7.陶芸講義・談義・Q&A

陶芸Q&A(全覧)


Q1.轆轤(おおっ!これでろくろって読むのか!さすがATOK)って難しいんでしょうか?よく、ドラマのワンシーンでいいところまで行くんだけど壊れちゃったりするでしょ?やっぱり素人がやるとああなるんですか?
A1.昨今、よくやっているドラマは、とにかく信用しないのが一番ですね。だって、良いところまで行かないもの。初心者のロクロって。あれは、一応、形になったのが壊れるの方がドラマチックだから、そうしているんですよ。本当は、ああいう風になったら儲け物で、あそこまで行かないうちにノックアウトしちゃう人が多いんです。
 でも、あくまでもロクロは単なる技術ですから、地道に練習すれば、形は作れるようになりますよ。(でも、一説には菊練り3年、ロクロ8年って言うんだけどね。)そこから先、ロクロを如何に自分の道具として使用できるかって事になると、話は別ですけどもね。

Q2.本当に綺麗な油滴はそれこそ本当に美しく、見ていて飽きないのですが。油滴は還元焼成なのでしょうか?だとしたら電気窯では無理でしょうか・・。 油滴とは関係ないのですが、落ち葉は事業系ゴミとしては出さずに、ため込んで灰にして釉薬をつくっては?
A2. うううううぅぅぅぅっぅ。辛いっす。何が辛いって、この手の結晶系釉薬の話を分かり易くするのは、1才の子供に相対性理論を理解させるくらいの難しさがあるっすよ。それから、根本的に、間違っている所があるっすーーー。で、頭を抱えていても仕方がないので、まず、訂正から先にしましょう。
 油滴天目には、酸化と還元の両方があります。有名なのは酸化(OF)の方で、昨今のラスター天目というやつが還元(RF)であることが多いですね(こっちの方が綺麗に見えるからだと思うけども)。それから、電気窯は還元ができないと思っていらっしゃる方が非常に多くて困るんですが(この前も、その手の質問をうちの陶芸教室に電話してきた人がいる。会員でもないのに、何故?)、電気窯でも還元はできます。要は窯内の雰囲気を酸欠にすれば良いのですから、方法はいろいろありますが、一番簡単なのは、炭をいれて一酸化炭素を発生させることですね。
 それから、電気窯は熱源として使用しているカンタル線が、昇温の際に熱分解してガスを発生させるので、完全な酸化焼成はできないそうです。いわば、中性炎といったところでしょうかね。ただ、限りなく酸化に近いので、結果、釉薬の色が酸化になります。
 で、質問の回答なんですけども、油滴の話は、申し訳ないのですが別な発言とさせて頂きます。(かなり長い話になりそうなので)
 尚、電気窯で酸化と還元のどちらが窯を損傷するか?ですが、これは、非常に難しく、極論で言いますと、酸化の方が電熱線の消耗が激しく、炉壁の消耗は少ないです。逆に、還元は炉壁の消耗が激しく、電熱線の消耗が少なくなります。従って、どちらで焚いても、1000回くらいが窯の限界のようですね。(もちろん、焚くことに関してはそれ以上できますが、昇温しずらくなったりという弊害が出てきます。)あと、電気とガスとでは、釉薬の上がりは全く違います。ガス窯専門に作っていらっしゃる会社の方とお話をしますと、「電気窯みたいな、でかいトースターとは違いますから」と言いますから、やはり、電気窯はでかいトースター式の焼方になるんでしょう。この言葉から、何となく違いは分かりますね。
 まぁ、つけ加えると、電気はおっしゃるとおり輻射熱(対物放射)ですから、外側の陶器が発した熱が伝わって、中の陶器に熱を伝えるという形になります。(これで、焼むらがなくなるわけですが。)つまり、ガスのように陶器の隙間を縫って炎が中の陶器に当たるのではないですから、焼具合は当然、変わってくるでしょう。 

 「落ち葉の釉薬利用について」
 落ち葉を、釉薬として使用できるだけの量を確保するには、一般事業ゴミとして出る落ち葉の量では、話にならないと思いますよ。私も、そう思って大学時代に、学校中の落ち葉を用務員さんからもらって作ったことがありますが、バケツ1杯分くらいしかできませんでした。しかも、ああいった木灰は、非結晶体にするための特殊な焼成法で作りますから、かなりの技術がいるんです。
 それと、葉っぱは大抵、高熱灼減成分や珪酸分が多く、釉薬のカルシウム分として使用することは出来ないことが多いようです。(実際、釉薬用の灰は、木の幹を焼成した物です。)また、木はその生息地や木そのものの部分(木の下の方の葉と上の方の葉でも違います)、時期によっても非常に成分比率が異なるので、常に一定のクオリティーを確保することができません。その為、釉薬に使用するには、それだけのクオリティーを確保するために多量の灰を精製し、また、蓄積・混成させなければなりません。たびたび、テストピースを作って釉調をテストする必要もあるでしょう。従って、事実上、事業ゴミの落ち葉を釉薬の灰として使用するのは、無理と考えた方がいいと思います。
 もちろん、趣味として、同じクオリティーを確保する必要がない場合には、それほどの心配は必要ないでしょうけども。
 ここまで読んで、もし頭が痛くなるようでしたら、油滴の話はかなり頭が痛くなりますから、覚悟が必要でしょう。もう少し考えて、なるべく頭が痛くならないような説明を次回、いたしますので、少々、お待ち下さい。

Q3.ところでラスター天目って?非結晶体(←これって世に言うアモルファスですか)でないとダメなんでしょうか?高温灼減成分って何ですか? 珪酸分では焼成でガラス化しないんでしょうか?
A3.ラスター天目は、その名の通り、ラスターがかっている状態ですから、一目で分かると思いますよ。虹色の加減が、大きいですよね。もし、小さいようでしたら、それは還元落としの時間が短いものと考えられます。
 え〜と、それから、釉の成分の質問ですね。
 非結晶はアモルファスが大切なのではなく、高温でイオン化するかどうか(つまり、分解しやすか)が問題になります。釉薬に使用する原料でも、青磁で発色する鉄の青はイオン化が必須の条件ですから、酸化第二鉄(結晶)よりも第一鉄(非結晶)を使用します。辰砂を作る場合も(これは本来、イオン化した後のコロイドという再結晶がポイントですけども)、酸化銅よりも炭酸銅などを使用して反応を促進させます。通常の基礎釉の場合も、石灰分に白石石灰よりも、ネズミ石灰を使用するのはその為です。従って、灰を使う際にも、通常、焚き火などで出来た白い灰は反応性が良くありません。(とくに藁灰。)くすぶらせて長時間低温で焼成した黒い灰が使われます。ただし、ここで出来る黒は当然、炭素ですから、焼成中には揮発して(揮発じゃないですけども、なくなってしまいます。これが、高熱灼減成分です。高熱灼減は、大体が炭素と水(物理的結晶水)ですけども、木灰は、この成分が多く(有機物ですから当たり前ですけども)、葉になると、殆どがその成分です。つまり、なくなってしまう成分が多いってことですね。
 珪酸分は、おっしゃるとおりガラスの成分ですが、葉っぱの釉薬はガラスの成分が多すぎて、木灰のような扱いは難しいという事です。カルシウム分を別に入れれば問題はないでしょうが、入れないと、釉薬にはなりません。珪酸分は単体では釉化する温度が極めて高温ですから、フラックスとなる物を入れないと熔けませんからね。

Q4.電気窯の横からガスの炎を入れたりして還元焼成したり出来るという話は聞いたことがありますが、窯の損傷を気にしてしまいます。電気窯は熱源として使用しているカンタル線が、昇温の際に熱分解してガスを発生させるので、云々…
 ふぅん、そうすると、この線は窯を焚くたびに熱分解を繰り返し、熱効率も悪くなり、ついには切れちゃうってことなんですか?

又、電熱線の熱は輻射熱が主で、登り等の窯は直接炎が発生している・・・。この違いが焼成に於ける反応に何か差を与えているように思えてならないんですが。
A4.線がすぐに切れるっていうことはないと思いますけども、線が細くなるということはあるでしょうねぇ。一応、うちの陶芸教室では1カ月に4〜6回のペースで窯を焚いて、5年を目途に線の張り替えをしていますが、それでも、「かなりきてますねぇ。」と窯屋さんには言われます。
 確かに熱効率は、1年目と2年目ではかなり差が出ると思いますし。季節による温度、湿気等の差を考慮しても、やはり、線の劣化によって1250度あたりの温度域までいく時間は徐々に長くなるようです。
 あ、そういえば、私がいた大学の窯は、20年という、妖怪化してもおかしくない年期の入った窯でしたが、切れてました。窯を焚くごとにブチブチ切れるので、ガスバーナーで線を焼いて修理していたのを思い出しましたから、やっぱり、切れますね。線。それ以前に、線が前に飛び出してくるようになりますけどね。

 それから、電気窯で酸化と還元のどちらが窯を損傷するか?ですが、これは、非常に難しく、極論で言いますと、酸化の方が電熱線の消耗が激しく、炉壁の消耗は少ないです。逆に、還元は炉壁の消耗が激しく、電熱線の消耗が少なくなります。従って、どちらで焚いても、1000回くらいが窯の限界のようですね。(もちろん、焚くことに関してはそれ以上できますが、昇温しずらくなったりという弊害が出てきます。)あと、電気とガスとでは、釉薬の上がりは全く違います。ガス窯専門に作っていらっしゃる会社の方とお話をしますと、「電気窯みたいな、でかいトースターとは違いますから」と言いますから、やはり、電気窯はでかいトースター式の焼方になるんでしょう。この言葉から、何となく違いは分かりますね。
 まぁ、つけ加えると、電気はおっしゃるとおり輻射熱(対物放射)ですから、外側の陶器が発した熱が伝わって、中の陶器に熱を伝えるという形になります。(これで、焼むらがなくなるわけですが。)つまり、ガスのように陶器の隙間を縫って炎が中の陶器に当たるのではないですから、焼具合は当然、変わってくるでしょう。

Q5.昔そごうで、「陶磁器人形と仲間たち」という瀬戸輸出陶磁器工業組合青年部の創立20周年記念事業を見てきたのですが実演コーナーや、ビデオで、制作過程を説明していました。釉薬を使った絵付けの薬は、シンナーのように、きついにおいでした。「これを塗って、もう一度焼くと、この部分が、金色になるのだよ」と瀬戸のおじさまが、おしえてくれました。これはどういうものですか?
又、この中で、「松ぼっくりを釉薬に混入すると、おりべの緑が鮮やかになる」という説明があったのですが、??どうして?

A5.え?そう?なんで?何の臭いがするんでしょ?
あ、もしかして、それ、上絵具でしょうかねぇ。だとしたら、膠かテレピン油が入っているからじゃないでしょうか。布海苔(ふのり)ならば、それほど臭いしないと思うし。(腐っていれば別だけども)まつぼっくりについてはわかりませんので調べてみます。

Q6.貴族の日常の器は、木の盃や、お椀ですよね? 昔の絵巻を見て、そんな印象を持っていました。そもそも、御飯茶碗が、焼物になったのは、いつの時代からでしょう?
A6.その昔、私が学生だった頃(10年以上前)古典の時間に読んだ文に 「酒の肴に何か無いかと、紙燭をともして探し回ったら、素焼きのかけらに味噌が付いて残っていたのを見つけたので、これを肴にして二人で飲もう」 としている内容の物があったように思います。(出展は忘れました)
 この原文で覚えているのは「紙燭」「かわらけ」「『たうべん』と」だけです。
 何時の時代の出来事を書いた物か忘れましたので何とも言えませんが、紙燭を使う、酒を飲む、肴として味噌があったのでこれで「我慢」する、などから庶民生活の話ではないと記憶しています。ですから貴族?は日常の中で「かわらけ」も使用していたと思います。(飛躍したかな?)

Q7.同僚にも、焼締めをする人がいますけども、その人は作品を画廊に出す前に、サラダオイルを何度か塗っていました。
「なんで、そんなことするの?」と聞いたら、「こうすると、器がしっとりするし、水漏れ防止にもなるんだよ。」って事でした。

A7.釉の掛からない器で、お膳が傷付くのが嫌で、底に、透明のマニュキュア塗ったりはしますが。においの比較的少ないのは椿油ですが、それでも嫌う人は嫌います。でも、焼き締めの場合、これを塗るのと塗らないのとでは、ずいぶん色艶に差が出ます。焼締めにサラダ油は、そんなにしてなかったような気がしますけどねぇ。そういえば学生の頃アルバイトで焼締め作品の展示をしたことがありますがその時、ぬるぬるしていて落としたらえらいこっちゃと思ったことがありましたがあれがそうだったのかしら?。

Q8.備前焼って、肌が、茶色いのと、赤いのとありますけど、どう違うのですか?
A8.「色が違います」としか言いようがない....
ふざけてるんじゃなくて、僕にも説明できない。土と温度と...そんなこと言ってたらやきものはすべてそうですから。....説明にならない。
 基本的には酸化・還元の雰囲気に寄るところが大きいと思います。備前の土の中には多量の鉄が入っていますが、その鉄が還元雰囲気になると土の表面に析出しやすくなります。(逆に、酸化は析出しにくい。)また、鉄は還元だと「酸化第一鉄」という鉄になり、これは黒い色をしています。酸化の場合は「酸化第二鉄」という錆色をした赤い鉄色になります。炎は、場所にって、この雰囲気の変化がでますし、窯も場所によって酸化と還元の差が出来る部分があったりします。それで、その雰囲気に応じて鉄の析出や性質が変化しているのではないか。と言われています。
 また、ついでですけども、備前では藁を器に撒いて「火襷(ひだすき)」という赤い線をだしたりしますが、これも土の中の鉄を、藁が持つアルカリ分によって表面に析出させるという効果によるものです。

Q9.上絵具は、釉薬じゃないの?
A9.簡単に言うと、上絵具は釉薬です。
 ただ、普通、器に掛ける釉薬が1250度内外なのに対して、上絵具は650〜800度でガラス化するようになっている「低温釉」という分類に入っています。(ちなみに、1250度あたりで熔ける釉薬を「高温釉」というわけですね。)
 では、なぜ、「上絵具」などと言うかと申しますと、本来は、高温釉のように全面を着彩するためのものではなく、線や、ある程度の面をぬるための、いわゆる「絵を描くため」の釉薬だからです。つまり、「釉薬(高温釉)の上に絵を描く釉薬」ということで、正式には「釉上絵付けの絵具」と言うべきなのでしょう。(ちなみに、高温釉の下に絵を描くための着色用酸化金属を下絵具と、いいます。古伊万里焼などにある青い線描画が代表的なものですね。)
 それで、Sさんが見た物は、上絵具の中でも特殊な「金彩」というものですね。これは近年になって開発された「水金」というやつで、730度で金を上絵として焼き付けるための特殊な釉薬です。一応、説明しますと、金彩は、硝酸ビスマスという金属を繋ぎにして金の膜を器の表面に付けるもので、二つの金属を溶かすために「テレピン(ターペンタイン)」という松油を精製した物を使用します。これが、Sさんが嗅いだツ〜ンとした臭いの原因ですね。(実は私、油絵科出身なので、この辺の油に関しては結構、詳しい。) で、金彩や銀彩(他にもあるけど)などのビスマス金属を利用した特殊な上絵付け以外の場合には、テレピンではなく、水に釉薬を溶かしますが、下に高温釉がすでに焼き付けてあるので、水に溶かした釉薬では流れて、絵を描く事ができません。それで、釉薬の粘性を高めるために「膠(にかわ)」という動物(主に鹿や兎)の油脂を入れてエマルジョンという状態(化粧品でもありますよね)にして、絵付けをするわけです。
 あ、そうそう。ちなみに、瀬戸の磁器人形は世界最高水準のしかもシェアー世界一だそうですよ。ヨーロッパの人形でも、実はmade in Japanというのは、知られざる事実だそうです。(Japanって表記しないらしい。)

Q10.緋(火)襷で使用する藁は一度、塩水に浸してから巻く方がきれいに襷が出るといってました。
A10.藁を塩水に浸けるかどうかは、土の性質に因るのだと思います。
藁にも粳米と、もち米の藁がありますから、そのどちらを使用するかによっても、藁の使用方法は違うそうです。大抵は、粳米の方を使用した方が襷が綺麗にでると言われているそうですが、どうなんでしょう?
 それはさておき、藁にもナトリウムなどのアルカリ分の多いものと少ないものとがあります。少ない場合には当然、塩水に漬けなければなりませんが、私が東急ハンズで買った藁で実験したところ(信楽水簸土(やや赤土)、および合成備前土使用)、塩水に浸けると、逆にアルカリ分が多すぎて藁の襷がぼやけてしまった事があります。(緋色が強く出すぎたって事ですね。)また、合成備前土だと、鉄との反応が強すぎて、少量の火膨れが見られました。素地が浸食されすぎたようです。しかし、ただ藁を撒いただけだと、何故か弱く、冷水に浸けてから撒いたものが、一番、襷という感じで出ていました。(理由は定かではありません。)ちなみに、緋色そのものは、どちらの土も似たような赤色でしたから、蛙目系の粘土に適量の鉄が混入されていると、それなりの襷はでるようです。

Q11.還元落とし、とは・・・
A11.通常の還元の窯焚きは、昇温期に還元をかけ、目的の温度(物質温度)近辺になったら、還元を止め、その後、ねらしなどの操作をした後、火を止めて、冷却期に入ります。しかし、還元落としは、この冷却期まで窯の中を還元状態にするように、操作をする焚き方です。目的は様々ありますが、主に、この還元落としをすると、金属のラスター作用が助長されるという特徴を狙ったものが多いようです。(つまり、結晶釉系の釉薬などでは釉表面に金属分子が析出・結晶化しやすくなるわけですね。)鉄やマンガン、銅などの調合を上手く行い、この還元落としをかけてやると、まるで金を塗ったような黄銅鉱(たぶん)が出るときがあります。私は、一応、それを「ブロンズ釉」と呼んで使っています。

Q12.釉薬と金属イオンとの関係
A12.「釉薬に使用する時、その物質がどれだけ釉ガラスと反応しやすいか、あるいは、釉薬に溶け込むかが問題になります。」つまり、安定な分子結合の結晶質よりも、不安定な分子結合の非結晶質の方が、イオン化して釉薬に溶け込んだり、釉ガラスと反応する可能性が高くなる。という事です。で、反応性が高くなると、釉薬が良く熔けたり、金属の発色が良くなったりするわけですね。高温状態では、分子の運動が活発になりやがて結合が外れてきますが、非結晶質の場合、その結合が外れる率が高くなると言い換えても良いかもしれません。
 ですから石灰は非結晶質のものを使用する方が、珪酸との反応性が良くなり、鉄などの金属は釉ガラスに溶け込んで発色が冴えるという訳です。

Q13.イオンと鉄の発色について
A13.釉薬に使用する原料は、大前提として水に溶けないもの。つまり、食塩のように、水に入れただけでイオン化してしまわないこと。というのがありますね。理由は簡単で、水に溶けてイオン化してしまうと、釉掛けの際に素地にまで浸透して素地そのものを破壊してしまう可能性が高いからです。だから、水溶性のものは、使用できません。そうすると、鉄を釉薬原料として使用する為には、酸化第二鉄または酸化第一鉄、あるいは珪酸鉄ということになりますが、ご存知のように鉄の酸化物は安定性が高いですから、高温で釉中に溶け込ませる為には、かなり高温で焼き抜く必要があります。特に、青磁はイオン発色の典型ですし、釉中の鉄が完全に釉ガラスに溶け込まなければ、あの深い青色(または青緑色)は発色しません。そこで、安定性の弱い珪酸鉄を使用し、釉中でイオン化して釉ガラスに溶け込みやすくするわけです。
 ちなみに、酸化第二鉄というのは赤色(漆の赤に使用しますから、ご存知ですね)をしており、釉として使用すると黄色や黒を簡単に出すことができますが、青磁の澄んだ青色を出すのは大変です。第一鉄は黒色ですから、天目などの黒い釉に使用しますが、青磁の青色に使用すると少々、くすみが強くなることがあります。珪酸鉄も黒色をしていますが、酸化第一鉄よりは、先の説明の通り、発色条件が有利なのです。

Q14.カルシウム入りゴミ袋について
A14.東京都の炭酸カルシウム入りゴミ袋は、炎の勢いを無くすために使用しています。だから、共通性というよりも、釉薬とは全く逆の使用の仕方ですね。東京都はゴミ焼却炉に耐火性の低い煉瓦を使用しているので、可燃ゴミ中にプラスチックなどの石油類が入っていると、温度上昇が起こって炉の臨界点に達してしまうそうです。これは、塩化ビニル矢ポリエチレンのゴミ袋にも言えることなので、東京都ではそれに炭酸カルシウムを入れて温度の上昇を抑えているそうです。で、カルシウムというのはフラックスと言って、そのもの自体の液化温度は高温だけれども、他のものと反応して、その液化温度を下げる働きをする物質です。ちなみに、カルシウムの反応温度は1100度以上ですから、1250度まで出す陶芸の窯ならばいざ知らず、700度程度が限界と言われるゴミ焼却炉では、焼成の反応とは関係ないでしょうねぇ。

Q15.金彩と金継ぎは違うの?
A15.最終的に金色になるって事では同じですね。でも、全然、違います。残念ですけども。
 金彩というのは、あくまでも700度以上の温度で焼いて、釉表面に「焼き付け」て、釉薬と一体化させるという事が目的です。金継ぎの場合は、破損個所を漆(最近は合成樹脂のパテを使ったりしますけども。)で埋めて、それに金のコーティングをしておくというのが目的ですね。たまに、漆を硬化させるために150度位で焼くときもあるようですが、これは金彩の焼き付けるとは、意味あいが全然違います。

Q16.古い時代の色を使わないのはどうして?
A16.これは、至って単純な理由で、古陶磁の再現は、現代の科学をもってしても不可能に近いからです。では、どうして不可能か?というと、特に釉薬は、発色条件となる要素が非常に多様、かつ、複雑に関係しています。「材料の種類」「調合方法」「窯の焚き方」「焼く温度」その他諸々。とにかくそれらの条件を全て一致させないと同様の発色にはならないのです。(しかも、窯なんて本当に焼成が安定しないし。)
 また、これらの事は「一子相伝」が昔から基本だったので、技術が他に流れず、相伝が途絶えたら、もう再現は不可能になってしまうわけです。一応、そうした古陶磁の再現に一生をかけている人が沢山いらっしゃるんですが、それでも、難しいんですよね。裏を返すと、それだけ陶芸というのは、複雑な物だってことでしょうか。大体、私だって、一度作ったオブジェの色を同様に再現するのが出来なくて困ることがあるくらいですから。

Q17.備前のごまって何?
A17.ごまは、燃料の松の灰が器に飛着して溶着したもので、ごまを降りかけたような模様からこういわれますが、その溶け具合によって少しずつ表情が異なります。溶ける寸前のがさがさした肌のものを「かせごま」と言い、壷などにはよく似合いますが、茶碗など茶道具にはとろりと溶けたごまが好まれるようです。しかし、温度が上がりすぎて必要以上の光沢が出るのも味消しです。適度に抑制の効いたごまが良しとされます。光沢度と同時に色相も重要です。黒すぎてもだめ、白すぎてもだめです。(これは、きまりじゃなくて、そういう美意識が存在するわけですね。溶け具合に関しても同様です。)このような色の出来不出来は、燃料の松や窯の湿気の多少によるところが大きいようです。多少湿気がある方が深みのある色が出ます。しかし湿気が多すぎると緑がかったごまになります。

Q18.窯も場所によって酸化と還元の差が出来る部分があると言うことですが、では、一度、登り窯を焚くと、窯出しの時に、茶色い備前も、赤い備前も、同じ窯から出てくるのですか?
A18.出てくるのです。ついでに灰色(サンギリ)の備前も同じ窯から出てくるのですよ。穴窯だと、こういうことは良くありますよね。登り窯は穴窯よりも安定性が高いですが、部屋によって調節かけると、出来るでしょうねぇ。

Q19.セトモノって日常使うお茶碗とかの代名詞になってますよね?これっていつ頃から、どーしてこう呼ぶようになったんでしょー?
A19.セトモノはもともと、愛知県の瀬戸市辺りで作られた良質の染め付け磁器を主に指します。これからも分かるとおり、「瀬戸地方の磁器もの」で、「セトモノ」になります。と、これだと余りにも短絡的だから、もう少し詳しく言うと・・・
 瀬戸地方は昔からの巨大な窯業地で、古くは古代じ器窯(「じ」は次の下に瓦と書く字。「じ器」で陶器の事。うちのIMには無かったっす。)から始まり、中世施釉陶器窯、近代16世紀辺りの大窯、17世紀以降の連房式登りがままで、とにかく窯のオンパレードという土地柄ですね。つまり、それだけ様々な物も焼かれているという事ですね。
 で、この窯の産地が江戸時代になって尾張藩の産業主要地として保護を受けるんですが、1800年頃、九州から高度な磁器の製法を修得して持ち帰って来た「加藤民吉」というおっさんが良質染め付け磁器を大量に生産することに成功して、「国産良質白磁」という新分野で国内に市場を広げることになったわけ
です。で、それ以来、瀬戸港は磁器を主に東日本(瀬戸地方近辺まで含む)に輸出する巨大マーケティングの本拠地として君臨するようになり、後に陶磁器全般の輸出で日本一の市場になることで、一般的に、陶磁器を「セトモノ(瀬戸産、あるいは瀬戸から輸出された陶磁器もの)」と呼ぶようになったわけですね。
 以前に、ちょっとだけ触れたことがありますけども、西日本(中部地方以西)では、この瀬戸とは別に「佐賀県の唐津」が陶磁器の主要輸出港としてマーケティングを持っていましたので、西日本では今でも陶磁器を「カラツモノ」と呼ぶ事が多いそうです。つまり、そういった、輸出港が呼び方の発端になっているわけですね。

Q20.よく「備前風」なんてのをみます。なんじゃい、「風」って。 この「ナントカ風」っていうのは一体何なのでしょうか?
A20.ところで「風」ね。私も分かんないっす。あんまり焼き物の事を知らない人のためのステレオタイプな説明として適切な表現を選んだら、そうなったって感じでしょうねぇ。
 私はこの表現、嫌いでね。「作者のオリジナルを、そういう「風」で括るんじゃない。」と思ったりする。でも、作家の中には「○○風で作った。」などという恥ずかしいコメントを自ら発している方もいますから、この「風」という括り方は、やっぱり無くならないんだろうなぁ。
 陶芸では「技法」の表現として「手」という言葉を使用します。「三島手」とか「金襴手」とか。何故、そう言うのかは、まだ調べたことがないので知らないんですけども、それも面白いですよねぇ。
 備前風も、どっちかというと「備前手」かもしれませんね。(そんな手法は無いと思うけども。)拓器質の無釉の器を「備前」と表現しているんでしょうけども、最近ではとにかく焼締めてあれば「備前」って言ってますから、いい加減なもんです。東京では、この言葉が付くと、値段が上がるそうです。アホらしい話ですけどもね。

Q21.口当たりの悪さ、といえば、備前焼き。茶碗、ぐい呑み、ビアマグ、ありますよね。ちょっと苦手なのです。ビアマグは、好きな方は、ビールの泡がきめ細やかで、なかなか泡が消えない、とか仰るのですが、口をつける器としての備前焼って、ちょっと…?!
A21.作りってのは、器を作る際に最も大切なところですよね。きっと。私は、どうしても使う人の事よりも造形的な見方から入っちゃうんですけども、やっぱり口は大切ですよねぇ。無釉だとどうしても、視覚的にザラっとしたものを感じ取ってしまうので、かなり嫌悪感を抱く方は多いようですけども、作るときに処理をしっかりしてやれば、それほどザラっとすることはないんですよねぇ。本当は。まして、備前はきめの細かい土だから、見た目ほど口当たりは悪くないはずですし、焼結という現象でほぼガラス化していますから、そんなにザラっとはしないんですけどもねぇ。
 私も自分で使う分くらいは器を作りますけども、結構、長時間、液体を入れておくもの以外は、わりとポイントになる部分だけ釉薬をかけて、あとは焼締める事って多いような気がします。特に湯飲みは、釉薬をかけると、口元の温度が「温かい」よりも「熱い」って感じるようになってしまうので、焼締めること多いかもしれません。
 ところでいまだに日本人の多くは、陶器に出来る炎の跡というのが好きですよね。大抵、高島屋などのデパートの一角でやっている器展では、そういうものに高値が付いて、やりとりされていますから、マニアは多いんでしょう。
 まぁ、自然に生まれる形態や文様ってのは、人力ではどうしようもない自然との格差ってのを感じちゃいますからね。それを如実に写し取った火跡は、やっぱり、そこに何かを感じちゃうんでしょう。
 ただ、海外の陶器(中国やヨーロッパなど)は、あくまでも自然を人間が征服するという感じの形態作りの思想が強いようで、自然の介入というものを遮断、または、極力排除する方向性になっていますね。力技と言ってもいいかもしれません。彫刻などは、特に作者の思想というものが100パーセント要求されるものですから、自然の介入は許されません。あくまでも作り手の要求が通っていないと、失敗作です。これは、工芸にも言えることで、自然を写したティーカップはあっても、自然を取り込んだティーカップが無いという事からも、分かると思いますけど。
 まあ、当地でもね、うつわは「カラツ」を使うことが多かったんですよ。(昔の人はセトモノとは言わなんだ、こちらでは)ごはんを備前焼で食べるのは最初抵抗があるでしょうね。ぼくなんかでもそうですから。でも、慣れればまたいいもんですけど。...いやあ、慣れですよ、どんどん使いなはれ! きっとよくなるから。酒やビールもいいよ、絶対。「泡が云々…」はね、まあそうなんでしょうけど、僕は敢えて言わないことにしている。喜んでいる人に「ああ、そうかいな」という気はないが、ことさら宣伝するほどのことでないでしょう。

Q22.最近色付き備前というのを時々見かけるのですが
A22.俗に色絵備前とも言われるものがあります。これは江戸時代に主に池田藩の御用窯で焼かれていたものです。素焼きの上へ絵の具で絵付けします。たしか、それ以上には焼かなかったのだと思います。明治になっても作っていた人がいたはずです。人形など置物がほとんどですね。
 現在では彩色した備前が存在します。、「色彩備前」といって山本陶秀さんの三男坊 山本 出さんという方が独自路線を歩みつつやっておられるものの様です。これは器としての備前の本質から言うと異端であり論議をかもしていると思いました。もしかしたらその手の備前のことかも知れませんね。

Q23.  おおっ、陶芸の歴史。第一、第二、第三期ってどんなのですか?
A23.現代陶芸は言ってみれば「伝統的価値観」との闘いみたいな所があって、その対立を前提にして、次の世代が生まれるという構図があります。で、「第一世代」は伝統的価値観を残しながらも、それを活かして新たな土の造形を行っていこうという製作方針を持っていた世代ですね。八木一夫なんていう人が、その代表です。「第二世代」は、この伝統的価値観というものに反抗的姿勢をとりながら製作を行っていく世代です。たとえば、「炎」というものにどうしても固執してしまう伝統感に対して「電気窯」という炎を使わない焼方をすることで、新たな陶芸における火というものの位置づけや、焼くということの意味を考える、といった製作を行います。「第三世代」は、土を自らの表現媒体として考慮するだけで、あまり、そういった伝統などは考えないというスタンスを持った製作を行います。つまり、極端に言うと、「土は使いやすいから使う」とか「自分の思った形を表現するのに一番適していたから使った」程度で、「陶芸の自立性」とか「土の自立性」を考える、みたいなものとは無縁な製作活動をします。
 そうして、では「第四世代」なんですけども、これが未だ未開な世代なのです。まぁ、前三世代を比較していけば、ある程度、その方向性は見えますけども、それを造形的表現として行っていくという事を考えたときに、その難しさが非常にあるわけです。
 勿論、今でも第一〜第三までそれぞれに活動をしていらっしゃる方は沢山いらっしゃいますし、第一以前の製作をしている方も沢山いらっしゃいますから、第四を見つける必要が無いといえば無いのかもしれませんが、私は、どうしても、その第四的製作をしたいと思ってしまうへそ曲がりなんですねぇ。このへそ曲がりは、天性に近いですから。
 例えば、< まあ、初心者には初心者の良さがありますが、 安定はしていません。>というコメントでも、「あれ?安定してなきゃいけないの?安定の無いところに、面白さや緊張感もあるような気もするけどなぁ。」ってな突っ込みを入れたくなってしまうわけですよ。
 現に、先に話の出た魯山人は、この「不器用さ」や「安定のなさ」を売り物にした陶芸製作をしています。その突き詰めた安定の無さが、緊張感にもなっているわけですよね。(魯山人ほど突き詰められるのは、そのへんの凡人には、無論、できない事ですけども。)
 何を前にして、何を後ろにまわして、自己の表現とするか?この駆け引きの度合いが、センスってものなんでしょうねぇ。

