さすらいのギャンブラー

 初めて教師になって赴任した学校の校長さんは面白い人だったな。
もう定年も間近い校長さんだったが、どこか人間的に枯れた暖かみとおかしみがあって、傍にいると、ホッと安らぎを感じさせてくれる人だった。 当時勤務していた学校は山の中の小さな学校で、教員は校長以下全員が教員住宅住まい、24時間共同生活していたようなものだったな。
 で、彼の綽名が人呼んで「さすらいのギャンブラー」
彼は毎日のように早々と学校を抜け出し、準備万端怠りなく、6時頃には一風呂浴びて、少しばかりのアルコールの臭いをさせて、和服姿で颯爽 と私たちの住宅に現れるのだ。手には自慢の高級品だという麻雀牌と差し入れの飲み物や食い物。そうー、彼の趣味は山に来てから覚えたという 麻雀。
 私たちが食事をしたり風呂に入ったりしている間に、牌を積み座布団や灰皿飲み物まで配置して、それでいて急がせるわけでもなく、待っていて くれるのだ。校長がこんなふうだから、毎日のように麻雀をやったな。そのうち女性教員も顔を出すようになって楽しかったな。だから、私達もい つか彼が現れるのを心待ちにするようになり、現れるのが遅いと「さすらいのギャンブラーはまだ?」等というようになっていたな。
「チー」だ「ポン」だとやりながら、この校長さんにはいろんなことを教わった気がするな。勝負はとても弱くていつも負けてたけど、なんとも言え ないおかしみとボケ麻雀ぶりで愛すべき人だったな。今様に言えば癒し系の人物とでも言えようか。仲間を癒し自分も癒される、そんな人間関係を巧 まずして彼はつくっていたような気がするな。バリバリの「やり手」という校長には何人も出会ったが、彼ほど教師にも子ども達にも愛された校長に は出会ったことがないな。そんな彼も何年か前に鬼籍に入ったと聞いた。
 こんな時代だから・・・・お互いに「癒し系」の教師を目指そうよ!子ども達も求めているよ!