4 「神殺し」〜もう一つの出会い〜
魔界の郊外にある古のダウンタウン。そのダウンタウンの様子を一望できる高台で ウルと魔矢は望遠鏡でとある二人組みを眺めていた。 二人の視線の先にいるのは、想像以上の強さを誇るパイフーと鬼武の姿だった。 10人もの殺人鬼たちを送り込んだのは決して間違いではなかった。 何故なら望遠鏡の先では既に7人もの殺人鬼たちがあっさりと殺され、無惨な姿となっているからだ。 「この分じゃヨシミと洋一も時間の問題だな」 望遠鏡から目を話さずに魔矢が言った。 「残りの一人は誰を送ったんだ?」 「ミスターLだ」 ウルの問い掛けに魔矢が静かに答えた。 「ほう、Lを向かわせたのか。これは面白くなりそうだな」 「ああ。他の殺人鬼たちは楽に始末できても、Lまでそう行くとは思えんからな」 魔矢がそう言った瞬間、視線の先にあった建物から巨大な炎が上がった。 「ヨシミと洋一はオダブツだな」 ウルがにやけながらそう言った。 「ま、あいつらじゃ無理だろうな。だが、果たしてLまでそう上手く行くかな」 魔矢の目は真剣さを保っている。 「最上級レベルでもLはその中級に位置する殺人鬼。連中がどうやって戦うか見物だ」 ウルも楽しそうに望遠鏡で眺めている。 「さて、いよいよLのお出ましだぞ」 鮫島 聖が魔界に降り立ち、ダウンタウンでLと出会う30分前、 鮫島 聖はとある場所で奇妙な少年と出会っていた。 「お兄さん♪ずいぶん物騒な刀持ってるね」 「ああ?」 振り返るとそこにはまだあどけない少年がニコニコ笑いながら立っていた。 目鼻立ちの整った青年だが、見ようによっては少年のようにも見える。 「なにか用か?小僧」 「サメジマ セイさん・・・・だよね?」 その瞬間、鮫島 聖の身体に緊張が走った。彼はたった今魔界に下りたばかりで、誰とも会っていない。 にも関わらず自分の名前を知っているとはどう言う事なのか・・・。 「小僧、なんで俺の名前を知ってやがるんだ?」 「お兄さんだけじゃないよ。そっちの刀さんも知ってる。妖魔刀・鬼三さんでしょ?」 「バカな!何故知っている!?」 今度は鬼三が喋った。 「お兄さんたちの事はいろいろと調べさせてもらったよ。勿論、あっちで戦っているパイフー・鬼武の事も知っているけどね。 でもパイフーと鬼武にはウルと魔矢が興味を持ったみたいでさ。僕一人になっちゃって退屈しているんだ」 「ウルに魔矢だとっ!じゃ、じゃあお前はまさか・・・・」 鮫島 聖の額から嫌な汗が流れた。その同様は妖魔刀・鬼三にも伝わっている。 「自己紹介が遅れたね。僕の名前は矢吹 紅。この魔界でNo,2の人間さ。通称【処刑の紅】」 そんなバカな・・・・鮫島 聖の脳裏にそんな言葉が浮かんだ。 魔界に降り立って早々、まさかその魔界のNo,2が自分の目の前に現れようとは、誰が想像するだろう。 (じょ、冗談じゃないぜ・・・いきなり紅かよ・・) 鮫島 聖の思想が大きく乱れた。 「フフン♪まあまあそう警戒しないでよ。別に殺しにきたわけじゃないからさ。僕はお兄さんの持っている刀に興味があるんだ」 「鬼三に?」 「うん。妖魔刀・鬼三・・・小ぶりな刀身だけど、名の由来の通り、鬼を三匹、縦に重ねて一気に斬りおとすことが出来る。 その切れ味は、最高にして、残忍、かつ、慈悲深い。鬼三に斬られし犠牲者は、腕が、脚が、胴体が吹き飛ぶ様を見て 初めて斬られた事実を、思い知らされる。そんな、高貴で野蛮な鬼三は、まさに【鬼】を、【魔】を切り裂くべくして、生まれた。 徳川家光の時代に創られし、無敵の切れ味を誇る古い刀・・・でしょ?」 「若いのに良く知ってるな」 鬼三が答えた。 「うん。勉強したからね」 「そうだとしたら何だというんだ?」 今度は鮫島 聖が言った。 「実は僕も刀が好きなんだ。でね、僕と手合わせ願えないかな?