Q24.釉薬をあまりかけたくない所にはあらかじめ水を塗ればいいの?。
A24.これは、主に急須を作るときの常道って手です。急須の茶濾しの部分は、穴も小さく沢山あるので、何もせずに釉薬を掛けると穴が釉でふさがってしまいます。まぁ、正直言って、茶濾しには釉が掛かっていても、いなくてもどちらでも良いわけですから、水を打って素地の吸水力を弱めて釉掛けをします。
 逆に、少量の水を使う(筆などで水を差すと言いますが)と、釉の付き方が良くなるので、細かい細工をしたときには、細部に必ず水を差して、釉薬が細部にまで掛かるようにします。
 同じ水でも、使用する量によって、いろいろな技法が出来ますね。そういえば、先の藁灰を使用した釉薬も、緋色にしたい部分に水を打って釉薬の乗りを悪くし、薄く釉が掛かるようにすると、緋色が出ます。もし、やったことがなければ、一度おためしを。それから、火襷を出す方法で、もっとも簡単なのは、丸二陶料株式会社から出ている「火襷釉」っていうのを買う。たぶん、これって藁灰を水簸したときの上澄み液だと思うんですけども(舐めるとかなりしょっぱいし)、非常によくでます。これを吹き付けてから釉薬を適当に塗り残して掛けると、塗り残しに緋色がでますよ。
 釉薬の代わりに、ふのりに松灰を混ぜて塗ったり、歯ブラシで飛ばして焼くと、お手軽備前焼のできあがり。(こんなの、備前じゃないですけども。す、すみません。使い勝手は良いと思います。電気窯でもそれなりに出来上がるし、自分の思ったように緋色が付きますしね。ただ、見る人が見ると分かるので、それが難点ですけども。

Q25.修行に出た大工の棟梁の息子は、親に手紙ではなく自分の削った鉋屑(かんなくず)を封筒に入れて送るんだそうです。棟梁はそれを見てあいつもまだまだだとか、ようやく一人前になったとか判断するんだそうですが、陶芸ではどうでしょうか?
A25.削り方一つで、大工さんの技量や一生懸命さって分かるんでしょうねぇ。陶芸では、さすがに鉋屑は送りませんが、やはり、鉋で削った屑を見ると、ある程度、経験者か、そうでないかの判断は容易につきます。
「陶芸、やったこと無いもので。」とか言って、謙遜なさって入会される方が少なくないのですが、作りは(どうも、わざと)モタモタと作っていても、鉋で高台を削り出すときの、刃のあて方や屑の形をみると、一目瞭然ですからね。まぁ、そこまで気が回らないってのは、やっぱり素人ってことですか。あっはっは。(何を下らないことで、えらそ〜に)

Q26.電気窯で焼いたのですが,不思議なことに白萩釉だと結果的に釉薬が付いていない所は火があたったような色で焼けます。
A26.これは、備前の火襷と同じ理屈に因るものですね。白萩釉は、藁灰を使用した珪酸質の分層釉ですから、釉が付いていないところが緋色になったというよりは、土見の部分が藁灰のナトリウムによって浸食されたからというのが正解だと思います。塩水を掛けても、同様の効果が出ると思いますよ。
 あ、それから、珪酸質の釉薬は、長石系(長石多め)の釉薬に比べて凝集性が高いですから、下の土の収縮率が弱く、表面の仕上げを平滑にすると、釉切れが起こりますね。私は、意図的に釉切れや釉縮れを起こしたい時には、スプーンの裏などで表面を磨いてから素焼きし、さらにサンドペーパーを掛けてから釉掛けしたりします。これは、確実。ただ、釉薬の調合を間違うと、全部剥がれてしまって、窯の棚板を全滅される両刃の剣なんですけども。

Q27.二度焼きで色ムラが直るのは「焼もどし」
A27.色ムラが直るのは「焼もどし」って言って、コロイド結晶というものが低温で焼くことに因って再結晶が起こるためだと思います。辰砂釉に代表される銅赤釉は、このようにして焼き戻すことがあります。

Q28.柿衛門に代表される白と、白薩摩に代表される白とは
A28.柿衛門に代表される白と、白薩摩に代表される白とは、素地の性質が180度くらい違うので、あのような瀬戸のサラッとした白と、薩摩のぬっぺりとした白との差がでます。瀬戸の磁器土は、その主な主成分が珪酸という「ガラス質」の物質で、この物質が多くなると「透過性」という光を通す性質が強くなり、その上に赤をのせると、幾分、発色が強調されます。
 一方、薩摩白は、カオリン(カオリナイト)という土が主成分なので、ガラスの白い発色とは違い、透過性はありません。また、カオリンは良質の物であっても鉄やチタンがガラス質のものよりも多いので、白の発色に、それらの物が関連して、純白の白さを出しにくいようです。そうした、カオリン質の白に、あの柿衛門の赤をのせると、少々、赤が濁って(くすんで)見えることが多いため、どちらかというと、柿衛門赤よりも透明度のある赤を使用することが多いようです。 ちなみにカオリンとは一次粘土という、熱水作用を受けて鉱物が変化した粘土の名称ですが、その語源は高嶺山(たぶん、本当は「カオリンさん」と読むんだと思う)という中国の山に堆積する白色の粘土にあります。
 で、そのカオリンの構成鉱物(粘土)の大多数を占めるのが「カオリナイト」という結晶形態を持つ粘土です。

Q29.貫入について(この他の詳細は電脳陶芸・第二回「貫入の話」を参照してください)
A29.貫入の入り方が変わる最も大きな原因は、土そのものの変化と言うよりも、土と釉薬との膨張収縮率の差にあります。だから、釉薬が全く質的に変化せず、土だけが変わったとすれば、貫入の入り方が変わるのも分かりますが、果たして、釉薬の性状変化がどうなったのかを調べなければ、ハッキリとした事は言えないように思います。
 基本的に、貫入の大きさは、表面積変動の大小によるんでしょうが、それに加えて、シリカ四面体の成形によるネットワーク連携の大きさっていうのも重要なんだそうな。(でも、あんまり意味が良く分からないんだけどもね。)私が分かる範囲でお話しすると、早い話が、釉や素地が、どれだけガラス化しているか、ということなんだと思います。つまり、磁器素地に磁器釉をかけると、貫入の発生は極めて起こりにくくなるのに対して、アルカリ成分が増して、素地が土質になると、貫入の発生は大きくなります。この事からも分かるように、原料がガラス(石英)に近づくことで、分子ネットワークが強固になって、貫入の発生も少なくなるんじゃないでしょうか。
 ところで、シバリングが発生しているか、していないかを見極める、最も簡単な方法は、「なんでも鑑定団(テレビ東京)」の中島鑑定士さんがやっているように、指で軽く器を弾いて、音で確かめてやるものでしょう。(たぶん、中島さんも、シバリングの有無や、焼き締まりの良し悪しを、あれで調べているんだと思います。)この時、キーンやカーンといった澄んだ音がしていれば、器にシバリングは起こっていません。シバリングがあるときは、コッコッっといった、伸びの悪いくすんだ音がします。(これがまた、妙に悲しい響き。)
 ちなみに、貫入は、最初から細かい物が入ることはありません。まず、ながーいものが一本、また一本と入り、やがて、それらの線の間を等分割するように、徐々に貫入が入って、お馴染みの貫入模様になっていきます。私の経験では、長いものだと、半年ぐらいかかって、やっと貫入の模様になったものもありましたから、それほど気にすることもないのではないでしょうか。(ちなみに、早い物だと、半日くらいでそれらしくなりますが。もっとも、その後も徐々に貫入が増えます。)

Q30.お茶碗の蓋が真っ二つに割れちゃったんです。何でひっつければいいですか?
A30.まず、材質が何かに拠るんですけども。
磁器の場合。
これは基本的にアロンαが良いと言われています。但し、ただ接着するのではなく、まず接着面にアロンαを付けて圧着(力いっぱい押しつけること)したあとで、さらに隙間にアロンαを入れるというダブル接着をします。押しつけているんだから、そんなことをしても無駄だろうと思われるかもしれませんが、液体は毛細管現象で隙間の細かいところまで入っていきますので、押しつけて入らない部分は、外から入れてやった方が良いそうです。
 アロンαは、もともと手術用に開発された接着剤を応用したものなので、無害だそうですから、本体の接着にも使用できるそうですが、私の経験からすると、アロンαはどうも熱に弱く、かつ、1年以内に大抵、取れてしまうことが多いようですので、私はエポキシ系樹脂を使用しています。
 これはA、Bの二つの接着剤を混合させる「2液混合タイプ」と呼ばれる接着剤で、5分硬化とか15分硬化といったように、用途によって硬化する時間が違います。でも、普通、器の修正は5分で良いと思います。エポキシ樹脂は磁器の他、陶器にも使用できる応用範囲の広い接着剤です。これを使用する場合は2液をよく混ぜ合わせ、接着面に塗って圧着し、そのままにします。やがて、硬化したらば、はみ出た部分をカッターで削り落として出来上がりです。透明タイプのものを選べば目立たないでしょう。また、硬化中にある程度余分な接着剤を落とし、金箔を充てると「金継ぎ(共継ぎ)」ができます。
 更に、それでも取れる場合は、酢酸ビニル系接着剤を使用します。有名な物に木工用ボンドがありますが、陶器に使用するのは「コンクリメント」という接
着剤です。ただし、酢酸ビニル系は、完全硬化をしませんので(つまり、接着後もプヨプヨしている)、接着後、表面をアロンαやエポキシ樹脂系パテでとめて硬化度を高め、耐水性を強化されなければいけません。接着自体は、接着面に塗って圧着させるだけなので、簡単ですが、その後の強化作業がちょっと技術がいりますので、アロンαかエポキシ系樹脂接着剤でなんとかした方がいいと思います。ってところでしょうか。

Q31.唐津で買った湯呑みが、白い湯呑みで、お湯を入れると、しばらくたつと、水玉の様な、まだら模様が浮き上がってきます(貫入ではないのですけど)お湯を捨てても、しばらくは、ホルスタイン状態で、完全に乾くと(気付くといつの間にか)もとの真っ白に戻っています。
A31.その湯飲みって、粉引きみたいに化粧土がのってたりしませんか?。だとしたら雨漏り手といっていいと思います。雨漏り手は、本来、「雨漏りをしたような模様のあるもの」の総称を「雨漏り手」と言います。
 で、雨漏り手が何故出来るかですが、私も詳しいことは分かりません。実を言うと。ただし、素焼きをした素地に、生の土系の白化粧(白い土を泥状に溶いて、それを器に塗ること)をし、さらに、天然藁灰を使用したやや分相系の釉薬を掛けると、かなりの確立で雨漏り手が生じますから、そこから考えると、どうも、この雨漏り手には、釉薬中に出来る空気の泡と、素地と釉薬との密着度が関係しているような感じがします。
 天然の木灰を使用した釉薬は、鉱物を原料とした釉薬に比べ、大抵、釉薬中に生じる泡が多くなります。これは、素地から出る水蒸気や釉薬原料の反応による分解作用で生じる物ですが、天然の木灰は、特にこの泡が多く発生し、また残留します。(それで、釉薬に微妙な色の差を作ります。)
 で、その泡は、釉薬の熟成中に表面まで上がり、やがて、破裂して釉薬の中から出ていきますが、その際に、釉薬表面に「ピンホール」と呼ばれる小さな孔を作ります。このピンホールは、肉眼で確認できるものから、ちょっと肉眼では確認しづらいものまで大小さまざまですが、雨漏り手は、このピンホールから毛細管現象によって入り込んだ液体(主に水)が、素地と釉薬が密着していない隙間に入って出来る模様です。
 前記した、素焼き後に白化粧をした方が雨漏り手が出やすいというのは、素焼き後の素地に、生土の白化粧を塗ると、亀裂や剥離が起こりやすく、よって、素地と釉薬の隙間が出来やすいからでしょう。
 「水玉のようなまだら模様」は、まさに、この現象です。通常の雨漏り手は、この隙間に入る液体に色素などがあり(茶などですね)、それが徐々に残留して、渋い色の雨漏りを作ります。
 しかし、中には窯から出した時点で雨漏りがすでに生じているものもあるそうで、これは、私も調べましたが、なぜそうなるのかは分かりませんでした。(ただ、想像するに、素地の鉄などが釉薬中のピンホールに集中して表れる御本手のちょっと違うバージョンのような気もします。あくまでも、想像ですが。)
ってことで、お分かり頂けたでしょうか?雨漏り手。

Q32.釉薬の色の話をちょっとだけ
A32.皆さんご存知の通り、陶器には様々な色が使用されています。これらの色の殆どは、着色用酸化金属という高温で焼いても色を失わない(あるいは化学変化を起こして発色する)金属によって付けられているもので、最近では、いくつかの金属をあらかじめ反応させて、高温でも色が安定するように科学的調合を施した「顔料」というものも作られ、陶器で使用できる色は日進月歩で増えています。
 ただし、そうした顔料が増えたために、自分が欲しい色を出すためには、それらの顔料を複数混合すれば、複雑な色が作れると思っている方が多いようですが、実は、陶器の色は、そうした単純な混色作用ではありません。
 油絵を描く方は、ご存知だと思いますが、色を作る技法には、パレット上で絵の具を混合する「混色」と、画面に油で薄く溶いた絵の具を何層も重ねて色を作る「重色」という二つの技法があります。先の、釉薬に顔料を複数入れるのは、「混色」にあたります。一方、下の土に、何らかの色を付け、更にその上に透明度の高い色付きの釉薬を掛けて複雑な色をだすのが、陶芸における「重色」です。
 特に、釉薬は、その成分がほぼガラスですから、素地の色を透過して釉薬の色と純度が高いままの発色で重色されるのです。そして、実は、陶芸の色の深みは、この重色に因って得られる事が多いのです。
 一方に「土味(つちあじ)」という言葉があります。これは土を食べたときの味を表現した言葉ではなく(当たり前だって)、土の質感を表現する際に用いる言葉です。この土味は、土の粒子の大きさや、土に含まれる不純物の違いによって語られ、粒子が荒く「石はぜ」と呼ばれる不熔な石が入っている土は「厳しい」とか「男性的」といった土味の表現がされますし、粒子のきめが細かく、不純物も極めて少ない白い土は「柔和」とか「女性的」といった表現がされます。勿論、それら土味の異なる物に同じ釉薬を掛けると、おのずとその感じは変わってきます。
 また、土は、単純な視覚的効果の違いと同時に、高温焼成で表面の釉薬が溶けた際に、その釉薬と反応する時の成分の違いも大きな要素となります。科学的な詳細は(頭が痛くなりますので)省略しますが、土には「陶器質、磁器質、せっ器質」という、3つのタイプがあり(本来は、焼成後の吸水率を基準にした区分ですが、普通は質の違いと解釈されます)、同じ白い土であっても、タイプが異なると釉薬の色は非常に変化します。
 この辺は、実際に色々な土を焼いてみて、視覚的に理解しないと難しいのですが、とにかく、釉薬の色の差は、釉薬本来が持つ性格によるだけでなく、素地の質感や成分の差も非常に大きく関わるということは、覚えていて損はないと思います。

Q33.「道具」と「作品」の線引き
A33.この線引きは、同時に「実用」と「芸術性」という言葉に置き換えることも出来ると思いますが、美術や芸術の歴史を見てくると、実は、この二つは線引きよりも、融合を目指していたという歴史の方が、近代においては重要な位置を占めています。その最も顕著な例が、「アートアンドクラフツ運動」や、「バウハウス」。また、日本では、少々違う角度から「民芸運動」という動きになっていたんだと思います。つまり、生活という空間にアートを導入するという試みであり、生活の空間にアートを見いだしていくという試みでもありました。
 日本に於いてのこれらの試みは、結局、一部のマニアや、茶室から器を出さなかった人々によって、失速し衰退しているような感じ、というのが、私の正直な感想ですが、今尚、これらの融合を求めて作品を作り続けていらっしゃる方も、勿論、沢山いるのは事実です。ただし、それらの人々の多くは、自らの作品を他者の生活空間に配置することに重点を置いており、陶芸そのものと生活空間との融合が本筋になっていることは少ないようです。
 従って、難しい薬品使用や、独特な焼成方法という、日常とは切り離された空間を作品の内に持ってしまい、結局、陶芸は「陶芸」でななく「道具」という枠組みを使用者に与えてしまっていることも事実です。
 「陶芸」は、本来、食べるモノを自分で採取し、煮炊きし、食事として日々の食卓に出すのと同じように、身近な土を材料に、形を作り、火にくぐらせ、食卓にだすものとされてきました。事実、土器・石器時代の人々は、それぞれの家庭で、食事を作るのと同様に、器を作って食卓に出していました。高額な金を積んで買うことも、金を払って展示してあるモノを見るという事も無かったでしょう。(当たり前ですけども)
 それが、どうして、食事と分離してしまったのか。
 私は、その鍵が、「壊れにくい高温焼成」と「器を主要産業にした」という社会背景にあるような気がします。まぁ、その変の話は、後々、話していくとして、とにかく、そうした社会背景から、人々は自ら何かを作るという行為を切り離し、そして忘却し、さらに、自らの生活から追いやった。そして、現代(近代)に入って、再び、それらが融合し始める流れが、本当に一部ではありますが出来つつあると、思ったりしています。

Q34.修復の(簡易)金継ぎの方法
A34.補修したパテの部分に、今度は2液混合タイプのエポキシ接着剤(私が使っているのは「エポキシ5分硬化剤」)を塗って、ちょっと置きます。表面を軽く触ってみて、ペトッとするけども、指にくっ付いて来ない程度に硬化したらば、接着剤部分に金箔(安いので良いと思うけども(^_^;))を乗せ、指で擦ってまんべんなく接着させたら、更に接着剤が少し硬化するのを待ってから、瑪瑙の棒(こんなもの家庭には無いから、通常は、ガラス棒とか、ステンレススプーン)で金箔を擦って出来上がり。
 エポキシ樹脂での接着なので、漆よりも接着力は強いです。但し、エポキシは臭いが強いですから、臭いが飛ぶまで時間がかかります。お茶に臭いが付くということは無いと思いますが、湯飲みなどは口を近づけると臭うかもしれませんから、気になるようならば、しばらく放置して下さい。
 それから私が漆で金継ぎをする場合は、螺鈿(螺鈿って、貼ってから研ぎ出しみたいにして磨くやつですよね)よりも、箔貼りの技法に近いと思います。
 東急ハンズで買ってきた漆で欠けた部分を補修し、ムロに入れて十分に乾燥させてから、磨いて形を整えます。(この辺は、簡易金継ぎのパテと似たような感じですね。)その後、補修した部分の周りに、陶画糊(アラビアゴムの液体。)でマスキングをし、金箔を張り付けるための漆が、余計な部分までかからないようにします。エッジが直線の場合や、平らな面に行う時には、エアブラシで使用するマスキングフィルムやマスキングテープなどを使用する場合もあります。マスキング終了後、再び、補修部分に、極少量の膠で溶いた漆を、拭き漆(と言うんだと思う)し、その上に金箔を乗せて、タンポで押さえます。そして、再び、ムロで1週間(以上)置いて漆を固めます。
 で、これは完全に聞きかじりなので、正式な方法かどうかは分からないのですが、私は、漆が固まったらば、金箔を酸化チタニウムの粉で磨いています。こうすると、金の光沢がでますね。
 ちなみに、金の光沢をもっと落としてくれ、と言われたときには、ストッキングで磨いています。(ストッキング買うの、ちょっと恥ずかしいんだけどもね。)

Q35.瑠璃釉について
A35.陶器に限りませんが、たぶん、青や水色といった瑠璃色は、昔の人にとっては理想の色だったでしょう。瑠璃色は、空の色であり海の色ですが、その実、手に取って近くで見ることは出来ません。青は、近くでみると単なる透明色になってしまいます。その青を、何とか陶磁器に映したい。その結果、生まれた色が砧青磁であったり瑠璃であったりするような気が、私はします。
 ま、これはあくまでも憶測なので、信憑性は0ですが、そう考えて瑠璃色を器に使用すると、また違った面持ちもあるのではないでしょうか。
 ところで、瑠璃色を発色させるために使用する酸化金属をコバルトと言います。コバルトは1720年頃にドイツのマイセンで使用され始めた金属で、その歴史は比較的新しいものです。
 この金属は、非常に着色力が強いのが特徴で、極少量(1〜3%)を釉薬に混入させるだけで、きれいな青〜紺色の発色をします。ただし、産出量が極めて少ないために、非常に高価です。油絵を描く人はご存知だと思いますが、チントではない本物のコバルトブルーは、泣きたくなるほど値段が高いですよね。しかも、値段が「時価」という、非常に不安定な値段なので、大量に買い込むときには、かなり買い時を慎重に厳選しなければなりません。
 ま、とにかく着色力が強いのですが、その着色力は、実は釉薬と反応をしないと(もう少し分かり易く言うと、ガラス成分と反応しないと)期待できません。依然、陶土と磁土にコバルトを混ぜて焼いたことがありますが、どちらも5%以下では、瑠璃の特徴的な青色にはなりませんでした。(磁土の方は、それでもパステル調のきれいな青にはなりますが。)但し、コバルトを混ぜた土に透明釉を施釉して焼くと、瑠璃ほど強くはありませんが、少々濁った、やや薄い瑠璃色に発色します。これは、素地表面にあったコバルトが、釉中に熔けたり、釉薬と反応して発色した色でしょう。
 このように、コバルトは釉薬に熔けて、青や紺色を出しますが、その被服力は以外に強くはなく、素地の色の影響を受けます。つまり、素地の色が変わると、瑠璃の色の感じも変わるのです。
 前々回、重色の話をしましたが、クロムなどの金属に比べ、発色は強くても、被服力が弱いという特殊な効果を利用して、瑠璃釉の色の深みは調節することが出来ます。

Q36.白刷毛に挑戦していますがいつも結果は芳しくありません。問題は地のねずみ色なのですが、これは何の(?)色なのでしょう。鉄分の強い土に、土灰釉で還元で焼くらしい事は分かっているのですが、何時も、真っ茶っ茶になってしまいます。他の作品も同じようにガラス質が出ずに茶色になってしまうところを見ると焼き方が悪いのでしょうか?特に鉄分の多い個所に出るようです。先生は釉薬のかけ方が足りないと言いますが(確かに厚くかけた方がガラス質が残っていい様ですが)どうも納得が行きません。
A36.御質問の件ですが、極端な話、陶芸の結果は複数の要因が微妙に関わって生じることが多いので、原因は多数考えられます。ただ、“ ガラス質が出ずに茶色になってしまうという事ですから、おそらく、釉薬が薄い(または釉薬の撹拌が悪い)のが原因でしょう。
 それに絡んだ事として、以下に、その原因を書いてみました。
 まず最初は、土の選別によるものです。
「鉄分の強い土」という事ですので、おそらく陶芸教室で使用しているものは、「信楽水簸土(赤)」または、「特赤」と呼ばれるものでしょう。前者は、ややきめが細かく、焼き締まりの強い土。後者は粒が荒く、焼き締まりが「水簸土」よりも弱い土です。前者を使用の場合は、相当釉薬が薄くない限り、まず地が茶色になることは無いと思いますが、後者の場合ですと、焼成中、素地が釉薬を吸収しますので、特に厚く釉掛けをするようにしないと、結果的に釉薬が薄くなって地が茶色くなることがあります。
 次が、素地の厚みです。
 これは施釉との関係もあるのですが、施釉時の釉薬の付きは、素地がどれだけの吸水力を有しているかによって変化しますから、磁器のような薄い素地の茶碗を作っていらっしゃるようならば、吸水力が落ちるので、施釉時に2度掛けや3度掛けという特殊な施釉をしなければなりません。本文の“ 土灰釉で還元で焼くらしい(以下略)”という文面から察するに、生土段階の処理だけで、乾燥後の後処理については、ノータッチのようね。
 施釉は個々の陶芸教室によって解釈が様々ですから、何とも言えませんが、確実に釉を厚く付くようにしたいとお思いならば、器をある程度厚く作っておくのがベストでしょう。
 最後が、施釉時の事と、釉薬の調合による問題です。
 釉薬の調合上の問題として考えられるのが、「土灰釉」の調合です。「土灰釉」と一口に言っても、その調合は千差万別で、天然灰を使用したものから、合成土灰と称する複数の化学薬品を使用したものまでいろいろありますから、それによって、施釉時の釉薬濃度を微妙に変えないといけません。ちなみに、天然灰使用の場合は、灰の殆どが焼成時に消失してしまうものですから、釉濃度を高くして(水を少なめにする)、厚めに施釉できるようにしますし、合成土灰使用の場合は、焼成消失物質(これを熱量杓減と言います)は少ないですから、天然灰使用よりも濃度をずっと低くして(水を多めにする)おかないと、白く濁った釉になってしまいます。
 又、何かの原因で釉薬が薄くなってしまっていることも考えられます。たとえば長い間容器に入れて使っていると、自然蒸発で濃度が変わりますので時々水を加えて攪拌する事があります。この時、水を入れすぎたりすると薄くなるわけです。
 一方、施釉に関しても(これは、先の素地の厚みでも少し話していますが)、ずぶ掛け、杓子掛け、浸し掛けなど、施釉の方法を変えると、釉薬の付きも変わります。どの方法で施釉しているかによって、釉薬の付く量も変わりますし、釉掛けする人の癖もありますから、この辺は、釉掛けする本人の杓子によるものが大きいので、よく注意した方が良いでしょう。 
 で、後は、ちょっと申し上げにくい事なんですが、陶芸教室でバイトを雇って経営をしている場合で、特に、施釉を職員側で行っている場合は、窯入れ前に、沢山の作品に一度に施釉をしなければならないため、途中、かなり撹拌状態や釉薬濃度に気を使ってやらないと、施釉の最初と最後で、かなりの濃度差が生じてしまう事があります。バイトさんの場合(特に学生)、この濃度差を気にせず、ただ機械的に施釉をする方が多いので、監視がしっかりしていないとまずいって話もあります。無論、通っていらっしゃる所がそうだとは申しませんが、この辺は、陶芸教室をやっている人間としては、非常に頭の痛いところであったりします。
 いずれにしろ、「釉薬が薄い」という事には、様々な原因がありますから、この辺は、通っていらっしゃる陶芸教室の職員の方と、よくお話されたら良いのではないでしょうか。

Q37.ロクロをしていてへたる理由
A37.ロクロをしていてへたるのは、ひきが薄いからではありません。
 私もロクロで薄いものをつくりますが(厚み1ミリ程度)、一度もへたったことはないです。器がへたるのは、挽きに時間をかけすぎて水まわりが起こっている。土の張力を無視した力をかけて、土を痛めている。回転速度が速すぎて遠心力で土が外方向に流れてしまっている。と言ったことが主な原因です。
 ちなみに水まわりが起きるっていうのは「土に水気を与えすぎて、土の張り(張力)が無くなってしまった状態」を言います。
 で、土には、それぞれ成分によって固有の吸水率、吸水速度と、それに伴う張力があります。これは、土がガラス板を重ね合わせたような構造をしているからで、ガラス板の間に水を入れて重ね合わせると、左右に移動はしても、上下に取れることがないですよね。しかし、ガラス板の間の水が増えれば、ガラス板は離れてしまいます。これが、水まわりという現象で、ロクロの様に、潤滑剤として水を多量に使用している場合に、起こってしまう失敗です。
 こうなった状態で、無理に口辺を広げたり、逆につぼめたりすれば、当然、土の張力状態が崩れて、へたりが起こってしまいます。器の腰元にそれが起こる場合は、これに、自重による重力がかかるからですね。
 では、どの土が、どれだけの張力を持っているかですが、これは、その時の土の寝かせ状態や練り加減なので大きく変わりますらか、一概に言えません。しかし、水まわりの早い土(磁器、半磁器土などは特に)は、「ヌタ挽き」と言って、ロクロを回している際にできるドベ(ヌタ)を、水の代わりに潤滑剤として使用する事があります。(私が、1ミリを挽く場合には、最初にヌタ挽きで極力水を使用せずに挽いて、最後にちょっと水を付けて薄くするっていう方法を取るときが多いですね。さすがに最初から最後までヌタ挽きをするのは、難しいです。)
 ただ、必要な水気を適度な時間だけ与えている分には、そうそうへたるものではないですから、かまわないと思うのですが、一つの器にかける時間が長くなってしまうと、水まわり、遠心力による土流れが起こりますし、そもそも、土が死んで、土の強さが作品に残りませんから(形が出来ているだけっていう状態)、良いことではないと、私は思います。
 「土は、採取した時が一番元気。いじればいじるほど、死んでしまう。」っていうのは、良く言われることですよね。

Q38.施釉時の注意事項?
A38.釉薬で最下層に沈殿している物質(長石)が、釉薬の根本原料です。これをしっかりと撹拌しないと、釉薬本来の効果は出ません。従って、当然、底の塊はしっかりと溶いて下さい。また、文中で何も触れていませんが、施釉は撹拌直後に行わなければ意味がありません。また、施釉直前には、釉に指などを入れて釉が付くかどうかをしっかりと確認して下さい。「撹拌した」と「撹拌出来ている」は全く違います。
 又むやみな,1度掛け、2度掛け、3度掛けはあまり意味がありません。
 先にも言いましたが、施釉の厚さは、素地の厚さ、焼きの温度、施釉の時間、濃度など、これらの複合要因が全て一致していなければ、数掛けは意味をなしません。陶芸をあまりにも数値的に考えると、こうした勘違いをしがちですが、陶芸で大切なのは「数」ではなく、経験による「勘」です。
 器は作る度に厚みも違えば、素焼きの温度も微妙に違い、2度掛けしたから、かならずこれだけの厚みが確保できるというものではありません。「この土の、この素地の厚さで、この程度の釉薬濃度ならば、このぐらいの時間で、このぐらいの施釉の厚みがとれる」といった複合要因から得られる経験が大切なのであって、何度掛けという一つのファクターをピックアップして試験をしても、失敗を回避できるものではないと思います。

Q39.焼き締めは花持ちが良いのは?
A39.たぶん、これは釉薬をかけていないという事がポイントになっているように思います。陶器は、幾ら焼き締めていても、吸水率を0にすることはできません。つまり、ある程度は水分が素地を通過して表面に達し、蒸発します。
 この時、気化熱の影響で、陶器や中の水は、多少、温度が低くなります。それが、花に良い影響を与えているのではないでしょうか。この気化熱現象を利用して、植木鉢は素焼き程度の温度で焼かれることが多いですし、ワインクーラーも焼きが甘いものを使用します。
 また、他でも話しましたが、陶器は表面の微細な孔によって、茶の渋や灰汁をとる効果があるそうです。ということは、花器にしても、多少は水の浄化の影響があるのかもしれません。

