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精霊の歌声♪

 

あるところに、「精霊の村 」というところがあった。

その村は、海の底にあるのかもしれないし、空の果てにあるのかもしれない・・・。

その村にウィンドという青年が居た。

ウィンドは風の精霊だった。ウインドには恋人がいた。その名はレシェンといった。

レシェンは音楽の精霊だった。

ある日、ウィンドはレシェンと一緒に村を歩いていた。

すると、二人は四角い小さなガラスのかけらをひろった。

レシェンが「これ、何かしら」と言うと、二人は見る間にすいこまれていった。

・・・「ここはどこなんだ?」ウィンドがつぶやいた。そばにレシェンの姿はない。ウィンドはレシェンを心配してあたりを見渡した。

すると、レシェンの身につけていた音符の首飾りが落ちているのを見つけた。

拾い上げると、レシェンの歌声が静かに響いてきた。

♪朝の光は一つの希望  希望の一日始まるよ  葉っぱの朝露輝いて

 光のメロディ歌い出す ♪ 

すると、どこから飛んできたのか、大きな葉っぱが舞い降りてきた。

ウィンドは導かれるようにその葉っぱに乗った。すると、

ウィンドを乗せた葉っぱは舞い上がり、一本の若い木へと向かい

飛び立った。若い木は元気に空へ向かってまっすぐ立っていた。。

ウィンドはその木の幹の中へと吸い込まれていった。

そのころレシェンは・・・気がつくとベッドの上にいた。

そして、まわりには、知らない顔がたくさんのぞき込んでいる。

レシェンは「キャッ」と小さな叫び声をあげて毛布に隠れた。

おそるおそる顔を出してみると、女の子と男の子、

それから、レシェンに似た生き物がフワフワ浮いて、心配そうな顔で見ていた。

すると、女の子がいった。「私は由香、ここにいるのは弟のひろゆきと

私たちの仲間の妖精たちだよ・・・。心配しないで、私たちは悪い者ではないから。」

まだ、呆然としているレシェンに由香は「私たちが学校の木に登って遊んでいたら、

あなたが急にあらわれて気を失ってしまったんだよ。登って遊んでいたら、

だから、私の部屋に運んだんだよ」

ひろゆきもいった。「君はここにいる妖精達に似ているね」そう言われて

レシェンはやっと落ち着いてきた。

「私は音楽の精霊、名はレシェンと言います。恋人のウィンドと一緒に

村を歩いていたら、ガラスのかけらに吸い込まれて・・・その後はなにも

わからない・・・いったいここは、どこなのですか・・?」

ここは、私たちの住む人間界、この妖精たちは、私たちの友だちで、特別に

人間界に住んでいるの。名前はティティ、ミィミィ、ウォークリーフ、

ブニプル、おやじクン 、茶ぽんベベベ、だよ」

レシェンはベッドから起きあがり、「助けてくれてありがとう」とお礼を言った。

しかし、レシェンはウィンドの事を思い出し、不安になってきた。

由香たちにウィンドの事を話すと、学校に行ってみようということになった。

 みんなは、レシェンを連れて、学校へと向かった。
「私たちがこの木のまわりで遊んでいたら、急にあなたが木から飛び出してきたんだよ。」と由香が説明した。

そばには、由香たちがいつも木登りして遊んでいる木があった。

その学校の木はいつも優しく、威厳に満ちていて、みんなを暖かく迎えてくれる。

レシェンが、じっと木の幹を見つめていると、木がざわざわと

震えだした。そして、若葉と一緒に若者が飛び出してきた。

レシェンは「ウィンド!!」とかけより若者を支えた。二人はホッとしたように喜んだ。

由香たちも二人が会えてよかった・・・と思った。

しかし、なぜ、この二人は人間界にやって来たのだろう・・・。由香とひろゆきは

不思議だった。しかし、このまま二人を放ってはおけない。

ひとまず、ゆかたちの家で対策を考えることにした。

 その夜のこと、晩ご飯をたべながら、ゆかたちに

「おい、おまえたちの学校、新しく立てかえるんだってな」

とお父さんが言った。お母さんも

「そうらしいね。新しい校舎で勉強ができるなんてよかったね」

と言った 。由香もひろゆきも

「えっっ!!立て替える?校舎だけ??」

とあわてて言った。お父さんは

「いや、校舎をきれいにするんで、ついでに校庭も広くして芝生をはるんだって、

来週には工事が始まるらしいぞ」

と言った。ゆかとひろゆきは慌てて夕食の席を立ち

階段を駆け上って自分の部屋に入った。

妖精たちや、レシェン、ウィンドがびっくりして

「どうしたの??」

と聴いてきた。(妖精や精霊達がゆかの家にいることは

お父さんやお母さんには内緒。びっくりして大騒ぎするから。)

