18 「神殺し」〜戦闘開始!パイフー・鬼武〜(後編)
「等々力!?こいつが?」 相棒の鬼武から話は聞いていたものの、パイフーは等々力と会うのは初めてだった。 「お前、どうして魔界に・・・」 鬼武が驚いたように言った。 「まあちょっと用があってな。って、そんな話をしている場合じゃないだろ」 「ああ!!」 等々力のバズーカによって吹き飛ばされたゲノムだったが、やはりほとんど無傷である。 何も言わずにこちらへ向かってくるのが見えた。 「クソッ!なんで手応えがねぇんだ!?」 持っていたチェーンガンを投げ捨てながらパイフーががなる。 「そんなもん何の役にも立たん。ヤツに銃撃は通用しないようだからな」 「ケッ!なんでてめぇにそんな事が分かるんだよ!」 「ヤツの事、ある程度知っていてな。こんなまともな戦闘じゃ勝ち目は無い。二人とも乗れ!?」 等々力はどう言うと乗っていた車のドアを開けた。 「どうするんだよ!」 「どうするもこうするもない、逃げるのさ」 「に、逃げるだとっ!」 鬼武とパイフーが同時に叫んだ。 「お前ら自分たちの身の程を知った方が良いぜ。あいつはお前らの相手に出来るヤツじゃない」 「くっ!」 鬼武もパイフーもその事は薄々感じ取っていた。本能が戦う事を恐れているのだ。 そうしている間にもゲノムはこちらへ向かってくる。 「ニガサンゾ・・・・ムシケラ・・・」 「さっさと乗れ!死にたくなかったらな」 「クソッ!」 パイフーは後部座席に、鬼武は助手席に乗り込んだ。 「ちゃんと掴まってろよ、いくぜ!」 等々力の車が急発進すると、西へ向かって爆走を始めた。 「あのヤロー、追ってくるぞ!」 バックミラーを目にした鬼武が叫んだ。 「チッ!」 パイフーは窓から身体を乗り出すと、持っていたマシンガンで応戦する。 銃弾は命中するがダメージは受けていないようだった。それが証拠に向かってくるスピードは落ちない。 「等々力、もっと飛ばせ!追いつかれるぞ」 鬼武が叫ぶ。 「言われなくても分かってらぁ!」 等々力の改造車はけたたましいエンジン音を響かせ、更に加速した。 鬼武も等々力の持っていたバズーカを乱射する。車のスピードが上がったおかげでゲノムとの距離は開いた。 「これじゃ何処まで走っても安心出来ねぇぞ」 パイフーが撃ちながら叫んだ。 「いや、ヤツもバカじゃない。そのうち追うのを諦める」 「本当かよ!?」 「ああ、事実だ。ヤツは一度に長い時間動く事は出来ないんだ。エネルギーが減って行くからな」 「なんでそんな事まで知ってんだよ!」 鬼武が聞いた。 「後で話す。今は飛ばすのが先だ」 そう言うと等々力の車は更に加速を増した。 ゲノムの姿が見えなくなった。どうやら追うのを諦めたらしい。 姿が見えなくなってもうずいぶん経つが、等々力はアクセルを緩めなかった。 「どうやら諦めたらしいぜ」 「そうみたいだな」 パイフーと鬼武は安心したように言った。 「それにしてもお前が等々力かよ。噂には聞いていたが、ずいぶん優男だな」 パイフーは嘲笑うように言った。目鼻立ちの整った等々力は確かにそんな感じに見える。 見ようによっては紅と同じくらいの美形だ。 「優男で悪かったな。腐れヴァンパイア」 「んだとっ!てめぇ」 二人とも口の悪さが共通点のようだ。 「まあまあ、二人とも。今は喧嘩している場合じゃないぞ」 鬼武がなだめた。 「お前が魔界に居るって事は、鮫島も・・・・まあ俺は会った事は無いが」 「ああ、来てるぜ」 「鮫島まで来てんのか!!ムカつく連中のオンパレードだな」 パイフーは一度殺し合いの戦いを繰り広げた相手、鮫島を思い出した。 