸長石などと成分そのものは,あまり変わらないはずです。
では,何故,釜戸長石と言わず,わざわざ志野長石という名称を使用するかというと,これは,わざと粒を荒くしているためです。(ですから,志野長石は,擦らずに使用するのが普通なんですけどもね)。
志野釉の神髄は,その淡雪のような白さにありますが,この白さを作るためには,熔けて失透釉になる部分と熔けずに粒として残留する部分の2層が必要となります。この2層の微妙な光の屈折作用によって,あの志野独特の白さが生まれてくるのです。
志野は,長石単味を釉薬とする極めて珍しい釉ですが,それゆえ,花粉という失透釉になる細かい粒の長石と,粗目という粒状残留する大きな粒長石の2種を混合させています。(というか,モノは同じですが,わざと粒に大小を作っています。ところで志野長石は、最初から、粗目と花粉が混じっていますから志野長石だけで釉ができます。ただ、熔け方の調節をする場合は、石灰を入れるという時と、数種類の長石を入れる時があるようなので、そういう目的ならば、釜戸長石や、福島長石を混ぜる場合も考えられます。ちなみに、え〜〜、あんなザラザラの志野長石を使うのぉ。とお思いでしょうが、あれが熔けるくらい焼くのが志野釉ですから、仕方ないと諦めてください。
九州の小鹿田焼きなどでは,この志野釉を作るために,水車を使って長石を突いて,わざと粒にムラを作るという手法を代々続けていますが,大きいメーカーでは,スタンパーという機械で長石を潰しています。
メーカーから長石を買う場合,基本的に粒はかなり細かく,同じ大きさになっていますから,もし,自分で志野長石を調合しようと思ったらば,長石層から自分で石を拾ってくる以外に方法はないかもしれませんね。それが出来ない場合は,志野長石を擦らずに使用しましょう。って事になります。
ちなみに,志野風の風合いを出す為には,志野長石を使わなくても,釉薬調合はいくらでも考えられます。ただ,あくまでも志野の風合いというだけで,いわゆる伝統的な志野釉ではなくなってしまうことは,憶えておかなければいけないかもしれません。
それから,志野の緋色は,基本的に酸化第二鉄と塩化鉄の混合鉄の発色です。ですので,基本は鉄の含有量の多い土を使用するか,あるいは鬼板や弁柄などの鉄を表面に塗ることがポイントになりますね(また,長石に少量の蛙目粘土を入れると良いという話もあります。ちなみに釉自体に食塩を混合したのでは出ませんよ)。
しかし,これを単純に焼くと,ネズミ志野になってしまいます。これは,冷却時に還元で鉄が酸化第一鉄に戻ろうとする作用だと言われており,これは窯の冷却時間の長短によるものだというのが通説です。
そのため,志野で緋色を出そうとする人は,炊きあげる事以上に,冷却の温度に気を使っています。つまり,釉薬が熔けた後が勝負の境目になるわけですね。初心者の方で,志野の赤色がでないという方の多くは,目的の温度になるまでは時間や温度カーブを気にするのに,火を止めたらば知らん顔という方が多いんです。
志野の緋色の本領発揮は,むしろ,火を止めた後にあると言っても過言ではないのかもしれません。
それから、冷却時に酸化還元のどちらが良いかは、基本的に個人の焚き方に依存する事が多いですから、絶対にこっちが良いということは言えないでしょうね。織部などでも、火を止める前に還元をかけた方が良いという人もいれば、きっちり酸化で焼き抜く方が良いという人もいますし。
志野も還元で焚くと決まっているわけではありません。どこで還元をかけるか、あるいはどこで酸化雰囲気にするかは、当人の好みや窯の癖など、様々な要因があります。多くの場合は、釉薬の色の深みに関わる事が多いので、その辺は、いろいろとやってみてから考えた方いいのではないかと思います。
それから、志野は元来、登り窯や穴窯で焼いていたという事を考えれば、冷却時にどうすれば良いかは、おのずと見えてくるような気もしますね。果たして、登り窯や穴窯と同様にすることが、良い事かどうかは、分かりませんけども。
Q82.焼成のことですが,時間をかければかけるほど,しっかりと土がしまるのでしょうか?
