ね、おかあさん どうしたの? そらって、どうしてあおいのか…しってる? そらが、どうしてあおいか? うん     ぼくは、ここにいるよ... 「ん…」 ベッドに横たわっている舞が、軽く身じろぎした。 「…舞?」 呼びかけてみるが、反応は無い。 目を覚ましたわけではないようだ。 速水は、起こしかけた体をまた椅子に預けると小さく溜息をついた。 「…無理、しすぎるからだよ?」 誰に言うでもなく呟いてみる。 今、時刻は昼少し前。 速水がPCを前にして座っている椅子があるのは整備員詰め所。 舞は、部屋に敷かれた布団に寝かされている。 彼女がこんな時間から寝ているのには理由がある。 ―  えぇそれはもう、海よりも高く山よりも深い理由があるのです。 え?逆だって?…気にしないで下さいな。決して素で打ち間違えた訳ではありませんよ。えぇ… ところで、彼女がこんな所でこんな時に寝ている理由、知りたいでしょう? そうでしょうそうでしょう。でも、説明にはたっくさん時間がかかりますよ。いいですね。 ゴタクはいいからさっさと言えって?はいはい、わかりました。 『舞はいつものように朝早い時間に 学校にやってまいりました。いつものように士魂号の整備をしてから 授業を受けました。そして、いきなり授業中に倒れてしまいました、』 お終い。 疲労がたまってたんでしょうね。そりゃもう見事にバタンQでした。 速水君の言うとおり、彼女は無理をしすぎたみたいですね。 …長くもないし、全然深くもない? あっはっは、長いと言ったらみなさんが遠慮してくれないかと思いましてねぇ。 私としては彼と彼女のラヴタイムを覗かれるのは本望ではなかったのですよ。 …え、何を言っているのかって? ははっ、全くもって人がわる  …ぐはっ(銃殺  ― …という訳だ。 ちなみに今の解説を行なったのが誰であるかは、断じて聞かないでいただきたい。 決して作者の邪なる一面が出たものではない。えぇ、そうですとも。ぼかぁそんな人間じゃ… …失礼。 とりあえず、その後速水が慌てて舞を詰め所に運び、 石津に容態を見てもらってから今にいたる。 「ぅ…ん………」 舞が、また軽く身じろぎをした。 速水はちらと外を見てから、 椅子から体を起こして、寝ている舞の顔を覗き込んだ。 なかなか健やかな寝息をたてて寝入っている。 「…まだしばらくは、起きないかな」 呟いて、速水は立ち上がった。 害虫(おじゃまむし)は、早めに除去しておくのが得策だよね。 そう言い残して、彼は 「どう、なにか進展あったかしら?」 「いえ特に。いたって普通に看病をしている感じですね」 「そう。…もう!速水君もどうして平気な顔できるのかしらね。」 「……………」 「あんなに好きな娘が目の前で無防備に寝てるっていうのに…」 「…まぁ確かにこのまま何もなし、で終わっては面白みがありませんね。」 「そうですね。最低でも、寝ている舞にキスぐらいした方がご期待に添えましたか?」 「そうね。せめてそれくらいはしてもらわないと、交代で授業を抜け出してまで見張ってる甲斐がな…って、え?」 「…面白そうな話してますね。僕も…混ぜてもらえませんか?」 いつの間にやら彼らの背後に居た当の本人は、そう言って…にっこりと笑った。 「あ、あら…速水くん…」 うろたえる原を尻目に、善行は冷静に眼鏡を押し上げ、呟く。 「…できれば、遠慮しておきたいのですが。」 「…結構、時間かかっちゃったな。」 そう呟いて、ひょい、と詰め所を覗いた。 …奥様方がどうなったのかはご想像にお任せする。恐らく想像に難くないだろう。 舞は、まだ眠っているようだった。 誰かが様子を見に来ていたらしく、机の上に”はやくよくなってね”と書かれた紙と、 それと、不恰好ながらもきちんと皮を剥かれた林檎がおかれていた。 ののみちゃんと瀬戸口君あたりかなーなどと思いながら椅子に腰掛ける。 ののみが剥いたと思われる林檎を見て、以前戦闘で怪我をして病院に運ばれた時に、 舞が悪戦苦闘しながら林檎を剥いて食べさせてくれた事を思い出して、クスクスと笑った。 「―っちゃん…」 「えっ?」 その時、ふと舞の声が聞こえたような気がして速水は慌てて振り向いた。 そっと舞の顔を覗き込んでみるが、目を覚ましてはいないようだった。 「…寝言、かな?」 「……っちゃ…め…」 「舞?」 どうやら本格的に寝言のようだ。 とぎれとぎれに小さく呟いているだけなので、 なんと言っているのかはよく聞き取れない。 「―っちゃん…いか…で…」 「舞、大丈夫?」 どこか悲痛な感じを含んできたその声に少し心配になり、 少し揺すって声をかけてみる。 起きる気配は無い。 つい、と舞の頬を一筋の涙がつたった。 「………舞……ねぇ、大丈夫?」 もう一度、呼びかけてみる。 「…くな、…あつ、し…」 「えっ?」 舞の手が、速水の制服の袖をぎゅっと握った。 舞の頬をもう一筋、涙がつたう。 「…舞…」 速水は右手で、そっと舞の頬を撫でた。 「ん…」 少しだけくすぐったそうに身を竦めてから、またもどる。 「…大丈夫。」 速水はそう、ポツリと呟いた。 頬を撫でるのをやめて、そのままの手で舞の頬を軽くつねった。 「舞?ま〜い〜。…朝だよ〜。」 実際朝ではなく昼なのだが、まぁ、他人を起こすときはつい口走ってしまうものだ。 「んにゅ…」 舞は小さく声をあげて、速水の手をのけて頭から布団をかぶってしまった。 普段の彼女からは考えられない行動が、普段とのギャップがとても可愛らし… …じゃなくて。 「ま〜い?」 速水は苦笑いしながら掛け布団をめくると、もう一度舞の名前を呼んだ。 「ん…あと、少し……………!?」 ガバッと舞が跳ね起きた。 舞の不意打ちを難なく避け、速水は微笑む。 (速水は舞の顔を覗き込むようにしてたから、舞が体を起こせば、当然速水とぶつかることとなる。) 「おはよう。よく眠れた?」 「あぅ?なっ?…あ、いや…まぁ、なかなかだな。」 混乱のあまりに、何かよくわからない発言をする舞。 速水は優しく微笑むと、いきなり舞の体を抱き寄せた。 「!?」 寝起きの上に突然の事で反応しきれず、あっさりと速水の腕に収まってしまう舞。 「な、ななななななぬにを!?」 動揺しすぎなんじゃないかと思うほど動揺する彼女を見て、速水はまた微笑んだ。 そして、強く、強く、舞の体を抱き締める。 「大丈夫だよ。―」 「一体何の事だ!それより、離れっ…」 「…ぼくは、ここにいるよ。今も…これからも、ずっと…」     ― 舞の隣に ― ぼくは、しってるよ? そらはね、あおくなくちゃいけないから あおいんだ それでね。よるはくろくならなきゃいけないから くろくなるの そらはね やさしいんだよ。そうしなきゃ みんながこまるから、まいにちいろをかえてくれているんだ