A:「なぁなぁ、田口トモロヲって知ってる?」
B:「はぁ?誰よそれ。トモロウっていうからには外人?ハーフ?」
A:「もう、ええわい。」
--チャンチャン--

 自称「田口トモロヲ」ファンのAさんはいっつもこんな仕打ちを受けます。  
 最近の日本映画は黄金期までとは言わないけれど、新しい世代の監督(*1)が出てきたことによって、活気を取り戻しつつあります。でも、非ハリウッド系の映画好きか、ちょっと小洒落た映像が好きな若い人 しか観て無いのが現状なのです。そういう人達だけが独占するのも勿体無い、こんな目くるめく世界(の予定)を知らない方がもっと勿体無い!人生なんてあっっっちゅう間、ここで田口トモロヲに出会えた事も何かの縁!? 「いっちょ田口トモロヲに気づいてやろうじゃないか。ついでと言っちゃなんだけど日本映画も観てやろう じゃないか。」そんな貴方を待っておりました。そうして貴方の心に浸透していく田口トモロヲの存在。 そして活気を取り戻す日本映画。なんと麗しい構図なのでしょう。最後まで責任を持って(?) ワタクシ祥子がお送りしたいと思います。  
 まず最初に映画を見たこと無くとも「田口トモロヲ」って名前は観たことはあるハズ。 顔は知らなくても字ぐらいは記憶の片隅にでもあるかもしれない。名前のインパクトは強く、その印象から好きになる人も多いくらい。 なんで「オ」が「ヲ」やねんとか思ったでしょ?はい、もうそれ、第1段階クリア。 ここで名前は既にインプットされました。ファン化計画第1段階終了です。 
 お次は顔です。う〜ん、こっちも説明に苦労するぐらい普通なんです。 名前はまだしも、顔が一致しない。田口トモロヲの顔は本人も気にしてるくらい名前負けしてるんです。だから印象にも残らない。いいとこ無しのようですが、コヤツあなどれんのです。このCMなら眼にしたことはあるでしょう。川で魚釣りに出掛ける父子。「釣り仲間ができた日、お金では買えない価値があります。」のナレーション をバックに釣った魚を美味しそうに食べる父子。そう、「マスターカード釣り編」の父親が田口トモロヲ なんです。この30秒足らずのCMには実は凄いドラマ(*2)があるのです。いくら家族団欒の家庭で見ても心に染み渡るんです。それを知った上であのCMをご覧下さい。今までに感じなかった事が30秒で感じれます。少し感情的に成りましたが、これで顔はもなんとなく判った気がしますね。 はい、勝手ですけど第2段階へステップアップ!ステップアップ!  
 さてお次は日本映画の名脇役という所をお見せ致しましょう。 昨年の暮れに話題騒然だった新撰組隊士のお話、世界の大島が帰ってきた!と唄われてた『御法度』(*3) にも出演していたのです。松田龍平扮する、加納惣三郎に言い寄る隊士としてそれに松田龍平のファーストキス(*4)を奪った男として大々的と言いたいところだけど、全然取り上げてもらえず、予告も浅野忠信とのシーンが放映。本編では唯一の濃い濡れ場シーンとしてあったのにも関わらず、酷い仕打ち(*5)を受けた作品なんです。
 一番美味しい所を持っていったのに一言も台詞の無かった神田うの(*6)よりもエンドクレジットの扱いが悪かったり、 観終わった観客は、「ちょっと〜あの人気持ち悪いよぉ〜!」とまで言われる始末。だがその観客はもう、 トモロヲファン化へ着々と進んでいるのであります。「気持ち悪い=気になる」もうそれで充分。予備軍なのです。  
 続いては大島渚と並んで世界に名を馳せる今村昌平。先日のカンヌ映画祭では『御法度』は無冠でした(*7)が、過去にカンヌで大島渚は今村昌平の敗れました。(*8) そして一昨年のカンヌ映画祭で2回目のパルムドールを受賞(*9)した今村昌平の 『うなぎ』(*10)。これにも田口トモロヲは出演(*11)しているのです。田口トモロヲは、若手の監督(*12)以外にも、大御所と言われる監督作品にも出ているわけですよ。 ここでちょっと凄いんちゃう?とか思ったでしょ? まぁ、顔はこの二つの作品で確認でもして貰うって事にしましょう。
 それで「トモロヲって気持ち悪いね〜」と思った貴方は負け。寝る時に気をつけましょう。夢にトモロヲが出てきます。今のところ、78%の確率です。(普及委員会調べ)  
 日本映画の財産なんて言われたりしてる田口トモロヲですが、実は『御法度』で田口トモロヲと共演した ビートたけしは浅草キッドに言われるまでそんな事知りませんでした。今までに出演した映画は18年で150本近くに上ります。でも、出演してるのなんてほんの数分なのが多いので撮影も数日で終わるんです。いわゆる「おいしいチョイ役」なのでございます。田口トモロヲの名で充分の宣伝効果が先ほど語った映画好きだけには通じるのです。だから「凄い、凄い。」っていうのは御門違い。それなら竹内力なんて一年に18本主役(*13)です。主役で18本!体ヤバイっしょ。 そりゃ、自分で事務所作るっしょ。儲けてるっしょ。 だからそんな数で比べても仕方の無いことなので、仕事ですよ。仕事内容! なので次回はそんな田口トモロヲの仕事内容に切りこみ隊長祥子が迫って行きたいと思います。

田口トモロヲプロフィール
本名:田口智朗 1957年11月30日 東京都生まれ
漫画家〜舞台美術〜舞台役者〜パンクバンドボーカル そして、現在役者を生業とする。
デヴューは1982年の『俗物図鑑』(監督/内藤誠)

 

 

*1 
岩井俊二・矢口史靖・是枝裕和・青山真治・SABU・石井克人・中野裕之 etc...

*2 
離婚して離れ離れになった父子が、月に一回許された時間で釣りをして過ごすという内容。2ver.あり、その一つに母に引き取られた息子を早朝車で迎えに行くシーンがある。

*3 

「御法度」チラシ。

*4 
16歳になったばかりの松田龍平のファーストキスを奪う。だが、映画では使ってもらえず・・・

*5 
今回の『御法度』大島組では怒られ役は全て田口トモロヲに回ってきた。正におこられ侍。

*6 
京都祇園の義太夫役。着物姿で歩くだけ。それが幸いしたという説も・・・

*7
第31回カンヌ国際映画祭で大島渚「愛の亡霊」で監督賞を受賞。なので次はパルムドール    を狙うが取れずじまい。

*8 
1983年第36回カンヌ映画祭で大島渚は「戦場のメリークリスマス」(主演デヴィット・ボウイ)を引っさげてカンヌ入り、最有力候補だったのにも関わらず、同じ日本の監督である今村昌平の「楢山節考」(主演緒方拳)にパルムドール賞を持っていかれる。

*9 
日本の監督でははじめての2回のパルムドール受賞。 1983年「楢山節考」1998年「うなぎ」

*10 

「うなぎ」チラシ。 内容:妻殺しで出所してきた人間不信の男(役所広司)が手伝う理髪店とその店の女(清水美砂)との話。

*11 
女(清水美砂)と付き合ってる男(妻子あり)の役。結構オイシイ濡れ場もある。

*12 
三池崇史・塚本晋也・SABU etc...

*13 ライフワークとも言える「ミナミの帝王」など。税金対策が大変らしい事務所は「RIKIプロジェクト」。服のブランドもあり、大阪に直営店を構える。


第一回
「トモロヲさんはこんな人」
執筆:祥子