A82土の成分の殆どは、ご存知のようにガラスの元(珪酸)です。これが、αからβ、そしてムライトに変化し、長石が熔けて焼結現象というものが起こり、素地の隙間が埋まってガラス化します。これを、陶芸では「焼き締まった」と表現します。
焼締まりは、窯の温度というよりも、土に与えたカロリーの大小によって変化します。
古代式の穴窯などは、構造上、最大でも1150度内外の温度までしか出ませんが、その温度を3、4日持続させることで、しっかりと土を焼き締めます。私が実験したところでは、1260度まで単純に温度を上げ、火を止めた状態は、1230度で2時間弱キープをかけたものと、ほぼ同じ焼締まりとなりました。
という事で、基本的には土を焼き締めてガラス化すれば、素地の隙間がなくなる為に水漏れはとまると考えられます。ガラスによる被覆作用によって無理矢理土の表面の隙間を埋めたものが、いわば釉薬ですね。
Q83.主に水漏れの原因とは?
A83.大別すると、以下の3つの理由が考えられます。
1つめは、土の成分による理由です。
これは、土のガラス粒子が大きかったり、極めて熔解温度の高い成分が多量に含まれている場合に起こる水漏れで、「焼き締まりがサクい」などと表現しますが、いわゆるザックリとした土味を持つ土が、その代表例です。萩茶碗などに見られる「雨漏り手」は、こういう成分の土を利用することで、その水漏れによって生じる漏れを模様と見立てたものです。
2つめは釉薬の貫入によって生じるものです。
ご存知のように、釉薬は、土との膨張収縮率の違いによって、殆どの場合、貫入を生じます。この貫入には、通常の貫入とシバリングという貫入の2種類があり、問題はシバリングが起こった場合です。
シバリングは、釉薬の膨張収縮よりも、土の膨張収縮の方が大きい場合に起こるもので、八重貫入などがその代表的なものですが、これは、適度に入っていれば模様となりますが、ひどくなると素地に大きな負担をかけ、細かいヒビを多数つくります。もっと症状がひどくなると、ある時、パックリと器が割れる場合もあります。
つまり、素地と釉薬との相性が悪い場合に、釉薬の貫入から流れ込んだ水が、素地の割れ傷から染み出すことで水漏れになります。したがって、いくら高カロリーで焼き上げても、冷却時に出来る貫入で水漏れを起こします。
3つめは、作陶上に起こるもので、簡単に言えば「削りすぎ」です。
特に、紐づくりで形を作った後、表面や器の内側をガリガリやると、せっかく継いだ紐の表面を削り取り、接着の悪い紐と紐の隙間があらわれて隙間が出来るというケースです。無論、紐づくりだけでなく、玉づくりやロクロでも、表面を削りすぎると水漏れがひどくなるケースは多いですね。
指でいじっている間に、土は知らず知らずのうちに表面の粒子が密になります。しかし、削りをやりすぎると、その密になった表面が荒らされ、粗になってしまいます。
形の美しさばかりを優先する陶芸入門書や、陶芸教室では、こうした作陶を推奨する場合が多いのですが、実を言うと、あまり薦められるものではないんです。湯飲みや急須など、長時間、水を入れておく必要のない器ならば、そうした作陶方法もOKなのでしょうが、花器などでは、全く使いものにならない技法です。
それから、最近は水止め剤にも数種類あり、大抵は油性なのですが、私のお気に入りは水性の「液体セラミック」という商品です。これは、素地中のアルミナと珪酸とを反応させてどうこうという、被覆とは違った方法で漏れ止めをするものです。油性のものよりも強力で、しかも無害という優れものですから、よかったら見つけてみてくださいね。
Q84.瀬戸黒と織部黒(あるいは黒織部)はとも に引き出しですが、何処が違うのでしょうか?