Q40.なぜ土ものの器は磁器よりも暖かみがあるか?
A40.これは、感覚的な問題でしょう。磁器は、その性質や歴史上、幾何学形態のシルエットで施釉して還元焼成をし、少々青みのある白や青磁のような青で仕上げ、緊張感強調するのが得意という事になっています。勿論、白は磁器の最大の特徴ですし、キメが細かく可塑性が少ないという素材の性質は、幾何学形態を作るためにあるような側面は大きいです。
 逆に、陶器は元々、施釉を自然の降灰現象に依存したという事もあり、またキメも荒くネトネトした土の持つ特徴を生かして、形態は磁器の幾何学に迫るような緊張感を頂点としていません。そんな、ある種、ファジーな所が陶器の良さとして認識され、我々の倫理観に埋め込まれてきた側面があります。
 しかし、磁器も酸化焼成でアイボリー調に仕上げたり、わざとロクロ目を残せば、非常に暖かみのある物にはなりますし、陶器もサンドペーパーをかけたり瑪瑙で磨いたりして形を整形し、昨今開発が進むジルコン系の釉薬をかけると、かなり冷たい感じの物もできます。
 ただ、そういう仕事をする人が少ないですし、多くの陶芸家は伝統的価値観から脱せずに仕事をしている方が多いですから(それを容認する社会もありますし)、なかなか、そういう磁器・陶器には出会えないですよね。

Q41.作家物に磁器の窯は入らないの?
A41.もともと、「作家もの」という表現自体が、良く分からない表現なんですが(笑)、おそらく「作家もの」が表すものは、最初から最後まで自分でやりました、っていうブランドでしょう。伝統的な磁器の世界は、それから言うと、完全に逆走している完全分業体制です。ロクロ師(挽き師)がいて、絵付け師がいて、窯師(窯を焚くだけ)っていう人もいるそうです。
 これは産業として最初から磁器生産をした瀬戸に依存するところも大きいのでしょうが、従って、伝統的な磁器の窯は「作家もの」に入ることが殆ど無いんだと思います。しかし、これも例外は多数あって、当然、最初から最後まで自分でやっている磁器のかたも沢山、いらっしゃいますね。
 まぁ、そもそも、作家とか芸術という観念そのものが、西洋からの輸入品ですし、こと伝統陶芸に関しては、まだそういう観念が浸透していないとも解釈できるのかもしれませんね。

Q42.井戸茶碗などのみどころともなっているカイラギなんですが、これを出やすくするのにはどのようにしたらいいのでしょうか?
A42.知らない方のために、チョットだけカイラギの説明します。
井戸茶碗や萩の茶碗などによく見られる釉薬の縮れ現象で、高台(器の足の事)のちょっと上の部分に出るものです。一般に、これらカイラギのような現象は、クラックという釉縮れと呼ばれる失敗に相当するものです。ただ、茶人はこういった自然の現象(しかも、結構かっこよかったりする)を尊ぶ傾向があるので、「カイラギ」という格好良い名前が付いていますね。
 ところで、本来は、鮫の肌のようだという事から、「鰄(かいらぎ)」と書きますが、後に、ちょっと洒落て「梅花皮」と書くようになりました。(ってことで、ここから先は、梅花皮と書くことにします。
 で、この梅花皮は、粒の粗い土(普通は、砂気が多いと表現します)を使用し、これをカンナで削った際に出来る表面の荒れが原因で起こります。焼成途中で、釉薬が荒れた素地に食い付かず、剥がれた後、縮れてしまい、ああいったテクスチャーになります。
 従って、正攻法でいけば、シャモット(焼粉)を多く入れた土を使用したり、大道土といわれる、かなり砂気の多い土を使用して、梅花皮を出したい部分をガリガリと削ってやれば、大方は、釉縮れが起こって、出てきます。ちなみに梅花皮が出やすい釉についてですが、昇温中に釉薬の粘土が強く、かつ溶けて梅花皮を作るためには、ある程度、釉薬に流動性がなければいけません。また、粘土を高くするためには、成分中のアルミが増えたほうが良いですから、結論は、アルミニウム含有量を増やして釉薬を溶かす。つまり、カオリンなどを少量入れて、灰を使用すれば良いって事になります。ちなみに、ベントナイトは、膨潤土って言いますが、水を含むと爆発的に体積が増え、乾燥すると非常に収縮しますから、多量に入れると施釉直後に梅花皮状態になります。(笑)通常は、珪酸質の接着の悪い釉薬の付きを良くするために、少量、使用しますけどもね。
 これらはあくまでも正攻法で、先に、お話しした梅花皮の原理を応用すれば、キメの細かい土でも確実に出すことができます。つまり、焼成中(昇温中)に釉薬が剥がれたり縮れたりする状況を意図的に作ってやればいいわけですよね。
 で、私の場合は、器の腰元あたりに、CMC(カルボキシルメチルセルロース)や布海苔を薄く塗り、まだべた付いているうちに釉薬を掛けています。布海苔はご存知ですよね。CMCはそれに似たもので、スーパーの洗剤コーナーに行くと「洗濯糊」という名称で売っていることがあります。ただ、たまに「○○メチル〜〜」という名前のものもあり、これは全くの別物ですが、一応、CMCと同様の効果はあるようです。
 CMCや布海苔は、乾燥の際に、多少収縮し、さらに熱を加えることで剥離しますから、結構、本物らしい梅花皮を作ることが出来ます。しかし、濃度や塗る厚み等で、焼き上がりの効果も変わりますから、いろいろなパターンを試してみてはいかがでしょうか?

Q43.西洋の器に染め付けっていう話
A43.絶対にそうだとは言えませんが、大抵、西洋磁器の染め付けは非常にオリエンタルでオリジナル性がありません。(模様等は、西洋的解釈があったり、人物が西洋風であったりはしますけども、西洋上絵のようなゴージャスさが無いですよね。)
 これは、元々、西洋で磁器が作られたのは中国からの染め付けの器を模写する目的が非常に大きかったという歴史的背景が強いわけです。
 つまり、中国の染め付け磁器を作りたいが為に、その研究が行われた。これは、言うまでもなく中国の白磁が非常に高価なものとして各地に流れた結果で、アウグスト帝は東洋磁器120点を入手するために、600名の兵と交換したという話もあるそうです。いうなれば、1つの白磁は約6人の人間の命に等しいという事にもなるわけですよね。そうした透けるような白い器(実際に透けるんですけども)は、西洋人の夢であり、同時に産業として一獲千金を売る事のできる夢ともなっていたわけです。
 しかし、ヨーロッパと中国は、戦争の影響で白磁の輸入が困難になり、その代りに、日本の伊万里が目をつけられ、日本の磁器はヨーロッパの需要に答えて、その多くを輸出することとなります。ところが、御存知の通り、伊万里は輸出用にもっぱら柿右衛門様式のような金襴赤絵を売り出し、国内需要に染め付けの伊万里となりました。ヨーロッパの人々にとっては、単色で渋い色合いの染め付けよりも、その豪華絢爛(いわゆるゴージャス)な上絵の色彩の方が、注目に値するものだった事もありますし、呉須の青が、西洋人の求めるブルーでなかったという事もあるでしょう。(もっとも、日本人が手間のかかる金襴上絵を外国市場に向け、地味で上絵ほど手間のかからない染め付けを日本の市場に流そうとした産業構造もあるにはあるでしょうが。)
 その結果、西洋の染め付け。いわゆる呉須絵付けは、その柄の発展が進まず、のちに、上絵が西洋独自の技法や表現を求めるのに対して、あくまでもオリエンタルの象徴として、いわば、取り残されたような形で淡々と中国白磁の写しを作り続ける事となるわけです。
 では、染め付けが西洋のゴージャスと圧倒的に違ったのは何故なのか。あるいは、染め付けでは作ることの出来ない西洋人が求めたゴージャスとは何だったのか?。これは別に,学説であるとか,公然の定義ではないんですけれども,私は「輝いていること」と「技術が手中にあること」ではないかと思っています。「輝いていること」は,「光沢があること」や「金・銀を使っていること」という意味合いですね。当然といえば当然ですが,特に,この思想は顕著です。
 近年ではマットな釉薬も使用されますが,高価なものは,大抵,傷や一片の曇りも無いという事が最重要項目ですし,机を傷めないという目的もありますが,高台までしっかりと釉薬が掛かった器は,ティーカップやソーサーの頂点となっています。日本では「土見」といって,高台近辺には釉薬をかけない事で見せ場とするという方法がありますが,それとは非常に対照的ですね。
 また,特に,金・銀の使用は器のランクの上でも重要なポイントです。西洋磁器は,その性質上,どうしても鋳込みによる形作りがメインとなりますので,ランクの低いものも高いものも,同じ鋳込みの型を使用する事になります。そうした時に,その差別化をはかるための方法が,金や銀をどれだけ使用しているか。あるいはジュール(ジュエル)という釉薬を盛り上げて宝石を埋め込んだように仕上げる技法によって,輝度を上げられるかという事になるようです。
 「技術が手中にあること」は,ちょっと表現がしにくいんですが,製作する側の意図が,完璧に表現されているという事になるでしょうか?
 よく言われる事なんですけども,中国や西洋における形成の頂点は「土をどれだけ制服できたか」あるいは「力技で形を作り上げたか」っていう事だと言われます。これは,日本においても,須恵器の時代から,高度な技術によって土を我が物にするという思想があったことは間違いないでしょうが,後に織部を始めとする優れた茶人の登場などで「土を征服せず,共存する」という方向に流れが変わり,未完成の力強さとか,左右非対称を味として尊重するようになります。
 話がそれましたが,とにかく,「形を作るために,どれだけ土をねじ伏せる事ができるか。」「材料がどれだけ自分の言うことを聞くか」という事は,西洋の形づくりの根源になっています。そして,製作者の思い通りの形が出来たとき,それが最高の品物となるわけです。
 私は,微妙な呉須の濃度によって色合いが変わったり,面を均一に染めることが非常に難しい染め付けは,こうした意図にそわなかったのではないかという気がしています。
 マイセンの器には,染め付けの作品も数多くありますが,どういうわけか,後にわざわざ,赤や金の上絵で,模様を描き込んだり,白い空間を表す部分に,上絵の濃淡をつけたものが少なくありません。それは,何か染め付けに物足りなさを感じたヨーロッパの方の心があるような気がします。

Q44.しんしゃ釉?
A44.これは、「辰砂」と書きます。本来は、硫化鉱物の水銀鉱石の名前なんです。つまり、硫化水銀ですね。で、こいつが、きっつい赤(というかピンク)色をしているので、それに似た色の釉薬を「辰砂釉」というようになりました。水銀鉱石の辰砂は、その色から赤色の顔料に用いられたり、昔は漢方薬にもなったそうです(勿論、硫化水銀ですから猛毒ですけどもね)。
 一方、釉薬の辰砂は、硫化水銀は一切使用しておらず、「銅」のコロイドという現象を利用して発色させています。ちなみに、辰砂釉は、大抵、酸化で焼くとトルコ青に近い青い色になり、還元で焼くと赤い色になりますね。基礎釉の性質をアルカリ質に返ると、織部釉になります。

Q45.マット釉を酸化で焼く?理由
A45.マット釉というのは、分類上は「結晶釉」に属するものです。つまり、釉薬の表面に微細な結晶が析出して、それが結果的に凹凸を作り、釉薬をマットに見せるわけですね。
 で、通常、こうした結晶は、酸化の場合に非常に良く出るわけなんです。結晶が出るためには、ある程度、釉薬中に「核」となる微細な鉱石が残っていなければいけないんですけども、還元だと溶けちゃったりすることが多いわけですね。だから、普通は酸化で焼いたりするって事になっているんです。
 ただ、何冊か本を読むと分かると思いますが、1150度〜1200度まで還元をいれると析出が良くなるとか、冷却時に還元を入れると良いとか、作家によってこだわりや癖がありますから、必ずしもオール酸化で焚き上げる事が良いことだとは限らないんですね。そこが、釉薬の難しいところなわけです。

Q46.危険な薬品?
A46.安全性を最重要とするならば、「長石」「石灰」「カオリン」「珪石」意外は使用しないことです。石灰は校庭の白線を引いたりするときに使用しますね。「カオリン」は化粧品や豆腐の白さを強調するときに使用しますし、「珪石」はいわゆる水晶ですから、装飾品に使われていますよね。着色剤として弁柄(鉄)でしょう。
 ただ、これだけでも十分に実験はできますが、何しろバリエーションが少ないので、いろいろと加えていくわけですが、ハッキリ言うと、上記のもの以外は、安全なものはありません。
 釉薬は「フッ酸」以外の酸に犯されないと言われていますが、長期的に見れば、酢の物のような酸でも、十分に解け出すことがあるからです。しかし、その量が微量なので、一応、致死にはいたらないという事になるわけですね。
 ただし、取り扱い上、炭酸銅(ロクショウ)やバリウム、重クロムは「医薬用外劇物」として指定されているものですから、吸い込んだら大変なので、マスクをしておくほうが良いでしょうね。

Q47.薪窯で出た灰は釉薬になる?
A47.登り窯等で出た松灰。これ、使えます。かなり良いです。無害です。ただし、灰汁が強いので、何度か水簸して灰汁を抜いておかないと、釉薬として使用するのは難しいですけどもね。灰汁は、水溶性のカリウムやナトリウムなので、釉掛けで生地の中まで浸透して、焼成中に生地を破損させてしまいます。これを防ぐ為に、先に、灰を水に漬けて水溶性の物質を溶かし出しておいて、不溶性のものだけを釉薬として使用する目的で、水簸をするわけですね。
 で,続いて松灰の話。
 業者から買ったものでも,おそらく,かなりの期間,水簸をされているんでしょうが,そのまま使用すると灰汁が浮きますね。もちろん,買ってすぐに使用しても,問題はないんですけども気分的に。ってことで,松灰の灰汁を完全に取るのは,かなり根気がいります。でも,ちゃんとやらないと,泣いちゃうのは自分の作品ですから,やっぱりやらないとダメですよね。ガンバッテ下さいまし。

Q48.芸家の弟子になろうというわけではないのですが、陶芸をちゃんと勉強したいな、と思っています。例えば益子へ修行のため、単身赴任というわけにもいかない。やはりそうなると、美大などでも、社会人入学があるから、入って、勉強とか基礎からしたほうがいいのですか?陶芸教室で働いている先生方は、やはりちゃんと美大を出てるんですか。資格とかいるんですか?
A48.アメリカ陶芸っていうのご存知ですか?いわゆる陶芸第二世代っていう方が、日本に出没して、現代陶芸を始めるんですけども、その時の現代陶芸の思考の根底をなしているのがアメリカ陶芸だったりします。
 内容は、いたって単純で、「アメリカには陶芸の伝統も、陶芸に秀でた人間もいなかった。勿論、窯元制度なんていうものもない。しかし、だからこそ、アメリカ陶芸は土と真摯に向き合い、土を理解する方法を知っている」っていうものですね。
 要するに、「伝統とか享受っていうものに捕らわれず、自ら土を扱う事で、土の新しい可能性を引き出している」っていう事なんです。この思想は、現代陶芸をやる人間の基本みたいなところがあって、なまじ、習い事で決まった方法を学ぶことで、作品の自由が利かなくなる。模索し、作品を壊しながら、陶芸は新しい方向を見つけていこう。っていう事になるわけです。
 私は、一応、大学で陶芸を専攻しましたが、だからどうっていう事はないと思っています。多少、菊練りが早めに出来るようになったとか、窯を焚くチャンスが多かったという事はありますが、あくまでも技術的な問題だけで、形を作ることは、専攻で習う事とは、全く別の問題のように思っています。
 この辺は、ちょっと難しい話かな。ま、とにかく、専門の勉強と言っても、何一つ教えてもらえません。正直言って。場所を提供されるだけで、あとは本人まかせです。むしろ、陶芸教室などの方が、よっぽど親切に教えてもらえますよ。専攻の勉強をしていらっしゃらない方は、専門の勉強をすると、すごく陶芸が上手くなるような錯覚をお持ちですが、けっしてそんな事はありませんねぇ。しいていてば、英文科を卒業したからって、全員が英語の達人になったり、外国で爆発的に売れるような小説をかけないのと一緒です。
 それから、陶芸には、一切、資格というものはありません。最近は、「陶芸学校」と称して、独自に資格を与えるという妙な学校もありますが、だからどうってこと無いですね。正直言うと、そういうところで資格をもらった人と話をすると、「陶芸はこうあるべきだ」とか「こういう方法で作らなくちゃいけない」とかて、すっごく頭が固い。これは、本当に困ったものです。
 我々は、土の新しい可能性を求めているのに、習ったことに固執して、それ以上に何もできない。陶芸は、資格がないからこそ、アートとして成立するんだと思います。絵を描くのに、資格がいらないのと同じですね。ピカソも岡本太郎さんも、資格をもらって絵を描いたり、陶芸をやっていたわけではありませんよね。
 たまに、職場で「ロクロ師一級」とかあったら、大笑いだねぇ。ってな冗談を言ってますが、実際に陶芸をやるとなると、そんな感じです。陶芸は習う事って、ないですね。自分がやるかどうか。これにつきるでしょう。

Q49.オブジェの定義?
A49.私のとらえ方は,陶芸と陶アートという対立構図ではなくて,ヤキモノという見地から,それぞれを何となく分類するっていう感じなんでしょうかね。
 つまり・・・広く「モノを焼く」という行為があって,それが「ヤキモノ」。その中で「土」を焼くための素材として起用したのが「陶」。そして,製作のための手数の量が圧倒的に多いものが「陶芸」(この辺りは,自分でも考慮の余地があると思うんですが)。さらに,作ったものに機能的側面が大きいのが「器」。機能的側面を排除し,視覚や触覚など,極めて部分的な効果のみを狙って製作されたものが「オブジェ」。っていう事になるでしょうか。
 もう少し説明すると,以下のように表現できるかもしれません。
 土を焼成する事は,その性質上,絶対に密閉した空間を作ることができません。作れば,乾燥中に亀裂を生じるか,焼成中に爆発しますからね。だから,形態からいけば,土で作ったものは絶対に外界と遮断されることがない器の形になるわけです。これは宿命ですから,仕方がありません。
 しかし,これまでの「陶芸」と呼ばれるものは,その形態の多くが上端に空間を作ることで成立してきたという側面がありませす。それが器です。では,器を返して床に置いたとき,つまり,上端に空間を作らないとき,それは果たして陶芸ではないのか。ツボを床の間に逆さに置いて何かを表そうとしたとき,それは陶芸ではないと拒絶しなければならないのか?というのが,オブジェ思考の発想の根源であり,器を逆さに置く事で生まれる土に対する自由な発想が,現代陶芸なのではないかという感じでしょうか。
 長くなりましたが,私の現在の発想としては,そういう感じですね。ご理解いただけるかどうか,かなり不安なんですが。
それから,>>アーチストは茶碗など作ってはいけませんウソウソというのは,私も常々考えている事ではあります。
 ただ,鯉江良二氏,清水六兵衛氏の名を出すまでもなく,器とアートとの境界を越えて,活動をされていらっしゃる方は,たくさんいらっしゃいます。無論,言うまでもなく,私は,そうした方々の足下にも及ばない物を作っているわけですけども(笑),器もオブジェも等価という発想自体は,同じではないかと思っています。
 ただ,やはり器の世界は強固で,オブジェを「ゴミ作りおって」という表現で解釈される方は多いですね。しかし,それはもしかしたら,オブジェを作る人間の見解が妙なのかもしれませんから,一概に批判すべきものではないと思います。けれど,作ってみて,作り続ける人間がいて,後の世に,その事に何の意味があったのか,分かれば,それで良いと,今の私は思っています。

Q50.ジュール(ジュエル)という釉薬を盛り上げて宝石を埋め込んだように仕上げる技法って?
A50.名前の通り,「ジュール(宝石)」を模して作られる上絵の装飾技法で,簡単に言ってしまえば,エナメルに仕上がる上絵具を,宝石に似せて絵付けをするというものです。エナメル上絵そのものを盛り上げる場合と,素地に宝石状の起伏を作り,それに上絵を施すものがあるようですが,凝った造りになると,実際の宝石に見られる線条痕や結晶柄を描き込んだり,宝石特有の光と影を書き入れて立体感を強調するものなど,まさに宝石そのものがはめ込んであるようなジュールもあるそうです。
 アンティークなどでは,エナメル釉薬の形状が崩れたり流れたりしないように,周りを金彩で止めているようですが,近年では金を打っていないものもありますね。
 ジュールは元々,石や骨あるいは金属などで作られた杯に,沢山の宝石を配して飾り付けるという装飾の名残で,権力者の憧れを代弁したものだそうです。

Q51.西洋人はゴージャスが好きなのか?
A51.このジュールからも分かる通り,日本に限らず,西洋の器もまた,権力者の趣味というものが色濃く出ているわけです。特に,西洋では階級というものが強く(現在でも,ビートルズの誰だかが,サーの称号を得たとかいうニュースがありますよね),庶民はヒエラルキーの頂点にある種の憧れを持っているという事があります。無論,そうした貴族思考が全てではありません。反旗を翻すという意味で,今年の流行柄はバラなんだそうですが(^_^;),しかし,生活の一部に,そうした貴族あこがれ思考が残っている事は確かなわけです。
 高価なカップを何代にも渡って買い足し,食卓にある種の統一感を持たせていくという意識も,先に話した「人間の征服(前に制服って書いちゃいました。すみません)を表現できるか」という事につながっていくような気がします。

Q52.「朝鮮カオリン」と「朝鮮カオリン(風化)」の二種類あったんです。風化という言葉になぜか惹かれてそっちを買ってしまったんですが、どう違うのでしょうか。
A52.私が今までに「ミルカオリン」「スタンパーカオリン」「風化カオリン」の3種類を見たことがありますが,原料を調合する上で多少,粉砕状態が違うという以外,色見に大きな差はないようです。(あくまでも私見ですが。)業者の方の話では,「ミルカオリン」は,トロンミルとかポットミルっていう水を使った擦機でカオリンを粉砕し,水簸したもの。「スタンパーカオリン」は,餅つきみたいにカオリンをでっかいハンマーで粉砕し,かなり粒子を細かくしてから,水簸したもの。
「風化カオリン」は,たぶん,粉砕工程はスタンパーと同種のものだと思いま
すけども,先のカオリンが大抵,ブレンドものであるのに対し,ノンブレンドに近いそうです。
ちなみに,長石などは,志野釉を作るなら風化長石って言われるくらい,釉薬の原料としては風化ものが好まれるようです。

Q53.古伊万里の技法で「墨弾き」というのがあるらしいんですが、ご存じでしょうか。
A53. 私も別冊太陽って,結構好きで,特に陶芸関係だと写真が多いので,たまに買っています。「古伊万里」もあったと思いますが,どこかに埋もれちゃった。で,墨弾きなんですけども,雑誌の説明だと,ちょっと不足していますね。実際にやっていみると分かると思いますが,墨だけだと,あまり抜けが良くないし(その抜けの悪さが好きな方もいらっしゃいますけど),空焼後に扱いづらいんです。で,正確には,墨に珪石を入れて擦ったものを使用します。珪石は高温でも単味ならば溶けませんから,空焼後に,払うときれいに取れます。
 本来は,乾燥すると油膜を作るエマルジョン効果を持った膠と,珪石とをを混ぜで使用すれば良いのでしょうが,これだと白地に白色で何を描いたか分からなくなってうので,色の付いた墨を使用するわけです。それで,墨弾きとなるわけですね。
 で,要は,塗った時に油膜が出来て,空焼して油を飛ばした後に,取れやすい物質が合体していれば良いって事になるわけですから,墨の他にも,クレヨンとか,溶き油なんかと珪石(またはアルミナ)を混ぜて使うっていう手もあるわけです。これはこれで,墨とは,また違った効果がでて面白いですよ。
 空焼は,墨に含まれる油や糊(膠)を焼いて揮発させるための処置ですから,400度以上にすれば,間違いなく飛ぶでしょう。塗り面が小さい時には,ハンディーガスバーナーでちょっと焼いてOKにしちゃう時もあります。(笑)
 ただし,表面がガスの墨で黒くなりますから,ちょっと勇気がいるかもしれませんけどもね。という事で,素焼きに入れても構わないと思います。
 が,私は,まだ空焼を素焼きと一緒にやったことが無いので,確信は無いのですけれども,素焼きの時には当然ながら,大量の水蒸気が発生し,本焼きに関係するものは,何らかの影響を受けます。
 以前,辰砂釉の色戻しをしようとして(辰砂釉は,銅赤色がでる釉薬ですが,失敗して赤が消失した時に,800度程度で焼き直すと,コロイド結晶が出来て赤い色になることがあります。これを色が戻るといいます),素焼きの窯に入れたらば,表面に水蒸気の影響による膜が出来て,全滅した事があります。一応,本焼きまで済んでいたので,クレンザーと金属タワシで擦ったらば,何となく膜は飛びましたけども,あまり良いものではありませんよねぇ。
 同様に,上絵を素焼きの窯で焼くと,見るも無残に白濁(というか,ぬる〜〜い色に濁った)した色になります。ですから,呉須にも何らかの影響がでなるとも限りません。もしかしたら,墨に入れた珪石と,水蒸気で出た水とが,結晶水になって再結合するという事も考えられますから,あまりお薦めは出来ません。
 素焼きしたものを,400度程度の温度にあげるくらいならば,どんなに大きな窯でも3〜4時間あれば十分でしょうから,もし,空焼が出来る状況が整っていれば,無理して素焼きには入れないほうが懸命だと思いますけどもね。

Q54.釉薬で,特に松灰を使用したものは,場合によって弁柄や呉須絵が流れるときがある?
A54.今,使用している松灰(光沢)と,松灰半マット(先の松灰カオリンマットの,ちょっとマットが弱いやつ)は,間違いなく弁柄が流れます。松灰(光沢)の場合は,呉須も流れます。ま,どちらも松灰を40%近く入れているので,そうなるんだと思いますが,もし,流れるのが困る場合は,松灰の半分以上を石灰に置き換えることをお薦めします。

Q55.松灰釉の調合で長石は何を使用すれば良かったのか?
A55.現在,陶芸で使用されている長石は,,福島長石,釜土長石,南郷長石,三雲長石,平津長石などが代表的なものです。では,これらの長石の何が違うのか。というと,1つは長石の組成。もう1つが鉱物形状の違いです。
 組成に関しては,おそらく,耳にしたことがあると思いますが,カリ長石,ソーダ長石(ナトリウム長石),リチウム長石,灰長石(カルシウム長石)などに分類されます。これらは,アルカリ成分(釉薬を溶かす成分)として何が多く混入している長石か,ということで分類されています。アルカリは,主に,カリウム,ナトリウム,リチウムなどで,通常,これらが多かれ少なかれ数種混入していますが,その中でも相対的に多いものを長石の名前の最初に付ける事になっています。
 で,上記の長石を分類すると,カリ長石は福島,南郷,三雲長石。ソーダ長石は釜土,平津長石となります。ちなみにリチウム,灰長石は,日本では殆ど産出しないので扱うことは無いと思います。最近ではペタライトという名称でリチウム長石を見る事もありますが,非常に溶けやすく(単味でブクを吹く)扱いづらいので,あまり使いません。
 次に鉱物形状に関してです。
これは,簡単に言うと,マグマが冷えて長石になる時の速度によって変わるもので,早く冷えると珪石を混入したアプライト,ゆっくりと冷えると長石の純度が高くなりペグマタイトになります。一般的に,単味で使用するならペグマタイト,材料を混ぜるならアプライトが良いと言われますが,私的な意見を言わせていただくと,ペグマタイトは溶けが良く,癖も少ないし釉薬の透過性も良いので,私はペグマタイトを好んで使っています。
 で,分類ですが,手元の資料では,ペグマタイトが福島,南郷。アプライトが釜土,三雲,平津となっています。
 ということで,たぶん,南郷長石指定は,カリ長石ペグマタイトを使用してください。という意味でしょうから,福島を使っても,全く問題ありません。ただし,南郷は福島に比べアルミナ分が多いので,気持ち,カオリン等を多めに入れる方が良いとも考えられます。

Q56.松灰釉の調合でカオリンはメッシュを通せば良かったか?
A56.,メッシュは必ず通したほうが良いと思います。本来は,すり鉢で良く擦るか,ポットミルで水擦したほうが,原料同士の反応も良くなりますし,沈殿防止にも役立ちます。特に,カオリンは,焼成後に焼け残る事がありますから,最低,メッシュは通した方が良いでしょう。

Q57.楽焼きに挑戦!土は信楽の耐急熱急使用?
A57.問題ないでしょう。もし,不安でしたら,シャモットを10%内外,混ぜてみては如何でしょうか。土の混合は,熱に対するものというより,焼成時の釉の吸い込み具合やテクスチャーの効果などを考える場合ですから,あまり,神経質になることはないとおもいます。

Q58.楽焼きに挑戦!手捻りで土の厚さは7mm?
A58.土の厚みは,別に何ミリでも構わないと思うんですけども,ポイントは焼成前に,施釉後,十分に乾燥させておく事ですね。特に,低温釉は水蒸気の影響をモロに受け,自然冷却だと,白い膜を作ることもありますから,昇温期に水分蒸発が起きないよう,乾燥には気を使わなければなりません。

Q59.楽焼きに挑戦!素焼きは800度(電気窯)?
A59.もうすこし低い温度を推奨します。まぁ,1000度くらいまでは,土は素焼き状態ですから,何度でも良いといえば良いのですが,800度ですと,幾分,締まりが強いのではないでしょうか。楽用釉は水っぽいという事もありますし,釉の食い付きを考えると,私は650度程度で良いと思います。

Q60.楽焼きに挑戦!市販の複色釉?
A60.一般に,市販釉は,100度/1時間の割合で昇温した場合に熔ける事が前提になってます。ただし,フリットになっていると話は別で,この場合,もっと早いペースで昇温しても釉になります。
 また,使用する釉に生の鉛(鉛白,唐の土)が使用されているか,ほう酸が使用されているかでもペースは若干変わります。御使用になる釉が,どのようなタイプの基本釉を使用しているかで,この辺は微妙ですから,メーカーに問いあわせるか,あるいは自分で実験してみるかで考えたほうが良いでしょう。(実験してみるのが一番ですけどもね。)

Q61.楽焼きに挑戦!本焼の方法は?
A)窯を予め800度位にまで上げておき→施釉作品を長火箸で挟み窯に入れ(火箸で何処を挟むのか、火箸の使い方が悪いと釉剥がれが起るので簡単に”挟む”と言っても具体的に良く理解出来ないのです)→再び800度まで昇温→窯を開蓋長火箸で作品を取り出し(水冷の度胸はないので空気中で冷ます)このような手順。
B)予め作品を窯詰め→常温から150度/1時間で昇温→800度で電源断窯を開扉放置冷めるのを待つ。(A、B共私の独断と偏見の計画です。念のため)

A61.方法は,AでもBでも構わないと思いますが,むしろ,窯の状態との相談になりますね。
 つまり,御使用の電気窯の耐火レンガが,どれだけ急冷に耐えるかという問題です。本焼き用の電気窯は,一般的にSK32という耐火レンガを使用しますが,これは,先の100度/1時間で昇温し,自然冷却することを前提に使用するものです。
 楽用窯は,これよりも番数の小さいレンガを使用し,強制冷却でもレンガが割れたり,窯内に亀裂が入らないようになっています。
 ただし,作品をサッと取り出して,フタをパッと閉め,窯の中が序冷になるようにすれば,差ほど問題はありませんから,御使用の窯が高温用のものであれば,とにかく序冷するか,速攻で作品を取りだす段取りをかなりしっかりとやっておく必要があるでしょう。
 それから,800度まで温度を上げた窯に作品を入れるのは,非常に危険です。水蒸気爆破で作品が破損する危険も高いですし,800度という温度は,本当に熱いです。私は,顔が焼けるし,鉛の気化した空気を吸い込むのも嫌なので,溶接用の面を被ったりします。(小心者>自分)
 それに,楽の釉は,パイロメーターでの対空気温度で測定できるものではなく,あくまでも,肉眼で熔けたかどうかの状態を確認していかなけえばなりませんので,何度も,のぞき込む必要もあります。
 以上の事から考えると・・・
 まず,作品を窯に入れ(常温),昇温し,約800度になったら,何度か窯の中の釉の熔け具合を確認する。熔けを確認したら,序冷するっていのが,一番簡単。しかし,それでは,単なる上絵と変わりませんから(笑),火箸で取り出す方が,ダイナミックですね。
 また,作品は,空冷よりも,むしろ,水冷の方が安全ですし発色も良好ですから,水冷をお薦めします。いきなり冷やすと,作品が割れるような気がしますが,そもそも,素地が焼締まっていないので壊れることがないし,水に入れると,作品の熱で自然と水がお湯になり,適当に序冷状態になるんです。だから,大丈夫。他に,ホースで部分水冷するとか,おが屑に入れて強制還元をかけるとか,いろいろ方法があるんですけどあらためて。

