教育基本法「見直し」の中間報告に対するわたしたちの見解
全国生活指導研究協議会常任委員会 代表 折出 健二
わたしたち全国生活指導研究協議会(全生研)は、1959年に発足した43
年の歴史を有する民間教育研究団体です。わたしたちは、「全生研指標」で
「生活指導運動を充実、発展させることによって、憲法と教育基本法の主旨で
ある平和と民主主義をめざす」(同第一項)ことをうたい、子ども・父母と共
に民主的な学校づくりに取り組んできています。
この見地から、わたしたちは、このたび中央教育審議会がまとめた教育基本法
「見直し」の「中間報告」に対して、以下のような基本的な問題点があると見
ています。
第一に、1947年に教育基本法が制定されて55年、この間、歴代の政府・
文部省は現行法の精神を実現すべくどのような努力と政策をすすめてきたの
か。その総括をまず文部行政みずからが行うべきです。それなしに「見直し」
は暴挙だということです。
第二には、準憲法的性格をもつ教育基本法の現状については、十分に教育現場
や父母・市民の声を聴き、「見直し」には慎重であるべきです。
さらに「中間報告」の内容には、以下のような問題点があります。
第一に、同「報告」が、教育基本法第一条(教育の目的)にうたわれている
「人格の完成」「個人の尊重」等を引き継ぐとしながらも、実際には、現行法
とは相当に異なる教育目的の提示が準備されていることです。
第二に、今日の子どもたちの引き起こす問題の諸事実を教育基本法「見直し」
の理由として用いるだけで、それらの事実の背景や構造的な問題の分析や対応
の究明を避けている点です。
第三に、「中間報告」が、現代の重要なテーマである「公共」を、一人ひとり
が共同して自由に創るものとして見るのではなく、政府・文部行政が予め決め
た方向にまとめあげるものとして見ていることです。しかも、これに反抗した
りこの秩序を乱す者には厳罰主義でのぞむというように、公権力をいっそう前
面に押し出している点に、強い危惧をいだきます。
わたしたちは、発足以来、子どもたちの民主的な公共性について実践・研究を
積み上げてきました。その成果として、子どもたちが学校社会はもとよりあら
ゆる場面で、個性的差異を認めつつ、社会的に弱い者の立場や少数の声を受け
止め共通の利益と関心を広げていく中で、対話・討論・討議の力を身につけ、
民主主義的関係を創り出していくことこそ、まさに公共の揺るぎない基盤にな
ると考えています。わたしたちが、一貫して個人相互の民主的関係性と民主的
討議能力を持つ集団の形成を重視し、教育課程上の重要な教育課題として、学
びと自治的活動・文化的活動を探求してきているのもそのためです。
総じて言えば、
(1)この「見直し」によって、日本がアメリカの同盟国として
世界の制覇にのりだすために、次にくる憲法「改正」の下地づくりが行われ
る、
(2)日本の市民社会が民主主義的な関係や感覚を成熟させてきている今、
国家が道徳的諸価値を教育基本法に盛り込もうとすること自体が、21世紀を
きりひらくわたしたちの市民社会の姿にまったくなじまない、
(3)「見直し」
は結局は現行法「改正」であり、これを教育内容や教員の統制の根拠法として
使う可能性が十分に存在する、
(4)そうなれば「物言わぬ」教員が新たにつく
られ、戦争を進める国への転換が教育によって行われやすくなる。このように
歴史的・社会的に見て、「見直し」は日本の社会と教育をますます悪い方向に
変えていくものと言わざるを得ません。
以上のことから、わたしたちは「中間報告」の「見直し」に反対します。