A84.時間軸の差によるものだと思います。
正確に言うと,時代が下がるごとに,形態上の変化や装飾上の変化が起こる。このところがポイントになるという事でしょうか。(つまり,産地による違いとか,成分上の違いとか,そういうものではないということですね。)まぁ,これらの違いは,後の人間が学問上分別したものなので,時間軸は当然だとは思うんですけども。
時代の流れからいくと,
黒い美濃の焼き物→瀬戸黒→織部黒→黒織部
という流れになるそうです。
黒い美濃の焼き物は,瀬戸黒や黒楽の原形となるもので,丸い腰に高台がついた,いわゆる黒楽のような器で,焼成中の火がついた状態の窯から,作品を引き出して鉄による黒色を作る製法の器です。
そうした製法が,やがて大窯という巨大な窯で行われるようになり,形態も丸底から,平底へ,そして篦目が入った力強い造形に変化し,瀬戸黒になります。
次に,ロクロで引いた形態をわざと大きく歪ませる「沓形茶碗」という形式が登場し,これが織部黒。更に,そうした織部好みの非対称の形態に,窓絵や象嵌という技法での装飾が加わり,黒織部になります。
結局,非対称の形態も局限まで行き着き,装飾の技法も飽和して,時代と共に変化していった引き出す技法の黒い器は,それ以上の発展性がなくなって荒廃します。
逆に,黒楽は,その単純な色や形態によって,器という根本を捨てなかった事により現代まで連綿とその地位を守っていますね。
どちらが良い,悪いという事は言えませんが,単純で力強い瀬戸黒が好まれる理由は,そうした黒楽が息衝いている事からも,なんとなく分かる気がします。
Q85.鳴海織部って?
A85.鳴海織部は,古田織部が尾張(愛知県の一部)の鳴海で作らせたと言われていますから,織部の意匠という事になると思います。他の織部と時代的に同じ出土らしいですから,間違いないでしょう。
「鳴海織部」
赤土と白土を繋ぎ合わせて形を作り,白土の部分には銅青釉(緑色の釉薬。現在では織部釉とも言われる)を掛け,赤土の部分は白泥で装飾し,鉄絵を施して焼成した器。現在は,よくある装飾ですけども,赤土と白土の融合や,緑と白と赤(鉄の茶色)の3色による装飾など,当時は先進的な器だったそうな。
Q86.釉薬の沈澱防止には何が良い?
A86.最も,沈澱防止になるのは,釉薬の原料に粘性のあるものを使用する事ですね。例えば,蛙目とか陶石とかね。ただ,これは釉薬の原料に,カオリンや硅石などが使用されている場合に,それを置き換えるという事になりますから,釉薬の種類が限定されます。置き換えなくても,少量の蛙目を入れる場合もありますが,かなり良く擦っておかないと,焼成後にプツプツが出る場合がありますから,あまりお勧めはできません。
では,そういうもの以外で何が使用できるかというと,私は布海苔やCMCを入れる事にしています。粘土成分(カオリン,蛙目など)を使っていない釉薬は,施釉後の乾燥で,釉薬がはく離したり,焼成中に釉切れを起こす事が多いんですけども,布海苔やCMCを入れると,それも防止できるので一石二鳥になります。
どちらも,すぐに腐って臭気を放つんですけども(笑),洗濯用糊として売っているCMCには防腐剤が入っているので,私は,それを愛用しています。
沈澱防止は,「凝固回避」と「沈澱速度の低下」という2種類の方法で主に対処します。食塩やニガリ,酢の添加は,凝固回避の側面からのアプローチと思われますが,私は,どうも,これらはかなり釉の使用原料に依存するところが大きいので難しいのではないかと思います。
クリスタリンという沈澱防止剤などもありますが,あれも「凝固回避」のアプローチで,ほとんどの釉薬の沈澱防止にはならないのが実情ですね。
むしろ,釉薬に粘性のあるものを入れ,原料粒子の沈澱速度を遅くする方が,沈澱防止(実際に防止ではないわけですけども)としては効果が大きいと思いますよ。
Q87.,釉縮れの修復方法は?
