夏まつり 夜店にならぶ 子どもたち
4年生の時に担任したY子は本当に子どもらしい子どもだった。何でもやりたい、見たい、聞きたい、言いたい、行きたいと好奇心の固ま
りのような子どもだった。おかっぱ頭に赤いほっぺでよくクルクル動く眼がいつも輝いて、とにかくどんなことにも活動的な感性豊かな子ど
もだった。
ある日のこと、私が金槌と釘で廊下か何かをなおしていた。やってきましたね!Y子が!ちょつとの間興味深そうにみていたが、釘を打ちた
くてたまらない。「ね、先生、Y子にやらせて!Y子にやらせて!」いつものY子の「やらせて病」である。ま、いいかと金槌を渡してやると、
器用に打ち始めた。突然、「ギャーッ」のわめき声。見ると、かわいそうに自らの左手の親指を金槌で思い切り叩いたんだな。指を押さえて
大声で「痛い!痛い」と泣きじゃくる。親指が黒く腫れているので、事情を説明がてら家に送っていった。親は呑気な?もので「そうですか
。それはいい経験をさせていただきました。」と言われたのには驚いたな。だが考えてみれば、こういう感じ方の親だからY子のような素敵
な子が育ったんだろうな。今時の親だったらどんなことになっていたか・・・・
Y子の思い出はもうひとつある。五七五の表現を教えたらめっぽう気にいったようでいっぱい作ってきた。その中に次のようなものがあっ
た。 「夏まつり 夜店にならぶ 子どもたち」 Y子が浴衣姿で夜店に並んでいる姿がほうふつとして笑えてきた。
「へやそうじ まどをあければ 秋の風」 というのもあった。
何年か後、母になったY子の年賀状の終わりにこんなのもあった。 「新入学 心しみじみ PTA」 末筆に「先生、ちょつとも進歩しな
いでごめんなさい」と小さな文字で書いてあったな。