最終章「別れのとき」





10月16日。晴天。

事件解決の一報を受けて、渡辺を始め、輪島、京子。
そして本庁から派遣された数名の刑事たちが
事件解決へと大きな貢献を果たした木下桜の元を訪れ「感謝状」を表彰した。
事件が解決した事で桜は安心したと言っていた。
表彰された事が少々恥ずかしかったらしく、終始俯き加減であった。
頬を赤らめた顔は、古き良き日の「美少女」を思わせる雰囲気があった。
友人である黒川香澄の容態は回復へと向かっており
表彰式の最後には一同の拍手でその幕を閉じた。

同じく医学教授の藤崎にも感謝状が送られ、その栄光を称えた。
「いつもご迷惑をお掛けしてすみません」と言う渡辺の言葉に
「また何かありましたらいつでもご連絡を!」と藤崎は返し
悠々たる姿で勤務先である病院へと戻って行った。

逮捕された園田は、その後「精神鑑定」に掛けられた。
その結果「責任は問える」と診断され、拘置所へと送られた。
これから長い裁判を繰り返し、刑務所へと入ることになるだろう。
事件が世間をも巻き込んだ、極めて重大な事件であり
「無期懲役はまず間違いない」と囁かれている。

それぞれがそれぞれの日常へと戻って行く。
事件が終わってしまえばマスコミも静かなもので
やがてこの事件も、人々の記憶から消えて行くのだろう。
皆それぞれの道を歩み、その場を去っていく。
それの繰り返しが人生と言うもの。



そして、渡辺たちの間でも「別れのとき」は訪れたのである・・・。


事件解決から一週間が過ぎた成田空港。
そこに渡辺や輪島を始め、水上署の刑事たちが
今日でシンガポールへと戻る京子を見送るため、集まっていた。

「なんだか名残惜しいよ。あっと言う間だった気がする」
大きなスーツケースを持った京子に渡辺が言った。
「そうですね。こんな事を言うと不謹慎かも知れませんが
警部と一緒に捜査した事、一生忘れません」
「職業上、楽しかったと言うわけには行かないが
君のおかげで事件が解決したようなものだ。本当にありがとう。
君なら良い刑事になるよ。俺が保証する」
「警部、事実上彼女は僕たちより階級は上ですよ?
保証されるのは警部のほうじゃありませんか?」
輪島がおどけて言ってみせた。
「馬鹿者!歳は俺のほうが上だ」
「フフフ・・」
一同の間に笑いが巻き起こった。
時刻は京子が発つ時間を継げた。
「それじゃ、短い間でしたがお世話になりました」
京子は頭を深く下げながら言った。
「日本に帰る事があったら連絡くださいね。今度一緒に飲みに行きましょう!?」
「ええ、勿論。是非声を掛けてください」
グッ!っと親指を突きたてながら言う輪島に、京子は笑顔で返した。
「健康に気をつけて頑張れよ!?いつか必ず戻って来い」
「はい!ありがとうございました!」
渡辺は笑顔で京子に言うと、京子に向かって敬礼をした。
すると、輪島を始め、全員の刑事が渡辺と同じように敬礼をする。
京子もスーツケースを置き、それに習うように敬礼を返した。
「それじゃ、皆さんお元気で!?」
京子はそう言うと、渡辺たちの元を離れ、飛行機に乗り込んで行った。

やがて離陸時間を告げると、京子を乗せた飛行機はシンガポールに向けて飛び立って行った。

「行っちゃいましたね」
「そうだな」
「警部、残念なんじゃないですか?」
輪島はふざけながら言った。
「そりゃお前、一緒に捜査した仲だしな。ちょっと寂しくもある」
「そうですね、でも彼女なら向こうでも立派にやって行きますよ。
戻りましょう警部!事件は止まっちゃくれませんよ」
「お前、最近言うようになったな」

その場にいた刑事たちに笑顔が戻ると
渡辺たちは再び署に戻って行った。

例えどんな別れがあろうとも、事件は終わらない・・・・。


END


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