あの時は痛み分けだったが、気に入らないものは気に入らない。 「お前何処まで知ってんだ。あのモンスターのこと」 鬼武が切り出した。 「ヤツはゲノムと言って、見たとおり魔物だ。噂じゃ神殺しウルよりも強いって話だ」 「な、なに!あのウルよりも強いってのか」 「ああ。ウルサイドはゲノムを抹殺しようって事で動き出している」 「なんでそこまで知ってんだ、俺たちの方が先に魔界にいたはずだぜ」 パイフーが言った。 「無論、俺だってタダで仕入れた話じゃない。2時間前まで俺はNo,2の紅とか言う少年と一緒だったからな」 「紅!!」 「彼からいろいろ聞いたんだ。つうかまあ、彼が一方的に喋ってたんだけどね」 話し好きの紅には「口外しない」なんて言葉は存在しないのだ。 「一体どうなってんだ、鮫島は居るは、お前は紅と繋がりはあるは、ややこしくなって来たな」 パイフーが頭を掻きながらそう言った。 「鮫島は茨木童子を追って魔界に来た。俺はそんな彼を無事に生還させために来た。 そしてウルたちはゲノムを始末しようとしている。そんな中お前たちは本当ならウルたちが手を下すはずだったゲノムにちょっかいを出し 見事に巻き込まれたってわけだ」 「別にちょっかい出したわけじゃないぜ。向こうからやって来たんだ」 鬼武がそう言う。 「同じ事だろ。お前らはもう覚えられてるぜ。いずれ狙われる」 パイフーも鬼武もゾッとした。本心を言ってしまえばもう二度とカチ合いたくない相手である。 「んで?なんでお前が俺たちを?」 「その紅から聞かれたのさ。パイフーと鬼武ってお兄さんの仲間なんでしょ?って」 「いつから仲間だっけ?」 「俺もそう思った。それで紅を送り届けた先でお前らに遭遇したってわけだ」 「ふう〜ようやく話が見えてきたな。パイフーよ」 「ああ、まったく疲れたぜ」 「あのゲノムとか言うヤツ、この後どうするんだ」 「多分、紅の下へ向かうだろうな」 「紅の?」 「もしそうなら好都合だな。No,2ならチョチョイと始末してくれるさ」 「ところがそうも行かない」 「なんでだ?」 「お前らはまだ知らんようだな」 「なんだよ!?」 「No,3の魔矢がやられたらしい」 「なっ!?」 意外な事実だった。勿論、初耳の情報だ。 「やられたって、まさか死んだのか、あの男が・・・」 パイフーの鬼武も唖然食らったように驚いている。 「そこまでは分からない。ただこっちへ向かう途中に出くわした殺人鬼たちが、ゲノムにやられる魔矢を見たと言っていた」 「信じられねぇ・・・あの魔矢が・・・」 パイフーはかつて自分の下へ訪れてきた魔矢と紅を思い出した。 一目で分かるほど、彼らの強さをひしひしと感じたのを良く覚えている。 連中の強さは本物だ。とてもじゃないが自分たちで太刀打ちできる相手ではない。おまけにそれ以上の強さを誇るモンスターまでいる。 パイフーと鬼武は改めてとんでもない世界へ来てしまった事を実感した。 「ところで何処へ行くんだ?」 「もうお前たちはゲノムに記憶されちまったからな。とりあえず俺のアジトへ行く」 「お前のアジトに?」 鬼武の問い掛けに等々力はそう答えた。 「安心しろ、絶対に見つからない場所だ。後の事はアジトについた後ゆっくり考えれば良い」 「いずれにしてもお前のおかげで助かったぜ。一個借りが出来たな」 「恩を仇で返すような真似はしないでくれよな」 「口の悪さは鮫島ソックリだぜ」 「なんか言ったか?腐れヴァンパイア!」 「てめぇ〜な〜!」 等々力の車は西へ西へと向かった・・・。 END |