忘れることのできない教え子達の想い出を、彼らや彼女達の幸せを祈りながら綴っていきます・・・
生徒の前で親と大喧嘩
 K男は確か中3の春、私の学級に転校した来たんだったと思う。眼鏡の奥で大人に「簡単には本心は見せないぞ」とでも言いたそう な目顔をしていたな。誰が何を語りかけても、警戒心を露わにみせて話をはぐらかすことが多かった。頭の回転も速かったな。
 何日もしないうちだったと思うな、K男は他学級のツッパリ達とつながり、たちまち一目も二目も置かれるようになった。しかし、なんと かしなければと焦る私をよそに、彼はなかなかしっぽを出さない。他の連中が煙草や恐喝、暴力事件、万引き等々でしよっちゅう見つかるのに 、彼だけは枠外が多かったな。そのくせ、よくよく調べていくと、恐喝した金の一部が彼に渡っていたり、出てきた煙草の持ち主を調べると、実は彼の 物だったり、彼が暗黙の内に誰々を「殴れ」と指示していたりすることが多かった。こういう彼のことがわかるまでには実はとても時間がかかった。 仲間達が、彼の名前だけは容易には絶対出さなかったからだ。
 そんなある日、K男が学級のE男を殴るという事件が起こった。今度ばかりは何人ものクラスメートの前での暴力行為である。証拠も証言もある。 私は帰ってしまったという彼を追って家に乗り込んだ。そして、「無抵抗の人間を何発も殴りつけるなんてことは、やくざか暴力団ぐらいしかできない ことだ!おまえはやくざにでもなるつもりか、それならそれでそういう付き合いをしてやるぞ!どうなんだ!」と怒鳴りつけた。あとはあまりの怒りの せいで何を言ったかよく覚えていない。そのうちに彼の母が私に怒り出したことだけは覚えている。「やくざにでもなれとはどういうことですか!それが先生 の言うことですか!」というわけだ。ひとしきり、私と母との激しい口論になって、「校長先生や教育委員会にも聞いてもらわねば!」と怒りが収まらない。 「どうぞ、勝手にしてください!」
 次の日だったな。彼が「先生よー、昨日は悪かった・・、おっかー、なだめておいたで心配せんでいいわ。」とぼそっと言いに来た。「おっかーのこと なんかどうでもいいわ。それよりE男に謝罪したんか?」「あとで誤るわ。」「簡単に許して貰えることでないぞ。同じようなことがあれば、俺は いくらでもおっかーと喧嘩しに行くからな!」「・・・・・・」
 どういうわけか、それから彼は妙に私になついてくるようになったな。おまけに、なぜなのか よくはわからないけど、問題を起こしても割とあっさり認めるようになった。不思議なもので私も彼が段々可愛いくなってきていた。
 そんな彼ももう40歳をとうに越したな。幸せに暮らしていればいいが・・・・・・