A87.釉薬の溝にCMCを入れるという方法もありますが,私の場合は,むしろ,器を電気コンロの上であたためて(直置きすると割れますから,網か何かの上に乗せてね),かなり熱くなったところで,CMC入りの釉薬を掛けたり,筆で乗せたりしています。
ま,結局,めくれて素地が露出した部分に釉薬を付ければ,大抵の場合は問題なく埋まります。ただし,これも釉薬の性質に依存するところが大きく,元来,張力の大きい釉薬だと,もっと縮れて症状がひどくなる場合もありますね。粘土が入っていない硅石/石灰ベースの釉薬は,ひどくなる事も多いようですし,塗り直した部分があからさまに分かったりします。長石/石灰系の釉薬で,カオリンなどの粘土類が入っているものは,かなり分からないくらいに直る事が多いです。
ちなみに,2度焼き,3度焼きは,釉薬よりも素地の方に,かなり負担をかけます。特にきめの細かい赤土などを使用している場合は,2度めの焼成で,煎餅のようなブクを生じるケースが多々あります。
これは,土中のガラス成分が,熔けやすくなっているために,短時間で素地が柔らかくなって,素地中の気泡によってできるブクですね。
陶芸での焼き直しは,そうした事を回避するために,普通,2度め,3度めは,1度めの焼成温度よりも低い温度で焼くようにします。同じ釉薬を使用している場合も,20度くらい低い温度をキープさせて釉薬を熔かします。
Q88.ベントナイトっていうのはどんなもの?
A88.別名,膨潤土って呼ばれる粘土の事ですね。
膨潤の名の通り,かなりの勢いで吸水して体積が膨れ,蛙目並にベトベトします。その性質を考えると,確かに,沈殿防止に使用できるかもしれませんが,私はもっぱら沈殿防止になるほど多量に使用していませんでした。
ベントナイト本来の使用法は,可塑性増強の目的で,フリットや粘土に5%以下で使用するというものですね。ただ,5%も入れると,逆に扱いにくくなる事も多く,また含有している鉄分の影響が大きい事もあるそうなので,私はいつも2%程度しか入れませんでした。
また,1〜2%程度入れると,浸し掛けの際に一定の厚さしか素地に付着しなくなると説明書きにはあったんですけども,私の浸し方が悪いのか,一定の厚み以上についてました。
Q89.施釉後の剥離や飛びの原因とは?
A89.実は釉薬の難しさは,成分そのものと同時に,その粒子の大きさとか,熔け方の違いっていうのもかなり関係しているんです。
かなり詳細な陶芸入門書や,専門書でないかぎり,この辺りに触れているものってすくないんですけども,特に,施釉後の剥離などに関するものは,この辺の事に依存する側面が大きいみたいですね。
釉薬の原料は,擦れば擦るほど熔けて反応しやすくなるわけですが,だからと言って,かなり細かくしてしまうと,施釉後の剥がれがひどくなったりもします。特に,粘土が入っているものは,擦りすぎると粘り気が弱くなったりして,剥
離しますね。
一般的には,着色用の金属類は細かく,基礎釉の原料はやや荒めに擦るっていうのがセオリーのようです。
また,釉薬には,それぞれ固有の熔け方のプロセスというものがあります。一度,素地から浮き上がり,やがて徐々に熔けて素地と密着するもの。逆に,素地と密着したまま熔けていくもの。など,さまざまです。昇温時に起こる珪酸の体積膨張がかかわっている事が多いわけなので,かなり大ざっぱに話すと,硅石の含有比が大きくなると,それだけ昇温中に素地から剥離する危険が高くなると言えるわけです。
よく,窯入れの時には釉薬が剥離していなかったのに,焼成が終わって窯出ししたらば,作品の釉薬がはげて,棚板に付いていたとかいう失敗がありますよね。こういうのは,昇温時の剥離によるもので,その多くは,硅石の多い釉薬でみられるものです。
