脱皮



タランチュラは脱皮します。
蜘蛛が脱皮!?と驚かれる方が結構いますが、それは案外当たり前の事です。
脱皮と言って、非常に有名なのは蛇ですが、蛇を含む爬虫類や、その他の生き物、たとえば両生類、昆虫等にも多く脱皮が見られます。
もっとも、脱皮の方法にも色々ありまして、蛇の脱皮のようにズルっと抜けるばかりではなく、たとえば爬虫類だと、それこそ日焼の皮が剥けるかのごとく、ボロボロと脱皮するものも多いのです。
さて、蜘蛛の脱皮。
これはタランチュラに限った事ではありません。
蜘蛛の巣、及び蜘蛛をマジマジと観察するといった機会は少ないかもしれませんが、案外蜘蛛の巣には脱皮の殻がついている事があります。
そもそも、虫の脱皮という事に違和感を覚えられる方が多いかもしれませんが、虫の脱皮なんて当たり前の事で、たとえばセミの抜け殻なんてありますよね?
あれも、地中で暮らす幼虫であった彼等が、成虫として大空を羽ばたく体型になるべく、大改造を行なった時の抜け殻であるわけです。

蛇の脱皮殻は、姿がそのまま残るので有名ですが、体色等まで残るわけではありません。
大抵が薄茶色の、なんだか煤けた蛇っぽい形の何かにすぎません。
しかし、タランチュラの脱皮殻はそんなものではありません。
下の写真を見て下さい。


この写真は、カーリーヘアー Brachypelma albopilosum を、彼女の脱皮殻と並べて撮った写真です。
左が脱皮殻、右が本体です。
どうですか?
まるで2匹が並んでいるかのようではありませんか?
そう、タランチュラの脱皮は、皮のみならず、毛も、牙ですらもそのままの形で残るのです。
タランチュラを飼育し、初めての脱皮を経験した人の多くが、突然この脱皮殻を見て、「2匹に増えた!?」と驚いてしまうのも無理がないでしょう。
この脱皮殻は、もちろん成長につれて大きなものが残る事になるので、これを順次保管しておけば、彼等の成長記録としてうってつけでしょう。
ただし、毛に毒性を持つタランチュラの脱皮殻の毛には、その毒性が残るので、皮膚の弱い方はくれぐれも扱いに注意してください。
脱皮したての殻は柔らかいので、それをとる事ができ、形を整えて乾かせれば見栄えの良いものになるでしょうが、そうでない場合は、丸まってしまっている脱皮殻に霧吹きをし、湿らせれば形をまた整えられます。

さて、なぜ脱皮などをするのでしょうか?
それは成長のためです。
ですから、急激に成長する幼体の時は頻繁に脱皮しますが、成長につれそのペースは遅くなっていきます。

成長のための脱皮、どういった周期で脱皮するのでしょうか?
餌を食べ、食べ、食べ、満腹になると脱皮の準備を体内でし、それが完了すると脱皮するわけです。
飼育下では、数日に一度餌をとり、それに比例しどんどん腹部が膨らみ、満腹したら、数日〜1ヶ月程度(これは種類やサイズによって違います。また、数ヶ月かかるものもいます。)絶食し、そして脱皮をするというわけです。
脱皮によって成長するわけですから、脱皮後、以前の倍ほどにも育つ場合もあります。
腹部がそれほど膨れていなくても脱皮する事もあります。
これは、たとえば自然下で、餌を豊富に取れなかったりした場合に多いように思います。

脱皮、経験した人ならばすごいぜ!と、共感していただけると思うのですが、この脱皮というのは、彼等タランチュラにとって一大イベントと呼んでよく、また、事故の起こりやすい時でもあります。
タランチュラは脱皮前後は身体が不安定になります。
脱皮前、彼等は体内で次なる身体を作りあげているわけです。
そして、脱皮の時に、その作られた体を体外に出すわけです。
ですから、脱皮前の彼等の体内には、グニャグニャの次の身体が詰まっていて、また、それが体外に出た時も、身体は固まりきってはいない状態になっているのです。
ですから、脱皮前後はなるべく衝撃等をあたえず、そっと見守る事をお勧めいたします。
たとえば、脱皮直後に衝撃を与えたりして、脚等が曲ってしまうと、そのままの形で固まってしまい、彼等は非常に不自由な思いをする事になるでしょうから。
脱皮後、身体が完全に固まるのに、幼体だったら数日、成体に近ければ1週間以上かかると思っていて良いでしょう。
脱皮準備から脱皮後身体が安定するまでの期間は餌をとらなくなります。
ですから、その間は無理矢理餌をあげようとはしない事をおすすめいたします。
コオロギ等に攻撃され、怪我、最悪死んでしまう可能性もあります。

脱皮中はどうでしょうか?
幸運にも彼等の脱皮シーンを見る事ができれば、まさに驚異的なものでしょうが、興奮してやはり衝撃を加えたりしないように。
彼等の脱皮は、まさに彼等の命懸けの行為と言っても過言ではないからです。
彼等は体内でつくりあげた次の身体を体外に出すために、頭胸部の表側を外し、そこから出てくるのです。
その姿は驚くべきものですが、彼等にとっては必死の作業ですから。
出てきたばかりのタランチュラは、透き通らんばかりに美しく、牙もまだ白いです。
が、まだ身体が乾燥しきっておらず、非常に不安定で歩く事もままなりません。
とにかく、そっとしておきましょう。
やがて皮膚が乾き、安定すると餌を求めて動き出す事でしょう。

脱皮以前に欠落した脚があった場合、脱皮であっさりと復活します。
が、幼体ならばすぐの復活も望めましょうが、大きな個体の場合、復活したての脚は細く弱々しいもので、これは数回の脱皮を経験しないと完全には復活しないでしょう。

多くの生き物がそうですが、脱皮には湿度が大いに関連してきます。
脱皮の兆候を感じた時は、とくに湿度の管理に気をつけるべきでしょう。

脱皮不全というものがあります。
脱皮中に衝撃を受けてしまったり、湿度が不足していた場合等に、うまく脱ぐ事ができない場合があります。
とくに脚部の脱皮が難しいようで、脱皮に失敗すると、脚部の欠落、悪くするとそのまま死んでしまったり、無理矢理脚を千切る事によって出血死してしまう場合もあります。