Q62.木灰釉って?
A62.松灰に限らず,木灰というのは,植えてある場所の土壌によって,あるいは,灰にしたものが木のどの部分か(樹皮とか幹とか,枝とか葉っぱとか)によって,成分に差がでることが多いのです。
 また,灰の作り方(焼いた温度)によっても,リン酸の量が変化したりしますから,非常に微妙なものです。(それゆえ,安定性に欠けると言われるわけですね)
 この辺の灰に対するこだわりは,茶の湯で使用する灰の扱いにも似た,微妙さがあり,御使用の灰が,どのような成分を持っているかは,(ノムル計算とか成分分析機を使うとか,そういう特殊な方法を使用しない限り)何度もテストして調べていかなければなりません。

Q63松灰陶石マットの配合?
A63.今回の実験「松灰陶石マット」から,御使用の灰は,かなりカルシウムやリンが多いらしいということが分かりましたので,対策は,その辺を考慮して行います。
1,カオリンマットは,単純にカオリンを減らすという方法もありますが,それだとあまり変化が大きくならないのと,色味が変化するので(それはそれで面白いんですけども),同時に長石の量も変化させます。カオリンを減らした分,長石を増やすという方法です。たぶん,調合からすると,長石を40〜50,カオリンを30〜20で調整すると,変化すると思います。
2,陶石は,分類上,珪石よりも長石に分けられる事が多い原料です。というのも,中国では,木灰と陶石を混合して磁器釉としている所が多いからですが,成分的には,明らかに珪石寄りです。ここからも分かるように,陶石は珪石に比べると,若干,熔けが良くなりますので,本来,珪石を陶石で置き換える場合は,量を増やして調合しなければいけません。
 逆に,珪石(珪酸)系マットを微妙に弱める為に,珪石の何割かを陶石に置き換えるという方法もあるわけです。(私がよく使用する手なんですが)
 それから,マグネサイトを使用しない珪酸系マットは,かなり厚掛けしてやらないと,マットの真価を発揮しません。もし,釉が薄いようでしたら,透明釉になるでしょうから,もう一度,釉を2度,3度掛けして,厚くしてみるというのも手ですね。
3,マグネサイトは医薬用外劇物指定はありませんから,(多量に吸い込むのはまずいですけども(笑))扱いは簡単で,単に何%か混合すればOKです。ただし,乳濁効果が大きいですから,3〜4%刻みで増やしていきます。(長石などは10%ですけども)
4,杉の灰ですが,成分を調べたらば,かなり幹と葉で成分が異なるようです。釉原料としては幹を使用するのが良いらしいですけども,ここは実験で,やってみるのが一番ですね。ただし,松灰よりはカルシウムが少ないので,混合する場合は,やや増やした方が良いでしょう。 

Q64.土灰って何?
A64.色々な灰を混合したものを「土灰」と言います。今回の,Hさんの「杉、モミジ、サクラ、クヌギなどが混ざった灰」というのが,それですね。ちなみに,この「土灰」は,「竃(釜土)灰」の略語で,つまり,煮炊きをする際に使用した,竃に残っている色々な木の混合灰。雑木灰という事ですね。
 焼くまでどうなるか分からないけども,それだけに,焼く楽しさというものもあります。

Q65.外割りってどういう意味?
A65.外割りというのは,基本釉(この場合,長石・松灰・陶石)を100とし,それに10,20,30(マグネサイトならば3.6.10)と加えていくという事です。外割りは,100%計算からすると,かなり粗雑な方法なんですけども,実際的には非常に有効な手段なので,陶芸では多用されます。

Q66.ミル摺り2時間は短いでしょうか?(私は弁柄の粒子を細かくすればする程良いのではないかと思ってますが、摺り過ぎも又具合がわるいし・・・・・
A66.私の場合,時間ではなくて音で判断しています。まぁ,大抵の場合,湿度による原料の吸水具合とか,送られてくる原料の質などによって,擦りの程度が変わりますから,時間はあまり当てになりません。乳鉢ならば,クリィミー状になる程度が基本。ミルの場合は,擦る音がカラコロからキリキリに変わって30分程度したら,私は止めることにしています。(たぶん,この音で分かっていただけると思いますけど)

Q67.釉薬原料ごとの粒子の大きさって?
A67.釉の擦りが難しいのは,基礎釉の原料と,着色酸化物(弁柄などの金属ですね)とでは,逆の発想を持っていることです。
 基礎釉原料は,原料そのものの良さを引きだそうとしたら,粒子の大きさを原料ごとに変えなければいけません。一般的に,土類はやや粗めにして素地との密着性を高め,長石は原料の持ち味を出すためにスタンパー等で衝くのが良いと言われています。珪石は粒子の大きさで反応が変わると言われていますし,石灰も同様です。
 ただ,そこまで厳密に考えるのは,桃山陶の再現をやっているような,陶芸家よりも研究者に近い方ですから,あまり頭痛くなる事はないでしょう。
 ただ,金属に関しては,釉薬が液化した際に,イオンとして分解するかどうかが発色に大きく関わってきますから,粒子は細かいに越したことはないと考えるのが普通です。
 弁柄などは,1000日擦りなどと言われ,毎日毎日,老婆が日なたぼっこをしながら,1000日かけて擦った弁柄でないと,柿右衛門のような美しい赤の発色はしないと言われています。
 メーカーから買い付ける場合も,弁柄は粒子の大きさによってランクがあり,擦りの甘いものと,かなりキメの細かいものとでは,値段が倍くらい違います。私が知っているのは「錦龍」という最高級弁柄は,粉の状態で,すでに,非常に美しい紅色をしています。上絵や,砧青磁を作る際に使用するものですけども,青磁は,最近では弁柄ではなく,珪酸鉄を使用することが多いですね。(この方が,イオン化しやすいからですけどもね。)
 ということで,出来れば,基礎釉と着色用の金属とは,別に擦り,さらに攪拌程度に混ぜてすってやるのが一番ですね。

Q68.”金属の粒子は細かいに越した事はない”との話ですが、イオン発色が好ましい釉、又はコロイド発色を要求する釉等も粒子を細かくすれば良いと言うことですか?。
A68.コロイドによる発色は,御存知だと思いますが,一度釉薬に完全に溶かし込み,更に冷却期において発生させる,いわば,再結晶とも言うべきものですから,やはり,細かい方が良かったりするんです。
 代表的な辰砂釉は,銅を利用して赤い銅コロイドを発生させますけども,これも,高温期において釉によく溶け込むよう,酸化銅よりは炭酸銅を使用したりしますよね。
 むしろ,擦る,擦らないを問題にするのは,油滴天目やソバのような,核を中心に結晶を発達させ,それを金属で着色するような釉薬でしょう。ソバなどは,意図的に砂鉄を混ぜて,核を作りやすくしたりしますからね。

Q69.コロイドについて?
A69.コロイドですが,2種類あります。一つは金属が細かく砕かれて,ミクロ単位になったもの。もう一つが,成長して出てくるものです。
 陶芸では,この2つが微妙にかかわって(かな?)いるので,「陶芸はこうじゃ〜〜」と断言はできません。
 通常,鈞窯のようなものは,砕かれたものが多く,なます事によって銅赤を呼び戻すような場合は,再結晶の要素が高くなります。

Q70.白萩の斑紋と蕎麦の結晶の析出について
A70.透明釉(下)蕎麦釉(上)で実験した二重掛けに於ては,かなり良好な蕎麦が検出しました。単釉でも,小さなものは出ますね。ただし,焼き方にポイントがあって,1230度あたりでの温度キープと,かなり徐冷を必要とします。つまり,結晶を発達させるために,目標温度でゼーゲルが倒れた後も,徐々に温度が下がるよう,調節を掛けなければならないわけです。
 白萩の斑紋も同様で,特に,斑紋は高温域の何度あたりで温度を引っ張るか,酸化とは言え,低温度域において還元を掛けたほうが良いのか,高温域で温度キープをしたほうが良いのか,それとも,焼ききる形が良いのか。徐冷はすべきか,何度で徐冷を開始するのが良いのか。など,要因は極めて多岐にわたり,非常に複雑です。
 しかも,毎回,毎回,同じ状態で作品が詰められている窯ならば,問題はないのですが,焚くたびに,中の物と空間の比率が変化するような場合(これ,個人の窯にはよくある事ですよね)には,本当に,焚く事は胃が痛くなるほど気を使わなければいけません。
 陶芸は,未だ,科学的に分析できない複数の要因を駆使して,美しい形態を作る造形表現ですから,それだけに,人間の感性と緻密な観察力を必要とします。

Q71.よくSK8(1250c)焼成釉を、窯の関係でSK7(1230c)に落としたい場合にSK8釉にフリットを混ぜますね。この場合市販のフリットでどれ位の割で混ぜるものでしょうか?
A71.1250度を1230度の釉薬にするなら,私は迷わず,1230度で1時間(以上)温度キープし,釉薬を溶かします。釉薬は,何かを加えればたちどころに性格が変化するデリケートな面を持っています。フリットや亜鉛,ストロンチウムなどを使用すれば,簡単に温度を下げる事はできますが,それによるデメリットは非常に大きいのではないでしょうか?
 ただ,どうしてもフリットを混ぜたいという事であれば,10%(外割り)になるんじゃないでしょうかね。無論,フリットの種類は多いですから,どんなフリットを混ぜるかによって,パーセンテージは大きく変わりますけども。
 ちなみに,この文章で使用しているフリットは,溶融点700度程度のものを指します。

Q72.松灰陶石マットで,グリーンが薄かったのは何故?
A72.最初に結論を申しますと,グリーンが薄かったんじゃなくて,青色が強かったんですね。青磁でいうところの,天龍寺→砧への変化っていう感じでしょうか。
 ちょっと難しい話になりますが,釉薬は主成分となる長石と灰に加え,カオリンなどの土質の原料が多いか,それとも,珪石などの石質の原料が多いかで,着色用の金属の色が変化します。
 で,今回の緑は,松灰の中に含まれる鉄による発色なんですけども,この鉄は,釉薬に土質の原料が多いと緑色(OFの場合は黄色)になり,石質の原料が多いと青みを帯びます。
 で,調合を見ると,長石と灰の成分以外には,石質の陶石しか含まれていませんので,当然,釉薬は石質になり,鉄が青みを帯びたので,緑色が薄くなったように感じたわけですね。従って,この場合,鉄を緑に発色させようと思ったら,カオリンを加えるか,陶石を減らすという操作を行わなければなりません。 しかし,操作すると,当然,釉薬の性質が変わりますから,マットにならない事もありますし,そこが難しい所です。

Q73.松灰陶石マットのマグネサイトの混入
A73.陶石は,Hさんの調合の場合,珪石に属する原料になりますから,珪石を陶石に変えても,マットの調子は変わらない(むしろ熔けが良くなるかも)と思うんですけども,ま,一応,珪石を陶石に置き換えるというのは,そういう事になりますね。
 で,問題の松灰陶石マットに入れるマグネサイトなんですけども,ミルキーにしたいということであれば,もう少し,松灰の量を減らした方が,ミルキー効果は高いと思います。
 ただ,もう,調合しちゃっているでしょうから,この場合は,長石と陶石を更に10づつ増やしてから,マグネサイトを5%くらい混ぜると良いのではないかと思います。
 いわゆる,珪酸マットと呼ばれる調合に近くなりますが,これは磁器釉の一種で,1250度程度でミルキーな表面になる釉薬です。
 松灰の鉄で,やや黄色く着色されるでしょうから,OFならばミルキーになるのではないかと思いますが。(さて,どうでしょう?・・・無責任ですみません)
 色の調整は,鬼板土や,弁柄。あるいは,珪酸鉄などを使用して行います。どれでも構わないと思いますけども,着色力では,弁柄はハード。珪酸鉄がミドル。鬼板土がソフトっていう感じでしょうかね。
 あ,それから,余談になりますけども,調合は必ず100にしなければいけないというものじゃないですからね。で,いわゆる百分率調合表になっていない場合は,「部率調合」といって,
灰弱マット釉      福島長石 50部
              土灰   40部
              カオリン 20部
              蛙目   10部
っていう感じに表したりします。

Q74.スプレーガン(ピースコン)と施釉について
A74.0.8mmのピースコンが施釉に使用できるかどうかは,釉薬の粘性や粒子の大きさに依存します。私の場合は,長石・石灰系の,いわゆる鉱物釉はピースコンを使用する事が多いです。ただし,ボーメで1.6(だったかな?)よりも比重を軽くしておかないと(簡単に言うと,水で薄めれば良いんですけども),均等にはかかりません。
 また,天然木灰を使用した植物釉は,粘性が高く粒子も粗いですから(私の場合,特に木灰の色を出すために擦りを甘くしているので),水で薄めても目詰まりを起こしてしまって,使えません。
 ただ,無理すればスプレーガン(塗料用の口径の大きいエアブラシ)を使って施釉出来ますが,木灰系の釉薬は,大抵,マット調になりますし,表面の凹凸が強く出る事が多いので,私は使用しません。あとエアブラシなんですけども,長石石灰系の釉薬は,非常に綺麗にのりますね。
 それと,0.3mmは,間違いなく詰まります。0.3は,デザイナーが染料入りの絵具で絵を描く時に使用するもので,陶芸の特に顔料は使用できないと思いますよ。それに,もし,線を書こうと思うのならば,私は口径の小さいピースコンを使うよりも,マスキングフィルムをつかった方が,綺麗だし,失敗もないと思うんですが。マスキングフィルムは高いから,代換え措置として新聞紙でも何でも良いんですけどもね。

Q75.せっ器について
A75.せっ器というのは,もともと,日本には無かった陶磁器の観念(?)ですから,分かりにくいのも致し方ありませんよ。
 英語のストーンウェア(stone ware)というのを,無理して日本語訳した言葉ですからね。(それで,「石」ではなく,造語を使用するわけです。)
 御存知のように,器は,粘土質の陶器と石質の磁器に分けられますが,この分類をする上でポイントになるのが「透光性」と「吸水率」です。
 焼成後の状態で,透光性が無く,吸水率が0でないものを一般的に陶器。透光性があり,吸水率が0(か,限りなく0に近いもの)を一般的に磁器と分類しています。日本では瀬戸が土を混ぜて磁器土を作り出すまで,異なる土を混ぜるという事が産業的に行われていなかったので,分類はこれで十分でした。
 しかし,ヨーロッパなどでは,白磁への憧れや,より強度の高い陶磁器を求め,様々な土をブレンドするという,実に科学的な陶芸が当たり前に行われており,そこで生まれたのが,陶土に溶融しやすい石を加えてるという,半磁土=ストーンウェアだったわけです。
 これは,陶器の透光性が無いという特徴と,磁土の吸水率0という,二つの性質を合せ持つもので,加工がしやすいわりには,磁土のように白く,堅固な素地になるものだったのです。
 で,後に,「透光性無しで吸水率0」という分類が生まれ,備前や古信楽は,その性質にあてはまるので,せっ器という分類に加える事になったわけですね。

Q76.石灰と骨灰のカルシウムの違いって?
A76.確かに,石灰も骨灰も,共にカルシウムの固まりなんですけども,カルシム自体の成分(性質って言う方が,陶芸らしいかな?)が違うんですね。石灰は,成分の約80%が「炭酸カルシウム」であるのに対し,骨灰の約80%は「リン酸カルシウム」なんです。
 では,何が違うかというと,どちらも珪石と反応して,αをβに変える主成分になる事はなるんですが,ポイントになるのは,リン酸カルシウムのリン酸が,乳濁剤として機能するという事なんです。
 つまり,リン酸〜の方は,釉中に多量の泡を作る(というか,泡を残す)という性格があるんです。それで,乳濁効果が高まるわけですね。
 この性格を利用している代表的な釉薬が砧青磁で,あの水色は,鉄(一説にカルシウムの色だという話もありますが)の発色だけではなく,釉中のリン酸によって出来た無数の泡による乳濁効果と鉄の連携プレーで,発色しているわけなんですね。
 で,結局,釉薬が単なるガラスではなく,味のある複雑な色味を持っているのは,この泡の存在が大きいわけで,釉薬を別名「泡ガラス」とも言ったりするのも,この為です。
 で,リン酸は,1〜2%(ピロリン酸カルシウムの形で混入の場合)で,かなりの乳濁効果を示しますから,リン酸カルシウムとして骨灰を使用する場合は,3〜5%くらいを入れるということになります。
 ちょっと難しい話になってしまって恐縮なんですけども,まとめると,石灰は単純に,釉薬の溶融点を下げるための効果として。骨灰は釉に泡を作る効果として使用するので,同じカルシウムでも,使用方法は全く違うという事になります。
 「陶芸−やきもの作りの実際−」は,確かに,調合の多くに骨灰が使われていますけども,まぁ,これは個人のこだわりによるものなので,骨灰が無ければ,石灰で置き換えても,問題はないわけです。ちょっと色味が鋭くなるという感じはあると思いますが。

Q77.磁器の抹茶碗に金箔を貼り、金の消し粉を少し振りかける事にしましたが、接着する適当な方法はなにが一番効果的?
A77.結論から言うと,とりあえず箔の下に繋ぎになるものが塗ってあれば,なんでも大丈夫。という事になりました。(笑)当たり前ですけどもね。
 問題は,繋ぎに何を使うかですが,焼くのか焼かないのかという事ですね。焼かないという事であれば,一番簡単なのは瞬間接着剤(アロンアルファなど)を使用する事です。かなりしっかりと付きますし,瞬間接着剤は元々,手術用の接着剤ですから,ほぼ無害ということです。
 次が漆ですけども,これも画材店で購入されたものならば,かなり無難に使用できるでしょう。ただし,瞬間接着剤よりも時間がかかりますし,使用時の温度や湿度など,ちょっと注意がいりますね。
 焼く場合にも漆は使用できますけども,おそらく400度は高すぎますね。(焼けちゃうんじゃないでしょうか。)私が漆を焼き付ける場合は,せいぜい170度くらいが限界で,しかもかなり短時間(2時間くらい)で焼き付けます。
 その他,簡単なのは,日本金液から出ている「金液(水金)」を使うのは間違いないですね。もともと,金色ですから,焼成中や焼成後に剥がれても,やっぱり金という事で,失敗が分かりません。(笑)ただし,どのくらい乾いたら貼るかというタイミングがちょっと難しいですけども。
 ところで,この金液は,金粉が硝酸ビスマスという金属を繋ぎとしているらしいので,硝酸ビスマスだけを塗っても,箔を付けるだけならば問題ないという事になります。というわけで,硝酸ビスマスはどうしたら入手できるかと調べたらば,パールラスターという上絵具があり,それの成分の殆どが硝酸ビスマスらしいのです。ですから,金箔で下地の金を隠すという訳の分からない事が腑に落ちなければ,パールラスターを使うというのが,まっとうという事になります。
 邪道な線では,アクリル絵具のシエナ色を使うとか,油絵で使用するペインティングオイルを繋ぎに使用するというものもあります。アクリル絵具などは,何が入っているのか知りませんが,色によって,黒釉になったり,透明釉になったりしますから,釉薬と似たような原料が使用されているのでしょう。
 また,リキテックス社から,グロッシーズという絵具が出ており,これは200度程度で焼き付ける絵具で,通常,オーブンなどで手軽にできる絵付として売られていますから,それを繋ぎに使ってしまうという手もあります。
 もちろん,伊勢久の「金箔接着剤」もしっかり付きますし(ただし,私は上絵の溶媒じゃなくて,リンシードを使ったりしましたけども),上絵の洋絵具を繋ぎに使ってもきちんと付いていました。
 他にもいろいろあるんですけども,上記の中から,好きなものを選べば良いよのではないでしょうか。

Q78.焼き上がりに原因不明の黒いほくろが点々と…!?
A78.黒いほくろには2種類あって,一つは道具(主にカンナ)からでる鉄粉。もう一つがカビです。
 カビがどうして鉄分を持っているのかは分かりませんけども(あるいは鉄分に似た物質なのかな?),磁器に付く黒カビは,焼くと黒いポチポチになることが,たまにあります。青カビは,そうでもないんですけどもね。
 有機物だから,分解して無くなっちゃうかと思い,焼いてみたら,泣き状態になってしまったので,良く覚えています。
 それから,私はカッターオタクなところがあって,かなりの種類のカッターを持っているんですよ。文房具屋さんで,新しいのを見つけると,必ず買っちゃうのよね。今,気に入っているのは,六連装式カッターと,ステンレス刃の中型タイプ。それと,修復でよく使うのは,ペン型の刃先の鋭いカッターですね。
 でも,ほとんどのカッターは,ナマ土を切ると,刃先が粘土とくっついちゃうので,使えません。使う時には,グラインダーで刃の無い方を削って,先を尖らせないとだめなんです。

Q79.古代中国の青磁器のかけらを見ると素地が馬鹿に薄いのに対して上薬がひどく厚く掛かっていました。(素地の2倍や3倍ではありませんでした)あれって、釉を掛けては焼き、掛けては焼きを繰り返したのか、糊薬でも付けてめちゃめちゃ厚掛けを繰り返して、超超ゆっくり(10日も15日もかけて)焼成したものなんでしょうかねぇ?
A79.青磁の釉薬なんですけども,あれは,二度掛け,三度掛け,四度掛けという感じで,何度も掛けてから,焼くんです。
 もっとも,釉薬そのものの濃度も高いんでしょうけども,あれだけ素地が薄くなると,濃度を濃くしたり,長い時間,釉中に入れても,素地が水を吸いませんから,それほど厚くはつきません。
 更に,一度焼いてから,あれだけの厚みを乗せるのは,おそらく至難の技だと思いますから,たぶん,やっていないでしょう。
 青磁は,たぶん,テレビでも言っていたと思いますが,その本質は釉中にできる泡が光を微妙に乱反射し,鉄の碧い色を,より深いものにします。さらに,素地を薄くすることで,透光性を高め,より,釉薬の珪酸ガラスとしての美しさを強調するわけですね。もっとも,青磁は,あのくらい厚く掛けないと,美しい碧さが出ないから,仕方ないわけですけどもね。
 ところで,西洋の鉄の武器は,冷ます段階で奴隷を刺し,その体の中で徐々に熱を下げる事で,恐ろしいまでの強度を作れたといいます。陶芸も,青磁の貫入の模様を染めるのに,じつは,人間の多量の血の中に陶器を入れて貫入を染めたのではないかとも言われていますね。大陸的思考も,ここまでいくと,脱帽した帽子を投げつけたくなるような気もします。

Q80.塩分と赤色の関係
A80.食塩水吹きかけの事なんですが,あれは基本的に土の中にある少量の鉄が,食塩の塩素と結びついて塩化鉄(赤い鉄ですね)になるという効果を利用したものですので,鬼板のように,鉄の含有量が50%以上の着色の強いものを塗ると,ほとんど差がでません。
 通常は,含有鉄が酸化されても赤くならない程度の含鉄土を使う事によって効果を発揮するものですので,鬼板塗るのは無理ですね。
 ただ,半磁器土や磁器土は,食塩水を吹きかけても赤くなりませんが,粒子の細かい弁柄を,塗ったかどうか分からない程度に希釈して吹きかけた(塗ると濃すぎます)後に,食塩水を吹きかけると,赤くなります。しかし,磁器土を赤くしても,あまり面白くないですけどもね。確かに,オレンジ色は綺麗ですけども。
 本来は,藁灰を水簸した時にでる灰汁を煮詰めて,塩素の濃度が高くなったものを利用しますが,食塩水の方が楽なので,飽和するまで撹拌しながら入れて,これを使います。

Q81.志野の緋色について&志野長石って何?
A81.これは風化長石という種類のもので,原料そのものは,アプライト質のソーダ長石ですから,釜戸長石などと成分そのものは,あまり変わらないはずです。
 では,何故,釜戸長石と言わず,わざわざ志野長石という名称を使用するかというと,これは,わざと粒を荒くしているためです。(ですから,志野長石は,擦らずに使用するのが普通なんですけどもね)。
 志野釉の神髄は,その淡雪のような白さにありますが,この白さを作るためには,熔けて失透釉になる部分と熔けずに粒として残留する部分の2層が必要となります。この2層の微妙な光の屈折作用によって,あの志野独特の白さが生まれてくるのです。
 志野は,長石単味を釉薬とする極めて珍しい釉ですが,それゆえ,花粉という失透釉になる細かい粒の長石と,粗目という粒状残留する大きな粒長石の2種を混合させています。(というか,モノは同じですが,わざと粒に大小を作っています。ところで志野長石は、最初から、粗目と花粉が混じっていますから志野長石だけで釉ができます。ただ、熔け方の調節をする場合は、石灰を入れるという時と、数種類の長石を入れる時があるようなので、そういう目的ならば、釜戸長石や、福島長石を混ぜる場合も考えられます。ちなみに、え〜〜、あんなザラザラの志野長石を使うのぉ。とお思いでしょうが、あれが熔けるくらい焼くのが志野釉ですから、仕方ないと諦めてください。
 九州の小鹿田焼きなどでは,この志野釉を作るために,水車を使って長石を突いて,わざと粒にムラを作るという手法を代々続けていますが,大きいメーカーでは,スタンパーという機械で長石を潰しています。
 メーカーから長石を買う場合,基本的に粒はかなり細かく,同じ大きさになっていますから,もし,自分で志野長石を調合しようと思ったらば,長石層から自分で石を拾ってくる以外に方法はないかもしれませんね。それが出来ない場合は,志野長石を擦らずに使用しましょう。って事になります。
 ちなみに,志野風の風合いを出す為には,志野長石を使わなくても,釉薬調合はいくらでも考えられます。ただ,あくまでも志野の風合いというだけで,いわゆる伝統的な志野釉ではなくなってしまうことは,憶えておかなければいけないかもしれません。
 それから,志野の緋色は,基本的に酸化第二鉄と塩化鉄の混合鉄の発色です。ですので,基本は鉄の含有量の多い土を使用するか,あるいは鬼板や弁柄などの鉄を表面に塗ることがポイントになりますね(また,長石に少量の蛙目粘土を入れると良いという話もあります。ちなみに釉自体に食塩を混合したのでは出ませんよ)。
 しかし,これを単純に焼くと,ネズミ志野になってしまいます。これは,冷却時に還元で鉄が酸化第一鉄に戻ろうとする作用だと言われており,これは窯の冷却時間の長短によるものだというのが通説です。
 そのため,志野で緋色を出そうとする人は,炊きあげる事以上に,冷却の温度に気を使っています。つまり,釉薬が熔けた後が勝負の境目になるわけですね。初心者の方で,志野の赤色がでないという方の多くは,目的の温度になるまでは時間や温度カーブを気にするのに,火を止めたらば知らん顔という方が多いんです。
 志野の緋色の本領発揮は,むしろ,火を止めた後にあると言っても過言ではないのかもしれません。
 それから、冷却時に酸化還元のどちらが良いかは、基本的に個人の焚き方に依存する事が多いですから、絶対にこっちが良いということは言えないでしょうね。織部などでも、火を止める前に還元をかけた方が良いという人もいれば、きっちり酸化で焼き抜く方が良いという人もいますし。
 志野も還元で焚くと決まっているわけではありません。どこで還元をかけるか、あるいはどこで酸化雰囲気にするかは、当人の好みや窯の癖など、様々な要因があります。多くの場合は、釉薬の色の深みに関わる事が多いので、その辺は、いろいろとやってみてから考えた方いいのではないかと思います。
 それから、志野は元来、登り窯や穴窯で焼いていたという事を考えれば、冷却時にどうすれば良いかは、おのずと見えてくるような気もしますね。果たして、登り窯や穴窯と同様にすることが、良い事かどうかは、分かりませんけども。

Q82.焼成のことですが,時間をかければかけるほど,しっかりと土がしまるのでしょうか?
A82土の成分の殆どは、ご存知のようにガラスの元(珪酸)です。これが、αからβ、そしてムライトに変化し、長石が熔けて焼結現象というものが起こり、素地の隙間が埋まってガラス化します。これを、陶芸では「焼き締まった」と表現します。
 焼締まりは、窯の温度というよりも、土に与えたカロリーの大小によって変化します。
 古代式の穴窯などは、構造上、最大でも1150度内外の温度までしか出ませんが、その温度を3、4日持続させることで、しっかりと土を焼き締めます。私が実験したところでは、1260度まで単純に温度を上げ、火を止めた状態は、1230度で2時間弱キープをかけたものと、ほぼ同じ焼締まりとなりました。
 という事で、基本的には土を焼き締めてガラス化すれば、素地の隙間がなくなる為に水漏れはとまると考えられます。ガラスによる被覆作用によって無理矢理土の表面の隙間を埋めたものが、いわば釉薬ですね。

Q83.主に水漏れの原因とは?
A83.大別すると、以下の3つの理由が考えられます。
 1つめは、土の成分による理由です。
 これは、土のガラス粒子が大きかったり、極めて熔解温度の高い成分が多量に含まれている場合に起こる水漏れで、「焼き締まりがサクい」などと表現しますが、いわゆるザックリとした土味を持つ土が、その代表例です。萩茶碗などに見られる「雨漏り手」は、こういう成分の土を利用することで、その水漏れによって生じる漏れを模様と見立てたものです。
 2つめは釉薬の貫入によって生じるものです。
 ご存知のように、釉薬は、土との膨張収縮率の違いによって、殆どの場合、貫入を生じます。この貫入には、通常の貫入とシバリングという貫入の2種類があり、問題はシバリングが起こった場合です。
 シバリングは、釉薬の膨張収縮よりも、土の膨張収縮の方が大きい場合に起こるもので、八重貫入などがその代表的なものですが、これは、適度に入っていれば模様となりますが、ひどくなると素地に大きな負担をかけ、細かいヒビを多数つくります。もっと症状がひどくなると、ある時、パックリと器が割れる場合もあります。
 つまり、素地と釉薬との相性が悪い場合に、釉薬の貫入から流れ込んだ水が、素地の割れ傷から染み出すことで水漏れになります。したがって、いくら高カロリーで焼き上げても、冷却時に出来る貫入で水漏れを起こします。
 3つめは、作陶上に起こるもので、簡単に言えば「削りすぎ」です。
 特に、紐づくりで形を作った後、表面や器の内側をガリガリやると、せっかく継いだ紐の表面を削り取り、接着の悪い紐と紐の隙間があらわれて隙間が出来るというケースです。無論、紐づくりだけでなく、玉づくりやロクロでも、表面を削りすぎると水漏れがひどくなるケースは多いですね。
 指でいじっている間に、土は知らず知らずのうちに表面の粒子が密になります。しかし、削りをやりすぎると、その密になった表面が荒らされ、粗になってしまいます。
 形の美しさばかりを優先する陶芸入門書や、陶芸教室では、こうした作陶を推奨する場合が多いのですが、実を言うと、あまり薦められるものではないんです。湯飲みや急須など、長時間、水を入れておく必要のない器ならば、そうした作陶方法もOKなのでしょうが、花器などでは、全く使いものにならない技法です。
 それから、最近は水止め剤にも数種類あり、大抵は油性なのですが、私のお気に入りは水性の「液体セラミック」という商品です。これは、素地中のアルミナと珪酸とを反応させてどうこうという、被覆とは違った方法で漏れ止めをするものです。油性のものよりも強力で、しかも無害という優れものですから、よかったら見つけてみてくださいね。