それから,当然の事ですが,釉薬の厚みが増すと,それだけ珪酸成分が多くなりますので,昇温時の剥離現象が促進されます。特に,素地との密着が悪く,かつ,膨張して浮くような釉薬は,自分の重みで剥離することもありますね。
Q90.膨張収縮と釉薬について
A90.△ 温度上昇時の変化
素地は,釉薬が熔け始めるまでの間に,以下のような状態変化を起こします。600度あたりで,素地は急激に膨張を始め,やがて,それが1150度あたりからの焼結現象によって,体積減少(いわゆる収縮)に変わります。
釉薬は,その性質によって様々ですが,素地の変化よりは小さい体積変化しか起こしません。ただし,珪酸質の釉に限っては,SiO2の変化に伴う体積膨張が起こります。
▽温度下降時の変化
素地,釉薬供に,温度が下降するのに伴って,収縮が起こります。
この際,使用原料によって,収縮率に差が生じます。昇温時と同様に,600度あたりから急激な体積減少が起こり,300度あたりで落ち着きます。
つまりこれらの膨張収縮での体積変化の差が,釉縮れ,切れの原因になるわけです。
▲温度上昇時に起こる現象は,釉縮れ,釉切れで,これは,素地の膨張に釉薬の膨張がついていけない場合に発生します。
分かりやすく言うと,例えば,ゴム風船がしぼんだ状態の時に,表面に小さな四角い紙を隙間無く張り付け,その後,ゴム風船を膨らませたとします。このとき,ゴム風船が膨らむにつれ,紙どうしの隙間は大きくなりますね。これが,陶磁器の釉縮れ,切れのプロセスです。
陶磁器の場合は,その後,表面の釉薬が熔け,その表面張力によって,細切れになった釉薬が引き寄せられて,縮れや切れが発生します。
▼温度下降時に現れるのが貫入です。
これは素地と釉薬との収縮差によって発生します。収縮差が,「素地<釉薬」の場合は,いわゆる,一般的に言う貫入になります。これは,素地よりも釉薬の方が縮むので,その隙間が貫入として現れるわけですね。
「素地>釉薬」の場合も表面的には貫入と同じような模様があらわれますが,これは,これ以上縮みたくない釉薬が,素地の収縮によって無理に縮められているので,シバリングと呼び,区別しています。
ただし,多くの場合,シバリングは事故のぶるいに入るもので,大抵は素地の破損が起こります。
Q91.釉薬調合の場合、釉合計(重量%)の内金属物質は何%位を目標に調合すれば良いのでしょうか、その場合金属物質の中に鉱化剤も含めるのでしょうか?
A91.金属物質といっても,非常に多種多様ですから,何%目標というものはありませんね。錫などは数%ですし,マグネサイトは10%以上入れて初めてマット釉として使えます。チタンなどは20%近く入れて乳白色釉にしたりもしますね。
仮にベンガラ(鉄)も金属として考えた場合,2%程度だと黄瀬戸や青磁,5%程度だと飴,10%弱だと黒,15%で鉄赤になります。これと同様に,亜鉛なども,釉薬の溶解温度を下げたいという目標なのか,それとも結晶を出したいという目標なのかによって,混入量は変わってきますから,目標として括る事はできません。
Q92.素焼き温度が低い場合、本焼き時素地の膨張もより大となりますから昇温時に釉縮れの誘因となりますか?
A92.素焼きの温度自体は,釉薬の縮れとはほとんど関係ないと思います。というのも,素焼きもまた,温度の上昇,下降によって体積変化を起こしているからです。完全乾燥時と,素焼き終了後の大きさを見てみると分かると思いますが,ほとんど変化がありませんよね。これは,一度,窯の中で体積膨張した素地が,冷却期にきちんと元の体積に戻っているからです。
このように,体積は,温度によって毎回,体積の膨張・収縮を繰り返します。ですから,素地が400度で施釉をするという事をしないかぎり(笑),常温時の素焼きは,生の土の完