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ハル回顧録 (中公文庫BIBLIO20世紀)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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ハルノートは誤訳の産物
大戦前から大戦後までのアメリカと欧州の動きがわかる書。大戦中からすでに冷戦は始まっていたこともわかる。
なぜ日本と日本人を開戦前からここまで敵視していたのかが不明だが、それ以前の日本の動きである三国同盟と中国・仏印侵攻などが絡んでいるのだろう。かつては清国に広大な特別地域を確保していたアメリカが、日本の中国・仏印侵攻が原因で敵視するというのも勝手な話だ。
日本の敗戦後、インドネシアは再度植民地にされそうになり、オランダと戦火を交えたのだから、ハルの「武力による領土拡大は行うべきではない」という思想は裏切られたのだが、一言も触れていない。
対米交渉に当たった来栖氏の回想録では会談は和やかな雰囲気だったとか歓迎されたと書かれているだけに、ハル氏の内面とのギャップに驚かされた。
国際関係を重視しているが、それも根本は自国の国益が第一という外交畑の基本を守っていた人物としては評価できる。諸外国との交渉や判断については自分を美化しているきらいもあるが。
ハルノートについては、数回前の交渉の段階では当時の日本にとって非常に有利な条件が提示され、それでも日本はより多くの譲歩を求めていた。これらは日本から暗号で指示されていたのだが、アメリカには筒抜けだった。
ハルノートという最後通牒にアメリカが一気に転じるのは、通信傍受→日本語を翻訳というレベルで、戦争が近くなったことでその部門から日系人が排除されたことによる「大誤訳」が原因と言われている。同音異義語の翻訳すら間違える状況では日本語の細かい表現は正しく翻訳されなかった。「最終案」が「最後通牒」と誤訳されるような状況だったのだ。
また、この回顧録には重要な文言が含まれている。アメリカは日本の真珠湾攻撃を知っていた、と当時の国務長官が述べている。その上で日本からの文書の手交が遅れたことを「日本の策謀」と断じている。
さらに、「宣戦布告前に奇襲する国に対して交戦規定を守るべき理由がない」とも言っている。その結果が民間人への空襲であり、原爆の投下だったのだ。あらかじめ日本の攻撃を知っていてこの発想が生まれるのは異様である。
最後に記されている民主主義と国際協調に関する未来への提言は「理想論」ではあるが、実に名文である。この部分だけは素直に受け取ることをお奨めしたい。
A級戦犯がノーベル平和賞?
「ハル=ノート」が、事実上、日本に対する宣戦布告であり、真珠湾攻撃を導き出した「最後通牒」であったことは、戦後の、特に最近の「進歩的文化人」の影響を排した文壇で取り上げたれているし、さかのぼって、その存在自体を否定すべき「東京裁判」でも鋭く指摘されていたことである。
「ハル=ノート」は、今まであまり強く言われなかったが、実質的にアメリカ側からの日米開戦の「宣戦布告」であった。
太平洋戦争の責任者がA級戦犯として処罰されるのであれば、私は、
コーデル=ハルは、東条英機と同格かそれ以上と考える。
彼は、その後うまく立ち回って、日米数百万人の損害を出したことについての責任を問われることなく、生涯を終わる。
それは、歴史的に正しいのであろうか?
間違ってる!!!
貴重な記録
日本を徹底的に敵視しているのは悲しいが、当時の時代背景を考えるとやむをえないだろう。それはそれとして……この本全体から感じられるのは、世界の自由を守ろうとする勇気だ。その点ではチャーチルの『第二次世界大戦』にも匹敵する書物だと思う。スターリンを褒めるなど今から思えば不思議に思える点もあるが、そういう時代だったのだろう。のちの世界自由貿易体制とのちの国際連合の設立−現代世界繁栄の根本と言えるだろう−の立役者の一人はハルだったのだなとわかる好著だ。
ほかの史料と併せ読むと面白い
フランスへの航空機緊急輸出、英国への駆逐艦譲渡、国際連合をめぐる動きなど実に面白い。
ルーズベルトやチャーチル、モーゲンソーとのからみや考え方の違いが興味深い。
中央公論新社
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