Q84.瀬戸黒と織部黒(あるいは黒織部)はとも に引き出しですが、何処が違うのでしょうか?
A84.時間軸の差によるものだと思います。
 正確に言うと,時代が下がるごとに,形態上の変化や装飾上の変化が起こる。このところがポイントになるという事でしょうか。(つまり,産地による違いとか,成分上の違いとか,そういうものではないということですね。)まぁ,これらの違いは,後の人間が学問上分別したものなので,時間軸は当然だとは思うんですけども。
 時代の流れからいくと,
 黒い美濃の焼き物→瀬戸黒→織部黒→黒織部
 という流れになるそうです。
 黒い美濃の焼き物は,瀬戸黒や黒楽の原形となるもので,丸い腰に高台がついた,いわゆる黒楽のような器で,焼成中の火がついた状態の窯から,作品を引き出して鉄による黒色を作る製法の器です。
 そうした製法が,やがて大窯という巨大な窯で行われるようになり,形態も丸底から,平底へ,そして篦目が入った力強い造形に変化し,瀬戸黒になります。
 次に,ロクロで引いた形態をわざと大きく歪ませる「沓形茶碗」という形式が登場し,これが織部黒。更に,そうした織部好みの非対称の形態に,窓絵や象嵌という技法での装飾が加わり,黒織部になります。
 結局,非対称の形態も局限まで行き着き,装飾の技法も飽和して,時代と共に変化していった引き出す技法の黒い器は,それ以上の発展性がなくなって荒廃します。
 逆に,黒楽は,その単純な色や形態によって,器という根本を捨てなかった事により現代まで連綿とその地位を守っていますね。
 どちらが良い,悪いという事は言えませんが,単純で力強い瀬戸黒が好まれる理由は,そうした黒楽が息衝いている事からも,なんとなく分かる気がします。

Q85.鳴海織部って?
A85.鳴海織部は,古田織部が尾張(愛知県の一部)の鳴海で作らせたと言われていますから,織部の意匠という事になると思います。他の織部と時代的に同じ出土らしいですから,間違いないでしょう。
 「鳴海織部」
 赤土と白土を繋ぎ合わせて形を作り,白土の部分には銅青釉(緑色の釉薬。現在では織部釉とも言われる)を掛け,赤土の部分は白泥で装飾し,鉄絵を施して焼成した器。現在は,よくある装飾ですけども,赤土と白土の融合や,緑と白と赤(鉄の茶色)の3色による装飾など,当時は先進的な器だったそうな。

Q86.釉薬の沈澱防止には何が良い?
A86.最も,沈澱防止になるのは,釉薬の原料に粘性のあるものを使用する事ですね。例えば,蛙目とか陶石とかね。ただ,これは釉薬の原料に,カオリンや硅石などが使用されている場合に,それを置き換えるという事になりますから,釉薬の種類が限定されます。置き換えなくても,少量の蛙目を入れる場合もありますが,かなり良く擦っておかないと,焼成後にプツプツが出る場合がありますから,あまりお勧めはできません。
 では,そういうもの以外で何が使用できるかというと,私は布海苔やCMCを入れる事にしています。粘土成分(カオリン,蛙目など)を使っていない釉薬は,施釉後の乾燥で,釉薬がはく離したり,焼成中に釉切れを起こす事が多いんですけども,布海苔やCMCを入れると,それも防止できるので一石二鳥になります。
 どちらも,すぐに腐って臭気を放つんですけども(笑),洗濯用糊として売っているCMCには防腐剤が入っているので,私は,それを愛用しています。
 沈澱防止は,「凝固回避」と「沈澱速度の低下」という2種類の方法で主に対処します。食塩やニガリ,酢の添加は,凝固回避の側面からのアプローチと思われますが,私は,どうも,これらはかなり釉の使用原料に依存するところが大きいので難しいのではないかと思います。
 クリスタリンという沈澱防止剤などもありますが,あれも「凝固回避」のアプローチで,ほとんどの釉薬の沈澱防止にはならないのが実情ですね。
 むしろ,釉薬に粘性のあるものを入れ,原料粒子の沈澱速度を遅くする方が,沈澱防止(実際に防止ではないわけですけども)としては効果が大きいと思いますよ。

Q87.,釉縮れの修復方法は?
A87.釉薬の溝にCMCを入れるという方法もありますが,私の場合は,むしろ,器を電気コンロの上であたためて(直置きすると割れますから,網か何かの上に乗せてね),かなり熱くなったところで,CMC入りの釉薬を掛けたり,筆で乗せたりしています。
 ま,結局,めくれて素地が露出した部分に釉薬を付ければ,大抵の場合は問題なく埋まります。ただし,これも釉薬の性質に依存するところが大きく,元来,張力の大きい釉薬だと,もっと縮れて症状がひどくなる場合もありますね。粘土が入っていない硅石/石灰ベースの釉薬は,ひどくなる事も多いようですし,塗り直した部分があからさまに分かったりします。長石/石灰系の釉薬で,カオリンなどの粘土類が入っているものは,かなり分からないくらいに直る事が多いです。
 ちなみに,2度焼き,3度焼きは,釉薬よりも素地の方に,かなり負担をかけます。特にきめの細かい赤土などを使用している場合は,2度めの焼成で,煎餅のようなブクを生じるケースが多々あります。
 これは,土中のガラス成分が,熔けやすくなっているために,短時間で素地が柔らかくなって,素地中の気泡によってできるブクですね。
 陶芸での焼き直しは,そうした事を回避するために,普通,2度め,3度めは,1度めの焼成温度よりも低い温度で焼くようにします。同じ釉薬を使用している場合も,20度くらい低い温度をキープさせて釉薬を熔かします。

Q88.ベントナイトっていうのはどんなもの?
A88.別名,膨潤土って呼ばれる粘土の事ですね。
 膨潤の名の通り,かなりの勢いで吸水して体積が膨れ,蛙目並にベトベトします。その性質を考えると,確かに,沈殿防止に使用できるかもしれませんが,私はもっぱら沈殿防止になるほど多量に使用していませんでした。
 ベントナイト本来の使用法は,可塑性増強の目的で,フリットや粘土に5%以下で使用するというものですね。ただ,5%も入れると,逆に扱いにくくなる事も多く,また含有している鉄分の影響が大きい事もあるそうなので,私はいつも2%程度しか入れませんでした。
 また,1〜2%程度入れると,浸し掛けの際に一定の厚さしか素地に付着しなくなると説明書きにはあったんですけども,私の浸し方が悪いのか,一定の厚み以上についてました。

Q89.施釉後の剥離や飛びの原因とは?
A89.実は釉薬の難しさは,成分そのものと同時に,その粒子の大きさとか,熔け方の違いっていうのもかなり関係しているんです。
 かなり詳細な陶芸入門書や,専門書でないかぎり,この辺りに触れているものってすくないんですけども,特に,施釉後の剥離などに関するものは,この辺の事に依存する側面が大きいみたいですね。
 釉薬の原料は,擦れば擦るほど熔けて反応しやすくなるわけですが,だからと言って,かなり細かくしてしまうと,施釉後の剥がれがひどくなったりもします。特に,粘土が入っているものは,擦りすぎると粘り気が弱くなったりして,剥
離しますね。
 一般的には,着色用の金属類は細かく,基礎釉の原料はやや荒めに擦るっていうのがセオリーのようです。
 また,釉薬には,それぞれ固有の熔け方のプロセスというものがあります。一度,素地から浮き上がり,やがて徐々に熔けて素地と密着するもの。逆に,素地と密着したまま熔けていくもの。など,さまざまです。昇温時に起こる珪酸の体積膨張がかかわっている事が多いわけなので,かなり大ざっぱに話すと,硅石の含有比が大きくなると,それだけ昇温中に素地から剥離する危険が高くなると言えるわけです。
 よく,窯入れの時には釉薬が剥離していなかったのに,焼成が終わって窯出ししたらば,作品の釉薬がはげて,棚板に付いていたとかいう失敗がありますよね。こういうのは,昇温時の剥離によるもので,その多くは,硅石の多い釉薬でみられるものです。
 それから,当然の事ですが,釉薬の厚みが増すと,それだけ珪酸成分が多くなりますので,昇温時の剥離現象が促進されます。特に,素地との密着が悪く,かつ,膨張して浮くような釉薬は,自分の重みで剥離することもありますね。

Q90.膨張収縮と釉薬について
A90.△ 温度上昇時の変化
 素地は,釉薬が熔け始めるまでの間に,以下のような状態変化を起こします。600度あたりで,素地は急激に膨張を始め,やがて,それが1150度あたりからの焼結現象によって,体積減少(いわゆる収縮)に変わります。
 釉薬は,その性質によって様々ですが,素地の変化よりは小さい体積変化しか起こしません。ただし,珪酸質の釉に限っては,SiO2の変化に伴う体積膨張が起こります。
 ▽温度下降時の変化
素地,釉薬供に,温度が下降するのに伴って,収縮が起こります。
この際,使用原料によって,収縮率に差が生じます。昇温時と同様に,600度あたりから急激な体積減少が起こり,300度あたりで落ち着きます。
 つまりこれらの膨張収縮での体積変化の差が,釉縮れ,切れの原因になるわけです。
 ▲温度上昇時に起こる現象は,釉縮れ,釉切れで,これは,素地の膨張に釉薬の膨張がついていけない場合に発生します。
 分かりやすく言うと,例えば,ゴム風船がしぼんだ状態の時に,表面に小さな四角い紙を隙間無く張り付け,その後,ゴム風船を膨らませたとします。このとき,ゴム風船が膨らむにつれ,紙どうしの隙間は大きくなりますね。これが,陶磁器の釉縮れ,切れのプロセスです。
 陶磁器の場合は,その後,表面の釉薬が熔け,その表面張力によって,細切れになった釉薬が引き寄せられて,縮れや切れが発生します。
 ▼温度下降時に現れるのが貫入です。
これは素地と釉薬との収縮差によって発生します。収縮差が,「素地<釉薬」の場合は,いわゆる,一般的に言う貫入になります。これは,素地よりも釉薬の方が縮むので,その隙間が貫入として現れるわけですね。
 「素地>釉薬」の場合も表面的には貫入と同じような模様があらわれますが,これは,これ以上縮みたくない釉薬が,素地の収縮によって無理に縮められているので,シバリングと呼び,区別しています。
 ただし,多くの場合,シバリングは事故のぶるいに入るもので,大抵は素地の破損が起こります。

Q91.釉薬調合の場合、釉合計(重量%)の内金属物質は何%位を目標に調合すれば良いのでしょうか、その場合金属物質の中に鉱化剤も含めるのでしょうか?
A91.金属物質といっても,非常に多種多様ですから,何%目標というものはありませんね。錫などは数%ですし,マグネサイトは10%以上入れて初めてマット釉として使えます。チタンなどは20%近く入れて乳白色釉にしたりもしますね。
 仮にベンガラ(鉄)も金属として考えた場合,2%程度だと黄瀬戸や青磁,5%程度だと飴,10%弱だと黒,15%で鉄赤になります。これと同様に,亜鉛なども,釉薬の溶解温度を下げたいという目標なのか,それとも結晶を出したいという目標なのかによって,混入量は変わってきますから,目標として括る事はできません。

Q92.素焼き温度が低い場合、本焼き時素地の膨張もより大となりますから昇温時に釉縮れの誘因となりますか?
A92.素焼きの温度自体は,釉薬の縮れとはほとんど関係ないと思います。というのも,素焼きもまた,温度の上昇,下降によって体積変化を起こしているからです。完全乾燥時と,素焼き終了後の大きさを見てみると分かると思いますが,ほとんど変化がありませんよね。これは,一度,窯の中で体積膨張した素地が,冷却期にきちんと元の体積に戻っているからです。
 このように,体積は,温度によって毎回,体積の膨張・収縮を繰り返します。ですから,素地が400度で施釉をするという事をしないかぎり(笑),常温時の素焼きは,生の土の完全乾燥状態と変わらないと思ってください。
 つまり,完全に乾燥した生の土に施釉するのと,素焼き素地に施釉するのは,ほとんど差がないわけです。(水の吸収力などは変わりますけどもね)

Q93.釉薬の保存の期間や状態により微生物の繁殖も多くなると思いますが、これも考慮する必要がありますか? その場合私は PH の チェック 位しか思い当たりませんが、その必要はあるのでしょうか?
A93.釉薬に発生する微生物は,全く問題ないですよ。私が前にアシスタントのアルバイトをした作家さんのところの釉薬などは,外に放置してありまして,夏になるとボウフラが沸いて動いてました。でも,そんな事などお構いなしに施釉して,施釉後に器の表面がキクキク動いているのをみて,「気持ち悪〜〜」とみんなで言っていたくらいです。
 それは極端な話ですが,たぶん,蛙目やカオリンにいる土壌バクテリアなども,全然,関係ないと思いますよ。瑠璃や飴に茶汁とかを入れておくと,確かに腐敗して臭くはなりますが,焼成後の変化はありませんし。Phのチェックするくらいならば,ボーメ計で濃度を調節する方が先でしょう。

Q94.昇温焼成中、引っ張り合いの関係で釉切れの状態になった場合、自然復元(溶融した釉が流れ亀裂部分を埋めて自然復元する)も起こり得るものでしょうか?(粘稠度とか表面張力等の影響が左右するのかな?)
A94.釉薬には原料の調合比率で,溶解した場合の粘性や流動性というものが様々に変化します。粘性だけが高い場合,釉薬は,一度切れると,張力によって縮み,そのまま釉縮れとなりますが,流動性が高い釉薬や,流れやすい釉薬は,多少,切れても溶解時にくっつく事があるようです。(ようです。というのは,実際に見ていないから,そう書いているわけです。見られないという方が正しいかな)
 また,1230度で焼成する釉薬を1260度で焼くと,1230度では釉縮れを起こすのに,1260度だと縮れないという事が,まれに起こります。(かなりまれです)おそらく,これは釉が高温で流れ始めているからではないかと思いますが,どうなんでしょうね?

Q95.器の不具合(底にいく程肉厚になる)で肉厚の素地部分の膨張が肉薄の部分より勝ったので釉縮れを引き起こしたということでしょうか?
A95.素地の厚さの違いによる膨張・収縮の関係ではなくて,素地の厚さによる釉薬の厚みの違いです。
 通常,膨張差で生じる釉縮れは,まず,薄い口元に表れます。しかし,この場合,口元の縮れが発生していないのと,底へ行くにしたがって白色が濃くなり,なおかつ縮れが強くなっていること,そしておそらくかなり流れたであろう跡状から,口に比べると,かなり腰が肉厚で,かつ,施釉の際に,その厚みの違いで吸収力に違いがでたと判断できます。
 外側の色に対して,中の白色が強い事から,たぶん,先に中を施釉して,その後,外側を施釉したんじゃないか。などとも考えたりでもきます。これは,中を施釉しているあいだに,素地の水が飽和しはじめて,外側を施釉する時に,水の吸収が弱まったんじゃないか。などという憶測ができるからです。

Q96.タタラ成型のポイントとメインテナンス
A96.板ものでヒビが入ってしまう根本原因は,その殆どが,菊練りのまとめの悪さと,板を作る際に,のし棒などを利用して土を無理に延ばしてしまうことにあります。
 特に,土を延ばす際に,のし棒を使用すると,土に無理がかかってヒビが入る確立が高くなりますから,もし,そうした成型法をしていらっしゃるようでしたら,きちんと両手で土に体重をかけて延ばし,何度も土を叩いて締めて下さい。
 菊練りのまとめは,とにかく適当に土を固めず,ちょっとづつしっかりと巻いていく事ですが,これは技術的というか,経験の量に依存するので,毎日,菊練りの練習をするしかないでしょうね。
 とりあえず,それらの基本が出来ているのに,それでも作品が割れてしまった場合は,ヒビの末端に,そのヒビと直行するようにわざと傷を付け,それ以上,ヒビが広がらないようにして(ちょうど,Tの字になるわけです)から,ヒビの周りの土をへらで取って,同じような固さの粘土を,詰めていくという方法しかないでしょうね。
 ただ,詰めた土が乾燥した時に,また亀裂が入る事もありますので,この作業は最低2回,多い場合は5回,6回と繰り返し行わなければなりません。
 私は,陶芸教室の生徒さんの作品を,毎日,この方法でメンテナンスしていますけども,結構,面倒ですよ。5回,埋めても駄目な場合は,作品を諦めていただいて,菊練りから指導しなおす事にしています。

Q97.ガス窯でブタンガスボンベが沢山ありました!
A97.プロパンでなくブタンを使用する最大の理由は,たぶん,安いという事でしょうね。ただ、気化させるための専用装置が必要になりますから,そのぶん出費はありますが,火力そのものはプロパン並ですし安いですから,ブタンを使用する事も多いんだと思います。
 ただし,ブタンはすぐに気化熱で冷えて気化しにくくなるので,プロパンボンベよりも沢山用意し,複数のボンベから少しずつ噴霧したり,切替えながら使用していきます。小さな窯ならば,沢山のボンベは必要ありませんが,窯が大きくなってくると,かなりの数のボンベを使用するようになりますね。
 たぶん,沢山のボンベがあったのは,そのためではないでしょうか。

Q98.「海鼠釉」として使っていますが、私の力で色々やって見ましたが(皿とか丼等の特に大物中物に出易いんです)釉切れ、縮れが止まらないんです済みません、釉以外の問題は別として、下記調合内容に問題があればご指摘頂きたいのです。
  福島長石   20
  藁灰     60
  土灰     20
  弁柄      2
  酸化コバルト    1
  二酸化マンガン   2
A98.ご制作の海鼠釉は,いわゆる「鵜の斑」という釉薬の典型的な調合例ですね。通常は,この釉薬にベンガラやコバルトを入れるのではなく,下に,透明系の基礎釉に酸化金属を入れた色釉を敷き,その上に掛けて海鼠手を出すために使用します。朝鮮唐津などは,その代表例と言えるでしょう。
 ただ,調合比を見ると,ちょっと長石の量が少ないような気もしますが,使用している灰の質にも因りますから,これは,何とも言えません。
 まぁ,それはさておき,実は,使用している灰がポイントで,天然のものか合成のものかで,少々,対応策が変わります。
 合成の灰の場合,その主成分の殆どは硅石と石灰になるでしょうから,これは,かなり乾燥時の食い付きが悪い。しかも,かなり沈殿することと思います。この場合の,釉切れ,縮れは,おそらく焼成の初期に起こる素地との密着性の悪さからくるものではないでしょうか。つまり,調合そのものの問題ではないと思います。ですので,焼成初期に,釉薬が剥がれないようにするための策として,釉薬に糊をまぜておけば良いと思います。
 一般的にはCMCや布海苔など,まれにアラビアゴム(液体のもの)を入れたりしますね。私はCMCを使用していますけども,大体,2%〜4%(乾燥重量比)入れておくと,釉縮れを防止できるのではないでしょうか。
 天然のものを使用している場合も,糊剤の混入でも良いのですが,天然灰は,もともと粘り気がありますので,糊を入れてもあまり効果はなかったりします。
 ということで,私は,下に薄く透明釉を掛けて,それから,海鼠釉を掛けてはいかがかと思います。
 天然の灰は,どうしても素地との密着が悪いので,焼成後でも,たまにペコペコと釉薬が剥がれてしまう時があります。それを防止するために,いわゆる繋ぎとして,長石石灰系の透明釉を使用するわけです。
 透明釉は,あまり厚く掛けると,かえって釉薬の流下がひどくなって作品と棚板が一体化してしまいますから,極薄く,さっと掛けてから,すぐに天然灰釉を施釉します。こうすると,乾燥時の素地との密着も(何故か)強くなり,また,焼成して溶解した時の密着性も高まります。
 大した事ではないんですけども,ちょっとだけ付け足し。
 本来的な海鼠手というのは,白萩釉を使用したもので,鵜の斑釉は,疑似海鼠手という感じですね。白萩の場合は,きれいなポチポチの流文がでますけれども,鵜の斑の場合はダラ〜〜と流れたという感じになってしまいます。
 いわゆる,海にいる海鼠のようにポチポチ模様がでるのが,本当の海鼠手ですから,そういう意味から言えば,分層釉の白萩の方がその特徴は顕著ですね。しかも,白萩釉に顔料を入れるよりも,濃い色の釉薬に,白色釉を二重掛けにした方が,粒々の感じはあきらかに強くでます。
 ところで,天然灰と合成灰を使用した釉薬の違いは,実際に作ってみると明らかに分かると思いますが,合成灰の方は,ふんわりとした白さがありませんね。かなりペタンとした感じというか,あるいは固い感じというか,「兎の斑(ウサギの毛のような斑紋)」という感じは出てきません。特に,白色の端の微妙な感じは,合成(硅石)のものでは表現できないものがあります。
 鉱物と天然灰との違いは,かなり顕著だと思いますよ。
 

Q99.灰の成分の見分け方
A99.灰が,どういう用法で使用できるかというのを調べる,一番の方法は,単体で焼いてみることだと思います。それほど多量に焼く必要はなく,2cm平方の陶板に,そのまま乗せたものと,水で溶いて薄く塗ったものの2つを焼けば良いと思います。
 合成の灰は別として,天然のものならば,単体で釉薬状になっていればカルシウム,不熔ならば珪酸分が多い灰ですから,間違いありません。
 また,単体で釉薬状になった際に,どの程度の色が付くかによって,含有する鉄の量もある程度分かりますし,その際の色で成分に含まれる不純物(チタンなど)も予想がつきます。
 松灰などは,しっかりと熔けて,還元の場合,きれいなグリーンになりますし,土灰は泡が多少入った濁った緑色を呈し,厚く掛けると黄色いカルシウムの結晶がでてきます。イス灰の場合は,着色の色が薄く,また,泡の量がやや多めです。わら灰や籾灰などは,不溶で白いザラっとした個体(?)が残ります。
 このように,灰は,その成分によって固有の熔け方をしますから,まず,焼いてみて,どういう状況で焼き上がるかによって,どういった使用が出来るかというものの予想を付けるわけですね。
 それによって,成分表やぜーゲル式を利用して,他の成分(長石や硅石など)と調合した際の実際の効果を計算するという方法が,最も適切なのではないでしょうか。特に,陶芸は数学ではありませんから,まず計算から何かを算出するというのは,かなりのプロでも難しいと思いますよ。
 私の先輩で,釉薬の貫入の入り方を見て,釉薬の調合の当たりをつけるという,とんでもない特技を持った人がおりますが,やはり,その貫入の見方も,かなりの数の釉薬を実験したからこそできるものなんだそうです。「理論よりも実践」は,当たり前の事でありながら,釉薬を知る最短の方法という事なんでしょうね。

Q100.樹木の部位による成分?
A100.基本的には樹木は根の部分に燐酸、幹の部分に珪酸や石灰分、小枝には珪酸分が少なく、葉に珪酸質が多い。ただ,樹木も自然のものなので,じつは,生えている場所に非常に反映されるそうです。
 酸性の土地であったり,火山灰の土地であったり(完全な火山灰では,樹木は成長しませんけどもね(^-^;)),あるいは,海辺に近い土地であったり,極端に言えば,海の断崖絶壁に映えていたりとか。生え方の密集度や,年数などにも,かなり左右されるそうなので,かならずしも幹に石灰分が多いとは限らないようです。
 ただ,木葉天目に見られるように,葉には珪酸分が多く,それゆえ,ああした模様が作れるという事もありますから,きっと,葉には珪酸分が多い事は確かかもしれません。

Q101.墨流しで使う泥漿を珪酸ソーダを溶かして作ることの弊害は?
A101.垂らし絵の技法を総称して墨流しやマーブリングと言います。
 その技法の元祖が「アンダースリップの墨流し」で,これは,最近ちょっと話題になっていたバーナードリーチという外国のおじさんが,日本に紹介した技法と言われています。民芸運動全盛の時代に,装飾として広まり,日本でもかなりメジャーになりました。
 墨流しそのものは,平安時代からある非常に伝統的な文様の一つですけれども,それを陶芸に使用したのは,かなり最近の事というわけですね。
 まぁ,それはさておき,珪酸ソーダ(水ガラス)の事です。
 まず最初に,水ガラスを知らない方の為に,ちょっと説明します。水ガラスは,鋳込み成型の際に,泥漿状態での土の流動性を良くする為に使用する薬品で,重量比で0.1%程度,土に混入して泥漿を作ると,土の粘性を弱めて流動性が増し,より濃度の高い泥漿を作ることができるために重宝されているものです。説明終わり。
 で,泥漿に水ガラスを入れる効果ですけれども,基本的に素地や焼成には影響ありません。ただ,水ガラスを使用するという事は,結果的に泥漿の濃度が高くなることですから,それゆえ,水の保水力も強くなり,薄い素地の場合には,その保水力の為に乾き始めた素地に再び水気を与えることによる崩壊の危険はでてきます。水ガラスの使用,不使用にかかわらず,それゆえ,素地は少々厚めに作らなければなりません。
 また,成型とは関係ないですが,水ガラスは数週間で効果が無くなりますから,効果が切れたらば,また泥漿に加えます。

Q102.塩基性炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2 かな?)の高温焼成による末路は?
A102.最終的に出来上がる物質はCuO(酸化銅)ですね。硫酸銅(陶芸俗称・タンパン)も,最終的には酸化銅になります。
 結局,1250度相当の高温においては,残る物質も少ないですから,どのようなものを入れても,似たような物質になってしまうという事でしょうかね。
あとは,その物質になるまでの反応性の良し悪しで,最初に使用する物質が異なるという事になります。

Q103.削りの加減について
A103.底の厚みについて私は,もっぱら底は指で弾いた時の音で判断するようにしています。カッカッ→コッコッ→コンコン→ポコッポコッ
のように変化して,ポコッポコッになったらば止めています。
 コンコンからポコッポコッの一削りをノーミスで出来るかどうかが,プロとアマの一線という感じでしょうかね。これは轆轤でも手びねりでも同じですが,基本的に底の音は,側面との厚みの差で生じてきますので,側面の厚みよりも数パーセント薄くなると,大抵,ポコッポコッという音になります。
 腰に土が残っていなければ,大抵,この音の時に器のバランスが良くなりますね。器は焼成すると重心が幾分,下がってきますので,乾燥時にやや軽めになるようにしておくと,いわゆる使いやすいバランスになってきます。
 よく,器を重さで考える方がいらっしゃいますけれども,本来,器はバランス(重心の置き場をどこにするか)がポイントですから,質量そのものが重くても軽くても,バランスが取れていれば,使用に際してはほとんど関係ないはずなんですよね。

Q104.煙草を1箱位巻き紙をほぐして熱いお湯に浸し良く撹拌した溶液に呉須を混ぜ、「ぽたり」と落とすと、みるみる内に丁度樹木の小枝の尖端が円形にどんどん発展成長して行くような、結果的には円形の小枝の絵模様のような紋様が出来るって言う彩色手法とは?
A104.これは「モカウェア」の事ですね。
 私が持っている「陶芸の技法百科(グラフィックス社)」では,フラクタル模様の柄が入った器を「モカウェア」,それを行うための煙草の水溶液に普通は酸化金属を溶かしたものを「モカティ」と呼ぶと書かれています。1785年頃にイギリスで始められた技法だそうです。結構,古いですね。
 で,じつは技法があることは知っていたんですけれども,私は煙草を吸わないので,そういう技法を行ったことが無いんです。良い機会ですから,ちょっと実験してみました。
 ただ,煙草は持っていないので,同じ葉っぱという事で,安いお茶葉を使う事にしました。急須に葉を入れてお湯を注ぎ,冷めるまで放置してから,ベンガラと混ぜて疑似モカティを作って実験したらば,なんとなく,それなりのものは出来ますね。
 しかし,モカティそのものよりも,むしろ,塗ってある泥漿の濃度の方が重要なようです。泥漿が薄いと,フラクタルにならず,ただの一本線で流れてしまいますし,濃すぎると流れていきません。また,茶汁を使わず,水でベンガラを溶いたものを使用すると,にじむだけでフラクタルの樹枝模様は出来ません。(とすると,おそらく,お茶の濃度にも関係あるのでしょう。)
 簡単かと思いましたが,結構,それぞれの条件が整っていないと上手くいかない微妙なもののようです。
 毛細管現象というよりは,むしろ,濃い濃度の泥漿の上に薄い水溶液が広がる際の濃度差にポイントがあるような気がします。おそらく,表面張力や泥漿と水溶液の侵食によって,ああいう模様が出来るのではないでしょうか。
 まぁ,理屈はさておき,葉っぱから抽出した溶液を使用すると,それなりの模様が出来るのは,確かなようです。

Q105.菊練について
A105.あの練り方のポイントは,リズムと体重の移動にあります。
菊練りが慣れない方は,リズムの取り方が不規則だったり,体重の移動が不均一だったりするので,見た目に重く見えるんですよね。
 菊練りは腰で練れと言います。つまり,腕力ではなく,体重と押しの速度で練っていくという事なのだと私は思うんですが,早い話が,足を大きく前後に開き,前脚のつま先に体重を掛けて,体が倒れるときのバランスで土の空気を抜いていくという感じだと思えば良いのではないでしょうか。
 それから,わりと土を練っているのに,土を見ない方が多いですね。今,土がどういう状態なのか,どの方向に土を押せば空気が抜けるのか,そうした事を逐次,土の動きや表面の具合から察していかないと,土はどんどん,痛んでしまいます。
 土は寿司のネタと同じで,いつまでも手の中でいじっていると,どんどん,悪くなってしまいます。瞬発力で土を押し,空気を抜き,すぐに引き寄せる。この一連の運動が早ければ早いほど,土の粘りは強くなり,その逆を行えば,土は悪くなっていきます。
 ところで話は変わりますが、土の中に含有されている空気なんですが、菊練では「でっかい気泡が出来ないようにする」というだけで、正確には完全に空気を抜いているわけではないんです。ただ、表現として「空気を抜く」という表現をしますけれども。
 パーセンテージは分かりませんが、粘土から完全に空気を抜く事は、間違いなく不可能だと思います。(もちろん、現代の真空ポンプや油圧を使った鋳込み。いわゆるファインセラミックの分野は別ですよ。練って空気を抜くのは不可能という事です。)
 鉄分の多い土を使って、試しに気泡を入れた土を1280度程度で焼いてみると分かりますが、完全に煎餅(正確にはクラックといいますけれども)のような状態になります。つまり、作品にボコッボコッという山が出来ます。この空気の入った山は、粘度表面に近い位置に気泡が存在する時に出来る現象で、厚みのある作品の芯に近い部分に気泡があると、バクンと亀裂が入ります。
 ちなみに、この煎餅は、素焼きでは発生せず、本焼き(酸化・還元のどちらでも)すると発生します。粘土が柔らかくなっていないと、煎餅にはなれないからです。又菊練りの方向とロクロの回転方向とを反対にしてしまった時で、しかも土殺しが悪かったりすると、素地がパイ生地の様になって、発生する場合もあるようです。
 で、ポイントは、この煎餅が出来ないようにするための策が「空気を抜く菊練り作業」で、その為には、なるべく練る際に、薄く薄く土が巻き取られていくように土を練ります。薄ければ気泡が割れる確率が高くなりますし、気泡を作りづらくなるわけです。

Q106.陶器からの鉛の溶出について
A106.たしか、どこかに日本の衛生基準をメモしていたんですけれども、今、ちょっと見つからないので詳細な説明は出来ないんですけれども、日本の溶出に関する検査も、かなり面倒な手続きをとっていたと思います。
 酸につけて○分放置し、さらに何とかいう液に浸けて・・・という感じで、検査行程が3行程くらいあったと思います。
 ただ、問題はそうした衛生基準は、あくまでも大量生産用の業者(ノリタケみたいな業者ですね)に対して行われているだけで、地場産業として陶芸を推進しているところでも、陶磁器作家一人一人にまでは、そうした基準を適用していないという事です。
 ましてや、趣味で陶芸をやって、ちょっとギャラリーに置かせてもらっているという感じのところでは、衛生基準がある事すら知らない方が沢山いらっしゃいます。
 よく、陶芸入門書を見ていると、○○釉を作るための調合などとレシピが明記されていますが、「おいおい、大丈夫かよ、そんな調合して」と思う事は少なくないですね。特に、トルコ青や、青銅マット釉、亜鉛結晶釉などの調合は、かなり危ない調合だと、素人目にみても、そう思います。
 表面がガラス状になっているから、溶出はしないという話もありますが、逆に言えば、酸による腐食が起こらなくても、表面のコーティングとなっているガラスに、万が一、細かい傷でも入ろうものなら、たちどころに溶出量が増えると言い換えることもできます。そういう意味では、確実に安全な釉薬でいこうと思うならば、長石・石灰・カオリン・硅石の4成分か、プラス鉄分の入った5成分しかありません。
 しかし、それでは変化が小さいですし、なかなか思う色は出せないので、結果的に、いろいろな物を加えることになります。ただ、朝昼晩と毒性の強い器で酢の物を食べ、それを50年、60年と続けるという事でないかぎり、即効性で死んだり病気になったりするものではないですから、ことさら異常に、釉薬に過敏になるひつようは無いと思います。もちろん、表面に緑青が結晶で付いているような器は、論外なことは言うまでもありませんが。

