「ヴァンパイアって、薔薇が好きなんスか?」

手品みたいだね、とタイマーが言っていた。

手元にある一輪の薔薇はつい先程咲かせたものだ。

よく考えれば一体いつからこんな芸当が出来るようになっていたのだろう。

ソファの肘掛に預けていた腕を返して手の平に視線を落とし、記憶を辿る。

「昔の絵とか見てると、ヴァンパイアの傍にはいつも薔薇があるっスよ。」

「…まあ…嫌いな奴はいなかったがな…。」

花を愛でる種族だった、花の生気目当てに栽培していたのではなく、ただ純粋に。

「ユーリも好きみたいだし、薔薇の料理でも作ってみましょうか?」

「薔薇の?」

「薔薇の形した砂糖菓子とか…。」

「……花は愛でるものであって食すものではないと思うがな。」

「文句は食べてから言って下さい。」

ははは、と笑ってアッシュが鍋の火を止めた。

まさか、と思ったが流石にそれはないようで。

「俺にも分かるように出してくださいよ。」

「分かるように…というと…こうか?」

指を広げ、親指と人差し指を擦り付ける。

そのままくるっと手を返すと、炎の色の花が光の雫を零した。

それは生まれ出た時の奇跡の光。

それを知る者ははるか昔にこの世界から消えた。

「…。」

「どうだ?」

「全然…。」

「種も仕掛けもないからな、それはそうだろう。」

と、薄く笑って優しく茎に指を添える。

薔薇は徐々に色を失い、最後には塵となって消えた。

うっすらと頬がピンク色に染まったのは一瞬で、真紅の瞳が湖面の様に震えたのも刹那だった。

「花は好きだ、時間をかけて育てるからな。 退屈しのぎには丁度いい。 けれど、大昔のヴァンパイアは花に触れることすら叶わなかった。」

それは地球の伝説に残るヴァンパイアの特性。

真実を残した昔の伝説。

「触れれば花は醜い茶色の塊になった、とある公爵は悲しみのあまり自分の城の花畑を焼き尽くしたという。」

触れても枯れないようになったのはいつからか。

いや、恐らくは…―――

「…幾多の妄執で…書き替えたか…。」

「え?」

「いや。」

自嘲的な微笑を浮かべてソファから起き上がったユーリの瞳には寂寥の色が漂っていた。

「ユーリ?」

「夕食は部屋でとる。」

「あ、はいっス。」

赤い羽根が扉の向こうに消える。

小さな足音がゆっくりと遠ざかって。

「…花魅の貴族か…。」

かつてヴァンパイアの側に在ったワーウルフしか知らぬ言葉。

月下の元、花を愛でる主人へ送られた敬愛と賛美の祝詞。

いつの頃からか二つの種の関係は途絶えてしまったけれど。

「ほんと、綺麗だよな。」

そう呟いて、アッシュはゆったりと目を閉じた。

かすかな温もりと、薔薇の香りを残すソファに抱かれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

END

 


なるたけそっちに行かないように。
かなり苦悩です。
なぜ、+ではなく×のですかわたくし。
自分の脳味噌の聞いてみたいです。
それがお前の本性だ、と返ってきたらもう言うことはありませんが。
とりあえず軽いヴァンパイア設定も含めて。
ゲーム画面の薔薇。
アレ初め、マイクを薔薇にしてるのかと。
もったいないことしとるな、と思いながらポップンを叩いてました。