マーサ・ワシントン
その1
(この写真は Founders of Americaより拝借しました。)
www.foundersofamerica.org
ワシントン大統領夫人、マーサが誕生したのは、ウィリアムスバーグの北を流れるヨーク河の支流、パマンキ川ーの畔にあるチェスナット・グローブ・プランテーション。父、ジョン・ダンドリッジは, 兄のウィリアムと共に17世紀後半, 開墾間もないジェイムスタウンに入植するや法廷に役職を得、その後上司の親類の娘と結婚、農園経営に乗り出します。一方、既に英国海軍の士官であったウィリアムは植民地総督により参議会議員に任命され、裕福な家庭の娘と結ばれパマンキーの対岸に下付された広大な地所に農園を開きエルシング・グリーンと命名します。
バージニア東方の低地沿岸地帯、タイドウォーターにあるこの辺りのプランター(農園主)達が先住民からの襲撃を危惧することは、ダンドリッジ兄弟が入植した頃までには殆どなくなっていました。パマンキー、チカホミニー、ナンセモンド等同地域に先住していた原住民諸族は1622年そして1644年の二度に渡る交戦に破れ西方に追いやられてしまっていたからです。
パマンキー川を挟んだ両岸にそれぞれ土地を入手しプランテーションを営み始めたダンドリッジ兄弟。兄のウィリアム・ダンドリッジは難なく出世街道を昇って行きます。彼の息子ナサニエルは、植民地総督アレキサンダー・スポッツウッドの娘、ドロシア・スポッツウッドと結婚。その娘ドロシア(母と同名)は、何と、英領からの独立を煽ったパトリック・ヘンリーの再婚相手となります。パトリック・ヘンリーに関しては後述しますので是非お読み下さい。
ところで、マーサ・ワシントンの従兄に当たるナサニエルの妻ドロシア・スポッツウッド・ダンドリッジの姪はバージニアの大富豪、ロバート・キング・カーターの孫チャールズと結ばれ娘アンをもうけます。成人したアンは名門リー家に嫁ぎ出産した息子にロバートと命名しますが、何を申しましょう、この人物こそ後年南北戦争で名を馳せ南軍の英雄と呼ばれるようになったロバート・リー将軍。彼はやがてマーサの曾孫と婚姻を結ぶことになるのです。
拙ホームページ(バージニアのポカホンタス)を読んでくださった方は覚えていらっしゃると思いますが、マーサ自身チャールズ・カーターとの縁談が持ち込まれたことがあります。ただし筆者の推察では同姓同名でもマーサの縁談相手はロバート・キング・カーターと先妻エリザベス・ランドンの次男。ここで挙げるチャールズは、キング・カーターの孫(後妻ジュディス・アーミステッドとの間に生まれた長男ジョンの息子)です。
先妻だの後妻だの、といちいち付け加えてそうでなくとも入り組んだ関係をさらに判り難いものにしているように思う読者もおられるでしょうが、当時のバージニアの社会には子供や孫に親や先祖の名を付ける慣習があり一族に同姓同名の人たちが頻繁に出没するのでこうして区別せざるを得ません。バージニアのポカホンタスでも触れましたが、筆者の読んだある本にもマーサの縁談相手チャールズは上記のアンの夫と同一人物ではないかと誤解を招くような一節がありました。
パトリック・ヘンリー関しては別章を設けますが、彼の先妻の死因が当時の人々の口の端に上るようなスキャンダラスな事件であったためかマーサはパトリック嫌い。彼女の結婚に反対でした。ドロシアの弟、ウィリアム・アレキサンダーの方はアン・ボーリングを妻に娶っています。このアン・ボーリングという女性、彼女の代から僅か5代遡るとあのポカホンタスに繋がる、という由緒ある家柄の出。
20世紀初頭、バージニアの先住民は先住民は黒人同様有色人種とみなされ公共施設やバスなどで差別を受けるようになるのですがどういう訳かポカホンタスの血を受け継いでいる白人達は例外的にむしろそれを誇りとして振舞っていた気配があります。因みに、このボーリング家からは、3代目大統領、トーマス・ジェファーソン (七章で触れますが) の母方の大伯父と結ばれている女性もいます。つまり、ジェファーソン家とワシントン家は遠縁関係、ということになる訳ですね。
後年ジョージ・ワシントンと再婚するマーサですが、実家のダンドリッジ家の方がワシントン家より数倍も当時著名なバージニアンと繋がりがあることに驚かされます。九代目大統領、ウィリアム・ヘンリー・ハリソンもマーサの義弟 (妹の夫で、バーウェル・バセット) の甥(注)に当たり、系図の絡み様は唖然とするほどです。
(注)バーウェル・バセットの姉エリザベス・バセットと彼女の夫ベンジャミン・ハリソン五世の息子がウィリアム・ヘンリー・ハリソン。因みにその孫ベンジャミン・ハリソン六世は23代目合衆国大統領となります。ウィリアム・ヘンリー・ハリソンに関してもこのホームページに記載する準備をしたますのでご期待ください。
マーサの伯父とその家族の紹介が先になってしまいました。マーサの話題に戻りましょう。彼女はジョン・ダンドリッジとフランシス・ジョーンズの長女。母方の祖父オーランド・ジョーンズは弁護士で植民地参議会議員、そして祖母はマーサ・メーコン。次頁にお進み下さい。
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