 日本と違い、外国(特にヨーロッパ)の陶芸の釉薬は、基本が鉛から出発しているので、釉薬を作るためには、まず長石(または硅石)と鉛が出発原料となります。それで、外国の場合は、余計に釉薬に対して規制が厳しくなっているという現状もあります。
 ただ、日本でも短時間焼成の窯が出来るようになって、かなり、鉛や硼酸を入れたフリット釉が主流になってきましたから、対岸の火事というわけにもいかないんですけれどもね。

Q107.錦窯の水抜き
A107.大型窯の焼成初期に発生する水蒸気は、そのほとんどが窯が吸い込んだ湿気です。
 まず、窯の水を抜いてから、土の水を抜く。これが焼成初期の鉄則で、近代の電気やガスの窯では、あまり意識されなくなりましたが、窯は非常に多量の水分を吸っています。窯は、器よりもずっと耐火度の高い土(煉瓦)で出来ています。つまり、焼き締まらないので、それだけ湿気を吸いやすいわけですね。
 素焼きや本焼きでは、あまり慎重にはなりませんが、上絵の時などは、この窯の水蒸気が残っていると、間違いなく釉薬に白い水蒸気の膜がつきます。だから、上絵を焼く窯は、昔から錦窯として、通常の窯とは別に作られていました。通常の窯では、湿気を吸いすぎていて、クリアーな上絵の色が出ないためです。特に柿右衛門赤のようなものは、色合いの変化が激しいですね。
 昔の窯ほど水分は吸っていない現代の窯でも、夏場などの湿気の多い時には、多少、窯を空焚きして水を抜いてやらないと、微妙に膜が出る時もあります。

Q108.粘土の粘りと添加物
A108.陶芸に使用する土の粘り気は、土壌バクテリアによるものだというのが定説になっていますが、実は、本当にバクテリアが荷担している粘り気はどれくらいか、というのは分かっていませんし、土の粘り気は、土の結晶状態の影響の方が大きいという話もあります。
 ただ、私のこれまでの経験からすると、陶土に関しては、粘り気を増す為には、蜂蜜を極少量添加する、水道水ではなく雨水を使って土を練る、などを行うと確かに粘り気は増しますね。
 磁土に蜂蜜を添加したことはないんですが、磁土を放置しておくと、非常にカビが生えますから、たぶん、土壌バクテリアも繁殖すると思います。
 ただし、カビの生えた磁土は、焼成すると黒や青い色を発色する事があります。おそらく、糖分を添加したらば、土壌バクテリア以上に、カビが発生してしまうと思いますから、そうなると磁土としては致命傷になるのではないでしょうか?
 最近は、手びねりも出来る粘性の高い磁土なんていうのも売られていますが、あれは土壌バクテリアとは、あまり関係ないらしいですし、磁土に関しての粘
り気は、あまりバクテリアに荷担しない方が良いのかもしれませんね。

Q109.前焼を焼くのに7日もかかるのは3日間ぐらいがあぶりにあてるからというのがありますが、備前の土って短時間で焼くと煎餅?やキレがでやすいためなんですか?
A109.備前焼の多くは、登り窯やあな窯などの窯を使用しますから、先に話をしましたが、窯を暖めるためというのが第一のように思います。
 うちでは電気窯で備前の土を焼きますが、2日で焚いても、クラック大発生という経験は、ほとんどありません。勿論、焼き締まりが弱いので、水が浸みるという問題はありますが、私の場合、あまり水漏れは関係ないので。
 合成備前土はさておき、いわゆる備前土というのは水切れがひどいんですよね。焼成中の水蒸気を吸って、すぐに割れるんです。隣に、乾燥状態の悪い作品を置いて焼成すると、焼成中に水蒸気を吸って、亀裂が入り、そのまま本焼きすると、バックリ割れますね。鉄分の多い土なので、高温で煎餅(クラック)が生じやすいという事もあるし、確かに難しい土だと思います。
 それだけに、上手く焼けると、格段に格好良い焼き味になるわけなんですが。

Q110.蕎麦釉によく砂鉄を混ぜますが、あれってどうゆう意味があるのでしょうか?
A110.これは、蕎麦が出やすいから。というのが理由のようです。蕎麦釉のソバは、結晶が鉄で着色されたものですから、元となる結晶が発達しやすいように、核として、粒の大きな鉄砂を入れるという事になります。
 ただ、鉄砂の粒子の大きさをなるべく一定にする、混入する粒の量を留意するなど、混入にはいろいろと面倒だったりもしますし、かならずしも、その条件が整ったからといって、綺麗なソバが発生するとも限りませんから、まぁ、出来るだけ良い条件を釉薬に与えるための気遣いという感じでしょうかね。
 逆に言えば、わざわざ核を入れなくても、調合の仕方や、施釉の方法、温度調節で、ソバを作ることは可能だったりもするわけです。

Q111.クラックについて
A111.クラックというのは、日本語に訳すと難しいんですよね。というか、ピンホール、煎餅、亀裂など、いわゆる食器に際して困った現象を総称してクラックと言っているらしいので、正確な日本語が無いという感じでしょうか。
 日本の場合、西洋のように、欠点は絶対に許さないという完璧主義な部分が薄い(笑)のと、個々の現象に名称を付けて「見所」として楽しんでしまうところがあるので、何が失敗で、何が成功かという線引きがあいまいな事から、クラックに等しい表現というのが無いのではないかと思います。
 この辺は、茶人の功績と言っても良いのでしょう。ただ、日本人も、食器に対する考え方は、西洋の絶対主義に近しくなっているようなので、今後は、クラックという言葉も、わりと理解しやすい言葉になってくるのかも知れませんね。

Q112.釉に於ける鉄の結晶と分相について
A112.一括りに、鉄の結晶と言ってしまうと、かなり語弊があって、正確には以下のように分類されます。
 一つは、釉中に鉄のコロイド(相当粒子)が発生して、それが発達した場合。油滴天目は、このタイプです。
 二つ目は、釉中に発達した結晶の中に、鉄の微粒子が溶け込んだ物。鉄は微粒子として残ったり、結晶を着色させたりします。これは、蕎麦釉のようなタイプ。
 同じ結晶でも、鉄本来の結晶によるものと、釉中に発生した結晶に副次的に鉄が関わる場合の2つがあるわけですね。
 白萩に出る「なまこ紋」という模様は、こうした結晶とは全く別で、釉薬で発生する分相現象というものに起因しています。
 釉薬は大別すると、透明釉、マット釉、乳濁釉の3つになりますが、分相は乳濁釉に発生するメカニズムで、簡単に説明すると、2層形式の釉薬です。乳濁釉は表面に透明釉、その下に0.1μm程度の粒子のある釉の二層に分離しており、その二層の光の屈折差で、白濁を起こすものです。
 で、こうした分相した釉薬を、特に二重掛けなどした場合、釉が流動する際に、その気泡によって均一分散を起こさず、ああしたムラが出来ます。そして、そのムラを維持したまま、釉薬が流下するので、なまこ紋という模様になるわけです。
 じつは、このなまこ紋の模様っていうのが、現在天文学で問題になっている宇宙の大規模構造っていうのと、非常に似た模様で、宇宙の〜については、未だそのシステムが解明されていないらしいんですけれども、意外と、なまこ紋を調べることで、解決のヒントが見つかるのではないかと、私が勝手に思ったりしていたりします。あくまでも、ド素人の勝手な言い分なんですけれどもね。

Q113.還元について
A113.大抵、1250度内外で熔けるように設定された釉薬は、おっしゃる通りに1150度程度で反応は終わりです。極端に言えば、1200度あたりでガスを止めて、ガス抜きしても還元色は出てきます。
 では、還元で焼き抜く事には、何の意味があるのか。というと、大きく分けて2つあります。
 1つは、素地にどれだけの還元をかけるか。という問題です。最近流行の短時間焼成窯の根本的な問題点が実はここにあって、「本格的な還元焼成もできる」という唱い文句は、同時に「本当の還元は出来ない」という事でもあるのですが、そこまでメーカーは言いません。
 つまり、短時間焼成、あるいは1150度以下での還元終了は「釉薬は還元の色になっても、素地の還元がかからない」という事なんですね。
 ご存じのように、焼き物の色は、単なる釉薬の色ではなく、釉薬を透過して見える素地の色(素地の焼き色)や、素地中の金属が、どの程度釉中に流出しているか、というものが非常に重要になってきます。磁器などの場合は、特に、素地がどの程度還元の影響を受けているかで、白色が非常に変化します。
 辰砂は、ガラス化が促進された方が色が強いと言われていますから、当然、素地もガラスかを促進させた方が良いのは言うまでもなく、ガラス化を促進させる為には、高温で焼き抜くか、還元状態を長くして素地や釉中のフラックスで反応を高めるか、というのがポイントになります。
 もう一つの理由は、辰砂独特のもので、銅コロイドを作れるか。という事があります。還元で発色する銅の赤色(鶏血紅や牛血紅とも表現しますが)は、高温で銅がどれだけ小さな粒子になり、また、冷却中にどれだけ銅コロイドが発達するか、という事にかかってきます。還元は、銅そのものの色に関する事だけでなく、粒子の生成にも関係するわけです。
 この粒子の分解過程で、還元を何処までかけておくかは、同時に、粒子をどこまで小さく出来るか、という事であり、仮に粒が粒が大きいままだと、大抵、銅は青や緑色の発色をしてしまいます。辰砂で赤と青のムラができるのは、銅コロイドが生成されていない、あるいは銅コロイドが発達しなかったという事に由縁します。
 もっとも、いくら還元を長くかけても、冷却期に徐冷を怠れば、銅の赤色は出ませんが。
 余談になりますが、還元落としという技法もあって、これは冷却期まで還元をかけるという技法で、銅釉の時に、うまく落とせると、亜鉛のようなメタリックな色を出す事もできます。

Q114.真鍮の使用について
A114.真鍮に関しては、真鍮板をそのまま焼いて、亜鉛の結晶を出すなんていうアートは見たことがありますが、真鍮粉を素地の装飾に利用するというのは、私は知りませんでした。
なので、ちょっとコメント出来ません。ごめんなさい。
 ただ、成分的には亜鉛と銅の合金ですから、おそらく釉裏紅のような赤い色でも出すのではないかと想像しますが、どうでしょうか?亜鉛の方を利用する事は、素地に関しては無いと思うんですけれどもね。
 追伸。沖縄の焼き物に好んで使われるそうです。釉薬に混合して用い、あの綺麗な緑色を出すために使われる。との事です、やはり銅成分を利用するんですね。

Q115.酸化焼成の急激な昇温と焼成時間について

A115.陶芸で使用する窯というのは、登り窯のような近代窯の場合、最大で4%程度。電気やガスなどの現代窯でも、せいぜい6%程度しか、熱を有効に使用できないと言われています。悪い言い方をすると、残った5%程度の熱ですら、焚き手が上手く調節できなければ、ただの熱の無駄使いという事にもなるわけです。
 で、この熱の利用は、当然、窯の構造にあらわれるわけですが、この窯というのが、極めてデリケートで、しかも炎を使用する窯は、わずかな隙間(ミリ単位)の有る無しで、空気の流れが変化し、焼き加減が変化してしまいます。しかも、窯は焚く度に、微量ではありますがダメージを受けていきます。この時、わずかづつ受ける窯のダメージが、ちょっとした改造によって、数回分で受けるダメージを一気に受けてしまう事もあるわけです。
 例えば、改造が原因で、煙道にわずかな亀裂が生じ、それが窯の空気の流れを変えてしまった場合、結構な致命傷になることもまれにあります。灯油やガスの窯は、ドラフトやダンパーなどの構造、いわゆる煙道の穴の大きさの調節で還元をかけますが、数ミリ程度の穴の変化で、窯の還元雰囲気はかなり変わります。まして、どこかに亀裂が入れば、窯の変化は相当なものになるでしょう。そういう意味では、改造は諸刃の剣とも言えるのかもしれません。
 ところで、最近見た窯の広告で「2時間で1250度。1日2回焼けてお得」というものがありました。その窯を買ったという人の話を聞きますと、確かに2時間で昇温するそうで、小さな窯だからという事もありますが、事実らしいです。ただし、必ず作品は素焼きしておくことが前提で、更に、10回に1回くらいは、作品が破損するそうです。まぁ、それでも9回は成功するのだから、と考えれば御の字なのでしょう。
 しかし、注意しなければいけないのは、この昇温はトーストを焼くのと同じで、芯まで焼いているわけではありませんし、全ての土、全ての釉薬で2時間本焼きが出来るという事でもない。という事です。
 ある特定の土、特定の釉薬に限り、それが可能であって、例えば、淡雪のような長石単味の志野釉や、指ではじいた時にキーーンという済んだ音色がするほど焼きしまった磁器は、期待できません。また、昇温は、あくまでも空気温度であって、物質温度では無いことも付け加えておく必要があるでしょう。
 もっとも、そこまでのこだわりがない方の為の窯という解釈も可能だったりするのでしょうが。
 ま、それはそうとして、事実、表面を焼く事に関しては、短時間の焼成は可能であり、どこまで焼くのか、というこだわりが無ければ、現在の技術水準では2時間で1250度の昇温も大丈夫なようです。また、熱効率の更なる改善が出来れば、もっと短時間での焼成も可能なのだそうです。まぁ、短時間焼成に、どれほどの面白みがあるかというと、ちょっと疑問も感じるわけですがね。
 最後になりましたが、1200度を越える温度で何度も焼かなければ、素地は、目に余る程の傷みはありません。ご友人の焚き方は、そういう意味では問題ないのではないかと思います。

Q116焼成時の還元のかかり具合
A116.色味穴から出る炎の事を、「ろうそく」などと表現しますが、ろうそくの立ち方というのは、一定というわけではなく、その窯の大きさや、色味の穴の大きさなどによって、異なります。
 昔、韓国で焼き物をやっていらっしゃる方に、「そんな炎じゃ、還元かからないよ。」と言われて、思いっきりろうそくを立てたらば、先輩から「そんなにしなくても、還元はかかるよ」と言われて困った事があります。結果的には、先輩の言うとおり、思いっきりろうそくを立てても、今までの焼き上がりとあまり変わりませんでした。
 たぶん、釉薬や土の還元がかかる程度には頭打ちがあるので、規定量以上に還元をかけてもしようがないという事なんだと、その時に思いました。
 ただ、窯屋さんに聞くと、還元のかかりが良い状態の時の炎というのは、やはりある程度決まっているそうで、やや青みのある炎の周りに、薄い色のグレーの煤がまとわりついている状態なんだそうです。
 登り窯のようなものは、青い炎というのは、まず出ませんから、あくまでも電気やガスなどの窯の場合だと思いますけれども、その辺を通常の還元の状態として考えれば、それよりも炎が赤く、長さが短ければ弱い還元。炎の根本が透明になるくらいで、長さが長ければ強い還元だと判断できそうですね。

Q117.酸化と還元で、窯はどちらが短命か

A117.基本的には、還元の方が短命です。耐熱性の煉瓦などは、還元の方が傷みが早いからですが、電気の窯に関しては、酸化の方がカンタル線の劣化が早いそうなので、熱線の状態からすると酸化の方が短命とも言えますね。ただし、熱線は張り替えがききますから、そういう意味では、やはり還元の方が短命なのかもしれません。
 知り合いが買ったアメリカ製の窯には、「還元ならば10回程度焚けます。」という注意書きがあったそうで、20万円近く出して、10回しか焚けないっていうのはなぁ・・・とぼやいていました。勿論、酸化ならば、100回程度は焚けるらしいです。
 あとは、(電気窯では当然駄目ですけれども)揮発性の釉薬の使用は、かなり窯の寿命を縮めます。塩釉などのような高温焼成で揮発させるものは、損傷が激しいようですね。しかし、窯の損傷を覚悟しても、塩釉などは、かなり魅力のある色が出るので、その駆け引きは難しいところです。

Q118.素焼きをした器に施釉し、その上から金やプラチナで彩色して本焼き(OF で1250度)したら、金・プラチナ等の彩色は飛んで消え失せてしまうでしょうか?
A118.釉薬の上に金やプラチナで彩色すると、使用する量にもよりますが、発色はしますよ。ただし、高温で焼成した場合、金は「金茶」という赤茶色っぽいものになってしまって、金色にはなりません。
 白金やプラセオジウムの場合は、鈍い銀色やネズミ色に発色し、釉薬に金属が完全に溶け込まずに表面に残っている時には、金属磨きで研磨すると、光沢が戻る場合もあります。
 銀などは、いぶし銀のような感じで面白い効果も出たりするんですが、如何せん、高価なので、私はほとんど使えませんけれども。
 ところで、高温で使うの金は、「本金」、低温で使用する金は「水金」と言います。金の成分そのものは同じですが、水金の場合は、前にも話た通り、ビスマスなどと反応させて、接着出来るように加工しているので金の使用料が少なく、本金は、ほとんど(あるいは完全な)金なので、使用料が多くなります。マロン色、つまり金茶色は、上記の「本金」を使用した発色で、言うところの、「下絵用の含金絵の具」です。

Q119.北大路魯山人の事
A119.魯山人と鎌倉での接点というと、本人の住居と作陶場(および窯場)を兼ね備えた「魯山人窯芸研究所 星岡窯」と、魯山人がコレクションした古陶磁資料館の「古陶磁参考館」が北鎌倉にあります。ちなみに、自邸は「慶雲閣」という名前が付けられていますね。
 約7000坪の敷地面積を有し、美食倶楽部の流れを汲む赤坂の「星岡茶僚」で使用する為の器を、自らが制作する為に作った巨大な施設です。
 陶芸に関しては、魯山人自体、土練りもロクロも、ほとんど出来なかったようなので、下準備、成形は、全て専属または頼んだ陶工に行ってもらい、本人は形の修正や、絵付け、施釉などに従事していたようです。また、星岡窯には、巨大な窯がありますが、これも本人が焼く事はあまり無く、焼き師によって焚かれていました。
 この辺りは、絵付けが陶の命として「陶工は土をこねる事よりも、筆を持って、絵を描く事から始めろ」と言っていた事からも、よく分かりますね。私的には、最高の人材を集め、自らの欠点を人材でカバーし、最高の物を作るという制作姿勢は、それはそれで十分に魅力的であるように思います。

Q120.化粧と釉薬を使用した際に発生する変化
A120.あれは、化粧土に使用されている顔料が、どういったものか。によって変わるんです。
 今回の黒化粧を例にとると、黒化粧には、着色剤として添加している顔料が、黒い顔料(複数の金属の化合物)を使用しているものと、鉄・クロム・コバルトなどを単純に混ぜて撹拌しているものの2種類がありますが、そのどちらのケースも、施釉すると、化粧土と釉薬の接触面で反応を起こします。前者の黒い顔料の場合は、ほぼ高温でも安定しているはずなので(というか、安定させる為に、わざと化合させているんでしょうけれども)、あまり変化がなかったり、化合せずに残った少量のコバルトやクロムの色が表れる程度ですし、後者の場合は、個々の金属が高温で釉薬と反応しますから、かなり複雑な発色になります。
 そのどちらが良いかは、作品を作る人間の好みによるわけですが、どちらにしても釉薬が素地に食いつく時に、反応をするわけですね。
 釉薬は、素地面と表面では、素地面の方が先に熔け出します。炎に当たっている表面の方が、先に熔けるような気がしますけれども、実は素地の成分と反応する方が早いわけですね。
 なので、反応色は、表面から熔け始めた釉薬に、素地の顔料が徐々に溶け込んで発色するわけではなく、素地と釉薬の接触面で、複雑な反応を起こしながら釉薬が熔けていき、面白いな発色や流下現象が生まれる事になるんです。
この辺りは、陶芸の不思議でもあり、楽しい所でもありますね。

Q121.上絵具を下絵具と同じ使い方(つまり、素焼きをして施釉し、上絵具で絵付けをして本焼きする、と言う事)をするような解説をたまに見るんですが、これって有効なんでしょうか?上絵具の性質によっては(高温に耐え得る上絵具によっては)使用出来るって事なんでしょうか?
A121.基本的には可能です。というか、なまじ「上絵」と名前があるから、変に固定観念が働きますけれども、要は、低温釉と顔料の混ざり物です。しかも、使用料が少量ならば、鉛やホウ酸は早期(と言っても900度〜1000度ですけれど)に揮発してしまって、結局は顔料だけが残るという計算になりますし、釉上の顔料が、ある程度熔けてくれると、定着も良く、妙なメタリックの発色をしなくなります。
 私は、下絵具の代わりに上絵具を使用することはありませんが、下絵具をオングレイズで使う時には、石灰系の透明釉で溶くようにしています。ま、似たような考え方なわけですね。
 勿論、ほとんど下の釉薬をコーティングしてしまう程、大量に塗りたくると、ブクを吹いたりしますけれどもね。
 ただし上絵用の顔料には、高温で揮発して発色しないものも複数あります。メーカー側としては、お客さんに文句言われないように、上絵や下絵と設定しているので、かならず発色するとは限りませんね。

Q122.陶芸の入門書の選び方

A122.最近は陶芸ブームという事もあり、小さな本屋さんでも、結構、沢山の陶芸入門書が置かれるようになってきました。
 ただ、所詮、陶芸入門というのは、書くことが決まっているので、ドングリの背比べ的な内容ではありますが、最近のブーム便乗の陶芸入門書には、「おいおい、そりゃまずいだろ」という物が増えてきて、陶芸を教えている人間からすると、ちょっと困った状況も生まれてきています。
 一番の問題は、本の制作に、1人の陶芸家だけが関わっているというものです。本を出版する方からすれば、確かに人件費がかかりませんし、それなりに原稿も早く出来るでしょうから、ブーム便乗の出版には持ってこいという状況なのかもしれません。しかし、ここで注意しなければいけないのは、陶芸家には、得手不得手のジャンルがあるという事です。つまり、ロクロで形を作るのは上手いけれども、施釉のセンスが無いとか、あるいは、手びねりが出来ないとか。逆に、手びねりの仕事が多いので、ロクロを回すと、とんでもなく下手とか。知識も無いとか。まぁ、状況はいろいろです。
 けれども、入門書というからには、とりあえず陶芸の一通りの事は紹介しなければいけないわけで、実は全く得意ではないけれども、何度かやったこともあるし、写真ならば動いているわけではないから、何とかなるだろう。ってな感じで、やっていたりする場合があるわけです。
 お茶で言えば、裏千家の方が「茶入門」とか言って、様々な流派の手前を一人でやって、写真を撮っているような状況ですね。それなりに陶芸を続けている人間が見れば、「あんた、タタラ制作って、やったことないだろ」とか「窯元でロクロの修行しただけで、手びねりやったことないだろ」と突っ込みを入れたくなるよな写真も、結構、たくさんあるわけです。
 もう少しひどいと、あからさまに下手なのに「これが陶芸の味です」などというコメントで、煙に巻いている入門書もあるわけですね。
 まぁ、出版する事そのものは、悪い事では無いわけですが、その本を買って、まじめに陶芸を勉強しようとさえている方にとっては、えらい迷惑な話なわけですし、陶芸を教える方としても、そういった本を持ってきて「ここには、こう書いてあります」と言われると、訂正するのに一苦労だったりもするわけです。
 で、結論なんですが、入門書を買う時には、まず、その本の制作に関わっている陶芸家が何人いるのか。著者が一人であっても、協力とか、監修という形で、何名かの陶芸関係者がたずさわっているのかどうか。という事を、よく見てから入門書を買うように心がけましょう。
 また、一番良いのは、とにかく入門書は片っ端から読んでいく事なんですが、そこまでするのは大変ですから、最低、2〜3冊の入門書は読み比べるようにするのが得策だと思います。
 陶芸家には、それぞれに手癖というものがあって、入門する方は、様々な陶芸家の手癖の中から、一番、自分に合った手癖を探しだすのが、上達するコツと言えなくもありません

Q123.ピンク顔料に色留めに酸化錫を用いたピンク(桃色)釉薬
A123.ピンクというのが、一体、どんなピンク顔料なのかというところがポイントになるようですね。
 陶芸の高温で使用するピンク(あるいは紅)系の顔料は、大別すると、含金マロン(正円子)タイプ、燐酸マンガンアルミナ(陶試紅)タイプ、クロムアルミナ(ピンク)タイプ、クロム錫(濃ピンク)タイプなどがあり、それぞれに性質が異なるので、使用する基礎釉が、結構、シビアに規定されています。
 単純に、錫を用いれば色止めになるというわけではなく、錫どういった用途で使っているかという事を推測しなければなりません。
 釉を珪酸質にするためか、あるいは、混濁用原料として用い、それにピンク顔料で着色させて発色を良くさせる為なのか等、いろいろとありますね。使用量や基礎釉調合割合が分からないので、この場合は、どういった用途で色止めになっているのか、見当が付きませんけれども。
 ところで、高温で使用する正円子は、カシアス紫に、硅石やアルミナを化合させて作ったものですね。ここで使用しているカシアス紫というのは、ご存じだと思いますが、王水に金を溶かしたものと、錫を溶かしたものとを反応させて作っています。つまり、元来の顔料に錫は入っていますし、過剰に錫を投入しても、色止めとしての効果が期待できるかどうかは、少々、疑問のような気がします。
 ただ、顔料には、ほぼ必ずと言ってよいのでしょうが、残留した元素があって、反応しきれずに孤独になっていたりするものがありますから、そういうものと、錫を反応させようという事なのかもしれませんが。(勿論、目に見える程の効果があるかどうかは、分かりません。)
 それから、ストロンチウムは、石灰と一緒に使用すると、非常に使い勝手の良い原料なんですが、素地を選ぶという悪い癖も持っています。お話からかなり珪酸質の釉薬と判断できるので、素地が信楽土のような陶質の場合、釉切れや、釉縮れなどの現象が起きやすくなります。出来れば、1:10よりも、1:7程度あたりの陶質の石灰釉でご使用になった方が、良いかもしれません。

Q124.陶磁器が生の状態の時に、輸送を行わなければならない場合
A124.完全に乾燥させた状態よりも、七分乾き(固いけれども、まだ触ると冷たい位)程度の状態で運ぶ方が、丈夫なんですよ。仮に、多少、壊れても、まだドベや水で接着したり、修正したりが可能ですからね。
 私も、やむを得ず宅配便で送らなければならない場合は、七分乾きの状態で、新聞紙とパッキンでがっちり固定して送ったりする時がありますが、大抵、壊れずに届いているようです。(夏は、輸送中に乾燥してしまうので、気持ち早めに箱詰めしますけれども)

Q125.亀裂が入る原因
A125.口元に亀裂が入る場合
→口に水回りが起こって、口の締めが悪くなっている事が原因。あるいは、湿台の受けが口に近すぎる事が原因。
 腰に亀裂が入る場合
→水切れが起こっている。ロクロで水を使いすぎている事が原因。または、最後に余分な水を取らずに乾燥させている事が原因。
 高台裏に亀裂が入る(大抵、S字の切れ)
→底の土締めが悪い上に、水が多ぎる。または、器に水を貯めた状態で、乾燥させてしまっている。あるいは、底が厚すぎ。もっときちんと削りましょう。
 上記は、焼成前に、すでに亀裂が入っている(それに気づいているかどうかは別問題ですけれど。)状態です。
 窯出しをした時には、亀裂が分からなかったけれども、使っているうちに亀裂が目立つようになる場合
→土と釉薬の相性が悪い。半磁〜磁器土に3号釉などを施釉すると、シバリング現象が起こる事があります。あるいは、単純な冷め割れ。窯出しが早すぎる。
 これは、焼成中(冷却中)または焼成後に亀裂が入るものです。窯出しした時に、軽く指で器を弾いてみて、キンキンという澄んだ音がするのに、しばらくするとコッコッという音に変わってしまった場合は、上記の事が原因です。粘土の記憶現象に関しては、確か、土に残留している空気の話で出たものだと思いますが、あれは、あくまでも空気が入りやすいという事で、亀裂が生じるものとは関係ありません。というか、菊練りの癖を抜く為に、ロクロの場合は土殺しという作業を行いますよね。土殺しが、しっかり出来ていれば、菊練り時の巻き癖は、残りませんし、逆に言えば、その為の土殺しですからね。巻き癖が残っていては困るわけです。
 ちなみに、挽いた時の挽き癖というものもあって、これは、焼成時に歪みの原因となるものです。広口の場合は、口の歪み、鶴首などの場合は、首の歪みという形で出てきます。もっとも、挽き癖のほとんどは、高台がしっかり削れていない事からくる歪みと勘違いされる事が多いんですけれどもね。
 ところで板ものの場合、確かに、菊練りの悪さ(というか、菊練りをした後の、まとめ方の悪さ)が原因となる事も多いですね。特に、磁器や半磁器土は、土(磁器の場合は石ですが)自体の粘りが少ないですから、まとめ方が悪いと、一発でヒビが入ります。
 ただし、まとめが良くても、釉薬と相性が悪くて、亀裂が入ることも、少なくありません。

Q126.土殺しと水引での勘違い
A126.形だけ見ていると、無理して引っ張り上げるような事をすれば良いように見えますが、本当は、「土を締める、練り癖を取る、土芯を出す」など、様々な土台作りをいっぺんに行う事なので、引っ張るのではなく、土を中心に向けて押すという行為が中心となります。
 土殺しが良い状態のものと、悪い状態のものでは、挽き易さが雲泥の差となりますし、挽き癖の回避にも通じますから、土台作りは大切なわけです。挽き癖というのは、基本的に、土に無理をかける事で生じるものです。無理をかける要因は、いろいろあるのですが、代表的なものとしては、
・土を無理に引く(挽くではありません)感じで形を作っている
・水の使い方が悪い
 の2点があります。
 前者は、おおむね土に無理をかけているという事で、伸ばしたバネが戻るように、土は、無理な部分は自己修正して何とか形を保とうとします。この結果が、歪みという現象で表れてきます。
 土には、それぞれに無理が利く度合いというものがあって、どんな土でも同じような挽き方が出来るわけではありません。この土は、かなり無理をしても良いけれど、この土は、無理をすればすぐに亀裂が入ったり、乾燥中に歪みを生じたりする、など個人差のように、個土差というものがあ、その個土差によって、挽く技法は、微妙に変化させなければいけません。
 産地の作家というのは、大抵、自分に合った土をブレンドして使うとか、郷土の土しか使わないなど、いわゆる使用する土の種類が少ない状態なので、1つの技法に固着しており、その技法だけでロクロが出来るような内容の入門書を書きがちです。
 しかし、それを真に受けて、どんな土でも同じような挽き方をしてしまうと、後々、とんでもない事になる場合もあるので、この辺りは、もう少し、きちんと説明する入門書が出て欲しいものです。
 後者の水の使い方が悪いというのは、多すぎる弊害もありますが、逆に、少なすぎる弊害というものもあります。
 まだ、ロクロに慣れていなくて、肩に力が入っていたり、挽きに時間がかかり過ぎてたりすると、どうしても、水が少なくなって土と指に、強い摩擦が生じていることを忘れがちです。水は多すぎると困りますが、潤滑剤として機能するだけの十分な水は必要なわけですね。
 あ、そうそう。忘れていましたが、しっぴきで土を切った時に、切り口が斜めだったり、とにかく水平に切れていないと、間違いなく歪みます。当たり前ですが。変に切れてしまった時には、慌てずに、もう一度、その下を切って、そのまま移動するようにして下さい。