と思ってるんだよね」 「手合わせだと?お前刀なんて持ってないじゃないか」 「あるんだな〜これが。ジャジャ〜ン!」 そう言うと紅はどこに隠していたのか一本の刀を取り出した。 「さて問題です。この刀の名前はなんでしょう?」 「あれは・・・まさか!!」 「どうした、鬼三」 「フフン、分かるかな〜」 紅の取り出した刀を見て、鬼三の様子が変わった。 「聖よ、まずいことになったぞ」 「なにがだ?」 「あの小僧が持っている刀。あれは伝説の名刀【天叢雲剣】(あめのむらくもつるぎ)じゃ!!」 「天叢雲剣だとっ!!!」 「ピンポ〜ン、さすが刀さんだね」 紅は相変わらずニコニコしている。 鬼三は静かに語り始めた。 「【天叢雲剣】・・・・、三種の神器の一つで草薙剣(くさなぎのつるぎ・くさなぎのけん)・都牟刈の大刀(つむがりのたち)・八重垣剣(やえがきのつるぎ)とも称される スサノオ(須佐之男命)が出雲国で倒したヤマタノオロチ(八岐大蛇、八俣遠呂智)の尾から出てきた太刀で、天叢雲という名前は、ヤマタノオロチの頭上に常に叢雲が掛かっていたためとしている。 その破壊力は神をも砕く威力と称され、後に出てくる【正宗】【菊一文字則宗】、更には聖剣エクスカリバーをも凌ぐと言われる 伝説の名刀だ」 「そんなバカな、どうしてあんな刀をコイツが・・・・」 「まあいろいろあってね。廻り廻って僕が手にしているわけさ。どう?僕と戦ってみない?交えるだけで良いから」 「どうする?鬼三」 「良く考えて行動する事だ。あいつは殺さないと言っていた。ここでヤツの機嫌を損ねるのは賢いやり方ではない」 「やるしかないのか・・・」 鮫島 聖は正直怯えていた。相手が悪すぎる。だがしかし、その一方で刀を持つ者として「戦ってみたい」と言う 武士の信念のようなものが芽生えているのも事実だった。 天叢雲剣である以上、相手にとって不足は無い。 「そうだ、お兄さんたちって茨木童子のこと探しているんでしょ?」 「そ、そんなことまで知っているのか!?」 「まあね。僕、茨木童子に関する情報ちょっとだけ知ってるんだけどな〜例えばどの辺にいるとかぁ〜♪」 「お前とやり合えば教えてくれる・・・・と言うわけか」 「ご名答。お兄さん頭良いね」 「良いだろう。我が名刀【鬼三】の破壊力、とくと味わうが良い」 「フフン、そうこなくっちゃね」 鮫島 聖は妖魔刀・鬼三を構え、紅は天叢雲剣を構えた。 「いざ、尋常に・・・」 「勝負!?」 それはまさに一瞬だった。互いの刀がわずかな衝撃と共に交じり合い、中央で火花を散らす。 二人の姿は一直線上に平行移動し、やがて止まった。 「うへへ、さすが鬼三。こりゃ痛いや」 紅の右手、手の甲がバッサリと裂け、血が流れていた。 だがしかし、負傷したのは紅だけではない。 「天叢雲剣・・・凄まじい破壊力・・・だ・・・」 致命傷には至らなかったが、鮫島 聖の左脇腹に細長い亀裂が入り、血が流れた。 両者痛み分けである。 「ありがとう、いやぁ〜斬られるのって痛いよね。でも楽しかった」 「楽しいとは言えないが、正直ここまでの威力とは思わなかった」 鮫島 聖の額から流れる汗は止まらない。 「そうそう、茨木童子のことだけど、僕の知っている情報によると 茨木童子は魔界の鍋蓋と言う場所に良く現れるって話だよ」 「魔界の鍋蓋?」 「そう。文字通り魔界の蓋の部分。蓋の下は地獄。ここ魔界の最北端にある魔界と地獄を繋ぐ境界地の事さ」 「魔界と地獄を繋ぐ境界地・・・・そこに茨木童子が・・・」 「まああくまで情報だから正確さには欠けるけどね。んじゃ、ありがとう。また今度遊んでね」 そう言うと紅は片手を振って去って行った。 魔界と地獄を繋ぐ境界地、茨木童子、そして矢吹 紅・・・・。 宿敵が増えそうな予感に駆られながらも、鮫島 聖は魔界の鍋蓋へと向かった・・・。 END |