暴虐性限界突破
子供を中絶すると言う行為は、親の勝手な理由で行われる。 その身勝手な行為によって子供を孕み、勝手な理由で堕ろされる。 母は止むを得ない行為だと、これまた勝手な解釈によって自分を慰め 小さな命を宿した赤子は、自分とは無関係な人間の手によって 肉を掻き分け、子宮から引きずり出される。 その小さな身体と命に、どれだけの未来が待っているのか・・・ そんな事など考えもせず、何の罪も無い子供は殺される。 勝手な行為によって宿した我が子を 「止むを得ない」と言う一言で殺してしまう。 これを「犯罪」と呼ばずしてなんと呼ぼうか? 万が一、この先再び子を宿す事があれば・・・ オマエハオレヲサバイタ・・・ダカラオレモ、シヲモッテオマエヲサバクゾ・・・ 母は知らない。 強制的に堕ろされた我が子が、何を思いながら死の淵へと消えて行ったのかを・・・・。 医者の口から「3ヶ月です」と告げられるまで 中条 美奈(なかじょう みな)は自分が犯罪者である事を背負いながら生きていた。 犯罪者・・・・ それは夫の琢磨(たくま)にすら話していない「中絶」と言う経験だった。 琢磨と結婚する数年前、美奈は一夜限りの関係で小さな命を宿してしまった。 無論、妊娠した事は相手の男には言わなかったし 中絶に必要な金を払えとも言わなかった。 男は単なる行きずりの人間であり、知っているのは名前だけで 住んでいる場所や、どんな仕事をしているのかさえ知らないまま 二人はベッドを共にしたのだ。 その結果待っていたのは「妊娠」と言う最悪の結末。 経済力の無かった美奈は中絶と言う道を決断せざるを得なかった。 ・・・・マッテイタゾ・・・・コノトキヲ・・・・ 胎児は美奈の子宮で順調に育って行った。 夫の琢磨もこれ以上に無いほどの喜びで持って美奈の身体を気遣ってくれた。 「これで幸せになれる。ようやく解放される」と美奈は自らが犯した過去の罪を清算しようとしていた。 だが失われた命の代償は、そんな甘い清算を受け入れてはくれなかった・・・。 その夜、美奈は奇妙な夢を見た。 黒く、何か陰湿な雰囲気を醸し出す小さな物体が天井から降りてくると それは美奈の下腹部で止まり、もぞもぞと這いずり回った。 美奈にはそれが「人間」である事がすぐに分かった。 暗がりとは言え目が慣れてくると、小さかったが手足が見えたのだ。 その大きさから判断するに、そうやら子供のようだった。 「誰?」 美奈は膨れ上がった下腹部で這いずり回る「それ」に声を掛けた。 「モ・・・チマ・・・・カイ・・・」 「えっ?」 とても小さな声で何か言っているのだが、良く聞き取れない。 「誰なの?」 美奈は再び問い掛ける。すると・・・ それまで美奈とは逆を向いていた頭が180℃グルリと回転し 美奈の方へと向き直った。そして・・・ 「モウ・・・・ワスレチマッタノカイ?」 「いやあああああっ!?」 そこに現れたのは血塗れの赤子だった。 血塗れの赤子はジリジリと美奈の顔へと歩み寄る。距離が縮まるたびに身体は硬直し動く事ができない。 「オマエハ、オレノタイセツナイノチヲウバッタ・・・・ ダカラオレモ・・・オマエノタイセツナモノヲ・・・・ウバウ・・・」 「や、やめっ!?」 もはや声すら出なくなりつつあった。 やがて血塗れの赤子は美奈の下腹部の上で立ち上がり、小さく飛び上がった。 そしてその足が下腹部に降り立った瞬間 想像を絶するような重みが美奈を襲った。 「ぐえええっ!」 美奈は反射的に下腹部を手で押さえる。新たに宿した小さな命を守るように。 だが血塗れの赤子はそんな事お構いなしと言った態度で、子宮の上で再び飛び上がった。 その動きはスローモーションのようにゆっくりとした動きになっていた。 「や、やめて!赤ちゃんが居るのよ!」 美奈がそう言い切った瞬間、今度は一回目よりも更に強い衝撃が美奈の下腹部に落とされた。 「がああああっ!?ぐううぎゃあああっ!?」 美奈の断末魔と共に、股間から大量の血液が噴出した。 「モウ・・・ヒトイキ・・・・」 血塗れの赤子がそう言った。 そしてその身が再び宙に飛び上がる。 「赤ちゃんが・・・赤ちゃん・・・私の赤ちゃんが・・・お願い止めてぇっ!?」 美奈が叫ぶより早く、下腹部に信じられないほどの圧力が振り下ろされた・・・。 静かな雨がシトシトと降っている。 周囲の音を消すような雨は、まるで病室で項垂れる美奈の涙のようだった。 「残念ですが・・・子供は助かりませんでした。流産です・・・」 夫の琢磨は肩をガックリと落とし、崩れた膝を折るように床に跪いた。 美奈は2度目の妊娠によって、自分の罪は償える。 これで解放されると思っていたが、それを決めるのは美奈ではない。 1度目の中絶で美奈は自らの意思で我が子を「有罪」にし 「中絶」と言う名の死刑を与えた。 その死刑にされた赤子が、何を思いながら死んで行ったか・・・。 真っ暗な闇の中で、病室で泣き崩れる美奈を見つめ 血塗れの赤子はこう言った。 「中絶をした女に、本当の幸せなど無い」・・・と。 END |