「学校が新しくなるから、校庭も広くして芝生を貼るんだって・・・

っていうことは木も切られちゃうかも。

そうしたら、レシェンとウィンドは精霊界に戻れなくなるかもしれない」

みんなは慌てて良い考えはないかと話し合った。ウィンドが言った。

「ボクが風を起こしてあの木の幹に聴いてみよう・・・」

早速、みんなは夜の学校へと急ぎ、ウィンドが風を起こす呪文を唱えた。

しかし、この世界ではウィンドの風はただのそよ風・・・。

人間界では精霊の力が出し切れない。しかし、実はゆかとひろゆきは、

人間界のなかでも幻使いと呼ばれる魔法を使える人間たちだった。

ウィンドの力にゆかの魔法呪文「フィー」を加えると、たちまち強い風が起きた。

その風に乗り、とぎれとぎれ木の声が聞こえてきた。

「わしは樹齢300年になる。

この場所に生まれていろいろな出来事を見つめてきた。

しかし、もうすぐわしもこの場所から旅立たなくてはならん・・・

おまえさんたちも知っておるじゃろう?

わしは切られて、ここは広い芝生の校庭となる。

まことに残念じゃが、動けないわしにはどうしようもないことじゃ・・・。

じゃがの、わしには守りたいものがおる・・・。

すぐ傍にいるわしの小さな息子じゃ・・・。

精霊界から若者達を呼んだのもこのわしの大事な息子を

まもってもらうためなのじゃ。」

木の根本をふと見ると、そこには小さな木の芽がちょこんと顔を出していた。

精霊の二人、そしてゆかと浩之、妖精たちも、みんな黙ってしまった。

レシェンとウィンドは帰るどころではない・・・。

この木の子どもを守るために何かしなくてはいけないのだ・・・。

それが、この二人が人間界に送られた理由なのだ。

みんなはゆかの部屋に戻った。しばらく、静かな時間がながれた。

木の子どもを守る・・・いったいどうやって。二人にできることは・・・

良い考えもうかばず、次の朝を迎えた。
 

眠い目をこすりながら、ゆかとひろゆきは学校に向かった。

由香は授業中も昨夜の木の話を考えていた。

良い考えも浮かばないまま一週間がすぎ、いよいよ校舎の工事が始まった。

工事がおわるまで、ゆかたちは仮設の建物で授業を受ける。

遠くにガンガンとなる工事の音を聞きながら理科の授業中ふと、ひらめいた。 

「そうだ、ウォークリーフが持っている薬草、あれを使えるかも」

授業がおわって、急いで家に帰り、由香と浩之は、台所でウォークリーフの

薬草をつかって、魔法強化薬を作り始めた。お母さんが、

「おやつでも作るの?」

なんてお気楽なことを言っている。そんな言葉を無視して、

一生懸命魔法呪文書とにらめっこしながら作った薬は、

テントウムシをつぶしてしまったときに出る色とにおいがしていた。

そして、早速それをむりやりウィンドとレシェンに飲ませた。

二人とも苦しそうだった。しかし、すぐに魔法強化薬の効き目があらわれてきたようだ。

ウィンドの起こす風は強くなり、レシェンの歌声は心にしみわたった。

ゆかは言った。

「二人の力と私たちの力を合わせて、

木を切る計画をしている大人達に語りかけよう!」

そうして、みんなは、工事が終わった頃、誰もいない夜の校庭へ行き、

木のまわりで手をつなぎ、レシェンの歌声にあわせて一緒に歌った。

するとウィンドの風とゆかのフィー呪文の風が吹き上がり、気づいたら、

緑がいっぱいの広い場所に立っていた。

そして、そこには子どもたちがたくさん、鬼ごっこをしたり、かくれんぼしたり、

木登りしたりして遊んでいた。ふと、みんなの目に立派な木が映った。

「あっ、あの木は・・・」

そう、その立派な木はひろゆきたちの校庭に立つ木だった。

まだ、若い葉をたくさん茂らせて、元気に堂々と立っている。

そして、そこに子どもたちが登り楽しそうにはしゃいでいる声が響いている。

レシェンは優しく歌い、ウィンドはそよ風を送った。

 