Q127.絵の具に混ぜる油について
A127.テレピン(松油)やペトロール(石油)、ラベンダーなどは揮発性油、リンシード(亜麻仁油)やポピー(ケシ油)などは乾性油と言って、性質が異なります。
 油絵では、この2種の油の調合や使い方がポイントになるのですが、陶芸でも、これらの使い方はポイントになります。揮発性油は固着力よりも乾燥速度を重要視する場合、乾性油は乾燥速度よりも固着力を重要視する場合に使用します。
 簡単に言うと、揮発性油は硬化を早くする時に、乾性油は硬化を遅くする時に使うわけですね。金彩などは、元から乾性油が入っていますので、通常は揮発性油で調節するという使用法をしますが、通常の洋絵の具には乾性油は使用されていないので、揮発性油だけを使用すると、固着力が弱くなったり、扱いづらくなったりします。そこで、乾性油を入れるわけですが、調合が面倒なので、私の場合、最初から混合してあるペインティングオイルを使っているわけです。
 私も、全てのペインティングオイルを使ったわけではないので、「これが一番」という事は言えないのですが、昔からマツダをひいきしているので、いまだにマツダのペインティングオイルを使っています。ただ、ホルベインはちょっと安いので、お金が無いとホルベインを買う時もあるんですけれどもね。
 ペインティングオイルを買う際に、注意するのは、揮発性油としてテレピンを使っているか、ペトロールを使っているかという事です。ペトロールは非常に希釈力が強いので、私はテレピン入りのものを買うようにしていますが、この辺りは好みもあるでしょうかね。
 それから、最近のテレピンが透明なのは、主成分が少ないのではなくて、蒸留の精度が上がったためと、紫外線による色素分解などが行われているためです。(成分そのものは、増えたり減ったりしていないんですよ。
 で、テレピンの成分の多くは、αピネンというものですが、もし更に精度が高いテレピンが欲しい場合には、「αピネン」というそのものズバリを売っていますので、それを購入してみてください。
 ただ、陶芸の場合、あまり油の精度は関係ないので(焼いちゃうし)、違いは無いんですけれども、描いている時の筆の運びの感じは、ちょっと違います。

Q128.陶磁器の汚れ落としについて
A128.釉薬や土は、まれに感光したように、変色する場合があります。空気中の硫素などと反応して黄変する事が多いので、汚れと勘違いするんですが、この場合は、科学的反応なので、汚れとは違うものですから手の打ちようはありません。
 で、本題に戻って「奥の手」の紹介なんですけれども、
 その1は、ベンジンやシンナーなどの有機溶剤で汚れを溶かす。というものです。もし、マニキュアの除光液(なるべくマニキュアを落とすだけの溶剤しか入っていない安いもの)をお持ちならば、それでも構いません。ティッシュなどでコーティングし、そこに、有機溶剤を掛けて、湿布のような感じにし、汚れに浸透するまで置いてから、拭き取って洗います。油は石鹸に溶けますから、器は石鹸で十分に洗って下さい。
 それでも落ちない時は、その2。耐水性のサンドペーパー(紙ヤスリ)で、汚れを削り取る。という事も出来ます。但し、使用するヤスリは1500番〜2000番程度の目の細かいものを使用し、更に、強く擦らず、石鹸水を付けてなでるように擦ります。一気に擦ると、表面の釉薬を傷つけて、腐食性を高める事がありますから、注意が必要です。
 それでも落ちなければ、たぶん、それは汚れではないと思うのですが、どうしても何とかしたいという場合は、リーサルウェポン。900度〜1000度の温度で、窯で焼く。上絵を使っている場合は、もう少し低い温度なんですが、この程度ならば、釉薬の色や熔け具合に影響をあたえず、汚れだけを燃やす事ができます。自由の利く窯を持っていらっしゃる(あるいは、友人に頼める)場合は、この方法が一番楽ですけれどもね。ただし、素焼きの窯に入れると、水蒸気の膜を張ってしまって、余計に汚くなる事もありますから、十分に乾燥させた窯で、できれば、その作品だけを焼きたいものです。
 ということで、以上の3つが、私の知る限りの最終手段です。上記3つを試してもダメな場合は、素地の汚れで、器表面の問題ではありませんから、その時は、「味」だと思って諦めて下さい。

Q129.ピンホールについて
A129.釉表面に表れている針でつちたような小さいデコボコは、ピンホールと言って大抵の場合、キメが粗い土を使ったり、焼成中にガスの発生しやすい釉薬を調合して、焼きが弱い時に表れるものです。
 ちなみに、釉薬はガスの泡が発生することで味が出ますから、完全に泡を抜いてしまうと、陶器の面白さというのは無くなってしまうわけで、ガスの発生は両刃の剣という感じもありますね。
 ということで、質が悪いというよりは、ピンホールは必然的に発生するものなので、まぁ、仕方が無いとも言えるかもしれません。もっとも、もう少し高い温度で焼き抜いて、釉薬を溶かしてやれば、表面のピンホールを減らす事はできますので、そういう意味では最後の詰めがあまいと言うことは出来無くもないんですが。

Q130.天目の釉だれについて
A130.釉薬が垂れて盛り上がっているのは、施釉後に上向きにしているからではなくて、単純に、焼成中の流下現象によるものです。この事は、油滴天目や禾目天目茶碗などの結晶流下跡で、非常によく分かると思います。
 では、何故、釉薬が流下するのかという事ですが、これには2つの理由があり、1つは釉中にある鉄の影響で、釉薬の軟化が進んで腰に溜まったもの。もう1つは、腰の部分の素地がかなり厚くなっている為に、釉薬が厚く掛かってしまったことによるものです。
 釉薬は施釉の際に、素地の厚さ(=吸水力)に依存するので、口辺よりもずっと素地が厚くなっている腰の部分に多く付き、熔けて、あのように溜まるわけです。
 もっとも、結果的に釉薬が厚く掛かってしまったというよりは、油滴や禾目のような結晶(いわゆる模様)を出す為に、意図的に厚く施釉しているのでしょうが。

Q131.天目茶碗の覆輪について
A131.「天目茶碗の覆輪は、毒が金属と反応するから毒殺防止の為塗られているなどともっともらしく言われたりしているが、本当は茶碗を伏せて焼いたので、焼き上がった時のざらざらを補修する為に塗られたのだと」の説明もあります。確かにそうゆうものもあったかもしれませんが
多くは違う理由からと思われます。
 天目茶碗は、その殆どが鉄分の多い陶土を使っていますが、これは上記の鉄の所でお話したとおり、ガラスの軟化を促進させますので、釉薬が熔けやすくなると同時に、器の素地そのものの変形率も高めます。天目茶碗は、特に高台が小さくなっているため、腰の部分に重量がかかり、口の歪みが大きくなります。
 そこで、この歪みを緩和するために、伏せて焼いたのではないかと、考える事ができるわけです。鼈口(すっぽんぐち)と呼ばれる独特の形態も、伏せて焼いた際の釉の流下を防ぐ為だと言われたりもしています。
 しかし、本で見られる写真の多くは、釉薬の流下方向や、不自然に土見(高台近辺の無釉の部分)が大きい事からも、伏せて焼いたものでは無い事が分かりますし、口の金も、もし、無釉部分に付けたとしたらば、あれほどの光沢は、まず出ません。
 では、何故、このような事になっているかという話ですが、名品と呼ばれる茶碗の多くは、伏せて焼いていた天目茶碗の様式を受け継いでいるからだと考える事ができます。口の金も、そうした様式の継承と考えると分かりやすいでしょう。
 天目茶碗には、伏せて焼いたと思われるものも多く、実際に伏せて焼いた事が分かるものも少なくないようです。(私が実際に確かめたわけではないので、断定は出来ないんですが)

 中国へ旅行した私の友人は、現地でないがしろにされている天目茶碗を見て、なるほど、伏せて焼いたというのは、本当らしい。と言っていました。友人が察するところでは、伏せて焼いたような茶碗は、未完成品として、あまり日本には持ち込まれなかったのではないか、ということです。
 天目茶碗は、中国から渡り、やがて日本でも数多く作られるようになりますが、やはり、その多くは様式を継承した形で、実際に伏せて焼いたりしたものは、ほとんど見かけませんね。
 ですのでほとんどの覆輪は焼きあがった天目茶碗の口辺が薄く、欠けやすいため補強と継承的な装飾のためにつけられたとするのが妥当ではないでしょうか。

Q132.伏せ焼きについて
A132.別名を「被せ焼き」といって、サヤが発明されるまでは、この焼き方が多く行われていたようです。
 現在でも、昔の西洋の薄手のティーカップなどでは、明らかに伏せ焼きだと分かるものを見ることができます。焼成後に、口辺部分にサンドペーパーなどをかけてなめらかにした後、金彩を施しますが、よく見ると、サンドペーパーを掛けた部分の光沢感が異なるので、観察してみて下さい。特に、西洋のものは、厚く金を施していないので(あくまでも、私が見たものは、厚くなかったんですが)、分かりやすいと思います。
 また、伏せ焼きとはちょっと違いますけれども、東南アジアの野焼きなどでは、いまでも器は伏せて焼いていますね。
 それから、口辺部の釉は、筆で塗る場合と、皿の上に釉薬を入れて口だけ浸ける場合がありますけれども、大抵は、筆で塗ります。
 口を浸ける方法だと、どうしても器を持ち上げる時に、気圧差で内側の輪郭線が汚くなったり、釉溜まりが生じやすくなりますからね。

Q133.天目の鼈口(すっぽんぐち)について
A133.この鼈口は飲むときに一度お茶をためておいてすする為に都合がよいように作られている。と普通は書いてあったりしますよね。でも、もしかしたら、口が変形しないためにも役に立っているかもしれません。
 天目茶碗の口については、外見は確かに鼈口でも、じつは、内側を見ると、あまり鼈状態になっていないというのもあって(極端に言うと、単に外側にへこみを付けただけ(笑))、こうなると、単に口を薄く仕上げたいがために、口辺部分の土を持ち上げた結果、ああいう形になったのか、それとも、やはり単なる装飾的効果なのかなぁなどと思ったりもしますね。
 元来、天目茶碗は肉厚な器ですし、削りであの形状を生み出していますから、変形等も起こりにくいような気もします。また、はるばる福建省の建窯あたりまで行って、天目茶碗を研究してきたという友人も、本当に伏せて焼いた器の方が古いものかどうかは、私が話を聞く限り、はっきり結論づけていないことから、必ずしも伏せて焼いた器→正方向の器という流れがあるかどうかも、私としては疑問に思います。むしろ、茶碗を効率的に焼く為に、互い違いに器を入れた結果、伏せたものと、正方向のものが出来てしまったのではないかという事も考えられなくもありません。
 金などは、その両方の器をなるべく同じものにするために使ったと考えると、つじつまは合いそうな気がしませんか?
 というわけで、天目茶碗について確実に言える事は、伏せたものと正方向の2つの焼き方があって、日本で見るものは、ほとんど正方向での焼き方をしている。という事ですね。
 最後になりますが、口が変形しないための鼈口というのは、私も同感です。ロクロで器を作る際、口辺を広げるのに、なるべく土に無理を掛けないようにと考えると(結果的に、焼成の際に変形しないようにする配慮となりますが)、あの形状は、一つの結論だと思います。
 かなり粘りの悪い土を無理に腰から開いていって、ヒビが入らない臨界点を探ろうとする時の形態は、確かに、天目茶碗の形態に酷似しているような気もします。
 あっ、そうそう。思い出しましたが、実際に伏せて焼いたものが母体かどうかは分かりませんけれども、歴史的に見て、伏せ焼きが先にあったことは間違いないですし、昔から、流下して溜まりが出来るほど厚く施釉をしていたとは限りませんから、もしかしたら、天目茶碗の母体は、黒くなる鉄釉を掛けて伏せ焼きしていたというのも、想像に難しくは無いと思いますし、そういう目で見れば、伏せ焼きした天目形の茶碗は、母体と確信する事も分かるような気がします。
 ちなみに、友人が拾ってきた(ホントに拾ったかどうかは知りませんが)という天目茶碗らしき器の破片の口辺は、施釉した形跡がなかったように思います。流れたものをヤスリ代わりになるような道具で削ったのか、それとも最初から施釉していなかったのかは、判断出来ませんでしたけれども。

Q134.足つき皿の形がへたる理由
A134.大別して3つの要因があって、
1,土の締め方が悪い
2,本体と足のバランスが悪い
3,使用している土に対して、焼成温度が適切でない
 となります。伏せ焼きは、上記の2番の打開策として使用されるものです。もし、1および3番の問題は解決している段階ならば、三平さんの伏せ焼きの方法は、非常に有効な手段ですし、やり方も合っています。ただし、特に3番に問題があるということになると、伏せ焼きをした時、今度は中央部が落ちるという現象が起こります。
 これは、皿としては致命傷で、何しろ物が乗りません。その場合は焼成の設定温度を低くするか、耐火温度の高い土をブレンドする(または、違う土を使用する)などの処置を行うという事になるでしょう。また、どうしても、土を変えたくないし、温度も変えたくないという事であれば、メ土(とめつち)を使用するという手もあります。
 メ土は、高温で焼き締まらない土で作った円錐形で(先を鋭利にするのは、作品に跡が残らないようにするため)、これを、皿の落ちそうな場所に立てて、へたりを防止するわけです。
 最近では、加工済みのメ土も売っていますので、それを買うのも手かもしれません。(結構、高価ですが)
 更に、メ土を装飾的に使用したいということであれば、貝メ(かいどめ)という方法もあります。アサリなどの、やや厚みのある貝の中に土を入れ、その貝の上に作品を置きます。貝はカルシウムなので、焼成でも熔けず、また、焼成後も、簡単に除去する事ができ、除去後の跡も貝の形が美しいというシロモノです。今でも、流下しやすい作品の高台などには、貝メが使用されていますね。
 ただ、メ土にしても、貝メにしても、跡が残りますから、まったく跡が残らないようにするには、最初から、へたる率を計算して、それに見合った形を作っておくなどの方法をとる事になりますけれども、これは、かなり面倒なんですよね。

Q135.黄瀬戸にタンパン(丹礬)の話
A135.タンパンというのは、硫酸第二銅の別称で、これは基本的に水溶性です。つまり、水に溶けてイオン化しやすい金属で、水溶液は非常に綺麗なマリンブルーの色をしています。
 硫酸銅(タンパン)は、1250度程度ですと、鉄のように強いフラックスにはなりませんし、3割程度は揮発しますから、塩化鉄のように、素地をボロボロにするという事はありません。
 黄瀬戸の抹茶茶碗で、抜けタンパンという茶人が喜ぶ装飾(?)がありますが、あれは、表に塗ったタンパンが、素地に浸みて内側まで到達したものです。
 しかし、抜けタンパンを作るのはかなり難しく、多量に使えば、確かに抜けるんですが、表面に銅の結晶が析出してメタリックになり、淡い緑色にはならないので、いまでも、抜けタンパンは貴重品となっています。
 つまり、それくらい、タンパンは素地に浸透しにくいわけですね。
 さて、このタンパンが、素地を透過するには、いくつかの条件があり、それを全てクリアーすると、抜けタンパンが発生します。まず、素地に十分、タンパンが浸透している状態でなければならない。という条件が必要です。水に溶かしたタンパンを筆で素地に付けると、すぐに浸透して拡散します。しかし、、浸透させる量が多いと、美しいブルーグリーンのあの色ではなく、黒緑色の酸化第二銅そのものの色になってしまうので、適度な量、適度な浸透性でタンパンが素地を透過させなければいけません。また、タンパンは、空気中で徐々に風化しますので、浸透を強くさせようとして長期放置させると、逆に、色が無くなってしまう場合もあります。
 次に、確実に発色する銅を残留させるという条件があります。銅は、陶芸で使用する発色金属の中では、揮発力が強く、かなり早い段階で何割かが揮発します。あぶらげ手の黄瀬戸を作るためには、ウオラストナイトという結晶を作る為の1100度相当を必要とするのですが、この温度域の窯調節が非常に難しく、ちょっと温度が高くなると、すぐに結晶が消失して、光沢のある釉薬に変わり、変化した釉薬は銅を溶かし込んで拡散させてしまいます。そして、更に、銅は揮発して、銅の色が弱くなります。
 最後が素地の性質と、器の厚みです。強く焼き締まらず、かつ、あぶらげ手の釉薬と相性の良い土で、適度に水溶液を吸収して拡散させない。これは、現代のようなマシーン生産式の均質な土ではダメで、適度に不純物の残留したものが良いと言われています。また、こうした性質を熟知したうえで、タンパンの浸透性を考慮し、最良の素地の厚みを作れる職人技というものが必要になるわけです 

Q136.珪酸鉄の話
A136.天然の珪酸鉄というのは聞いたことが無いので、たぶん、自然界には純粋な珪酸鉄結晶のような形では、ほとんど存在しないのではないかと思います。
 珪灰鉄鉱という黒い鉄の結晶はありますけれどもね。それを釉薬に使っているというのは、あまり聞きませんね。
 ちなみに、珪酸鉄は、酸化鉄と硅石を混合し、SK11番相当で焼成したものを粉砕して作ります。
 ところで、珪酸鉄を、青磁によく利用するのは、反応性が高いためです。
 弁柄のように酸素と結びついていないので、還元の際にイオン化しやすいとい事らしいのですが、私が今までに作った青磁だと、じつは珪酸鉄よりも鬼板土の方が色が綺麗だったりします。
 青磁は、鉄の色以上に、釉薬に残留する泡の量がポイントで、鬼板土を使うと、不純物が多い分(燐酸カルシウムとか入っているのかな?)、泡が増えて青みに深さがでます。ま、この辺りは好みの問題もあるでしょうが。

Q137.土を叩き・締め・殺す話
A137.土は、粘土は同一物質の結晶のように考えられがちなのですが、実際には、未分解のいろいろな鉱物の複合体です。理論上はアルミニウムと珪酸(ガラスね)の結晶で出来ており、その結晶を結ぶのが物理水です。更に、このアルミと珪酸と物理水で出来た粒子と粒子を自由に動かす為に、潤滑剤としての水が存在しています。
 ところで、特に、信楽や瀬戸などでは、原土にいろいろな鉱物を混ぜて、土の安定度を高めていますから、肉眼で見ても、いろいろな鉱物を見ることができますね。
 拡大してみるとガラスの破片のような粒子が見られます。これは「雲母」という鉱物で、成分の殆どが珪酸です。そのまわりの小さい粒が粘土で、これが珪酸とアルミの化合物ですね。雲母は耐火度が高いので、焼成後も、キラキラとした粒で土の中に残留します。なので、焼成後の器の無釉の部分をよく見ると、きっと雲母が見えますよ。
 組成の進んだ土の場合は、この雲母が分解して細かくなり、更に粘度の組成になっていきます
 さて、土を焼くという行為は、分かりやすく言うと、余分な水を高温で完全に除去して、純粋な珪酸とアルミの固まりを作るというものです。
 もっとも、こうした粒子は極めて小さいもので、実際に、人間の素手で、どうこうなるものではありません。しかし、粒子レベルまで考えなくても、土には粘り気というものがあり、この粘り気の不均一さが土の密度を変化させ、土の癖というものを生み出します。この時の、土の粘りの不均一を無くす為の方法が、「殺す」や「締める」というものです。
 実際には、
「土を殺す」:菊練り等で出来た粘りの不均一を、作陶の際の邪魔にならないように均一化すること
「土を締める」:土の密着性を高め、水分量の不均一によって生まれる土の粘りの不均一を無くすこととなります。
 「土殺し」は、大抵、ロクロの際に用いられる言葉で、菊練りで出来た土癖を、ロクロの求芯力を利用して無くす事で、これがしっかりと出来ていないと、グネングネンとした縒りが出来て、ロクロが上手く挽けませんし、乾燥時に歪みが助長されます。
 「土を締める」は、紐作りやタタラ作りの際に用いられる言葉で、紐を積んだり、板を接着した後に、更に土の密着度を高めることです。叩き締めや、寄せ締めなどがあり、締めが悪いと乾燥中の亀裂や焼成中の歪みが起こりやすくなります。
 よく、陶芸入門書で、土を輪にして乗せていき、土の表面をヘラなどでなでて、それなりの形を作る技法が紹介されていますが、ぐい飲みや湯飲み程度ならばまだしも、少し大きなものになると、土を締めていませんから、乾燥中にヘタったり、焼成で亀裂が入ったりという弊害が起こってきます。この弊害をカモフラージュするために、一心不乱にカンナで土を削って、形を作り、それでも生じる歪みを「味」などという言葉でうやむやにしている場合が多いのは、作り手の側からすると、非常に悲しいものがありますね。

Q138.曜変天目は現代でもつくることが出来るのでしょうか
A138.黒い地に、青白い暈が表れた静嘉堂文庫の曜変天目は、まさに幽玄を表す魅力ある器ですね。
 で、ご質問の件ですが、結論から申しますと、現代でも作ることは可能です。ただし、その制作のプロセスが未だに確定されておらず、世界に3つしか存在しないと言われる曜変天目を再現することは、現代においても、いまだ不可能と考えられています。
 似たような曜変を作る事自体は、何度か成功しているという話は聞いたことがあります。実際に、見たことは無いので、本当に似ているのかどうかは知りませんが。
 しかし、曜変天目が何故、あのような発色をしているかという事そのものは、すでに解明されていて、ああいう泡の文様が無い状態ならば、同様の色を作り出す事だけは、比較的簡単に作る事ができます。
 詳細は、科学的な話で難しくなるので省略しますが、簡単に言うと、鉄釉と、分相現象が起こる白い釉薬との複合技で、あの青白い発色が発生します。釉薬が熔けた時に発砲し、その泡のまわりに、鉄と分相との複合技が生じることで、あの模様が出来るわけですが、その現象が起こるには、卵を10個、縦に積むくらいの偶然性のあるプロセスらしいので、それを意図的に行うのは、やはり、至難の業という事なのでしょう。
 ただ、偶然に起こるものというのは、絶対に起こらないという訳ではなく、また、現に、そうしたプロセスで出来上がった曜変天目が、世界には3つもあるわけですから、4つめの曜変天目が出来る可能性は、十分にあるわけです。
 もしかしたら、たまたま作った器に、そうした曜変が出てくるという夢も、全くの夢では無いわけですね。

Q139.建盞天目(けんさんてんもく)について
A139.建盞天目(けんさんてんもく)というのは、中国の建窯で焼かれた鉄分の多い土を使った天目形の茶碗の総称(っていうのかな?)で、その中に、曜変、油滴、禾目などの天目茶碗があるわけです。ですから建盞天目には、藁灰のかかっているものもあるわけですが、ほとんど掛かって無いと思いますけれどもね。
 もっとも、天目茶碗という大括りの分類自体は、昭和初期に出来たものらしいのですが。

Q140.灰釉について
A140.、「灰釉」というのは、釉薬(陶芸で使うコーティング用ガラス)の原料の中に灰を使っているものの総称で、使用する灰は非常に種類が豊富です。
 灰は、大きく分類すると、「ガラスを熔かしやすくする灰」と「ガラスを熔けにくくする灰」の2つがあり、前者の代表的なものは、土灰(かまどの灰の略。いろいろな樹木の混合灰)、松灰、柞灰などがあり、後者の代表的なものが、藁灰や籾灰です。
 前者・後者どちらの灰を使用しても、名称は「灰釉」になります。また、陶芸では、灰を「原料灰」と「自然灰(あるいは自然降灰)」の2つに
分類していて、成分的には同じものですが、「原料灰」は、あらかじめ釉薬として器に塗ってある灰、「自然灰」は、窯の燃料として使った樹木の燃えカスが炎に煽られて窯の中を舞い、器に降った灰です。
 古い信楽の壺や、備前焼きに登場する器についた釉薬が、自然灰の効果によるものですね。

Q141.灰被天目について
A141.灰被天目というのは、原料灰で調合した釉薬(これが黒釉だったり、黄釉だったりするわけです)を掛けた器に、さらに自然灰が着いたもので、複合技です。だから、灰被りと呼ぶわけですね。

Q142.除鉄(脱鉄)の方法
A142.10%の塩酸で撹拌混和、沈澱物が溜まるのを待って上澄み液を捨てて、沈澱物を使用する

Q143.下絵具が期待通りの発色を行わないという問題
A143.大抵は、メーカーと使用者とが異なる条件で焼成した場合に生じる問題のようですから、一番簡単なのは、開発メーカーの人に、下絵具の使用状況を見てもらう事なんですが、メーカーも、そう簡単には来てくれませんから、自分たちで調整をしなければなりません。
 初歩的な事で見落とされる場合が多いのですが、純粋金属にしろ、スピネルにしろ、下絵具は全て、釉中に顔料が溶け込んで発色しています。釉を透過して下の顔料の色が見えるわけではないということですね。従って、下絵具使用の際には釉薬とのバランスが重要になり
1,釉中に溶けて発色するのに十分な量を使用しており
2,釉薬が顔料を溶かし込むだけ十分に溶けている
3,ただし、顔料が揮発しない程度の温度で
4,かつ、顔料と反応しない性質の釉薬であること
という条件を全てクリアーしていないと、期待通りの発色を行わない場合が多くなります。
 このうち、最も簡単なのは調整は、下絵具の使用量と、温度の設定。下絵具が発色量に達しない場合には、当然、色が出なかったり、違う色が出る事があります。特に、使用量が少ない場合には、期待通りの発色を起こしません。また温度については、メーカーによっては、磁器下絵具(1230〜1250度まで発色変化無し)や半磁器下絵具(1230度程度まで発色変化なし)という名称を使用している場合もありますが、とにかく、メーカーが設定した設定温度の熱カロリーを与えなければ、色がでるというわけです。当然ですが、高すぎたりすると「色飛び」といって顔料の色が無くなってしまいます。
 使用量と焼成温度が適切でありながら、色が出ない場合に考えなければいけないのが、釉薬と下絵具との相性です。
 下絵具と呼ばれるものには幾つかの種類があり、大別すると、純粋金属系顔料とスピネル系顔料に分ける事ができます。
 弁柄などのように、成分の殆どが酸化第二鉄の場合は純粋金属系。ピーコックグリーンのように幾つかの金属を加熱反応させて作ったものがスピネル系となります。
 純粋金属に比べ、スピネルの場合には、顔料そのものに各々の性質というものがあり、使用の際には、その性質を考慮して使用しなければなりません。
 大抵の場合、購入したメーカーが扱っている3号釉(長石石灰透明釉)を規定の厚み(大抵はハガキ1枚弱の厚みが基準)で施釉すれば、期待通りの発色とをするようになっていますので、スピネルの性質まで考慮する必要は無いと思いますが、自分で釉薬を調合したり、施釉量が多すぎたりすると、性質の相違が起こって、発色が変わったり、色が出なくなったりします。
 陶試紅やピーコックは、この手の有名な下絵具ですね。私も、自分で釉薬を調合して、下絵具との相性が悪い事は少なくありません。
 Aの下絵具は発色するのに、Bの下絵具は発色しないとか、逆の場合も多々あります。
 とかく、下絵具はお手軽に考えがちなのですが、思い通りに焼き上げようとすると、意外にデリケートな材質なわけですね。特に、チューブ式ではなく、粉のものを扱う時には、注意が必要になります。
 御存知だとは思いますが、粉の下絵具を使用する場合には、上に掛ける釉薬で下絵具を溶いて使うと、定着が良く、反応もしやすくなります。
 ちなみに、緑の下絵具を使って、透明釉を掛けたものを還元で焼いて、それでも緑が出ない場合は、間違いなく絵の具の塗り方が薄いと言うことはいえるでしょう。
 高温下絵具の緑は、クロムという金属を使っており、クロムは還元の場合に、非常に着色力が強くなります。安定性も高いので、1300度まで出さない限りは、変色は起こさないはずです。(市販の透明釉を使用している場合に限りますが)

Q144.スピネル顔料について
A144.下絵具や上絵具、あるいは、色釉に添加される着色用の色の粉には、着色用純粋金属と、スピネル顔料があります。
 このうち、スピネル顔料(正確には、顔料の全てがスピネル状態になっているわけではないんですが、何故か、総称してスピネルと言われています)は、略して「顔料」と呼ばれ、様々な色のものが売られています。
 この顔料は、基本的に、亜鉛やアルミなどの金属と、コバルトやクロムなどの着色金属とを高熱反応させて、高温でも安定するように作った人工着色剤です。これら顔料の主なものは、大体、5種類くらいに分類できるとされていますが、全ての顔料が、常に高温でも反応しない安定性を保っているかというと、実は、そうでもありません。
 というのは、単味で焼いた場合には、確かに顔料は変色や分解を起こさず、非常に安定はしているのですが、陶芸の場合、顔料は素地や釉薬と接しているので、この2つの物質と反応を起こし、安定性を失う場合が多々あるわけですね。
 素地、釉薬の両方と安定した状態が得られて、初めて顔料は発色良好となるわけです。
 そこで、「下絵具に相性の良い釉薬」には、複数の種類があげられる事に成ってきます。
 昔は顔料の数も少なく、赤茶や陶試紅と言えば亜鉛釉、ピーコックと言えば石灰釉など、大体の相場が決まっていたのですが、最近は種類も増えて、同じ赤茶でも亜鉛とアルミの混合体にクロムと鉄を反応させた顔料でも、比率がかなり異なっているために、常に赤茶が亜鉛釉で良好な発色をするとは言えなくなっているようです。
 ただ、前にも少し書いたかもしれませんが、最近、メーカーが出している透明釉は、単純な長石・石灰の混合釉ではなく、亜鉛やマグネサイト、バリウムなどのさまざまな原料を微妙に添加させて安定性を高めていますので、大抵の顔料に対して安定性を保つようになっています。
 もし、特定の顔料に対して、より発色が良好で安定性の高いものを求める場合には、顔料を購入したメーカーが出している透明釉に、亜鉛やバリウムなどを更に加えて釉薬を作るのが、お手軽で安定しているので、お勧めです。

Q145.陶芸において接着という事とは
A145.物質が接着する場合には、「アンカー効果」と「分子間引力」という二つの作用が働いていると言われています。
 「アンカー効果」は、物質表面の凹凸に硬化作用のある物質(いわゆる接着剤)を流し込む事で、接着を行うというものです。陶芸の場合には、接着する部分に傷を付け、ドベを塗り込んでから双方の粘土を密着させる事で、このアンカー効果が生まれます。別名、錨効果とも言われますが、これは、物質表面の形が錨のような場合に、最も強い接着効果を生むからですね。
 「分子間引力」は、平滑なガラスに少量の水を掛け、二つのガラスを押しつけることでガラスが密着するという例が利用されますが、つまり、二つの物質を思いっきり押しつけて、その間の隙間を極限まで無くすことで、二つの物質の間にうまれる分子の引力作用で接着させるというものです。これは、本当に効果を発揮する場合は、かなりの密着性が必要になるのですが、適度に密着させるだけならば、以外と簡単に行えます。陶芸の場合は、粘度表面に筆などで水を付け、強く粘度同志を押しつける事で接着することが出来ます。
 陶芸でのドベによる接着は「十分にドベを使用し、しっかりと圧着すること」と言われますが、要は、「アンカー効果」と「分子間引力」を最大限利用しているわけですね。
 又、仮に、ドベを使用することでエッジの微妙な処理に支障をきたすとするなら、ドベではなく、水(または、極少量の布海苔を入れた水)を使い、分子間引力を最大限利用するように、粘土同志を圧着するということも考えられます。
 私も、器の取っ手を付ける時、ドベの処理が面倒な場合は、布海苔入りの水を使って接着をする事がありますからね。これだと、はみ出したドベを、少し乾燥させてから削るなどの手間が省けますからね。
 釉付けという事も考えらます。しかし、釉薬の場合には、どうしても釉薬の粘性の為に、溜まった部分のエッジに曲面が出来るので、シャープさは無くなってしまいますよね(特に、箱のようなものの場合には)。更に、焼成の際、釉の流動性で微妙に接着部分がずれる事もあるりますから、そういう危険な賭おかしても価値があるかどうかは疑問だったりします。それが面白い効果なので、使う場合は別ですけれどもね。

