愛情あどれなりん

■イロコイ■


代表の説教は思ったよりも淡々としていた。
「ホストは顔ってところもあるから、お互い反省して自粛しろ」
端整な顔立ちでのし上がり、この店を立ち上げた代表らしい発言だった。
「大切なものがあるのはわかる。だけど、お前らは逆にお客様から大切にしてもらってるってことを忘れるな。お前らが傷つけば客の心も傷つくってことを忘れるな。」
代表の冷静な言葉が二人を責めた。

「ロイさん、お電話入ってます」
新人が声をかけた。

電話は夕香だった。
『ロイちゃん?』
「あぁ・・・」
『昨日どうしたの?』
「あぁ、すまん。具合悪くて・・・」
『電話もメールも出来ないくらい?』
「すまん」
『瑠那といたんでしょ!?』
思ったとおりの言葉にロイは受話器を耳から少し放して大きく溜息をついた。
「違うから」
『じゃぁ何してたの!?』
「夕香、今日は客入れないで待ってるからおいで」
『ごまかさないで!!』
「夕香・・・癒してよ」
ロイはとっておきの声で語りかけた。
『もぅ・・・』
夕香は仕事が終わったら電話すると言って電話を切った。

ホールに戻ると戒と店長が話していた。
店長はロイに手招きをした。
ロイが腰掛けた。
「お疲れっす」
「あぁお疲れ」
「従業員には何も言ってないから、お互い口合わせておけ。お前らどうせ顔腫れてんだから」
「はぃ・・・」
「あと、伽羅は今日同伴だけど、あいつも誰にも言ってねぇからさ。」
「はい」
「じゃ。今日も頑張っていこう」
「はい」
二人は声を揃えて返事をした。
「うまくごまかそう」
「そうっすね」
店長が立ち上がったあとに二人は目を合わせずに声を掛け合った。

1:00を回り、客が入り始めた。
同伴のホスト達がチラホラ出勤し始めた。
伽羅が明るいグレーのスーツで出勤してきた。
「おはようございます!」
フロントの戒に伽羅が元気よく挨拶した。
「おぅ」
戒は笑顔で応えた。
「・・・大丈夫っすか?」
「おぅ!」
戒は痛々しい顔で笑った。


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