第四章「宣戦布告」





あの日、東京都23区で同日の同時刻に145名もの高校生が精神異常に陥ると言う事件が発生して以来
外で動き回る警察の動きが徐々に活発になって行った。
事件が起こったのは10月8日。
今日はその2日後の10月10日。奇しくもゾロ目の日時である。
事件発生から2日が過ぎても、警視庁からの詳しい説明や、事件の進展などはまるで報告されていない。
痺れの切らしたテレビ関係者たちは、ニュースやワイドショーなどで
「警察への威信が疑われる」
「日本警察の不甲斐なさ」などが専門家たちの口から次々と発せられ、警視庁は事実上かなり追い詰められている。
それも天下の「警視庁」がまったく事件の進展を掴めない事に加え
被害者たちの容態が一向に回復しない事が、メディアから叩かれる大きな要因であった。
メディアには「事件性が強い」と言う報告をしていたが
当の犯人は捕まっておらず、捜査は事件当日から既に暗礁に乗り上げている。
警視庁からの明確な報告が提示されていない事からも、その事実は否定出来ない。

私は手にした新聞に目をやった。
そこにはこう書かれている。

「警察の無力さ表面化。姿の見えぬ犯人に翻弄」

新聞記者というのは実に面白い叩きをするものだ。
そう、まったく持って彼らの言うとおりだった。
警察は無能。たった一人の犯人である私に見事に翻弄されているのだから。

専門家の中にはあくまで自然現象による異常事態と解釈している愚か者がいるが
まったく見ていて笑ってしまう。ここに犯人がいると言うのに。
「あれ」は私の傑作だ。いくら明晰な警察でさえ私まで辿り着く事はまず不可能だ。
仮に辿り着いたとしても、形として証拠が残らない以上、私を逮捕することなど出切るわけがない。
最も、私に辿り着く以前に捜査は打ち切りになるだろう。
新聞記者が言っている様に、警察など無能だ。
アイツらは何の役にも立たない。

これは社会に対する反逆なのだ。
その社会に無能さをアピールする警察への挑戦状とも言えるかな。
この試みが無事に成功すれば、私は「神」になるのだ。
人間の正常、そして異常さえも自在にコントロールする神。
本来神というものはそういうものだ。全知全能な神。
人間を創り上げたのも神なのだから、その人間を生かすも殺すも神は自由に決められる。
そう、私こそ時代が待ち望んでいた神だ。

とは言え、このまま警察が指を加えているのも見ていてもつまらない。
ここは一つゲームをしよう。
神なる私の能力が勝つか、それとも名誉挽回を試みる警察が勝るか。
ククク・・・・これは良い余興になる。
このゲームが世間に知れたら大問題だ。
それこそ、新聞記者は「世紀の対決!?犯人vs日本警察」なんて叩きで一面を飾るだろう。
最も、警察諸君が勝利する可能性は限りなくゼロに近い。
いや、と言うよりもゼロだ。
このゲームに勝利すれば、世間は一層私に注目するだろう。
「人間の命を操る謎の存在」
いや「暗黒時代の到来か!?犯人は神をも恐れぬ偉業を持つ!?」なんて方が良いかな。
神である私が「神をも恐れぬ」と言うのは、何とも皮肉なものだ。

さあ、これからゲームが始まる。
無能で愚かな日本警察の諸君
君たちに私を捕まえる事が出来るかな?・・・・・。


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