そのころ、学校の工事にかかわる人たちに不思議な事がおこっていた。

みんな同じ夢を見ていたのだ。懐かしい、子どもの頃の夢。

みんな、木に登っている。そして、木の枝の隙間から見た空や雲や鳥や虫が

楽しげに歌っている。その夢を見た大人たちは、目覚めてからも夢の中の光景が

心の中から消えなかった。次の日、大人達は校庭の木を切ろうと準備していた。

しかし、大人達は、夢の中でみた風景を思い出していた。

そして、夢の中で聴いた歌声に耳を澄ましていた。

大人達の準備の手が止まった。夢の中で聴いた歌が、現実に聞こえてくるのだ。

それは、木の枝に座ったレシェンがウィンドのそよ風にゆれながら

歌っている声だった。大人達は、木を切るのがいやになった。

自分たちが子どもの頃にのぼって遊んだことを思い出したのだ。


木の枝に座って感じる風のにおいや、幹の暖かさを思い出したのだ。

ひとり、また一人と、大人達は木をきるのをやめて離れていった。

みんな優しい顔をしていた。遠くから見守っていた由香たちはほっとして、

木の傍へ駆け寄った。木の幹に手のひらをあてると、木の言葉が聞こえた

「ありがとう、この小さな息子だけでなく、わしの命も救ってくれた。

おまえさん達にはなんとお礼を言ったらよいか・・・

ありがとうよ」

みんなは、顔を見合わせて笑った。

「さて、精霊の若者たちよ、

おまえさん達を精霊界に戻してやらなければならんのう。

それには、ガラスのかけらが必要じゃ。

ここに来るきっかけとなったガラスのかけらはもっておるじゃろうの?」

レシェンは、「ここに・・・」

と言って小さな四角いかけらをとりだした。木は

「そのかけらを工事中の校舎の2階、階段脇の窓ガラスにはめるのじゃ。」

と言った。レシェンとウィンドはゆかと浩之の魔法力をかりて、

空に舞い上がると、言われた場所にかけらをはめこんだ。

その窓ガラスは工事が始まる前から、はじが割れ、かけてなくなっていたが

レシェンの持っていたかけらがパズルのようにぴったりとはまった。

すると、ガラス一面が波立ち、水が流れ、小さな水たまりができた。木は

「さぁそこに飛び込むのじゃ、この水たまりは精霊界へとつながっておる。

太陽の光で乾かぬうちに。さぁ」

と促した。レシェンとウィンドは手をつなぎ、ゆかたちにお礼を言った。由香たちも

「あなた達と出会うことが出来て良かった。元気でね、さようなら」

と、手を振った。そして、レシェンとウィンドは水たまりの中へ消えていった。

レシェンとウィンドが飛ばした水しぶきが木の子葉にかかって、まるで

朝露でぬれたように、キラキラと輝いていた。
 

レシェンとウィンドが目を開けると、目の前にはウィンドが吸い込まれた

若い木があった。若い木は葉っぱをそよがせてレシェンの歌を歌った。

「あっ、君は小学校の木の子ども・・・」

ウィンドがつぶやくと、若い木は嬉しそうに枝をふるわせた。そして

「ボクはあなたたちのおかげでこんなに立派な木に成長しました。

そして、ここはこんなに緑の豊かな土地になりました。

あのとき、あなたたちが優しい心を大人達に伝えてくれたから・・・」

そう。ウィンドとレシェンは今、未来に立ち寄っている。

まわりを見渡すと、植物も動物も人間も生き物全てが嬉しそうに

呼吸している。レシェンとウィンドはまた目を閉じた。

大きな葉っぱがまた、ウィンドたちを乗せて、空高く舞い上がり、

彼らを精霊の村へと送っていった。

ゆかと浩之と妖精達は小学校の木の枝に座っている。

ウィンドのそよ風とレシェンの歌声を感じながら・・・。
                                        おわり