Q146.素焼きした作品のひびの補修方法
A146.ヒビの入った部分を剣先などで傷口をちょっと大きめに削ってから(土が入りにくい場合だけ。入る時には削る必要はありません)、固めの磁器土をヘラで押し込む。これだけです。埋めるのに使用する土は、生土でも、生土に同様の土の素焼きした粉を混ぜたものを利用しても構いません。どちらかというと、素焼き粉を混ぜた方が安心かな?
 但し、押し込まれた土は、乾燥するに従って収縮し、再びヒビが入ってきますから、間を置いて、再び先の作業を繰り返します。早ければ3〜4回。時間が掛かる場合は、10数回程度でヒビが入らなくなると思いますから、根気強く作業を繰り返して下さい。なお、乾燥の際には、口にビニルなどを掛けて、ヒビの部分がなるべくゆっくりと乾燥するように注意して下さいね。
 そうそう
HUS10社の【High fire Mender】という補修剤を使用しても良いかも。
 ちなみに板作りで、口にヒビが出来た場合は、どんなに修正しても、本焼きで出てくるんですよね。あれは、タタラの作り方そのものに原因があったりするから、焼成で板が変形して絶対に出てくる。

Q147.素焼きのヒビの走行終点発見法
A147.水筆(水を含ませた筆)を、ヒビの部分につけるというもの。ちょっと多めに水をつけると、毛細管現象でヒビに水が入り、すぐにヒビの大きさや長さを知る事ができます。

Q148.釉付け(ゆづけ)・釉継ぎについて
A148.この方法は、結構、古くから行われている方法で、江戸時代には釉継ぎで陶磁器の修理を行う職業人が、かなり沢山いたそうです。もっとも、江戸時代の釉継ぎ職人は、楽焼きなどで使用する鉛入りの低温釉(玉ぐすりと言われていましたが)を使い、高温焼成した作品の破損部分を再焼成して接着するという方法でしたし、楽焼きのように焼成中に火箸で取り出して、接着を調節したりもしたようですから、作品を焼き上げる際に釉薬で接着を行うという話とは、ちょっと違うんですけれどもね。
 ただ、このような焼成温度の違いを利用した釉継ぎの方法は、現在でも非常に有効な手段で、エポキシ接着剤などが使用できず(施釉部分に接着剤を使用すると、あまり接着強度が強くないので、重量がかかる施釉部分への接着には不向きなのです)、なおかつ実用強度が必要な場合には、この低温釉を利用した釉継ぎが行われる事があります。
 私も、器の修理を頼まれたりすると、場合に応じて、低温釉の釉継ぎを行う事がありますよ。
 例えば、カップの取っ手のように、側面の接着が必要な場合などは、一度、カップ本体と取っ手を別々に高温焼成した後、カップを横にして、そこに取っ手
付けて低温で再焼成すると、簡単に接着することが出来ます。高温釉は、800度程度ならば熔けませんから、釉薬が付いた面が、窯の棚板に触れていても、問題ないわけですね。
 この要領で、1250度、1000度、750度程度の差で3種類の釉薬を利用すると、かなり複雑な釉継ぎも可能になるので、修理のみならず、作品制作の場合にも、極めて有効な手法として使う事ができるわけです。
 特に、750度の低温釉などは、気に入らない場合には、焼成中に火箸で取り出してしまえば、何度でも接着修正が出来るというメリットもあります。(熱いので、何度もやる気にはなれませんけれども。)
 もし、上絵付けをするような事がありましたら、一度、自分の家の割れた器などを釉継ぎしてみるのも良いかもしれませんね。

Q149.ポッテリーペインティングの話
A149.まず下絵具ですが、高温用の下絵具とは違うもののようです。ポッテリーペインティングは、焼成温度が1000度前後(1000度より低い場合が多いらしい)で、絵の具の耐火温度がかなり低く、試しに数色、購入して透明釉を掛け、1250度で焼いてみたのですが、ほとんど変色または揮発してしまいました。
 また、絵の具は、アクリル絵の具のような感じで、厚く盛り上げるように塗らないと発色しません。最初、下絵具のつもりで薄く描いていたらば、「水をなるべく加えずに、盛り上げるように描いて下さい」と言われ、実際、焼き上がったものを見ると、塗りが薄い部分は色が出ていませんでした。
 このような色飛びは、大抵、顔料と素地の土、釉薬を混ぜている時に起こる現象ですから、もしかしたらば、絵の具にいろいろと入っているのかもしれません。
 厚塗りは、発色の為に必要なわけですが、実は、その厚塗りをしなければいけない事が、逆に、簡単にグラデーションを作れるというメリットになっています。色数が多く、グラデーションが出来るので、デッサン力があると、簡単に絵の凹凸感が表現できるのは、魅力です。
 それから、上に掛ける釉薬は、完全にフリット化した透明釉で、生の原料を混合したものは使用しないそうです。おそらく、扱いやすくする為と、反応性を高めて低温でも十分に熔けるようにしたいという意図からだと思います。調合の成分は分からないのですが、鉛を使用した場合、絵の具の変色が起こる可能性が高くなりますし、毒性が高いですから、ホウ酸と硅石の基礎釉をベースに、多少、何かを混ぜているのでしょう。何しろ、開発元がアメリカですから、全てが合理的かつ即効性最大考慮というシロモノです。
 ちなみに、素地は、純白色の素焼きしたものを使用するので、実際に塗った色の感じそのままで出来上がります。(多少、色が薄くなるようですが。)
 以上のように、手軽さと分かりやすさが、ポッテリーペインティングの魅力といったところでしょう。色の深みや、焼く事で生まれる偶然性は全く無いのですが、逆に、自分の感性が自然条件によって消されてしまう事が無いし、カラフルでちょっとパステル調の色彩は、都会的な軽さを表すのに好都合という感じがします。
 桃山陶を崇めている人間にとっては、邪道以外の何物でもないのかもしれませんが、私は良い意味での軽薄さが、結構、気に入りました。

Q150.窯を焚く際に注意する温度域
A150.素焼き作品の場合500〜600度の硅石膨張時の温度域、1050〜1100度の釉薬反応域だけ、急な温度上昇を避ければ、意外と無茶な焚き方も出来るものです。ちなみに、硅石膨張時には素地の破損、釉薬反応時には釉薬の縮れやめくれが起こりやすくなるので注意が必要なわけですが、最近は土も釉薬もハイブレンドでそういう注意も必要なくなってきているようです。
 また、素地の芯まで焼き上げようと思わなければ、窯の性能によっては3〜4時間程度で焚くことも出来るそうです。(私は、そんな早焚きはやったことがありませんが)
 1時間程度で700度まで温度を上げ、2時間で1250度に達するそうで、こうすると釉薬も熔け、素地もそれなりに焼き締まるそうです。物理的に考えて、どうしてそんな事が出来るのか、私はいまだに理解出来ないのですが、実際に焼けている作品があるわけですから、可能なのでしょう。

Q151.イルメナイトって何?
A151.その前に、チタンが分からないという方の為に解説。
 最近では金属アレルギーを起こしにくいという事で有名になったチタン合金というものがありますが、陶芸の世界では、この合金の主成分であるチタンを、一般的に乳濁剤として使用しています。
で、このチタンは、酸化チタンという形で釉薬に入れるわけですが、その元になる鉱石が金紅石(きんこうせき)、またの名をルチルと言います。宝石に興味が有る方は、ルチレッドクオーツという金色の水晶を御存知かもしれませんが、あれは、水晶の原石にルチルが入ったものです。つまり、ルチルというのは、黄色の鉱物なわけですね。
 で、前振りが済んだところで、イルメナイトの説明です。
イルメナイト(Ilmenite)というのは、酸化ルチルの粗製物とか副生成物ではなく、「チタン鉄鉱」という鉱物の英語名です。ルチルが「TiO2」なのに対して、イルメナイトは「Feo2+TiO3」という理論組成からも分かるとおり、非常に多量の鉄を有しています。磁鉄鉱と同じくらい、地球上には普遍的に存在しているものです。
 ちなみに、ルチル原石は、綺麗な黄色〜金色をしていますが、イルメナイトは黒(というか金属光沢黒)色ですから、おそらく、釉薬に入れると鉄の性格が相当強く出てしまうと思います。私は使ったことが無いので、断定は出来ませんけれどもね。(ならば、書くなという話もある。

Q152.クレオライトって何?
A152.クレオライト(Cryolite・氷晶石・ひょうしょうせき)は、「Na3AlF6」という論理組成の鉱物で、主に、アラスカやグリーンランドなどの北方で産出するそうです。
 一般的にはボーキサイトからアルミニウム地金を取り出すときに使用するもので、、ホール・エルー法という電気分解法を用いる時に、使われるらしいです。
 ただ、組成を見ていて気が付いたのですが、私、過去に1度だけ、この名前を見たことがありました。某宗教団体が「これは、バッチを作る為に使っているんです」と言ってフッ化ナトリウムを見せるシーンで、その後ろに山のように積まれた袋に、「Cryolite」という文字が書かれていました。
 で、陶芸関係の本を見たらば、琺瑯などで希に使用される釉薬の溶媒剤という内容を発見。ただし、焼成中に猛毒のガスを出すので、かなり換気をしっかりしないと危ない原料なのだそうです。
 つまり、陶芸では、まず使わないと思って間違いありませんね。

Q153.粉引きの化粧土のかけ時
A153.粉引きというのは、一般的に赤土に白絵土(今日では白絵土は枯渇してしまっているので、それに近い化粧土をブレンドしていますが)という純白に近い土を掛け、その後、透明釉を施釉して焼成したもので、その姿が粉を引いた(あるいは吹いた)ように見えるところから、その名前が付いています。
 で、この粉引き。生と素焼き後のどちらの方が、化粧を掛けるのが良いか、という事ですが、結論から言うと、好みの問題です。どちらが良いという事はありません。
 また、素地土の乾燥具合や性質によって、あるいは、使用している化粧土の濃さや性質によって、生の方が良いか(良い悪いではなく、好みの問題ですが)、素焼き後の方が良いかも変わってきます。
 例えば、土の中には、どんなタイミングでも、乾燥し始めた素地に化粧を施すと、かならず吸水して崩壊するものがあります。こういう場合には、生掛けの粉引きはできませんから、素焼きしなければなりません。逆に、かなりぼってりと化粧を掛けても、ビクともしない土もあり、こういう時には、生掛けでも、素焼き後に化粧を掛けても、どちらの選択肢も可能になりますね。
 また、化粧土の性質について言えば、化粧土に膨張収縮率の大きな原料(生の蛙目など)を使っている時には、素地は生で、しかもまだ素地が湿っている早いうちに行わないと、化粧土が剥離しますし、逆に、原料の多くがすでに素焼きまでやってあるものを使っている場合には、膨張収縮率が小さいので、かなり乾燥した素地や素焼き素地にも化粧掛けをする事ができます。自分が使っている化粧土が、どちらの性質のものかによって、素地の調整を行う必要があるわけです。
 更に言うと、化粧を掛ける手順でも、浸し掛けの場合、柄杓掛けの場合、刷毛塗りの場合など、いろいろあって、それぞれにケースバイケースであったり、好みの問題があったりします。どれが一番良いと断定することは出来ません。
 それから、生掛けのタイミングですが、これも素地の性質や厚みに依存し、自分がどのような粉引きにしたいかによって、自主的の調整していく事になります。
 一般的には、乾燥が進むと、化粧を掛けた後に素地が崩壊する可能性が高くなりますから、大抵は削り仕上げが終わった後か、その後、すこし乾いた状態の時に行うという事になります。
 前者の場合(削り仕上げ直後)、素地が相当湿っているので、化粧の乗りにムラが生じ、そのムラが味のある表情を生みますし、後者の場合(少し乾かしてから)は、素地に厚く化粧がかかるので、ぽってりとした暖かく柔らかい白さの表現になります。
 しかし、土の中には、完全に乾燥してから吸水しても形が崩れない。あるいは、素地が厚いので、多少の吸水には耐えられるという時には、完全乾燥してから行う事もありますね。
 ちなみに、化粧を掛けた後、透明釉を施釉しますが、これも、生の時に行って、素地との一体感を強め、力強さを出す方法もあれば、逆に、一度、素焼きをしてから、しっかりと釉薬を乗せて柔らかい感じに仕上げる方法もあり、器の形に合わせて、あるいは好みに合わせて施釉のタイミングを変えます。
 まぁ、粉引きも一つの表現ですから、あまり、方法の良し悪しに翻弄されず、自分が最も納得のいく結果を出すための手段ととらえて、自由にやっていただければ良いのではないかと思います。

Q154.ろくろの上達法
A154.ロクロに接する時間が短い方って、わりとロクロというモノを簡単というか、安易に考えていらっしゃるところがあって、座れば、全てが解決すると思いがちなんですが、実は、ロクロって、非常に扱うのが難しい道具で、しかも、自分を正直に映すんです。
 ロクロは、回転する軸の上に、平らな板が乗っているだけの単純な構造の機械ですが、逆に、単純な構造の道具だから、使う人間の技量というものを、恐ろしいほど反映します。つまり、道具を使う人間の技術力がモロに出るということで、とにかくロクロに接する時間の短い人は、間違いなくロクロを扱う事はできません。逆に、ロクロに接する時間が長くなればなるほど、ロクロの扱いは上手くなります。
 よく、ロクロで「形が出来ない」と言う方がいらっしゃいますが、私は、そういう場合、はっきりと「ロクロに王道はありません。いくら頭で分かっていても、体がついてくるのは10年先だと思っていなければいけない」と言っています。
 ロクロというのは、とにかく同じ規格の商品を効率的に早く作るためだけに開発、改良された道具です。しかも、無駄な装置を省いて、とにかくシンプルになっている。だから、それを使う人間の体のリズムや手の動きが、ロクロを上回るほどのマシーンにならないと、ロクロはロクロ本来の力を生みださない事が、非常に多いわけです。
 特に、最近の陶芸教室では、その部分を飛ばして「ぶにょぶにょした形も、それはそれで味」とか言ってごまかす傾向が強いんですが、それはあくまでも、ロクロを使いこなした人間の理屈なんですよね。ロクロを使えて、あえてそれを否定するのと、最初から否定して始めるのでは、雲泥の差があるわけです。
 ま、それは愚痴なんですけれども、そういうわけで、結論から言うと、とにかくロクロで平らな面を作るためには、指を、ロクロ盤面に対して、水平に動かせるように練習する。これ以外にありません。
 ロクロの回転力と、土の遠心力を指先で感じとりながら、水を潤滑剤として土を水平に動かしていく。これが理屈で、あとは、この理屈を体に染み込ませていくのが、一番の近道です。
 コテを使うという方法もありますが、指先で水平面を作れないのに、コテで水平面を作るのは無理だと思って練習した方が、結果的に、上達度は早いと思います。
 私は、おそらく、ロクロで本当に皿と言えるものが作れるようになるのに、1000枚以上の皿を挽いたと思います。(私の場合、覚えるのが遅いという事もありますけど)少なくとも、指紋が消えるくらい、昔は作りました。
 そこまでする必要は無いと思いますが、ロクロっていうのは、それくらいの付き合いが無いと、なかなか思うようにはならないものです。
 非常に酷な意見だとは思うのですが、とにかくロクロはそれを扱う人間の技量に全てがかかっています。回転の速度、土を移動させる力、体のバランス、リズム。それが盤面上で渾然一体となった時に、初めて土が自ら動き、自分のイメージと現実の形が合致するわけです。
 そして、それを可能にするのは、ロクロに接する時間以外に解決してくれるものは無いと思います。

Q155.タタラの乾燥時などの変形
A155.まず、タタラを作る時の問題ですが、「土は乾燥時に、土癖に影響されて変形」します。菊練りの時の巻き癖(土を巻き取った方向)というのが、特に、影響が大きいと思いますので、そこに絞って話をしますね。巻き取った時の巻きの中心が、タタラの中心と一致していると、密度の低い中央から、乾燥の時に、上がってくる場合があります。特に、菊練りの回数が少なかったり、巻き取り方がいい加減だと、薄いタタラの場合、この傾向が強くなるような気がします。
 また、菊練りの終わった土を横にして使用すると、今度は、外側が上がってくる事があります。皿のように、縁が上がっているものは、それほど顕著ではありませんが、完全な板の状態だと、上がる事がありますね。
 これらの現象を回避する為には、菊練りをやらない(真空土練機などがあれば可能)か、菊練りをするときに向きを変えて癖を出さないようにする、あるいは、巻き取り回数を増やして密度を高める。さらに、土を伸ばす時に圧力をかけてしっかりと押し、さらに叩き締めをする。という方法をとります。
 土を伸ばす時に、最初から、のし棒を使うと、土に癖がついて変形が大きくなりますから、手でしっかりと押して伸ばす事が大切なように思います。
 次に、皿を作る時の問題ですが、皿は、しっかりと縁を締めておかないと、特に、焼成の時に中央が上がってくる場合があります。乾燥の時にも上がることはありますけれどもね。
 これは、縁の締めが悪く、徐々に外側の土が落ちてくるので、結果的に、中央が上がってしまうというものです。石膏型を使った板作りの時などに、特に出やすい現象ですね。
 回避方法としては、縁をしっかりと締める。あるいは、皿の腰の部分に粘土を付けて、少しだけ厚くしておくなどがあります。
 最後に、乾燥の時の注意ですが、特に薄い板を作った時には、自分がどこから乾燥をさせたいか、ということを考えておかないと、変形率が局部的に強くなって、作品全体が大きく湾曲する事があります。薄いコップを作って、口の一部分にドライヤーをあてて乾燥させると、口が大きく歪みますので、よく分かると思います。(この現象を利用して、意図的に自然な口の歪みを作るというのもありますよ。私は、昔、やっていました。)
 今回の場合で言えば、薄いタタラというのが問題で、皿を乾燥させる時に、木の板の上に置いておくと、木と接触している部分が、木に水分を吸収されて、先に乾燥しはじめる事があります。粘土が厚いと、上の粘土の水分が徐々に下に降りてきて、そこそこ乾燥を防げるわけですが、薄いと、どうしても水分量が足りないので、他所よりも乾きが早くなることがあるわけです。特に、木が乾燥していると、こういう事が起こりやすくなります。その結果、器の底が収縮して、上がってきてしまうわけですね。
 この現象は、皿に重りを乗せたりすると、余計にひどくなる事がありますから、注意してください。
 解決策としては、皿の下にサランラップなどを置いて吸収を阻害するとか、板を湿らせるなどの方法がありますが、一番良いのは、ゆっくりと乾燥させるために、ムロに入れる事です。(出来れば湿度70%以上)乾燥が遅くなるとそれだけ、全体が均一に乾燥していきますので、急激な乾燥による変形を防ぐ事ができます。薄いタタラに限らず、粘土全般に言える事でもありますけれどもね。
 ということで、以上3点を話しましたが、実際には、問題点を一つに絞ることはできず、大抵、すべての要因が微妙に合わさって、板が変形します。特に、薄いタタラは変形の度合いが大きいので、すべての問題を解決しても、どこかに歪みが出てしまう事も少なくありません。
 また、薄いタタラは、それだけ水分吸収時に崩壊する可能性も高いし、化粧の乗りも悪くなるので、生掛けの時には、かなりのテクニックが必要になります。(素焼きしてあれば、問題ないですけれどもね)

Q156.焼成後の緑化粧土の変色
A156.顔料を使用する場合、あるいは顔料が混入されたものを使用する場合には、酸化焼成を行うというのが陶芸でのセオリーなんですが、顔料に混入されている原料いかんでは、希に、還元焼成の方が発色が良好になる事があります。
その代表が、緑化粧土ですね。
これは、顔料として「クロム」という金属を使っているんですけれども、この金属は、酸化焼成よりも、還元焼成の方が発色が良く綺麗なグリーンが出やすくなります。(長石・石灰の単純基礎釉を使った場合に限る。亜鉛などを入れた釉薬だと、赤茶色になります。今回の茶色とは別件ですけれどもね。)
 ただし、クロムというのは、非常に揮発力が強い金属で、1150度近辺から揮発しはじめ、1300度くらいになると、かなりの量が揮発してしまいます。つまり、緑化粧の塗り方が薄い場合、および、焼成の温度が高すぎた場合には、クロムが揮発して緑色が飛び、茶色く焦げたような状態になることがありるわけです。
 もし、化粧土の塗り方が、前回と全く同様ということであれば、窯の焼成温度がちょっと高かったのかもしれません。あまりフォローになりませんが、こういう事は、よくあります。特に、素地の焼き締まりを良くしようと思って、温度をちょっと高くすると、焼き締まりの代償として、金属を入れた土が変色するんですよね。
 焼成温度が前回と全く変わらないということであれば、化粧土の塗り方が薄かったという事も考えられます。特に、生の土に使用した場合には、素地の乾燥具合によって、化粧土の乗り方は大きく変化しますから、この点は注意が必要になりますね。
 化粧土は色飛びが起こりやすいので、塗った凹凸が分かるくらいに厚く塗らないと発色しない事もあります。
 それから、一度酸化焼成して釉薬がきちんと熔けてしまった場合には、残念ながら焼き直しても色は変化しない事が多いです。しかも、今回の場合には、クロムの量が少ない事が原因ですから、何らかの形でクロムを増量させてやらないかぎりは、緑色が出る事はありません。
 ちなみに、今回の緑化粧土の状態は、おそらく、窯の温度に関係するのもではないかと思います。

Q157.2時間で本焼きが出来る短時間焼成窯
A157.窯および窯を焼成する事についてですが、素焼きさえしてあれば、2〜3時間で間違いなく焼くことができます。消火後、2時間で作品を取り出せ、冷め割れも、今回はありませんでした。酸化・還元両対応で、メーカー推奨釉薬以外の4成分調合の生釉でも、よく熔けており、いわゆるガス窯のすっきりとした色合いが出ます。耐久性についても、1日1回焼成で、少なくとも10年は使えるそうですが、劣化の激しいパーツが幾つかありますから、逐次、交換をするという事で耐久年数には耐えられる構造になっていました。(でも、これについては、まだちょ
っと疑問もあるんですが。)
 但し、この窯。「とにかく焼成時間が短い」という以外は、ただの直炎式ガス窯です。炉壁の二重構造による蓄熱システムとか、穴窯式構造による扱い易さ、など、いろいろと理屈が付いていますが、焼いた雰囲気も扱い方も小さなガス窯そのものです。
 あえて言うと、焼成が終わるまでピッタリと窯に付いて、分単位でガス圧を調節しなければならないというのが、私にとってはデメリットのように感じました。手数が掛かりすぎるんです。
 通常のガスならば、ガス圧を調節するのはせいぜい5〜6回。電気ならばスイッチを入れ替える2〜3回です。サイリスタがあれば、ボタンを押すだけの1回です。
 慣れれば、手数は少なくなるのかもしれませんが、それでも10回程度はガスコックをいじることになるでしょう。こういうのが好きな方は、問題ないのでしょうが、結局、手数に関わらず、焼き上がりは一緒ですから、短時間という事にこだわりが無ければ、私にとっては無駄に手数が多いのは考え物と言う事が出来ます。
 更に、焼成が早い理由の多くは、窯の構造もさることながら、内容積と作品の詰め方(作品と上の棚板は4cm以上開ける、ツクは外向きに必ず置くなど)にも大きく依存しているように思います。しかも、この詰め方が、ちょっと効率悪い。おそらく、同じサイズ、詰め方をすれば、違うガス窯でも、あまり時間の差は無いのではないかと思ったりもしています。
 後日、8kwの電気窯で同じような詰め方をして挑戦したところ、4時間程度で目標温度まで達していました。 ガスならば、もっと早いかもしれません。
 ということで、いろいろと書きましたが、結局、同じ量の作品を焼き上げる為には、短時間焼成窯を2回焚くのと、普通の窯を1回焚くのと、最終的な時間数は変わらないかもしれない。と、私は思ったりします。
 焚く事が好きで、1度に作る作品が少ない(あるいは、作品が小さい)のであれば、短時間焼成窯は有効だと思います。
 しかし、焚く手間は少なくして、ある程度の作品数を焼く必要があるのであれば、短時間焼成窯のメリットは少ないかもしれません。
 以上、短時間焼成窯のレポートでした。

Q158.陶磁器の「白」について
A158.色の発色には大別して2種類のものがあります。
 一つは地が白い場合。代表的なものでは白磁がありますね。ヨーロピアンティーカップによく用いられる真っ白い石や土です。
 もう一つが、上に掛けられた釉薬などのコーティング材が白い場合。白くする方法はいろいろありますが、つまり、下地が茶色かったり黒くても、コーティングする材料で白さを表すということですね。もちろん、下地が白く、さらに複雑な白色を作るためにコーティング材も白いものを使うということもあります。トイレの便器などでよく見かけたりします。
 さて、大別すると、このように地と図の関係になるわけですが、陶芸の場合、さらに白さには複雑な要素がからみます。
 地が白い(つまり素地が白い)場合、通常は、脱鉄といって、素地の成分から鉄を抜くわけですが、それではどうしても素地の白さが単純になってしまう危険がある。そこで、陶磁器などの場合、素地の厚みで白さをコントロールするという作業を行います。
 言い換えると、どの程度、光が素地を通過するかを計算する、ということになります。これを透過性とか透光性と言います。素地が厚ければ光が透過しないので、素地の原料そのものが持つ白さが際立ち、光が透過すれば、その作品がある場所の光の加減で素地の色が微妙に変わる白さを演出できます。
 特に、磁器ではこの厚みの操作は微妙で、ヨーロピアンティーカップなどで聞くボーンチャイナという制作法(というか、素地の材質)や、一部の青磁の器は、この透光性を利用し、柔らかな白色から背筋がぞっとするような白色まで、様々な色の演出を行います。
陶器の場合は透光性が弱いので、あまり光のことは気にしませんが、それでも、微妙な厚みの変化で、白色は変化します。特に、テーブルウェアとして陶土の素地を利用する場合などは、食卓の光源が陶器の色に微妙に影響してきます。
 コーティング材の白さにも、同様にいろいろな種類があります。陶芸の場合は、おおむね「釉薬」というガラスがコーティング材となりますが、この釉薬も、窓ガラスのように限りなく透明度の高いものから、かなり透明度の低いものまで様々で、基本的には、どの程度、窯の中でガラスが熔けたか(あるいは熔かしたか)で透明度が決まってきます。かなり熔かすと透明なガラスになりますし、完全に熔ける手前では、大量の空気の泡が残留し、白く濁った状態になります。また、熔け残りを作ると淡い雪のような白さになりますし、わざと熔けない物質を混ぜて、白さの調節を行うこともあります。さらに、ガラスが冷えて固まるときに、冷える時間を調節し結晶を析出することで白さを調節することもできます。
 個々の説明は省きますが、、同じコーティング材でも、どの程度熔かすか、あるいは何かを加えたり発生させたりして白さを作るのかなど、陶芸では微妙な調節によって白さを変化させることができるわけです。
 このように、同じ「白」と言っても、陶芸では複雑なメカニズムによって、作者は白さを使い分けます。こんど、喫茶店や陶磁器のお店でお気に入りの器を見つけたときは、ちょっと観察して「この白はどうやって作っているのかな?」などと考えてみると、より陶芸の面白さが発見できるかもしれません。また、陶芸をやっている方は、「こんどは、どうやって白い色を作ろうかな」と考えると、いままでと違った楽しい白が作れるかもしれませんよ。

Q159.バナジウムについて
A159.五酸化バナジウムは毒ですから、扱い、気をつけて下さいね。弁柄と何が違うかと言えば、おおよそどんな基礎釉に入れても、弁柄より不透明度が高いと思います。
 ちょっとオーバーに書くと、黄瀬戸のような色合いを作るとしたら、バナジウムは下地になる土味を出しにくい黄瀬戸になる。という感じでしょうか。緑色で言えば、銅とクロムの関係に似ているかもしれません。ある程度の量を入れると、銅の緑は、わりと透明性があるけれども、クロムの緑は透明性が低いですよね。そんな感じです。
 それから、熔融剤の相性は、特別、無いと思います。
 ただ、何と反応するのか忘れましたけども、何かと反応すると緑色になったのは憶えています。何で、こんな色が出たんだろうとびっくりしました。(ジルコンと反応すると緑になるそうです。)
 弁柄とクロムを加えて青磁を作ろうとしたらば、クロム磁鉄鉱になって黒い釉薬が出来た時と同じ驚き加減でした。
 最後に毒性ですが、これは、釉薬の熔け具合に関係します。釉薬を十分に熔かせば、(酸で器物の表面が冒されたりしなければ)金属はガラスにコートされていますから、基本的には安全です。
 しかし、マット釉や不溶性の釉の場合には、毒性はあると思って良いと思います。もっとも、程度の問題からすれば、即死とか、即効性腹痛とか、そういうことは無いでしょうが。むしろ、釉薬を作る時の方が、ずっと危険ですよね。

Q160.長次郎の黒釉について
A160.技術的なお話をすると,釉薬の艶がなくなる理由は3つあります。
 1つめは,釉薬は熔けたが,冷却時,釉薬表面に何らかの微細な結晶が析出したので,曇りガラスのように光沢が無くなってしまった場合。
 2つめは,キメの荒い素地土を使用したために,釉薬が焼成中,素地に吸収されてしまった場合。
 3つめは,釉薬が不熔(熔けない)状態である場合。あるいは,あえて熔けない物質を釉薬に入れている場合。
 の3つです。
 この内,1の微細結晶の析出は,作品を徐冷といって,非常にゆっくりと冷ます必要がありますから,火ばさみでつかんで,いきなり水や湯につける楽焼きや引きだし黒の方法では,極めて作るのが難しい黒色です。そこで,仮に艶のある黒が作れなかった(つまり,技術的に問題があった)と仮定すると,理由は2または3になります。
 2の素地吸収は,一番可能性の高い理由です。というのも,長次郎の楽焼きの素地は,もともと素地の粒子が粗いものを使用していますし,焼成温度も低いので素地の焼締まりが悪く気密性が良くありません。この素地上で釉薬が溶けると,砂地に水をこぼした時のように,釉薬は素地に吸収されるので,結果的に釉表面の凹凸が強くなって反射光が散乱し,見た目がつや消しになります。
 ところが,じつは楽焼きの釉は,思ったよりも厚く掛かっており,釉薬が吸収されて光沢が無くなったものとは,おもむきが異なります。
 そこで3つめの,釉薬不熔の可能性ですが,一般的に楽焼きで使用する釉薬には鉛が含まれており,750度を越えると容易に熔けてガラス化します。木炭にドライヤーで風をあてて温度を測定すると,簡単に1000度相当の熱量を得る事ができますから,燃料的に釉薬が熔けなかったとは考えにくいということになります。
 となると,結局は,かなり保温性の悪い窯をあえて作るか,釉薬をわざと熔けにくいものに調合するか,または釉薬が完全に熔ける寸前に掴み出して作品を冷却し,釉ガラスの熔解を止めてしまうといった人為的操作が必要になります。
 つまり,つや消しは,出せなかった色ではなく,あえて作った黒ではないかということになり,そこで,矢部良明さんの推察が登場します。言い換えると,千利休と長次郎は,「マット(つや消し)」というテクスチャーを,あえて作り,それを世に問うたのではないか,ということです。
 私は,お茶を習った事も無いし,茶席もFTEAで招待されたものしか出席したことがないので,茶人が茶席にかける並々ならぬ心意気は分かりませんが,茶席に他人を招待するというのは,おそらく,バンドのメンバーがライブを開く時の心境,あるいは,役者が芝居の公演を行う心境に似ているのではないかと思っています。
 つまり,お客さんに楽しんでもらう為に,また,自分の可能性を他人に見せるために,極限まで練習や稽古を積んだ後,ライブや公演は行われます。茶人もまた,他人を招待する為に,その茶席の場を極限まで突き詰め,一期一会を最高のものにするために,あらゆる手段を使い,道具や食材をそろえるそうです。
 もし,仮につや消し黒という色が,失敗で出来たものだとするならば,そんな茶席に,あえて失敗作を持ち込んだ亭主の思想や意味性は,一体,何なのでしょうか。
 黒楽が世に登場してから,それは,たびたび茶席に登場するようになります。あえて失敗作を茶席に出した亭主の心境は,実に興味がありますね。その未完に,侘び寂びの心を見つけたんでしょうか。

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